交通事故 加害者 後遺障害 慰謝料
2021.08.16 2022.11.15

交通事故を起こした加害者がうつ病になった場合どうすれば良いのか

交通事故を起こした加害者がうつ病になった場合どうすれば良いのか

交通事故は通常両当事者の過失により発生するものです。

そのため、相手方から加害者として扱われているとしても、自分の受けた身体的・精神的ダメージを基準に考えた場合、被害者となる可能性があります。

その場合、過失割合上は自分の方がより責任が大きかったとしても、相手方に対し損害賠償請求することも権利として認められます。

しかし、交通事故後の手続は、過失割合の少ない被害者を基準に進められるため、加害者として取り扱われる者の救済について注目されることが少ないといえます。

そこで、注目されにくい加害者がうつ病という精神的ダメージを受けた場合、どのように対処するべきかという点につき、ご説明致します。

交通事故でうつ病になる加害者

交通事故による加害者の精神的ダメージ

交通事故により、加害者の受けることが考えられる精神的ダメージとしては、うつ病やPTSDという精神後遺障害が典型例です。加害者側であっても、交通事故を起こしてしまった自責の念や、交通事故時の記憶がフラッシュバックすること、周囲からの視線、交通事故により喪失するものを原因として、これらの精神後遺障害を負うことが考えられます。

被害者や加害者の家族がうつ病になるケース

ア. 被害者がうつ病になるケース

後述の通り、うつ病が発生する原因は何かという点について、はっきりと判明していないのが現状です。しかし、ストレスや、病気、様々の環境の変化が起こった場合に発生することは、傾向として判明しています。

交通事故の被害を受けた場合、交通事故の記憶からくるストレス、交通事故が原因の身体障害を受けること、事故が原因で就労が不可能になるケース、婚約が破談になるケース等の環境の変化等、うつ病の原因となると考えられる要因は数多く存在しています。このような要因が重なった場合、うつ病の発生が考えられ、交通事故との因果関係が認められると考えられます。

イ. 加害者の家族がうつ病になるケース

うつ病になる可能性のある要因は、被害者がうつ病になるケースとして述べた通りです。

加害者家族の場合、交通事故を起こした本人がうつ病を発症し、その介護として家族が精神的に負担を負うこと、加害者本人が刑事罰により就労が不可能となり家族が今後の生活への不安を抱くことや、周囲からの加害者家族に対する誹謗中傷・蔑んだ視線を浴びながら生活するという環境等が考えられるため、うつ病を発生させる要因が存在しているといえます。

交通事故による精神的後遺症

うつ病・PTSDとは

ア. うつ病

㋐ 定義

気分障害の一種です。慢性的な気分の落ち込み、睡眠障害・食欲不振・疲労感といった、精神的・身体的症状により、従前の生活を送ることが困難となっている場合は、うつ病が疑われます。また、双極性障害も類似の病気として存在します。

㋑ 原因

発症の原因は正確には不明です。しかし、ストレス・病気・環境の変化といった要因が重なった場合に発症する傾向があるといえます。

イ. PTSD

㋐ 定義

正式名称は、Post Traumatic Stress Disorderといい、その頭文字を取ってPTSDと略されています。また、日本語で心的外傷後ストレス障害と訳されます。

交通事故のような死への危険となる体験がフラッシュバックすることや、不安感・睡眠障害・動悸などの症状が、数カ月・数年以上継続するような症状が発生します。また、原因となる事故直後には発生しなくても、数年後から発生するケースも存在します。

㋑ 原因

生命への危険・それに匹敵する危険を体験した場合に発症する可能性があります。

交通事故は、生命への危険のある事件ですので、原因に該当することは明らかです。

精神的後遺症による交通事故の可能性

うつ病や、PTSDの症状は前述の通りです。

まず、うつ病の場合、上記症状により、必要な注意力・集中力が低下することにより、前方不注意や漫然走行を原因とした交通事故を発生させる危険性が考えられます。

次に、PTSDの場合、上記症状により平常な精神状態を保つことができなくなる結果、運転操作が困難となり誤操作をしてしまうこと、フラッシュバックにより現実世界の認識が困難になること等を原因とした交通事故を発生させる危険性が考えられます。

交通事故後の後遺症治療

精神的後遺症の治療

ア. うつ病の場合

まず、うつ病を発症した者が、うつ病であることを自覚し、休養を取ることが最優先です。特に睡眠による心身の回復はとても重要な役割を果たします。

次に、投薬治療を行います。睡眠を取るために睡眠導入剤が処方されることや、抗うつ剤が処方されることがあります。

薬の効果が現れるまでに数週間以上要することもあります。

そのため、うつ病治療は長期にわたるといえます。

イ. PTSDの場合

まず、持続エクスポージャー療法が考えられます。この療法は、暴露療法ともいい、あえて不安に直面することで、その不安に慣れていくというものです。不安は一時的に上昇し時間が経過するにつれ低下していく傾向、何度も同じ体験をすることで、危険体験自体に慣れることで不安感を希釈化させることができるという原理を利用した治療法です。

また、投薬治療としては、抗うつ薬・抗不安薬を使用します。PTSDを発症した場合にも有効とされています。

後遺障害等級認定手続

後遺障害を発症し、相手方に損害賠償請求を行う場合、等級認定を基に賠償額の算定を行うため、後遺障害等級認定手続を行う必要があります。うつ病・PTSDは、長期にわたって症状が残存するため、後遺障害に該当する可能性も一定程度認められることから、後遺障害等級認定手続を行うことにも一定の価値があるといえます。以下、流れを記載します。

①後遺障害診断書の作成を主治医に依頼する、②自賠責保険会社に対して必要書類を揃え、認定請求を行う、③保険会社や損害保険料率算出機構等による必要手続を処理された後、通知される、という流れです。

もっとも、うつ病やPTSDといった精神障害は、事故以前から発症している場合は、交通事故との因果関係が否定される可能性も高く、その場合は等級認定がなされない可能性が高いです。

また、うつ病・PTSDは全ての人が発症するわけではなく、因果関係の立証が困難なため、認定がされにくい傾向です。そのため、医学的知識・法学的知識の双方を兼ね備えた立証活動が必要であるといえます。

以上の理由から、交通事故後にうつ病・PTSDが発症しているからといって、等級認定がなされるとは限らないとご留意ください。

まとめ

本記事において、交通事故の加害者がうつ病になった場合についての必要知識につき、ご説明を致しました。

最もお伝えしたいことは、加害者であっても被害者になりうるということです。その場合、自責の念から自身の受けた被害について言い出しにくいこともあるかと思います。しかし、自身も被害を受けている場合、その被害の救済を求めることは、法律上認められた権利です。自身の権利は自身で守らなければなりません。

しかし、法的処理については複雑かつ多様な知識が必要です。そのため、自分の権利を守るためには、弁護士の役割が重要であるといえます。

以上の理由により、交通事故によるうつ病・PTSDを疑われる状況に陥った場合は、お近くの法律事務所・弁護士にご相談されることをお勧め致します。

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