交通事故に遭った際、被害の一種として、乗っていた自転車が壊れてしまうということも考えられます。
その際に、ロードバイクなどの高級な自転車を買った直後に事故に遭って、低い損害賠償額を提示されたとすれば納得いきませんよね。
壊れた自転車の損害賠償額の算定基準について知っていれば、正当に争うこともできるかもしれませんし、不服感も弱まるかもしれません。
そこで、本記事では、交通事故で自転車が損傷した場合の損害額算定方法、減価償却について、保険会社はどのように考えているかについてご説明致します。
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目次
1 交通事故で自転車が損傷した場合の損害金額の算定方法
⑴再取得価格
損害賠償請求権の根拠規定である民法上の考え方として、物の価値はその交換価値であることを前提に、その物と同様の性質の認められる物の時価を賠償すれば足りることになります。この考え方は、再取得価格が損害であるとするものです。
乗っていた自転車ということは、中古の自転車に該当します。そのため、同種の自転車の、同程度の使用がなされた中古自転車を取得するとすれば必要となる価額が、この考え方に従った再取得価格としての損害賠償額です。
⑵再購入価格
上記の考え方が原則ではありますが、交通事故の被害者に対して救済が充分であるのかといった疑問や、通常代替物を用意する際は、新品の自転車を購入するといえる面もあります。これらの理由や、加害者の被害者に対する謝罪の意味も含め、その他多様な考慮要素を含めた後、実務では、当該自転車の購入時の価額による賠償が認められる場合もあります。この算定の考え方が、再購入価格です。
乗っていた自転車を5万円で購入したとすれば、再購入価格は5万円です。
⑶減価償却
自転車を使用すればするだけ価値が低下することは当然であるといえます。この価値の低下を減価償却というところ、これを一切考慮せずに、賠償額を請求することは、被害者にとってむしろ利益を受けることになります。
この点を重視し、受けた損害以上の金銭を受けるような棚ぼたを認めず、減価償却を考慮し、適正な価値を算出しようとする考え方があります。
この考え方により算出する場合は、新車価格、使用期間、耐用年数等を考慮し決定します。
2 自転車の減価償却の計算方法
⑴自転車の時価
まず、損傷した自転車と同等の自転車の時価を算定します。種類、使用年数等により算定することもありますが、市場価額が重要視されます。
そのため、あまり市場に出回っていないような高価な自転車や、限定生産された自転車等は算定が困難となります。
⑵自転車の耐用年数
自転車の法定耐用年数は2年です。そのため、2年経過していた場合、その自転車はもう無価値であると算定されてしまう可能性があります。
少し甘めに見てもらい価値があると判断される可能性も一定程度はあるかもしれませんが、高価な自転車の場合、自分の想定している価値よりも大幅に低く算定される可能性が高いといえます。
保険会社も営利企業として利潤を追求する側面から、高価な自転車や長期間乗っている自転車であるほど、無価値あるいは低価値で判断することのできる減価償却法により算定する可能性があります。
その場合、減価償却法によっては適切に損害が賠償されないことになってしまうため、被害者自身で時価を立証する必要があるといえます。
3 保険会社が計算した損害賠償額
⑴自分で計算した損害賠償額と比較する
まず、自分の計算した損害賠償額と保険会社の提示してきた損害賠償額を比較してみましょう。
自分が再購入価格で計算してみたところ、保険会社は減価償却法により計算していたといったことが容易に考えられます。
また、自分も減価償却法により損害賠償額を算出したにも関わらず、保険会社の提示してきた損害賠償額が更に低く算出されている可能性も考えられます。
その原因としては、時価の算出が保険会社と被害者の間でずれていることが考えられます。保険会社が耐用年数等を機械的に適用して算出したのに対し、損傷した自転車がロードバイクであり、多くの品質や耐久性改良のための合法的改造を施していた場合など、特に大きな隔たりが生じていることも考えられます。
この場合は、具体的な特殊事情を主張し、法定耐用年数を基にした時価の算出方法は本件事例においては妥当でないことを主張し、被害者の主張する時価の算出方法が合理的かつ相当性の有するものであることを説得的に主張する必要があります。
そのため、多くの法的知識やノウハウが損害賠償額に大きく影響しますので、弁護士に依頼することをお勧め致します。
⑵時価の全額を賠償金として受け取った場合
自転車の時価の全額を賠償金として受け取った場合、再購入価格と比較すれば低額になってしまっている可能性もあります。
しかし、示談交渉の成立として受け取っている場合は、錯誤や詐欺、強迫、意思無能力といった事情があったといった例外的な事情があれば、示談合意の取消し及び再交渉を行う余地もないことはないですが、弁護士を介した法的手続が必要になってしまうことも容易に考えられます。
時価全額であるということは、減価償却されておらず、有利なケースもあるため、法的手続に移行する費用やリスク、取られる時間を考慮して、受け取った額で妥協する方が良いことも考えられます。
4 交通事故を多く取り扱う大阪(なんば・梅田)・堺・岸和田・神戸の弁護士法人法律事務所ロイヤーズ・ハイにご相談ください。
本記事では、交通事故で自転車が損傷した場合の損害額算定方法、減価償却について、保険会社はどのように考えているかについてご説明致しました。
特にお伝えしたいことは基本的に保険会社の提示する保険金の額は低いということです。
被害者の方が直接保険会社と交渉するのであれば、過去に損害賠償額として認められた判例・裁判例・実例をリサーチし、自転車がより高価なものなのか、購入したばかりなのかといった具体的な事情を考慮して、なぜ更に高価な賠償額が相応しいのかという説明をできるように計画を立てたうえで交渉しましょう。そのため、難しい立証を強いられることになりますので、著しく高価な自転車の場合などは特に弁護士への依頼をお勧め致します。
また、自転車の損傷のみならず、身体までも負傷した場合は、保険会社の提示する保険金額と弁護士が交渉に介入した場合に認められる賠償金額の間には2倍以上の大きな差がある可能性があります。
この場合、金額も高額になるため、被害者の方が単独で保険会社と交渉したとしても、保険会社が受け入れることはあまり考えにくいです。
そのため、人身事故の被害に遭い、保険会社から提示された金額に不満があった場合には、弁護士に相談されることをお勧め致します。
その際は、交通事故案件を数多く取り扱い、高い実績と評価を有する大阪(なんば・梅田)・堺・岸和田・神戸の弁護士法人法律事務所ロイヤーズ・ハイにご相談ください。
このコラムの監修者
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太田 泰規(大阪弁護士会所属) 弁護士ドットコム登録
大阪の貝塚市出身。法律事務所ロイヤーズ・ハイのパートナー弁護士を務め、主に大阪エリア、堺、岸和田といった大阪の南エリアの弁護活動に注力。 過去、損害保険会社側の弁護士として数多くの交通事件に対応してきた経験から、保険会社との交渉に精通。 豊富な経験と実績で、数々の交通事故案件を解決に導く。