交通事故の被害に遭うのは車やバイクを運転する大人だけではありません。残念ながら子供が被害者になることも多くあります。ここでは子供が事故に遭った時の過失割合についてご案内をします。
目次
1 交通事故の過失割合とは?
⑴意味
交通事故の過失割合とは、【事故の当事者=加害者・被害者それぞれにおける、交通事故の結果に対する責任の割合】のことをいいます。交通事故は多くの場合が双方に責任があり、どちらか一方の責任となりうること=過失割合が加害者側100%、被害者側0%であるケースは追突事故ぐらいで、被害者側であっても、何らかの過失が発生することが多いです。
⑵判断基準
この過失割合は【保険会社】が決めます。当事者同士の加入している保険会社が過去の裁判例=判例を判断基準に決めていきます。判例には過去に起きた様々な事故状況に応じての過失の基本割合が定められています。そこには、自動車同士の事故だけではなく、歩行者や自転車、バイク等の場合も想定されています。全く同じ事故というものは基本的にはありませんので、実際に起こった事故の状況を加味して修正をしながら保険会社同士、弁護士に依頼する場合は、弁護士と保険会社で協議をして決定をしていきます。
よく【過失割合は警察が決めるもの】と思われている方もいらっしゃいますが、あくまでも警察は現場にて、当事者から状況を聴取し、事故の事実を記録することを役割とします。その場で警察の方が、過失の割合を当事者に伝えることもありますが、その後の過失の割合の決定の際に警察が介入することはありません。ただ、警察が聴取した後に作成をする【調書=実況見分調書】は過失割合を判断する重要な資料になることとなりますので、取り調べの際はしっかりと事故状況を伝えるようにしましょう。
2 年齢別、子供の飛び出し事故での過失割合
交通事故は日常の誰にでも起こりうる出来事であり、それは大人も子供も関係ありません。特に子供の場合は、何かに夢中になって道路に飛び出してしまう、という場合もあります。では子供が飛び出してしまい、車に轢かれてしまった場合、車と子供の過失割合はどうなるのでしょうか?
まず、ほとんどの場合は車の過失が大きくなります。過失の割合は【子供の不注意の程度】が影響します。物事の善し悪しの判断能力(事理弁識能力といいます)が被害者の子供にあったかどうかが大きなポイントとなり、この判断能力の有無は交通事故の場合、年齢によって考え方が大きく変わります。この年齢は道路交通法で定められている、6歳未満の幼児と6歳以上13歳未満の児童を境にされている傾向がありますが、成長速度や物事の理解度等個人差も最終的には加味されます。
⑴5歳未満
5歳未満の場合は事理弁識能力の有無を問われることはあまりありません。実際、歩き始めてまだまもなく、言葉もしっかりと話せていない子供に責任を問うことは難しいです。そのかわり、判断能力がまだほとんどないといってもいい子供を飛び出し事故が発生しうる場所で1人にした親や親族、ベビーシッター等の責任が問われ、被害者側の過失として一定の割合で過失が求められることもあります。
⑵5歳か6歳以上
5歳か6歳以上の場合は裁判所では事理弁識能力があると判断されます。
その為、一定の過失が認められます。ただし、幼児や児童は【子供である】という修正要素が働き、同様の内容で被害者が大人である事故に比べると、おおよそ5~20%程度は過失割合が低くなります。
⑶徒歩、自転車の飛び出しの違い
徒歩と自転車で飛び出しをした場合に違いはあるのでしょうか?
まず、徒歩の場合ですが、歩行者は基本的に交通において弱者のため、飛び出しにおいても、責任を負うことは少ないです。しかし場合によります。例えば歩行者が道路を横断するために飛び出したといったケースでは、歩行者の過失割合が通常の基準よりも5~10%大きくなるとされています。これは過失の修正といい、加算要素となります。
次に自転車の飛び出した場合ですが、車や2輪車に比べると弱者の部類に入ります。道路交通法の交通弱者を保護するという考えにより、自転車の飛び出し事故の過失割合は低くなっています。しかし、事故の原因が自転車の飛び出しであった場合は基本の過失割合に10%ほど加算されるものだとお考え下さい。
3 信号機のある横断歩道の場合の過失割合
⑴判断基準
横断歩道上での飛び出し事故の場合、基本的な過失割合は歩行者が0%、自動車が100%と言われています。しかし、必ずしもそれが適用されるとは限りません。場合によっては歩行者側に過失が多少出ることもあります。では、それはどんな場合でしょうか?
まず信号機があるかないかが過失割合に大きく影響します。例えば信号機がある横断報道を歩行者が青信号で渡り、赤信号で自動車が進入してきた場合は、歩行者0%、自動車100%の過失割合になります。
しかし、歩行者が赤信号で渡り、青信号で自動車が進入してきた場合は歩行者70%、自動車30%となります。信号無視をした歩行者に責任があるからです。ただ、これは横断を始めたタイミングと信号機の色の変化(例えば赤信号で横断を開始したが、途中で青信号になった等)で大きく変わりますので、警察や保険会社に説明するときは細かく伝えましょう。
では、一方で子供の場合はどうなるのかですが、先ほど、歩行者が赤信号で渡り、青信号で自動車が進入してきた場合は歩行者70%、自動車30%とご説明をしましたが、この歩行者が子供場合は修正要素が加わります。まず6歳未満の幼児が歩行者だった場合は、幼児50~55%、自動車45~50%の過失割合となり15%~20%ほどの修正がかかります。児童が歩行者だった場合は、児童60%~65%、自動車35%~40%となり5%~10%ほどの修正がかかります。
ただし、上記で述べたようにこちらの例は歩行者側が完全に赤信号、自動車側が完全に青信号を想定していますので、信号の色、変化で随時過失の基本割合は変わり、同時に幼児・児童の修正されるパーセンテージも変わります。
4 信号機のない交差点の場合の過失割合
⑴判断基準
信号のない交差点で出会い頭の事故が起きた場合、左方優先の原則(道路交通法36条1項1号)にのっとり、左から来た車が40%,右から来た車が60%の過失割合が基本となります。
なお、道路の道幅が判断基準となり、一方の道路が他方の交差道路より幅が広い大きな道路であれば、幅が広い大きな道路を走行していた車が30%、狭い道路を走行していた車の過失割合は70%として、道路の道幅が広く大きい方が優先されると判断されるのが基本的です。
なお、信号機のない横断歩道の場合ですが、これは歩行者0%、自動車100%となります。夜間であったり、自動車から歩行者の発見が困難であったりする際は多少の修正があることもありますが、基本は歩行者0%、自動車100%です。
5 過失割合に不満がある場合はどうすればいいでしょうか?
⑴弁護士に相談
過失割合は交通事故の中でも争点になりやすい1つです。子供の事故の場合、加害者と子供の意見が食い違うこともよくあります。大人でさえ交通事故に遭うとパニックになり、事故状況を説明できない人は多くいる中で、子供が上手く説明できる可能性は非常に低いです。
また言葉がまだしっかりしていない幼児の場合、上手く言葉で表現することができないことから、加害者が強く出て自分の有利なように話を進め、被害者が弱くなるケースもあります。そんな時に子供の味方をできるのは親だけです。親が子供にしっかりと状況を聞いて、事実を確認していなければなりません。また、事故現場の道路状況や第三者の目撃者からの証言、加害者の車の損傷位置、程度から導き出される事実もあります。
しかしこういったことはなかなか一般の方には厳しく、結果相手の主張が優先され加害者の保険会社に不当な過失割合を言われるケースは少なくありません。過失割合に納得が出来ない、不満がある場合、まずは弁護士に相談をすることをおすすめします。
6 子供の飛び出し事故のご相談は、大阪(なんば・梅田)・堺・岸和田・神戸の弁護士法人法律事務所ロイヤーズ・ハイへ。
子供の飛び出しにおいての過失割合を中心にご説明をさせていただきました。
大事なお子様がもしも交通事故に遭った時に、お子様の精神的ケアや身体的ケアに親御様は集中されたいかと思います。
しかし保険会社からは容赦なく、過失の割合や治療の打ち切りについてなど連絡があります。酷いときは被害者がわからないことをいいことにお子様が一方的に悪いという風に話を進める保険会社も残念ながらあります。
そういった専門的なことは、プロである弁護士に任せてみてはいかがでしょうか?
子供の飛び出し事故による過失割合についてお悩みの方は、大阪(なんば・梅田)・堺・岸和田・神戸の弁護士法人法律事務所ロイヤーズ・ハイにまずはお気軽にご相談ください。