交通事故 交通事故基礎知識 後遺障害
2023.09.14 2024.07.23

交通事故で顔面神経麻痺になったら、後遺障害等級の認定はどうなる?

交通事故で顔面神経麻痺になったら、後遺障害等級の認定はどうなる?
交通事故で顔面神経麻痺になったら、後遺障害等級の認定はどうなる?

交通事故で顔面神経麻痺の後遺症が残ってしまったら,見た目にかかわることなので非常にストレスを感じるでしょうし,生活に与える影響も大きいでしょう。

顔面神経麻痺が後遺障害として認定されると,後遺障害慰謝料や後遺障害逸失利益を請求することができる可能性があります。

当コラムでは,交通事故で顔面神経麻痺が残った場合の後遺障害等級や,請求できる慰謝料についてご説明いたします。

目次

1 「顔面神経麻痺」とは

顔面神経麻痺とは,「顔が曲がってきた」,「眼が閉じられない」,「眉が下がる」,「水が口からこぼれる」,「口角が下がる,口が閉じられない」,「喋りにくい」など,顔の筋肉の動きが麻痺してしまう症状です。

顔面神経麻痺は,ウイルスが顔面神経に感染する,特殊な神経や血管の病気によって顔面神経に障害が生じる以外に,交通事故が原因でも症状が出ます。

交通事故を原因とする場合,事故時に顔面神経が通っている側頭骨を骨折したり,顔面に深い傷を負い顔面神経が損傷されたことにより生じます。

なお,交通事故で麻痺が残ってしまった場合について,当事務所の次のコラムでご紹介しているのでご覧ください。

交通事故で麻痺が残ってしまったら?

2 交通事故で顔面神経麻痺になったら、後遺障害等級はいくつになる?

(1)12級14号:外貌に醜状を残すもの

顔面神経麻痺が原因で口に歪みが生じていれば,外貌に醜状を残すものとして12級14号が認定されます。

(2)11級2号:両眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの

(3)12級2号:一眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの

顔面や側頭部を強打して,視神経や外眼筋が損傷されればまぶたの運動障害が発症します。

まぶたには,以下の3つの運動があります。

眼瞼閉鎖(まぶたを閉じる)
眼瞼挙上(まぶたを開ける)
瞬目運動(瞬き)

まぶたに著しい運動障害を残すとは,まぶたを閉じたときに角膜を完全に覆うことができないもの(兎眼)と,まぶたを開いたときに,瞳孔を完全に覆うもの(眼瞼下垂)の2種類があります。

片方の眼に症状がある場合には,12級2号が,両方の眼に症状がある場合には,11級2号が認定されます。

(4)12級13号:局部に頑固な神経症状を残すもの

(5)14級9号:局部に神経症状を残すもの

顔面神経麻痺は,神経系統の機能の障害なので,12級13号または14級9号に認定される可能性もあります。

「局部に頑固な神経症状を残すもの」とは,障害の存在が医学的に証明できるもののことです。

「局部に神経症状を残すもの」とは,障害の存在が医学的に説明可能なものを意味します。

3 交通事故で顔面神経麻痺になったら何が請求できる?

治療費など:治療にかかった実費全額,通院交通費,入院雑費などです。

休業損害など:交通事故による受傷によって休業したことの収入減に対する補償や,交通事故を原因とする後遺障害が理由で得られなくなった将来の収入に対する補償などです。

慰謝料:怪我の治療などが原因で精神的苦痛を受けたことに対する金銭的な補償や,後遺障害が原因で,将来にわたって不便を強いられたり,辛い思いをすることで生じる精神的苦痛に対する金銭的補償などです。

加害者側の保険会社が提示する示談金は相場よりも低いことが多いです。

一方で,弁護士が交渉すれば,「弁護士基準」と呼ばれる過去の裁判例をもとに設けられた基準に基づいて示談交渉を行うことができます。

「弁護士基準」で計算した方が,示談金が高くなります。

また,弁護士相手であれば,保険会社は訴訟に発展することを恐れ,態度が軟化する可能性も高いです。

そのため,示談金の増加を見込めます。

等級後遺障害後遺障害慰謝料(自賠責基準)後遺障害慰謝料(弁護士基準)
12級14号外貌に醜状を残すもの94万円290万円
11級2号両眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの136万円420万円
12級2号一眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの94万円290万円
12級13号局部に頑固な神経症状を残すもの94万円290万円
14級9号局部に神経症状を残すもの32万円110万円

なお,交通事故で加害者に請求できる14個の項目については,当事務所の次のコラムでご紹介しているのでご覧ください。

交通事故で加害者に請求できる14個の項目を弁護士が徹底解説!

4 顔面神経麻痺の後遺障害が残ったのに認定されない場合と対処法

⑴ 顔面神経麻痺の後遺障害が残ったのに認定されない場合

① 12級14号 外貌醜状の場合

自賠責の後遺障害等級認定では,被害者を面接して醜状の実際を把握する方法がとられています。

顔面神経麻痺が理由で外貌醜状を認定してもらうには,人目につく程度以上のものでなければなりません。

顔面神経麻痺が原因で口の歪みがあったとしても,面接した者が,「人目につく程度以上でない」と判断すれば,後遺障害とは認定されません。

② 11級2号,12級2号 まぶたの運動障害

まぶたを開いたときに,瞳孔の一部しか覆われていない場合は,著しい運動障害とは言えません。

③ 12級13号,14級9号 局部の神経症状

事故直後には顔面神経麻痺の症状が現れなかったため病院へ行かず,時間が経過してから通院をした場合,事故以外の原因が理由で顔面神経麻痺になったのではないかと疑われる可能性があります。

⑵対処法

①異議申し立て

(ア)自賠責保険会社への異議申し立て

被害者が自賠責保険会社に異議申立書を提出する方法です。

自賠責保険会社は,異議申立書を損害保険料算出機構へ送付して認定を求めます。

損害保険料算出機構に設置された自賠責保険審査会において,外部の専門家が参加し,審査を行います。

認定結果は,自賠責保険会社から被害者に通知され,異議申立の回数は無制限です。

(イ)一括払保険会社への提出

相手方保険会社が一括払で対応している場合,一括保険会社が事前認定を行ったその結果を被害者に通知します。

被害者が一括払保険会社に異議申立書を提出すれば,一括払保険会社は異議申立書を損害保険料算出機構へ送付して認定を求めます。

認定結果は,一括払保険会社から被害者に通知され,異議申立の回数は無制限です。

相手方保険会社が一括払で対応している場合,自賠責保険会社か一括払保険会社どちらかに異議申立を行うことになります。

(ウ)紛争処理機構への異議申し立て

紛争処理機構とは,自賠責保険金・共済金の支払について、支払の適正化を図ることを目的として国から指定された紛争処理機関です。

裁判に比べて迅速な解決を図ることを目的としている第三者機関です。

自賠責保険会社か一括払保険会社どちらかに異議申立を行った後で,その結果に異議があれば紛争処理機構へ異議申立として紛争処理の申請を行うことになります。

ただし,紛争処理機構への異議申立は,1回しか行えません。

参照:警察庁 財団法人 自賠責保険・共済紛争処理機構

②訴訟

後遺障害等級は損害保険料算出機構が決定します。

これに対して,訴訟では裁判所が判断するので後遺障害が認定される可能性があります。

もっとも,裁判所は損害保険料算出機構の認定を尊重するので,必ずしも後遺障害が認定されるわけではありません。

5 困ったらすぐに弁護士にご相談を

顔面神経麻痺は,様々な後遺障害等級に分かれているうえに,後遺障害に当たるかの判断が難しいです。

そのため,加害者の保険会社と後遺障害慰謝料や後遺障害逸失利益を支払ってもらうよう交渉する際は非常に専門性が要求されます。

また,後遺障害が認定されなかった場合,どの対処法をとるかを判断したうえで,適切な対応をとることも難しいです。

適切な後遺障害等級の認定を受け,十分な賠償金を獲得するには,早い段階で弁護士を入れることをお勧めします。

ロイヤーズ・ハイには交通事故に精通した弁護士が多数在籍しています。交通事故に遭い,顔面神経麻痺の症状に悩まれている方は,交通事故を多く取り扱う大阪(なんば・梅田)・堺・岸和田・神戸の弁護士法人法律事務所ロイヤーズ・ハイにご相談ください。

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