交通事故 交通事故基礎知識 損害賠償 自動車保険
2023.09.15 2023.09.15

追突事故での評価損を加害者側に請求、保険会社に拒否された場合の対処法

追突事故での評価損を加害者側に請求、保険会社に拒否された場合の対処法
追突事故での評価損を加害者側に請求、保険会社に拒否された場合の対処法

追突事故に遭えば,車に傷がついたり,故障してしまいます。

たとえ,修理をしたとしても,一般的に,事故後は車の価格が低下してしまいます。

これを,「評価損」といいます。

自分に非がないのに,車の価格が低下してしまうのはやり切れません。

当コラムでは,「評価損」を請求するための方法についてご説明いたします。

目次

1 追突事故での評価損とは?評価損の算出方法

追突事故での評価損とは?評価損の算出方法

⑴評価損とは

評価損とは,交通事故当時の車両価格と修理後の車両価格の差額を指します。

交通事故に遭った車の修理をしても,機能や外観に欠陥が残存していたり,事故歴があるので隠れた瑕疵があるかもしれないなどの理由で,中古車市場において価格が低下することがあります。

評価損には,技術上の評価損と,取引上の評価損の2種類があります。

技術上の評価損とは,修理をしても技術上の限界などから機能や外観に回復できない欠陥が残存する場合の損害をいいます。

もっとも,修理方法の変化や修理技術の進歩によって,技術的に修理できない場合は少ないです。

取引上の評価損とは,修理によって元通りになり,欠陥が残存しておらずとも,事故歴があることを理由に,中古車市場において価格が低下することをいいます。

なお,交通事故による自動車の修理代を請求することができるかについては,当事務所の次のコラムでご紹介しているので,ご覧ください。

交通事故による自動車の修理代は請求できる?

⑵評価損の算出方法

裁判例における評価損額の算出方法は,以下のとおりです。

①減価方式

事故当時の車両価格と修理後の車両価格との差額を損害とする方法です。

技術上の評価損の算定は,この方法によるのが合理的だとされています。

②時価基準方式

事故当時の車両価格の一定割合を損害とする方法です。

③金額表示方式

車種,使用期間,被害内容・程度,修理費用等を斟酌して,損害を金額で示す方法です。

④修理費基準方式

修理費の一定割合を損害とする方法です。

取引上の評価損の算定の際,裁判例で多く用いられています。

車種,初年度登録からの期間,走行距離,修理の程度を考慮して20~30%前後の金額で評価損を認めるものが多い傾向にあります。

評価損の証拠として,「事故減価額証明書」が提出されることがあります。

「事故減価額証明書」は,一般財団法人日本自動車査定協会による査定書です。

これは,評価損算定時の資料となることはあります。

しかし,査定の基準が明確ではないことを理由に,訴訟で絶対的なものとしては採用されていません。

なお,交通事故で自転車が壊れた場合の減価償却については,当事務所の次のコラムでご紹介しているので,ご覧ください。

交通事故で自転車が壊れた場合の減価償却について知りたい

2 評価損が認められたケースと認められなかったケース 

⑴評価損が認められたケース

・初年度登録3カ月のニッサンGTRについて,トランク開口部とリアフェンダーとのつなぎ目のシーリング材の形状が事故前の状態に戻らなかったことを理由に,修理費の50%の評価損を認めた(東京地判平成23年11月25日自保1864号165頁)
・初年度登録2年のアウディについて,修理後の車両に外観・機能上の不都合が残存しないとしても,事故歴によって一定の取引価格の下落が生じるとして,修理費の約2割の評価損を認めた(大阪地判平成26年8月26日交民47巻4号1031頁)
・初年度登録1年未満のメルセデスベンツE320について,被害車両が新規登録から1年未満の高級車でありながら事故経由の烙印を押されることから,単なる修理だけではまかなえない評価の下落が生じることは否定できないとして,車両価格の1割を評価損と認めた(京都地判平成11年7月6日自保1328号3頁)
・初年度登録10年弱のランボルギーニ・ディアブロGTについて,生産台数が80台の限定車であること,走行距離が1万5000キロであること,修理箇所が躯体などの構造部分に及んでいないことなどを踏まえ,修理費の約3割である36万円の評価損を認めた(大阪地判平成25年6月14日自保ジ1910・164)

⑵評価損が認められなかったケース

・初年度登録13カ月のトヨタカローラⅡについて,小型乗用車であり,走行距離1万2254キロであることから評価損は発生していないとされた(名古屋地判平成9年5月14日交民30巻3号711頁)
・初年度登録2年未満のフォルクスワーゲン・ゴルフについて,一般に高級外国車とされていて,初年度登録から事故時までは2年弱が経過しているにとどまるが,走行距離は4万5814㎞と使用年数の割には多いこと,損傷の部位及び程度が比較的軽微な損傷にとどまり,部品交換によって完全に修復すること等を総合考慮して,評価損は発生していないとされた(東京地判平成15年8月28日交民36-4-1142)
・初年度登録12年以上を経過しているトヨタスープラについて,初年度登録から事故時までに12年以上を経過していること,損傷が比較的軽微で修理によりほぼ完全に修復されたことなどから,評価損は発生していないとされた(東京地判平成16年4月22日交民37―2-519)

3 評価損の立証資料

評価損があるかどうかは,車両の購入価格,購入時期,走行距離,車両の損傷箇所・損傷の程度等を考慮して判断されます。

これらの事項を立証するため,車検証,事故車両の写真,修理工場作成の見積書等を準備しなければいけません。

また,一般財団法人日本自動車査定協会の発行する「事故減価額証明書」も評価損の立証資料になります。

4 評価損の請求を保険会社に拒否される理由

保険会社は,支払う保険金の額をなるべく小さくしようとします。

特に,取引上の評価損について,交換価値の低下という損害は現実化しないこと,時間の経過によって事故を原因とする交換価値への影響も低下していくことなどから,評価損を認めない傾向にあります。

なお,中古車を売る際,修復歴車だと判断されるのは,車の骨格部分を交換・修復した車です。

そのため,骨格部分の損傷がなければ,原則として評価損とは認められません。

例えば,追突事故で,バンパー(自動車の骨格ではない)部分のみの損傷であれば,修復歴車には該当しないので事故減価額証明書を発行してもらえないでしょうから,資料集めは難しく,評価損が認められるのは難しいです。

骨格部分以外の損傷であれば,保険会社からも,評価損の請求を拒否されるでしょう。

5 評価損の請求を保険会社に拒否された場合の対処法

⑴評価損が発生している根拠を並べる

「修理は完璧でなく,性能が低下している」

「今後不具合が発生するかもしれない」

「日本の中古車市場では,事故歴のある車両の買取価格が低下するのは否定できない」

などの,評価損が発生している根拠を主張します。

⑵評価損が発生している根拠を立証する

評価損を認めた裁判例や,「事故前の価格と事故車の価格の差額分」を書類にします。

また,自分の車と車種・年式・走行距離・車検などが同レベルの中古車のうち,修復歴があるものとないものの価格差データを集めましょう。

特に,自分の車と同レベルの修復歴のある中古車で,評価損が認められた裁判例を提示すればより効果的です。

6 追突事故での評価損を正当に受け取るために

評価損は,治療費などと比べて保険会社との交渉ではなかなか認められません。

また,評価損を立証しようにも,適切な資料を集めて,判例などに基づいて立証を行わなければいけません。

弁護士は交渉に長けていますし,評価損に関する知識を十分に持っています。

弁護士に示談交渉を任せた方が,評価損が認められる可能性が高まります。交通事故の相手方に評価損を請求したい方は,交通事故を多く取り扱う大阪市・難波(なんば)・堺市の弁護士法人法律事務所ロイヤーズ・ハイにご相談ください。

このコラムの監修者

カテゴリ一覧

アクセスランキング

新着記事

CONTACTお問い合わせ

ご相談など、お気軽に
お問い合わせください。

電話アイコンお電話でのお問い合わせ

06-4394-7790受付時間:8:30〜19:00(土日祝日も可)

メールアイコンwebフォームよりお問い合わせ