交通事故 交通事故基礎知識 後遺障害 慰謝料
2023.10.26 2024.04.25

交通事故で視力低下したら慰謝料はいくらもらえる?相場や後遺障害等級の認定基準を解説

交通事故で視力低下したら慰謝料はいくらもらえる?相場や後遺障害等級の認定基準を解説

人間は全情報の80%を視覚から受け取っています。

そのため,視力低下は他の後遺障害と比べて日常生活・仕事への影響が多大です。

当コラムでは,交通事故で視力が低下した場合についてご説明いたします。

目次

1 交通事故で視力が低下したらどうなる?視力低下の原因と症状

⑴視力低下の原因

①視神経の損傷

視神経は,眼から脳へ視覚情報を伝える神経です。

頭部外傷の衝撃によって視神経を損傷すれば,視力が低下します。

②眼球の外傷

交通事故でフロントガラスや眼鏡が破損し,ガラスが目に突き刺さることで眼球が傷つけば,視力が低下します。

⑵視力低下の症状

視力が低下した場合には,以下のような症状が残ります。

・視界がぼやける
・視界がかすんで見える
・光をまぶしく感じる
・暗い場所では見えにくい
・片目では物が見えにくい
・眼精疲労

2 視力低下は後遺障害と認定されるのか?後遺障害等級の基準と診断方法

⑴後遺障害等級

視力低下の後遺障害等級は,以下のようになっています。

後遺障害等級障害の内容
1級1号両眼が失明したもの
2級1号一眼が失明し、他眼の視力が0.02以下になったもの
2級2号両眼の視力が0.02以下になったもの
3級1号一眼が失明し、他眼の視力が0.06以下になったもの
4級1号両眼の視力が0.06以下になったもの
5級1号一眼が失明し、他眼の視力が0.1以下になったもの
6級1号両眼の視力が0.1以下になったもの
7級1号一眼が失明し、他眼の視力が0.6以下になったもの
8級1号一眼が失明し、又は一眼の視力が0.02以下になったもの
9級1号両眼の視力が0.6以下になったもの
9級2号一眼の視力が0.06以下になったもの
10級1号一眼の視力が0.1以下になったもの
13級1号一眼の視力が0.6以下になったもの

※「失明」とは,眼球を失ったり摘出したもの,明暗を区別できないもの,ようやく明暗を区別することができる程度のものです。

すなわち,矯正された視力で0.01未満のことを言います。

※上記の表に記載されている視力は,基本的には眼鏡又はコンタクトを装着した状態で測った視力,すなわち矯正視力のことです。

⑵診断方法

視力低下の原因には,頭部外傷による視神経損傷と,眼球の外傷の2種類があります。

視力低下が立証できても,視力低下の原因が交通事故であることまで立証しなければ,後遺障害とは認定されません。

そこで,視力検査に加えて視神経損傷ないしは眼球の外傷も検査する必要があります。

①眼球の外傷ないしは視神経損傷の検査

(ア)眼球の外傷の検査

眼球の外傷による視力障害は,前眼部・中間透光体・眼底部の検査で立証します。

前眼部と中間透光体の異常は,スリット検査で調べます。

スリット検査では,台の上に顔を載せてもらい,スリット光という細い光で眼球を照らし,眼球の傷などを見つけます。

眼底部の異常は,直像鏡で調べます。

直像鏡の検査では,瞳孔に光を入れて検眼鏡で眼底を観察します。

(イ)視神経損傷の検査

眼球の外傷の検査を行っても外傷などが認められなければ,ERG(電気生理学的検査),VEP検査(視覚誘発電位検査)を行います。

視神経損傷による視力障害は,ERG,VEP検査で立証することになります。

ERGは閃光に対する網膜の反応を計測し,それによって網膜の視細胞の機能を調べる検査のことです。

VEP検査では,光刺激によって後頭葉の脳波を誘発し記録して,網膜から後頭葉に至る視覚伝達路の異常をチェックします。

②視力検査

まず,オートレフで裸眼の状態を検査します。

オートレフは,覗くと気球が見える検査機器です。

眼球に傷があれば,この検査で分かります。

その後,万国式試視力表を用いて,裸眼視力と矯正視力を検査します。

3 視力低下による慰謝料はいくらもらえる?慰謝料の相場と支払い時期

⑴後遺障害慰謝料の支払い基準にはどんなものがある?

交通事故が原因で視力低下の後遺障害が残った場合,後遺障害慰謝料を加害者側から支払ってもらうことができます。

後遺障害慰謝料とは,後遺障害が残ったことにより被害者が受ける精神的苦痛に対する補償で,障害の程度に応じた額が支払われます。

後遺障害慰謝料の額の支払い基準には,自賠責保険基準,任意保険基準,弁護士基準の3つがあります。

①自賠責保険基準

自賠責保険基準とは,自賠責保険で定められている保険金の支払い基準です。

自賠責保険は,被害者への基本補償を確保するため,被害者の人身損害について,一定の自賠責保険金等の限度額内で支払うものです。

そのため,自賠責保険基準は,3つの支払い基準の中で1番低い基準となっています。

②任意保険基準

任意保険基準とは,任意保険会社が定めている保険金の支払い基準のことで,公表されていません。

3つの支払い基準の中では,中間の額の支払い基準になっています。

③弁護士基準

弁護士基準とは,過去の裁判例を参考に算定された支払い基準で,3つの支払い基準の中では最も高額な基準になっています。

裁判所基準とも呼ばれます。

弁護士に示談交渉を依頼すれば,示談交渉でも弁護士基準で示談金を算定することができます。

⑵視力低下の後遺障害が残った場合,後遺障害慰謝料の相場はどうなっている?

視力低下の後遺障害慰謝料の相場は,以下のようになっています。

後遺障害等級障害の内容自賠責保険基準弁護士基準
1級1号両目が失明したもの1150万円2800万円
2級1号1眼が失明し,一眼が失明し、他眼の視力が0.02以下になったもの998万円2370万円
2級2号両眼の視力が0.02以下になったもの998万円2370万円
3級1号一眼が失明し、他眼の視力が0.06以下になったもの861万円1990万円
4級1号両眼の視力が0.06以下になったもの737万円1670万円
5級1号一眼が失明し、他眼の視力が0.1以下になったもの618万円1400万円
6級1号両眼の視力が0.1以下になったもの512万円1180万円
7級1号一眼が失明し、他眼の視力が0.6以下になったもの419万円1000万円
8級1号一眼が失明し、又は一眼の視力が0.02以下になったもの331万円830万円
9級1号両眼の視力が0.6以下になったもの249万円690万円
9級2号一眼の視力が0.06以下になったもの249万円690万円
10級1号一眼の視力が0.1以下になったもの190万円550万円
13級1号一眼の視力が0.6以下になったもの57万円180万円

⑶後遺障害慰謝料の支払い時期はいつ?

交通事故が発生してから後遺障害慰謝料が支払われるまでは,以下のような流れです。

①交通事故が発生する

交通事故が発生し,被害者が傷害を負います。

②病院を受診する

病院を受診して,医師の治療を受けます。

③症状固定と判断される

治療を継続しても,症状の改善が見込まれないと判断されることを,症状固定と言います。

症状固定と判断されると,障害の程度に応じて後遺障害認定を受け,後遺障害慰謝料の支払いを受けることになります。

基本的には,6ヶ月以上経過すれば症状固定の判断がなされます。

④後遺障害診断書を作成してもらう

症状固定と判断されたら,主治医に後遺障害診断書を作成してもらいます。

後遺障害診断書は,後遺障害申請を行う際の重要な資料となります。

⑤資料を収集する

後遺障害診断書以外の必要資料を収集します。

⑥後遺障害申請を行う

後遺障害申請には,事前認定(加害者請求)と被害者請求の2種類の申請方法があります。

事前認定とは,加害者が加入している保険会社に後遺障害申請を任せる方法であるのに対し,被害者請求とは,被害者が後遺障害申請を行う方法です。

事前認定の場合,加害者が加入している任意保険会社が必要資料の収集を行い,必要資料を自賠責保険損害調査事務所に提出します。

これに対して,被害者請求では,被害者が必要資料を収集し,加害者が加入している自賠責保険会社に必要資料を提出します。

⑦自賠責保険損害調査事務所が後遺障害の調査を行う

自賠責保険損害調査事務所は,任意保険会社又は自賠責保険会社から請求書類の提出を受け,後遺障害の調査を行います。

2021年度の,自賠責保険損害調査事務所における後遺障害の調査日数は約7割が30日以内,約2割が31日~90日となっています。

そのため,後遺障害の調査には大体2ヶ月ほどかかります。

⑧等級認定の結果が出る

自賠責保険損害調査事務所は保険会社に調査結果を報告し,保険会社は調査結果を踏まえて後遺障害等級を認定します。

⑨示談交渉を行う

認定された後遺障害等級を前提に示談交渉を行い,損害賠償金の額を決定します。

後遺障害が残った場合,示談交渉は1~3カ月はかかると見込んでおきましょう。

なお,交通事故の示談交渉にどれくらいの期間がかかるかについては,当事務所の次のコラムでご紹介しているのでご覧ください。

交通事故の示談交渉にはどのくらいの期間がかかるのか知りたい!

⑩示談金が支払われる

示談が成立すれば,被害者に示談金が支払われます

症状固定までに6ヶ月間,調査に約2ヶ月,示談交渉に約2ヶ月かかると考えると,後遺障害慰謝料が支払われるのは交通事故が起こってから約1年後です。

4 視力低下に対する補償は慰謝料だけではない?その他の補償項目と申請方法

視力低下に対する補償は,後遺障害慰謝料の他には後遺障害逸失利益があります。

また,交通事故が原因で入通院している場合は,入通院慰謝料も請求することができます。

それ以外には,治療費,通院交通費,入院雑費,将来介護費などの補償も受けることができます。

これらの補償項目は,後遺障害慰謝料と合わせて示談交渉の際に請求することになります。

5 視力低下の補償を得るために必要なことは?

視力低下の後遺障害が残ったことに対する補償を受けるためには,後遺障害認定を受けることが必要です。

視力低下があるだけでは,交通事故の後遺障害だと認定されません。

交通事故の後遺障害だと認定してもらうには,視力障害の原因が交通事故であることを立証しなければいけません。

そこで,眼の外傷または視神経の損傷があることを証明する必要があります。

もっとも,頭部外傷を原因とする視神経の損傷を眼科で診察することは難しいです。

そこで,眼球の外傷の検査を行っても外傷が見つからない場合は,脳神経外科や神経内科を受診し,担当医から眼科の紹介を受けて眼科では検査だけを受けましょう。

また,頭部外傷を原因とする視神経損傷の場合,視束管骨折・頭蓋底骨折・側頭骨骨折・びまん性軸索損傷・急性硬膜下血腫等の傷病名があり,画像所見がなければいけないことも留意しておきましょう。

6 弁護士の選び方

⑴後遺障害に関する知識があるか

後遺障害の等級認定を受けるには,必要な検査を受けたうえで,後遺障害診断書の書き方も工夫しなければいけません。

医師は治療の専門家であるため後遺障害について詳しいわけではなく,後遺障害等級認定を受けることができるような後遺障害診断書を作成してもらえるとは限りません。

そこで,どんな検査が必要か,医師にはどのように後遺障害診断書の書き方を頼めばよいかを的確にアドバイスできる弁護士を選びましょう。

⑵後遺障害案件の経験が豊富か

後遺障害慰謝料などを獲得するには,後遺障害申請やその後の示談交渉に長けている弁護士に依頼する必要があります。

法律事務所のホームページを開いて,過去に後遺障害の解決案件が多くあるかを確認しましょう。

⑶弁護士費用が払えるか

弁護士費用を尋ねて,自分が払える額かどうかを確認しましょう。

交通事故被害に遭われた場合,ご自身の加入している保険に弁護士費用特約をつけていれば,一定額までは弁護士費用を賄うことができます。

なお,弁護士費用特約については当事務所の次のコラムでご紹介しているのでご覧ください。

弁護士費用特約のススメ

⑷弁護士とコミュニケーションが取れるか

ご自身の希望通りの解決をしてもらうには,弁護士とコミュニケーションをきちんと取れることが必要不可欠です。

一度弁護士と話してみて,コミュニケーションをとることができるかを確認しましょう。

なお,交通事故で弁護士を探す場合について,当事務所の次のコラムでご紹介しているのでご覧ください。

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7 まとめ

視力低下の後遺障害が残った場合についてご説明させていただきました。

視力低下の後遺障害等級認定を受けるには,弁護士からアドバイスを受けることが有用ですし,弁護士に依頼すればご自身の代わりに複雑な後遺障害認定申請を行ってもらえます。

また,弁護士に依頼すれば弁護士基準で後遺障害慰謝料を算定してもらうことができるうえに,示談交渉でも相手方の保険会社と対等に渡り合うことができます。

当事務所の弁護士は,交通事故案件ひいては後遺障害案件の経験が豊富です。交通事故後の視力低下で悩まれている方は,大阪(なんば・梅田)・堺・岸和田・神戸の弁護士法人法律事務所ロイヤーズ・ハイにご相談ください。

このコラムの監修者

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