交通事故で片足や片腕を切断することになってしまった。
このような悲惨な結果となることがあります。
当コラムでは,交通事故で片足や片腕を切断した場合の後遺障害等級や慰謝料などについてご説明いたします。
目次
1 交通事故で片足や片腕を切断すると後遺障害等級はいくつになる?
⑴片足切断
交通事故を原因とする片足切断は,下肢の欠損障害と言われます。
下肢の欠損障害には,下肢を膝関節以上で失ったもの,下肢を足関節以上で失ったもの,下肢をリスフラン関節以上で失ったものがあります。
等級 | 後遺障害 | 認定基準 |
4級5号 | 一下肢をひざ関節以上で失つたもの | ・股関節において,寛骨と大腿骨とを切断したもの・股関節と膝関節との間において,切断したもの・膝関節において,大腿骨と脛骨と距骨とを離断したもの |
5級5号 | 一下肢を足関節以上で失つたもの | ・膝関節と足関節との間で切断したもの・足関節において,脛骨,腓骨と距骨とを離断したもの |
7級8号 | 一足をリスフラン関節以上で失つたもの | ・足根骨(腓骨,距骨,舟状骨,立方骨および3つの楔状骨)において切断したもの・リスフラン関節において中足骨と足根骨とを離断したもの |
⑵片腕切断
交通事故を原因とする片腕切断は,上肢の欠損障害と言われます。
上肢の欠損障害には,一上肢をひじ関節以上で失つたもの,一上肢を手関節以上で失ったものがあります。
等級 | 後遺障害 | 認定基準 |
4級4号 | 一上肢をひじ関節以上で失つたもの | ・肩関節において,肩甲骨と上腕部を離断したもの・肩関節とひじ関節との間において上肢を切断したもの・ひじ関節において,上腕骨と橈骨および尺骨とを離断したもの |
5級4号 | 一上肢を手関節以上で失つたもの | ・ひじ関節と手関節との間において上肢を切断したもの・手関節において,橈骨および尺骨とを離断したもの |
2 交通事故で片足や片腕を切断した場合の慰謝料の相場は?
交通事故で片足や片腕を切断した場合,後遺障害等級に応じた後遺障害慰謝料を請求することができます。
慰謝料の相場は,自賠責基準,弁護士基準,任意保険基準それぞれで異なります。
弁護士基準が1番高い支払基準で,自賠責基準が1番低い支払基準です。
弁護士に依頼すれば,弁護士基準で後遺障害慰謝料を算定することができます。
⑴片足切断
等級 | 後遺障害 | 自賠責基準 | 弁護士基準 |
4級5号 | 一下肢をひざ関節以上で失つたもの | 737万円 | 1670万円 |
5級5号 | 一下肢を足関節以上で失つたもの | 618万円 | 1400万円 |
7級8号 | 一足をリスフラン関節以上で失つたもの | 419万円 | 1000万円 |
⑵片腕切断
等級 | 後遺障害 | 自賠責基準 | 弁護士基準 |
4級4号 | 一上肢をひじ関節以上で失つたもの | 737万円 | 1670万円 |
5級4号 | 一上肢を手関節以上で失つたもの | 618万円 | 1400万円 |
3 交通事故の加害者にはどのように損害賠償請求すればよい?
⑴加害者が任意保険に加入している場合
任意保険では,通常,約款において,交通事故被害者が保険会社に対する損害賠償請求権を有し,一定の条件を満たせば被害者に対して損害賠償金を支払う旨が規定されています。
(約款に記載される一定の条件) ①被保険者が損害賠償請求権者に対して負担する法律上の損害賠償責任の額について,被保険者と損害賠償請求権者との間で,判決が確定した場合又は裁判上の和解もしくは調停が成立した場合 ②被保険者が損害賠償請求権者に対して負担する法律上の損害賠償責任の額について,被保険者と損害賠償請求権者との間で,書面による合意が成立した場合 ③損害賠償請求権者が被保険者に対する損害賠償請求権を行使しないことを被保険者に対して書面で承諾した場合 ④約款所定の損害賠償額が保険証券記載の保険金額を超えることが明らかになった場合 ⑤法律上の損害賠償責任を負担すべき全ての被保険者について,次のいずれかに該当する事由があった場合 イ被保険者又はその法定相続人の破産又は生死不明 ロ被保険者が死亡し,かつ,その法定相続人がいないこと |
上記の②にあるように,被害者が相手方任意保険会社と示談交渉を行い,示談が成立すれば,相手方任意保険会社から損害賠償金の支払いを受け取ることができます。
⑵加害者が自賠責保険にしか加入していない場合
加害者に対して損害賠償請求することになります。
具体的には,加害者との間で示談交渉を行い,示談金の額を決定します。
しかし,加害者が,資力がないなどの理由をつけて示談交渉に応じない場合があります。
その場合,被害者は,加害者が加入している自賠責保険に対して,直接損害賠償金を請求することができます。
これは,自賠法16条を根拠にしており,「被害者請求」と呼びます。
(保険会社に対する損害賠償額の請求) 第十六条 第三条の規定による保有者の損害賠償の責任が発生したときは、被害者は、政令で定めるところにより、保険会社に対し、保険金額の限度において、損害賠償額の支払をなすべきことを請求することができる。 2 被保険者が被害者に損害の賠償をした場合において、保険会社が被保険者に対してその損害をてん補したときは、保険会社は、そのてん補した金額の限度において、被害者に対する前項の支払の義務を免かれる。 3 第一項の規定により保険会社が被害者に対して損害賠償額の支払をしたときは、保険契約者又は被保険者の悪意によって損害が生じた場合を除き、保険会社が、責任保険の契約に基づき被保険者に対して損害をてん補したものとみなす。 4 保険会社は、保険契約者又は被保険者の悪意によって損害が生じた場合において、第一項の規定により被害者に対して損害賠償額の支払をしたときは、その支払った金額について、政府に対して補償を求めることができる。 |
被害者は,必要書類を用意して,加害者が加入している自賠責保険に対して,損害賠償金を請求します。
必要書類は,例えば以下のとおりです。
自賠責保険金(共済金)・損害賠償額・仮渡金支払請求書 |
交通事故証明書(人身事故) |
事故発生状況報告書 |
医師の診断書または死体検案書(死亡診断書) |
診療報酬明細書 |
通院交通費明細書 |
付添看護自認書または看護料領収書 |
休業損害を証明する書類 |
損害賠償額の受領者が請求者本人であることの証明(印鑑証明書) |
委任状および(委任者の)印鑑証明 |
戸籍謄本 |
後遺障害診断書 |
レントゲン写真等 |
4 相手保険会社へ請求する際の注意点とは?
⑴時効が成立する前に請求する
交通事故を原因とする損害賠償請求権には,時効があります。
保険会社に対する保険金請求を行う時効は交通事故から3年です。
時効が成立すれば,保険会社に対して損害賠償金の請求を行うことはできなくなります。
そのため,相手保険会社へはなるべく早く請求しましょう。
⑵後遺障害等級認定を受けてから請求する
片足切断や片腕切断の後遺障害が残った場合,後遺障害等級認定を受けなければ後遺障害慰謝料を受け取ることができません。
特に,弁護士基準で算定するのであれば,後遺障害等級認定を受けるかどうかで示談金の額が1000万円近く変わります。
⑶安易に示談を成立させない
焦って示談を成立させてしまえば,相場より低い示談金しかもらえないことが多いです。
時効は注意しなければいけませんが,示談交渉に3年もかかることはほとんどありません。
そのため,示談金が相場と同等かを確認し,多額の示談金を得られるよう交渉して納得したうえで,示談を成立させましょう。
なお,相手保険会社との示談交渉での正しい対応方法,相手保険会社が嫌がることについては,当事務所の次のコラムでご紹介しているのでご覧ください。
5 弁護士に依頼するメリットとは?
⑴後遺障害等級認定を受けることができる
弁護士は依頼者の代理人として,後遺障害等級認定申請を行います。
弁護士は,後遺障害等級認定に慣れているので,ポイントを押さえて申請を行います。
そのため,後遺障害等級認定を受けることができるでしょう。
⑵負担が少なくなる
片腕や片足を切断することになれば,移動も一苦労なので後遺障害等級申請に必要な書類を集めることは非常に大変です。
また,後遺障害等級申請の中では知らない用語が飛び交うので,精神的にもストレスがかかってしまいます。
弁護士に相談すれば,種々の手続を代行してもらえるので,ストレスが小さくなります。
⑶適切な示談金を受け取ることができる
相手方の保険会社が提示する金額は,相場より低いことがほとんどです。
しかし,弁護士を入れると,弁護士基準で後遺障害慰謝料を算定することができます。
また,弁護士は交渉に長けているので,保険会社と対等に渡り合うことができます。
そのため,結果的に多額の示談金を得ることができることが多いです。
6 まとめ
片足切断をすることになれば,事故から先ずっと義足なしでは歩行が困難になります。
また,片腕を切断すれば,日常生活でのあらゆる動作に支障が生じます。
被害者の中には,手や足を切断されたショックから,生きることへの気力が無くなる方も多くいらっしゃいます。
片足・片腕切断は,被害者自身はもちろん、そのご家族に対しても心身両面で大きな負担を与えるものです。
せめて,金銭面でなるべく大きな補償を受けるために,弁護士に相談することをお勧めします。
当事務所には,交通事故案件の経験が豊富な弁護士が在籍しています。交通事故で片足や片腕を切断された方は,大阪(なんば・梅田)・堺・岸和田・神戸の弁護士法人法律事務所ロイヤーズ・ハイにご相談ください。