交通事故 交通事故基礎知識
2020.06.24 2023.08.25

交通事故で不起訴になるケース、事例など知りたいです。

交通事故で不起訴になるケース、事例など知りたいです。

交通事故で加害者が被害者に怪我をさせてしまった場合や物を壊してしまった場合、加害者は被害者へ損害賠償金を支払います。
これは民事上の加害者が負う責任です。
では刑事上の加害者の処分はどうなるのでしょうか?答えは【不起訴】になることがほとんどです。
ここでは【不起訴】についてご説明をさせていただきます。
 

交通事故での不起訴率はどれくらいなのか?

a:人身と物損

交通事故の発生件数は年々減っているとはいえ、年間で50万件以上とまだまだ多くの事故が発生しています。
こういった背景もあり、交通事故の加害者は不起訴処分になることが多いです。
人身事故のすべてを起訴していると処理が追い付かない、という理由があるからです。
また起訴をされたとしても正式裁判にはならず、100万円以下の罰金刑のみで終わる、いわゆる略式起訴という処分で終わることが多いです。
なお、交通事故には人身事故と物損事故がありますが、刑事責任が問われるのは人身事故のみで、基本的には物損事故では問われません。
ただし、交通事故により他人の家や店を傷つけた場合は道路交通法第116条に基づき、刑事責任が発生します。
 

不起訴とは?

a:意味

そもそも不起訴とは何かをご説明します。
まず【起訴】は検察官が裁判所へ刑事事件について審判を求めることをいいます。
検察官に起訴をされると加害者=被疑者は被告人という立場となります。
起訴には3つの種類があります。
正式起訴、略式起訴そして不起訴です。
正式起訴は検察官から訴えられた内容を元に裁判所が有罪か無罪かを判断し、有罪の場合は量刑を決めるもので、刑事裁判が一般にも公開されます。
略式起訴は裁判の手続きを省略し、検察官が提出した書類をもと裁判所が罰金100万円以下の処罰を決定し事件を終了させます。
最後に不起訴ですが、検察官が裁判所の審判を求める必要はないと判断した場合をいいます。
裁判手続きが行われませんので、前科がつくこともありません。
 

b:処分の種類

不起訴には多数の種類が存在しますが、主なものは限定され、【嫌疑なし】【嫌疑不十分】【起訴猶予】の3種類となります。
この各々の処分の種類については後ほど詳細をご紹介します。
 

c:誰がいつどのタイミングで判断する?

起訴か不起訴かについては、検察官がすべて判断します。
これは検察官が独占している権限となります。
事件が起こると、検察官は捜査を徹底的に行い、これ以上証拠はないと判断した段階で起訴をするのであれば裁判を求めます。
 

d:交通事故における起訴・不起訴の判断材料

では交通事故における起訴、不起訴の判断はどういったところでされているのでしょうか。
先ほども述べましたが、交通事故の場合は多くのケースが不起訴となります。
すべてを起訴にすると処理が追いつかないといった背景の他にも、交通事故の場合、【加害者は故意に被害者を死傷させようとしていない】という点や損害賠償金や慰謝料の支払いにより経済的な罰を加害者が受けているという点も考慮されます。
被害者の怪我が極めて重症であるか、死亡しない限りは起訴されることはほぼありません。
また、被害者が重症ないしは死亡した場合であっても略式起訴となることが多いです。
起訴(正式起訴)になる判断材料は【いかに悪質で重大であるか】がポイントです。
具体例で述べると、加害者の法定速度を大幅にオーバーしたスピード違反や、正常な判断ができないほどの飲酒運転、薬物を使用した運転、あおり運転やひき逃げなどがあげられます。
この場合懲役刑もしくは禁錮刑となる場合があります。
 
下記は不起訴になった事例です。
【長崎県警の50代の男性警視が、走行中の車の前に急に入り込んで運転手にけがをさせたとして、自動車運転死傷処罰法違反(危険運転致傷)の疑いで書類送検されていたことがわかった。県警によると、長崎地検は警視を不起訴処分にしたという。】
出典:朝日新聞デジタル(2018年8月25日)
さて、いくら交通事故は不起訴が多いからといって、交通事故の直後はまだどうなるかはわかりません。
先ほども述べましたように検察官の捜査の上で判断されるからです。
そうなると、交通事故の加害者になった場合、起訴か不起訴の判断がくだるまでは逮捕されてしまうのか、ご心配される方もいらっしゃると思います。
交通事故を起こしてしまった際、加害者の方は必ずしも逮捕されるわけではありません。
在宅事件といい、加害者は逮捕されずに、警察の聴取の際に警察署に出向くこととなります。
事故現場でたとえ逮捕されたとしても、逃亡や証拠隠滅の可能性がないあるいは低いという場合は在宅事件にされることもあります。
その一方で、逮捕・勾留され、警察署の留置所や拘置所に拘束され取調べを受ける事件を身柄事件といいます。
これは交通事故の内容が悪質であったり加害者の逃走の恐れがあったりする場合です。
 

嫌疑なし不起訴とは?

a:意味

捜査をした結果、犯罪を認定する証拠がない場合や人違いのケースです。
警察が誤って逮捕してしまった【誤認逮捕】の場合もこの分類に入ります。
 

b:処分内容

被疑者の疑いが晴れていますので、処分はありません。
 

嫌疑不十分とは?

a:意味

捜査をした結果、犯罪の疑いがないわけではない状態ですが、その犯罪を裁判において立証し、有罪の証明をするには証拠が不十分だという状態です。
 

b:処分内容

嫌疑不十分の場合、身柄事件が多いです。
身柄勾留できる期間は決まっていますので、その期間内で検察官は証拠を集め、裁判所に審判を求められるだけの証拠を集めます。
この期間を過ぎた場合、被疑者は釈放ないしは嫌疑不十分の不起訴処分になります。
なお、同じ罪で被疑者は逮捕されることはないので、一度嫌疑不十分となれば、その決定は覆りません。
 

起訴猶予とは?

a:意味

捜査をした結果、罪を犯したことは間違いなく事実であり、証拠もありますが、被疑者の年齢や性格、生活環境、境遇の他、犯罪の軽重、犯罪後の状況、更生の可能性を鑑みて、検察官の裁量により起訴を見送ることです。
具体的には犯罪が比較的に軽いものや被害者との示談が済んでいる場合は起訴猶予の判断をくだされることが多いです。
 

b:処分内容

あくまで【起訴を見送られた】だけなので、完全に無罪となったわけではありません。
その後に何か新しい事実が発覚し起訴すべきであると判断された場合は起訴される可能性はあります。
しかし、その後に起訴されるケースは比較的に少なく、事件が終了した場合には前科にはなりません。
 

弁護士に相談

a:メリット

交通事故の加害者になってしまった場合、民事上だけではなく刑事上でも弁護士に相談することをおすすめします。
先ほど、交通事故では不起訴処分になることが多いと述べましたが、悪質かつ重大な場合は、逮捕されることもあります。
その場合、身柄の釈放と不起訴処分(交通事故の場合は、ひき逃げではない限りは事故を起こした事実は確定していることが多いので起訴猶予)となるためには、加害者は弁護士を入れることが不可欠です。
何故ならば、不起訴処分を得るには、捜査機関の保有する証拠を精査し、加害者にとって新たな有利となる情報・証拠を集めることで、不起訴が妥当である旨の主張をしなければいけないからです。
逮捕された場合はすぐに弁護士に相談することが加害者にとっては大きなメリットとなります。
 

まとめ

ここでは不起訴について、交通事故の場合を交えながらご説明をさせていただきました。
交通事故=損害賠償、つまり民事事件と捉えられている方が多くいらっしゃいますが、交通事故は刑事事件でもあります。
交通事故の内容によっては起訴も十分にあり得ます。
もしも交通事故の加害者になってしまった場合は早期に弁護士に相談をしましょう。

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