半月板損傷は,よくあるスポーツ外傷ですが,交通事故でも発症します。
半月板損傷が見落とされてしまうと,治療後も痛みが残って歩きにくく,後遺障害として残ることなどがあります。
当コラムでは,半月板損傷の後遺障害についてご説明いたします。
目次
1 半月板損傷とは?交通事故で起こりやすい膝の損傷
半月板は,膝関節に存在し,関節の動きを滑らかにし,クッションの役割を担っています。
具体的には,大腿骨と脛骨の間にあります。
交通事故で横方向からの衝撃を受けて膝を捻った際,半月板が大腿骨と脛骨の間に挟まれて損傷,断裂します。
なお,同じく膝に位置する膝蓋骨の骨折については,当事務所の次のコラムでご紹介しているのでご覧ください。
交通事故による膝蓋骨骨折の後遺障害に苦しむあなたに|後遺障害等級の認定基準と申請の流れを弁護士が解説
2 半月板損傷の症状と診断方法
⑴半月板損傷の症状
主な症状は疼痛で,膝を伸ばした際に引っかかるような違和感があります。
半月板を大きく断裂し,関節内に半月板の一部がはまり込んだ場合,激痛と可動域制限によって歩けなくなります。
⑵半月板損傷の診断方法
①マクマレー・テスト
仰向けになって膝を最大屈曲させ,ゆっくり足を動かします。
半月板損傷を発症していれば,膝に激痛が走ったり,グキグキと異常音が聞こえます。
②グリンディング・テスト
うつ伏せになって膝を90度屈曲し,踵を下に押し付けながら回します。
半月板損傷を発症していれば痛みます。
③画像検査
レントゲン撮影,CTスキャン,関節造影,MRI,エコーなどでも半月板損傷かどうか診断できます。
この中では,MRIが有効です。
3 半月板損傷の治療法と予後
⑴半月板損傷の治療法
①保存療法
温熱療法,関節内にステロイドを注入する薬物療法,ヒアルロン酸の注入,痛み止めなどの内服,リハビリテーションなどがあります。
②手術療法
最近では,半月板損傷を放置すると変形性膝関節症に発展するので,手術をすることが多いです。
手術では,断裂部位を縫合するか,切除します。
⑵半月板損傷の予後
手術をした後は,膝をギプスで固定,安静にします。
縫合したら術後6週間,切除したら術後2週間で社会復帰できます。
4 半月板損傷の後遺症で認められる後遺障害等級と慰謝料
⑴後遺障害等級と認定基準
①機能障害
等級 | 後遺障害 | 認定基準 |
8級7号 | 一下肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの | (ア)関節の完全強直または完全強直に近い状態となったもの(イ)関節の完全弛緩性麻痺またはこれに近い状態にあるもの(ウ)人工関節または人工骨頭を挿入置換したもので,その可動域が健側の2分の1以下に制限されているもの(将来,人工関節または人工骨頭の挿入置換の可能性がある場合であっても,症状固定時点の症状を認定することとなる) |
10級11号 | 一下肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの | (ア)患側の関節可動域が,健側の2分の1以下に制限されたもの(イ)人工関節または人工骨頭を挿入置換したもので,その可動域が健側の2分の1以下には制限されていないもの |
12級7号 | 一下肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの | (ア)患側の関節可動域が健側の4分の3以下に制限されたもの(イ)股関節の複数の主要運動のうち,いずれかの運動の可動域が2分の1または4分の3に制限されているもの(ウ)参考運動は,主要運動の可動域が2分の1または4分の3をわずかに上回るもの |
②神経障害
等級 | 後遺障害 | 認定基準 |
12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの | 障害の存在が医学的ないしは他覚的に証明できるもの |
14級9号 | 局部に神経症状を残すもの | 障害の存在が医学的に説明可能なもの |
⑵慰謝料
①入通院慰謝料
交通事故で身体が傷害されることによって,肉体的外傷以外に,精神的・心理的な毀損を生じたことに対して支払われる慰謝料です。
自賠責基準では,対象日数1日あたり4300円が支払われます。
弁護士基準では,入通院期間を基礎として入通院慰謝料を算定します。
なお,入通院慰謝料について詳しくは当事務所の次のコラムでご紹介しているのでご覧ください。
②後遺障害慰謝料
後遺障害とは、交通事故の怪我が治ったときに、身体に残った毀損状態のことで、傷害と後遺障害との間に相当因果関係が認められ、かつ、その存在が医学的に認められる症状をいいます。
後遺障害が残ったことで今後被る精神的苦痛に対して支払われるのが,後遺障害慰謝料です。
(ア)機能障害
等級 | 後遺障害 | 自賠責基準 | 弁護士基準(裁判所基準) |
8級7号 | 一下肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの | 331万円 | 830万円 |
10級11号 | 一下肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの | 190万円 | 550万円 |
12級7号 | 一下肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの | 94万円 | 290万円 |
(イ)神経障害
等級 | 後遺障害 | 自賠責基準 | 弁護士基準(裁判所基準) |
12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの | 94万円 | 290万円 |
14級9号 | 局部に神経症状を残すもの | 32万円 | 110万円 |
5 後遺障害等級認定申請の手続きとポイント
⑴後遺障害等級認定申請の手続き
申請手続きには,被害者申請と事前認定(加害者申請)の2種類があります。
①症状固定と診断される
「症状固定」とは,症状は存続しているが,治療を継続しても改善が望めないもののことです。
専門家である医師が,症状固定の時期を判断します。
②医師に後遺障害診断書を作成してもらう
後遺障害診断書は医師だけが作成できます。
③それ以外の必要書類を用意する
被害者申請では,被害者が書類を集めます。
一方で事前認定では,加害者側の保険会社が書類を集めます。
④保険会社に書類を提出する
保険会社に書類を提出し,後遺障害申請を行います。
⑤損害保険料算出機構が調査を行う
保険会社を通して損害保険料算出機構に書類が提出され,調査が行われます。
⑥保険会社を通じて結果が通知される
調査結果をもとに保険会社が等級認定を行い,被害者に結果が通知されます。
⑵後遺障害等級認定のポイント
①症状固定の時期を延長する
加害者側の保険会社は,支払う治療費を少なくするために「症状固定なので治療費の支払いを打ち切ります」と言ってくることがあります。
症状固定を判断するのは医師なので,医師から症状固定と言われていないことを伝えましょう。
仮に治療費の支払いを打ち切られても治療を続け,示談交渉の際に立替えた治療費を請求しましょう。
②後遺障害診断書を上手く依頼する
後遺障害の審査では後遺障害診断書が重視されるので,医師に要望を伝えたいと考えがちです。
しかし,後遺障害診断書の書き方を色々と指図されると医師も気を悪くすることがあります。
そのため,医師に要望を伝えたいのであれば,注意しなければいけません。
③被害者申請を選ぶ
被害者申請では,被害者が書類を用意するため,後遺障害等級認定を受けるための対策をとりやすいです。
また,被害者申請では後遺障害等級認定を受けると保険金を受け取ることができます。
6 半月板損傷の後遺障害等級認定に弁護士のサポートが必要な4つの理由
(1)治療期間を延長できる
加害者側の保険会社から治療費打ち切りを提案されてから,治療期間を延長するためには,返答の仕方にコツが要ります。
また,仮に治療費打ち切りがされてしまって治療費を立て替えたとしても,その分を請求するには,示談交渉で治療継続の必要性を訴えて保険会社を納得させないといけません。
弁護士に依頼すれば,保険会社とのやり取りや示談交渉を代行してくれます。
弁護士は治療期間を延長できる答え方,立替治療費を示談金に含める交渉術を把握しているので,弁護士のサポートが必須です。
(2)後遺障害診断書の依頼の仕方が分かる
弁護士に依頼していれば,後遺障害申請経験が豊富なので,医師の気を損ねない上手なお願いの仕方を教えてもらえます。
(3)後遺障害申請を代行してもらえる
弁護士に依頼すれば,被害者申請であっても,被害者ご自身が必要書類を集めずに済みます。
被害者の手間が省けるので,弁護士のサポートが必要です。
(4)示談交渉も代行してもらえる
慎重になる示談交渉を代行してもらえると,被害者の方のストレスは減ります。
また,弁護士基準で慰謝料を算定できて,示談金も増えるかもしれません。
十分な慰謝料をもらうためにも,弁護士のサポートは必要不可欠です。
7 まとめ
半月板損傷を発症して,後遺障害が残っても,後遺障害等級認定を受けるには多くのポイントを押さえなければいけません。
また,治療を始めてから示談金を支払ってもらうまで,弁護士のサポートがなければ被害者の方は非常に大変でしょう。
十分な示談金を受け取るためにも,弁護士のサポートを受けることをお勧めします。交通事故で半月板損傷を発症した方は,交通事故案件を多く取り扱う,大阪(なんば・梅田)・堺・岸和田・神戸の弁護士法人法律事務所ロイヤーズ・ハイへ一度ご相談ください。