交通事故に遭い、被害者と加害者の当事者間で示談が成立、その後何事もなく、お互いが日常生活に戻れると思う方が大半だと思うでしょう。
本来であれば、今後それ以上の請求はしないと、当事者間で合意し示談は成立しているものです。
しかし、実際は残念なことに示談成立後もトラブルがあります。
ここでは示談後のトラブルについて、どうすべきかどうか等をご説明いたします。
目次
1 交通事故の示談成立後の嫌がらせとは?
交通事故の示談後にトラブルに巻き込まれてしまうことはあります。
ではどのようなトラブルなのでしょうか?
多いとされているのは、当事者間での【嫌がらせ】です。
これについては、加害者が被害者に嫌がらせを行う、というケースよりも、被害者が加害者に嫌がらせを行うケースの方が少なくないです。
なぜこういったことが起きてしまうのでしょうか?
多くの交通事故は、加害者本人ではなく、加害者の加入している保険会社が窓口となります。
その結果、被害者と加害者が、示談成立まで一度も話さないということは珍しくありません。
そうなると、被害者としては、なぜ加害者からの謝罪がないのかと、怒りの感情も芽生えることもあります。
また、保険会社の対応が不誠実であることや、保険会社の「できる限り支払うお金は少なくしたい」という考えから、低い金額で提示し、交通事故はこういうものです、として、被害者が納得いかないまま示談していることもあります。
では、そういった時にどんな嫌がらせがあるのでしょうか。
⑴電話、メールなどで不快な思い
基本的に、交通事故の後、当事者間で連絡先を交換することが多いため、相手の電話番号やメールアドレスを知っていることが多いです。
また、交通事故証明書には、お互いの電話番号が掲載されている場合がほとんどです。
その結果、示談が成立してから、相手に無言電話をかけたり、一方的に罵倒をしたり、そういったことが行われることもあります。
⑵SNSを探られて誹謗中傷を書かれる
SNSはたとえ本人が、匿名で行っていても、普段の投稿内容や投稿写真で本人を特定してくる人はいます。
Facebookなどの場合は本名でされている人も多いので、さらに特定は簡単に行えてしまいます。
その結果、相手に匿名で、誹謗中傷を書かれる場合があります。
⑶つきまとう
示談成立後に、相手につきまとう行為ですが、これはよくご不安な声で聞きます。
交通事故証明書にはお互いの住所が掲載されますし、裁判の場合も、訴状にお互いの住所が載りますので、自宅に待ち伏せされてしまう可能性はあります。
特に、子供がいらっしゃる方は、「子供に何かあったらどうしよう。」と怯えていらっしゃる方も実際いらっしゃいます。
⑷脅迫行為
示談の内容に納得がいかなかったので、被害者から加害者本人へ足りない分を払え(加害者の場合は、被害者へ返せという)といった脅迫です。
この脅迫行為ですが、自宅の車を傷つけられたり、書面が毎日送られてきたり、1日に何通も届いたりと、エスカレートする傾向があります。
また、本当は訴える気がないのに、訴えると相手を脅すことも脅迫行為に入ります。
⑸不当請求する
交通事故における不当請求は、示談を交わした内容にさらに加えて金銭等を請求することです。
例えば、示談後に、被害者が病院に行き、治療費が発生した場合、原則としては示談が成立しているので、加害者は被害者へ治療費を払う必要はありません。
しかし、被害者から「この怪我は事故のせいだから、あなたは治療費を払うべきだ。」として治療費を請求されることもあります。
これでは示談の意味がありません。
この行為がエスカレートしていくと、恐喝になる可能性があります。
⑹撤回の要求
示談の撤回を要求することです。
示談交渉は、被害者と加害者の保険会社で話をしているので、加害者としては納得いかないことも出てきます。
また、加害者は保険を使用しているので、その分保険料が上がったり、等級が下がったりします。
結果、被害者へ示談の内容を撤回するよう要求することがあります。
一方で、被害者も保険会社の高圧的な態度等で、不満が残ったまま示談をすることがあります。
そうなった時に、示談の撤回を加害者に要求してくることがあります。
2 示談交渉後トラブル、不安はどうすればいいのでしょうか?
⑴弁護士に相談
示談成立後のトラブルや不安については、弁護士に相談をしましょう。
これは交通事故とは切り離して、動くべき状態の可能性があります。
もし警察に被害届を出すとなると、証拠は必要になりますので、電話は録音をしておき、手紙が送られて脅迫、不当請求されているのであれば、その手紙は置いておきましょう。
こういったことも、弁護士に相談することで、ケースごとに、効果的な証拠の集め方、残し方を教えてくれたり、本人が見逃していた証拠についても気付いてくれたりします。
なお、弁護士が入ることで行えることは、案件にもよりますが、嫌がらせをしてきた相手に【警告文】という趣旨の内容証明を送ります。
これ以上の嫌がらせをする場合は、警察に被害届を出して刑事事件にする、もしくは民事訴訟で損害賠償を請求する等といったものです。SNSへの誹謗中傷の書き込みは、名誉棄損の可能性がありますし、電話やメールなどでの不快な思いをした、という場合も、証拠を集めて慰謝料を請求することも考えられます。
どういったことができるのかは、ケースバイケースとなりますので、1人で抱え込む前に、まずは弁護士に相談をしましょう。
⑵解決事例について
示談後のトラブルの解決事例は多くはないのが実情です。
これは、被害を受けている側が、相手からの報復が怖くて、弁護士に相談をせずに、携帯の番号を変えたり、引っ越したりしていることが一因にあります。
また、加害者が、事故の被害者から嫌がらせの被害を受けている場合は、事故を起こしてしまったこと、怪我をさせてしまったことは事実だから、と強く出られない方もいるようです。
3 まとめ
示談成立後の嫌がらせを受けないためには、まずは示談を成立する前に、お互いが納得しているかを確認しましょう。
被害者の方が、示談金に納得できないからといって加害者に嫌がらせ行為をすることは決して許されません。
被害者は示談金に不満があるのであれば、その時点で弁護士に相談をしましょう。
また、加害者の方も、被害者から嫌がらせを受けるといったトラブルに遭わないためにも、交通事故の後はしっかりと誠意ある対応をすることを心がけましょう。
対応を1つ間違えると、加害者が被害者になることは大いにありえます。
加害者の方は、交通事故を起こして、相手に怪我をさせてしまった、物を壊してしまったとあれば、確かに罪を償わなければいけません。
しかし、だからといって、被害者に嫌がらせをされたり、脅されたりすることを許してしまってはいけません。
加害者の方も、ご紹介した嫌がらせを含め、示談後の被害者関係のトラブルは弁護士に相談するようにしましょう。
このコラムの監修者
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太田 泰規(大阪弁護士会所属) 弁護士ドットコム登録
大阪の貝塚市出身。法律事務所ロイヤーズ・ハイのパートナー弁護士を務め、主に大阪エリア、堺、岸和田といった大阪の南エリアの弁護活動に注力。 過去、損害保険会社側の弁護士として数多くの交通事件に対応してきた経験から、保険会社との交渉に精通。 豊富な経験と実績で、数々の交通事故案件を解決に導く。