交通事故後、被害者は、加害者が任意保険に加入している場合は、相手の保険会社を窓口に示談を進めていきます。
さて、示談交渉で最も多いトラブルと言っても過言ではないのが「相手保険会社の対応」です。なぜトラブルが多いのでしょうか?
ここでは、被害者が加害者の保険会社にどのように対応していけばいいのかを中心にご案内をいたします。
目次
交通事故の示談交渉における保険会社の対応とは?
被害者は交通事故後、示談の成立まで保険会社を窓口に治療を続け、治療が終了ないしは、後遺障害の等級の結果が出次第、示談交渉に入ります。
示談交渉中に被害者と保険会社の関係性が悪化するケースもありますが、弁護士に相談があるケースでは、示談交渉開始時にはすでに被害者が保険会社に対し、不信感や不満が溜まっており、敵視をしているという状態が多いです。
これには、保険会社の対応が影響しています。
保険会社は営利企業である
保険会社はあくまで営利企業です。つまり、基本的には自分たちの会社が得をすること、損をしないことを前提に行動をします。
よって、治療の段階から被害者に精神的な圧力をかけます。たとえば、被害者がまだ体の痛みがあるにも関わらず、治療費の打ち切りを一方的に伝え、無理に示談を進めてくることがあります。また、被害者に対して高圧的な態度で、専門用語や法律用語を乱立します。これは被害者がわからないことを利用し、被害者を感情的にならせることが目的です。結果、被害者は保険会社と話したくないという感情になり、早く終わらせたいという感情から治療を早く終わらせてしまったり、示談も低い金額で示談をしてしまったりすることがあります。
相手の代理人である
一方で、保険会社の担当者によっては、被害者に寄り添うような対応を見せることもあります。もちろん本心から行っている担当もいると信じたいところではありますが、それは好印象をつけて、早く治療を終わらせることを目的としているケースも考えられます。
忘れてはいけないのは、保険会社は【被害者の味方ではなく、加害者の代理人】ということです。よって、基本的には被害者に有利な話で進めてくることありません。
示談金を低く見積もる可能性がある
先ほど述べたように、保険会社は営利目的の企業です。できる限り会社が支払う金額を押さえていきたいという考えがあります。
示談交渉が始まると保険会社から、「この金額で示談はいかがですか?」と示談案というものが届きます。そこには、被害者の受けた損害について、計算式と実際に支払う金額の記載があります。
この金額を保険会社は非常に低い金額で提案してくる可能性が高いです。以下が要注意するポイントです。
・休業損害
事故に遭わなければ、被害者が得るはずだった収入の減額分を休業損害といいます。これを保険会社は「休業の必要性はなかった」として大幅に減額してくることがあります。
また、専業主婦、兼業主婦(主夫も含みます)の家事従事者の場合、本来であれば、休業損害が認定される可能性が高いのですが、保険会社は、実収入がないとして0円を提案してくることがあります。
・過失割合
過失割合とは、事故の当事者にどれだけ事故の責任があったかを示すものとなります。被害者にも過失がある場合は、損害賠償金から被害者の過失分は差し引かれることとなります。つまり、被害者の過失が大きければ大きいほど、保険会社は支払う金額が少なくなりますので、不当な過失割合を被害者に主張するケースがあります。被害者に法律の知識がなければ、保険会社の条件を受け入れることになってしまいます。
・慰謝料
慰謝料には3つの算定基準があります。自賠責保険基準、任意保険基準、裁判所基準(弁護士基準)といい、自賠責保険基準がこの3つの中では一番低いとされています。
相手の保険会社はこの自賠責保険基準か、任意保険基準をベースに慰謝料を計算し、被害者に提案をします。任意保険基準は各保険会社が独自に計算方法を定めているため、具体的な計算方法は開示されていませんが、自賠責保険基準と同等、ないしは少し高くはあるものの、一番高い裁判所基準よりはるかに低い金額であることがほとんどです。
示談交渉での保険会社との交渉の仕方を知りたい。
被害者が保険会社と対等に交渉するにはどうすればいいのでしょうか?
保険会社の都合に合わせない
まず、冷静に対応することが第一です。保険会社の多雨王に合わせると、被害者が不快な感情となり、結果口論となり関係性が悪化します。関係性が悪化してもいいことは何一つありません。
次に、交通事故の最低限の知識を得て、相手の都合に合わせないことが大事です。先ほども述べたように、相手は被害者が素人で知識がないことをいいことに、「交通事故とはこういうものだ!」として保険会社の都合を押し付けてきます。
正しい最低限の知識をつけて、保険会社の主張が正当なのか不当なのかを見極めてみるのも1つの手段です。
また、可能であれば、保険会社とのやり取りを記録に残しましょう。これにより、保険会社の主張を後になって冷静に確認することができます。「今返事をしてください!」と強要する保険会社も稀にありますが、これも保険会社の都合です。
示談交渉で大事なのは、保険会社の都合、つまりペースに合わせてはいけないということです。
後遺障害等級の認定前に交渉しない
被害者の怪我が、残念ながら完治せず、後遺障害が残るケースがあります。この場合、後遺障害等級認定というものがあり、もし等級が認定された場合、被害者は別途慰謝料等、損害賠償額を受け取れる可能性があります。
後遺障害の等級の認定前に交渉をし、示談を成立させてしまった場合、その後発覚した損害賠償を請求できなくなりますので、必ず認定前に交渉しないようにしください。
相手の保険会社から示談交渉を急かされるケースもありますが、被害者は応じる必要は全くありません。きっちりと認定結果が出てから、交渉を始めるようにしましょう。
交通事故における示談交渉の注意点は?
賠償金の基準を理解する
被害者が注意する点は、「賠償金の基準」です。
先ほど述べた自賠責保険基準、任意保険基準、裁判所基準はもちろんのこと、「どういったものが請求できるのか」を知ることが非常に重要です。
知らなければ、不当な条件を突きつけられてしまうことがあります。
例えば、後遺障害が認定された場合、任意保険会社は「後遺障害の慰謝料のみ」を提示してくることがあります。しかし、実際は後遺障害の慰謝料の他に「逸失利益」というものが請求可能です。
逸失利益とは、後遺障害が身体に残ってしまったことにより、労働能力が低下ないしは失われ、本来被害者が得るはずだった利益をいいます。本来であれば、認定された等級に応じて、労働能力の喪失率が定められており、算出をされます。これも知らなければ、被害者にとっては非常に大きな損失となります。
なお、この逸失利益について、むちうちなど症状が軽い場合や、骨折により骨が変形した、また醜状障害の場合、保険会社は「労働能力は失われていないので、逸失利益は支払いません」と主張してくることがあります。
損害賠償請求の時効
示談交渉の内容に納得ができない場合は、無理に示談をする必要はありません。しかし、注意点があります。それは「時効」です。
交通事故の損害賠償請求権にも時効があります。時効が成立してしまった場合、被害者は加害者に一切の損害賠償金を請求することができません。被害者は保険会社との示談交渉が上手くいかない、また保険会社と話したくないという理由から、長年放置をしてしまうことも少なくありません。
交通事故の時効は以下となります。
①被害者が交通事故により加害者及び損害を知った時から【物的損害は3年】、【人身損害は5年】
②交通事故発生日より20年
②はひき逃げなど、加害者がわからない場合に使用されますので、すでに示談交渉が始まっている場合は①が適用されると考えてください。
ただ、「加害者が債務を承認した=支払い義務を認めた」日に時効が更新されます。つまり、時効の起算日は保険会社が支払いを続ける限りは更新されます。
被害者は下記の日から時効を計算し、示談交渉を注意して進めなければなりません。
・加害者が被害者の損害賠償とされる一部を支払ったときより5年(物損の場合は3年)
・保険会社から金額の提示や支払い条件の提案などの通知があったときより5年(物損の場合は3年)
・損害賠償のことについて保険会社(ないしは加害者)と話をしたときより5年(物損の場合は3年)
時効が迫っている段階であれば、時効を中断する方法もありますが、被害者本人では少々負担が大きいため、弁護士に相談をしてみましょう。
保険会社の対応についての相談は、大阪(なんば・梅田)・堺・岸和田・神戸の弁護士法人法律事務所ロイヤーズ・ハイへ!
被害者と加害者の保険会社の間に、終始問題がなく進むことは実は稀なケースです。トラブルになる前に、もしくはトラブルになった時には弁護士に相談をしてみるのは1つの解決方法です。
弁護士に依頼をすると、弁護士は裁判所基準を使用し、一番高い算定基準で慰謝料を請求します。結果損害賠償金の増額の可能性は非常に上がります。また、保険会社との対応も弁護士がすべて窓口になるため、被害者の精神的負担は大きく軽減されます。弁護士は冷静に相手の提案が正当であるのか否かを判断し、被害者が受け取れる金額が正当なものとなるように示談交渉をします。
保険会社の対応が苦痛であったり、示談交渉が上手くいかず悩まれていたりする方は、交通事故を多く取り扱う大阪(なんば・梅田)・堺・岸和田・神戸の弁護士法人法律事務所ロイヤーズ・ハイにご相談ください。