交通事故の示談交渉を始めるにあたり、事前に把握しておくべきこと、注意すべきことがいくつかあります。
それらを被害者の方が知らなかった、誤ってしまった場合、大きな損失になる可能性があります。
ここでは、示談交渉について知りたいという方のために、示談交渉の内容について、ご説明をさせていただきます。
目次
1 交通事故における示談とは?
そもそも交通事故における【示談】とはどういう意味でしょうか?
示談とは、一般的には裁判手続き外で、民事上の争いごとを当事者間の話し合いで解決するということをいいます。
交通事故の場合は、被害者には損害、たとえば物が壊れたのであれば、修理費用や買い替えの費用等、怪我をしたのであれば、治療費や慰謝料等が発生します。
その損害を、加害者に請求する手続きを示談といいます。
示談交渉は、この被害者の損害賠償についていくら支払うのか等具体的な金額や方法を話し合い、双方の合意によって示談を成立させるまでのことをいいます。
2 示談交渉の流れ
⑴示談交渉前にやっておくべきこと
示談交渉は、多くの場合が下記の流れで進みます。
①交通事故発生、事故直後の対応 ②治療 ③完治または症状固定 ④後遺障害の等級認定 ⑤示談交渉 ⑥示談成立 |
示談交渉前にやっておくべきことは、①の事故直後の対応が重要となります。
- ・警察に通報する
- ・事故状況をできる限り詳細に残しておく(写真など)
- ・当事者間同士で話し合い、その場で示談しない
- ・加害者の身元・連絡先・保険会社などを確認する
- ・怪我をした場合は、事故から1週間以内に病院へ行く
- ・警察に診断書を提出し、人身事故扱いにしてもらう
交通事故が起きた場合、警察への連絡は義務となります。もし警察に通報をしなかった場合は、罰則があるだけでなく、交通事故証明書を作成するための手続きがなされないため、後々保険を使おうと思っても使えない可能性が高くなります。
事故状を記録に残しておく理由は、示談交渉時に過失割合で争いになった時に、不利にならないように、自身の主張を根拠づけるためです。もし、ドライブレコーダーもない、写真もない、双方の意見が行き違った場合、話し合いでは解決できず、裁判になる可能性もあります。
示談関係で特に気を付けなければいけないことが、当事者同士で、その場で示談をしないことです。示談は、口約束でも成立すると考えられます。
その場で示談に応じてしまうと、被害者の場合は妥当な金額をその後加害者に主張できなくなりますし、加害者の場合は保険が使えず、自己負担にて賠償金を支払わなければいけない可能性があります。
加害者の氏名、連絡先、保険会社の情報は事故現場で確認するようにしましょう。
加害者が任意保険を付けている場合は、保険会社より被害者の元へ連絡が入ります。この連絡してきた担当が、今後の示談交渉の相手となります。
加害者が任意保険に加入していない場合は、加害者が示談交渉の相手となります。なお、加害者自身が交渉相手の場合、その場では対応すると言いつつ、後日対応をしてくれなかったり、逃げたりする可能性があります。
そういったことを避けるため、できる限り加害者の情報は得ておきましょう。加害者が渋るようでしたら、車両登録番号(ナンバープレート)を控えておきましょう。
怪我をした場合は、すぐに病院へ行くようにしてください。
当日痛みがなかったとしても、何もないことを確認するために診察を受けることをおすすめします。
また、交通事故の怪我は、翌日以降痛むケースは少なくありません。その場合も必ず病院へ行きましょう。
もし、交通事故から日数が経過して病院へ行った場合、交通事故との因果関係を争われ、「事故と怪我は関係ない」と判断された場合、治療費だけでなく、慰謝料等も払ってもらえない可能性があります。
診断書を警察に提出し、人身事故扱いにする理由としては、事故態様を詳しく示す「実況見分調書」が、物損事故扱いのままだと作成がされないからです。
この実況見分調書は、過失割合の重要な証拠となります。
このように事故後の対応を一つでも行っていないだけで、被害者にとっては大きな損失に繋がる可能性があります。
すべての行動が後の示談交渉に影響すると考えた方が良いでしょう。
⑵後遺障害等級認定
怪我が完治している場合は、そのまま示談交渉へと移りますが、残念ながら完治せず、後遺障害が身体に残ってしまった場合、被害者は後遺障害等級認定を受けることができます。
後遺障害の等級認定を受けるためには、主治医に後遺障害診断書を作成してもらい、相手の自賠責保険会社へ必要書類と共に提出をします。
なお、相手の任意保険会社が手続きを行うことを事前認定、被害者が自ら手続きを行うこと被害者請求といいます。
後遺障害の等級が認定された場合は、別途後遺障害の慰謝料、並びに逸失利益(被害者に後遺障害が残ったことにより、労働能力が喪失され、本来であれば得られたはずの収入の減少分)を請求ができます。
また、もし等級結果に不服がある場合は、異議申立という方法があります。これを行う場合は、一度決定された結果を覆すことになりますので、準備にはかなりの時間と、立証するための新たな証拠などを用意する手間と費用がかかります。
いずれにせよ、専門性の高い分野になりますので、交通事故の経験が豊富な弁護士に相談することをおすすめします。
後遺障害に申請をしないまま、示談交渉に入ることはおすすめできません。
中には保険会社に急かされて、示談交渉を早くしなければいけないと思ってしまう方もいたり、精神的な負担が大きいから早く終わらせたいと考えて交渉を始めようとしたりする方もいますが、得策ではありません。
後遺障害を含み、すべての損害が確定してから示談交渉にのぞむようにしましょう。
3 示談金と損害賠償金
⑴示談金とは
示談金とは、交通事故において被害者が受けた損害を金額で算出し、被害者、加害者が話し合いによって双方合意し、解決する際に支払われるお金のことをいいます。
示談金は、この金額が上限額であるといった規定はありません。よって被害者、加害者の双方が納得をしていれば、どのような金額でも問題はありません。
⑵計算基準
交通事故の示談金の項目の1つである慰謝料などには、3つの基準があります。この3つの基準のどの基準を用いるかで、慰謝料は大きく変動します。
以下3つの基準の内容についてご説明をいたします。
①自賠責基準
3つの基準の中で最も低い基準が、自賠責基準です。
被害者救済目的の強制保険である自動車責任賠償保険、通称自賠責保険の基準となるため、最低限のものとなります。よって十分な補償とはいえない基準となります。
②任意保険基準
各保険会社が、過去の事例や経験を元に用いる基準が任意保険基準です。計算方法が明らかになっていませんが、自賠責保険と同等ないしは少し高くなるといわれています。
③弁護士基準
3つの基準の中で最も高い基準が、過去の裁判例を元に算出された、弁護士基準(裁判所基準ともいいます)となります。
「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準(通称赤い本)」を参考に、弁護士に依頼した場合、この基準で示談交渉は行われます。
なお、被害者自身でもこの基準を用いて損害賠償額の計算は可能ですが、保険会社は弁護士が入らない限りはこの基準での交渉は応じないことが多いです。
基本的に、保険会社から提示される損害賠償額は、自賠責基準か任意保険基準で計算され、低額であることがほとんどです。
提示された損害賠償額を低いと感じたら、示談をすることは一度保留にしましょう。
保険会社から「これが妥当な金額です」と言われても、そこで納得しないまま示談をすることはおすすめできません。
損害賠償金額が低いのではないか?と感じたら、その感覚を信じて弁護士に相談してみましょう。
裁判所基準で計算することにより大幅に増額する可能性があります。
4 示談交渉の注意点
⑴示談交渉の時効
示談交渉が長引いた場合、気にしなければならないのは、「時効」です。
交通事故の損害賠償金の請求にも時効が存在します。この時効が成立すると被害者は加害者に対して損害賠償金を一切請求できなくなります。
被害者の方の中には、示談交渉が上手くいかず、放置をしてしまったり、何度も異議申立をすることで時間がかかってしまったりして、時効が成立してしまう方もいます。
そうならない為にも、被害者の方は時効について知っておかなければなりません。
では、交通事故の時効はいつが起算点となり、いつ失効してしまうのでしょうか?
交通事故の時効は下記のどちらかです。
①被害者が交通事故により加害者及び損害を知った時から【物的損害は3年】、【人身損害は5年】 ②交通事故発生日より20年 |
ひき逃げなどにより加害者が特定できないといった特別な事情がある場合は②となりますが、それを除いては、基本的には①の時効が適用されます
上記の①を基準にすると、事故発生日に被害者は加害者を知ることになるので、基本的には事故発生日が起点となります。
なお、初日は不算入という概念が民法にはありますので、翌日からが起点となります。
簡単にまとめると以下になります。
物損事故 | 事故発生翌日から3年 |
人身事故(後遺障害がない場合) | 事故発生翌日から5年 |
人身事故(後遺障害がある場合) | 症状固定日の翌日から5年 |
死亡事故 | 死亡した翌日から5年 |
加害者不明事故 | 事故発生翌日から20年 |
さて、上記の基準だと、怪我の内容によっては、示談交渉を開始した段階ですでに時効が迫っている場合もあり得ます。
そうなると、被害者は焦って示談を行ってしまうかもしれません。
ここで被害者の方に覚えておいてほしいことは、時効は「加害者が債務を承認した=支払い義務を認めた」日に更新されます。
つまり、加害者ないしは保険会社からの支払いがあれば、時効の起算日が更新され、新たな時効期間が開始されます。
よって、実務上では以下のいずれかのうち一番最後となる日から5年(または3年)が経ってしまうと時効が成立し、被害者は損害賠償請求権を失います。
- ・加害者ないしは保険会社が被害者の損害賠償とされる一部を支払ったとき
- ・加害者ないしは保険会社から金額の提示や支払い条件の提案などの通知があったとき
- ・損害賠償のことについて、加害者ないしは保険会社と話をしたとき
長年示談交渉を放置している被害者の方は、まず最後に相手と損害賠償について話した時を確認することが大切です。
なお、時効については、中断という手続きができますが、被害者本人が行うのはなかなか難しいです。時効については弁護士に相談するようにしましょう。
⑵示談後には撤回できない
示談交渉をするうえで、大前提として被害者が気を付けなければならないのは「示談後は示談内容について撤回できない」という点です。
損害賠償額について提案書が届いたら、まずは内容を細かく確認しましょう。
本来あるべき項目が漏れていたり、計算が誤っていたりする可能性があります。
確認をせず、金額だけをみて示談に応じてしまうと、その後気づいたとしても、新たに請求はできません。
また示談が成立し、示談書が手元に届いたら、示談した内容と相違がないかを確認しましょう。
保険会社が作成したものだからと安心して内容を確認せずにサインする方もいますが、それは非常に危険です。
5 示談書の内容と書き方
被害者と加害者の間で双方が示談内容に合意すると、示談書を作成します。
相手が保険会社の場合は保険会社の書式で作成されます。また、示談書ではなく「免責証書」と呼ばれるものであることが多いです。
示談書は被害者と加害者双方の署名、捺印が必要ですが、免責証書は基本的に被害者のみの署名、捺印となります。効力は示談書と同じで、手続きを簡略化したものとお考え下さい。
示談書は、決まった書式の指定がありません。
示談金の明確な金額、場合によっては計算式などが記載されます。必要な項目が記載され、一般的には双方の署名と捺印があれば、示談書として成り立ちます。
もし、被害者と加害者間で示談書を取り交わす場合は下記の項目を入れるようにしましょう。
・甲・乙(加害者、被害者)の氏名、住所、捺印 ・本件の詳細な内容(交通事故の場合は、いつのどこで発生したか、互いの氏名・車両番号等) ・合意した日付(後から署名した人が書くことが一般的です) ・示談内容(示談条件、過失割合、示談の金額、計算根拠) ・支払いが遅れた場合の取り決め ・振込口座(支払い期限日も記載されることが多いです) ・清算条項 ・後遺障害が発生した場合の留保事項 |
清算条項とは、示談書の取り決めた示談内容以外で、当事者間で金銭等を互いに一切請求しないことを決めた条項となります。清算条項を入れることで、示談後のトラブルを回避します。
また、人身事故の場合は、後遺障害についての記載は必ずするようにしましょう。
先ほど述べたように、相手が保険会社であれば、後遺障害関係の損害を含み示談交渉を進め、示談書にも解決済みであることを記載されることとなります。
しかし、当事者間の場合は、早期に示談をしたいという加害者側の希望から、治療を終える前や、後遺障害について触れずに示談を進めるケースもあります。
こういった場合は、被害者が治療をしたにも関わらず、示談後、後遺障害が出てくるといった、万が一のことを考えて、【今後、本件事故が原因で後遺障害が発生した場合は別途補償する。】という文言を入れておくと安心です。
6 交通事故の示談については、大阪(なんば・梅田)・堺・岸和田・神戸の弁護士法人法律事務所ロイヤーズ・ハイにご相談ください。
被害者の方は示談をする前に、本当にこの示談内容で承諾していいのか?を必ず確認することをおすすめします。
妥当な金額かどうかわからない、相手の保険会社の言っていることが正しいかどうかわからない、そういった時は、弁護士に相談することお勧めします。
弁護士が介入することで、適正な賠償金額での示談交渉を被害者に代わって行ってくれます。被害者の方は精神的ストレスから解放されるだけでなく、損害賠償金が増額する可能性が上がります。
署名、捺印をする前であれば間に合います。
このまま示談をしてもいいのかと悩まれている方は、交通事故を多く取り扱う大阪(なんば・梅田)・堺・岸和田・神戸の弁護士法人法律事務所ロイヤーズ・ハイにご相談ください。しっかりと示談交渉のお手伝いをさせていただきます。