交通事故問題を解決するにあたり、被害者は加害者に損害賠償を請求し、その賠償額について、当事者間で協議します。
これを示談交渉と言いますが、この示談交渉には、事故の内容や怪我の程度によっては異なりますが、ある程度の時間がかかります。
双方が示談の内容について合意した時に、示談が成立となります。
さて、この示談が成立するまでには一体どのくらいの日数がかかるのでしょうか?
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目次
1 交通事故の示談を始めるまでにかかる日数
示談を始めるまでにかかる日数は、事故の内容によっても異なりますが、共通していえることは【すべての損害が確定した時】となります。
⑴物損事故の場合
双方に怪我がなく、物の損害だけの事故の場合、示談を始めるまでには、交通事故発生からおおよそ1ヶ月はかかることが一般的です。
示談交渉を開始するためには、まずは双方の物的損害の内容を確定しなければなりません。
自動車の場合は、当事者が自動車を修理工場へ預け、修理費用にいくらかかるかを算定します。
修理工場の提示した金額と相手の保険会社が協議をし、修理額が確定し、実際の修理作業に移ります。これを協定といいます。
この協定を行う意味ですが、事故以前についている傷や凹みなどについては、事故と無関係のため、相手保険は支払う必要はなく、損害として認められません。つまり、事故以前の状態に戻すにあたって、適正な修理内容かどうかを保険会社は確認する必要があるのです。
例えば、被害者が加害者側に相談もせずに修理をした場合、それは本当に必要な修理だったのか、適切な内容だったのか、という疑問が加害者側に生じます。
そうすると、示談交渉が開始をしても、加害者側はその修理額に納得せず、場合によっては、訴訟となることもありえます。そして、判決にて修理額が適正なものではないと判断された場合は、被害者に負担がかかることとなります。
そういったことを避けるために行われる行程が、協定となります。修理工場と保険会社が協議、調整をして、必要かつ適切と認められた修理の範囲を確定し、それにかかる費用についても双方が合意して、「協定を結ぶ」となります。
協定を結び、修理が完了するまでおおよそ1ヶ月ほどかかります。
その間にそれ以外に破損したもの、たとえば車内の積載物などの損害を確定し、見積もりを取っていきます。
修理額が確定し修理が完了、レッカー費用やレンタカー費用なども確定をした段階で、示談交渉の開始となります。
なお、当事者の事情により、すぐに修理に出すことができない場合は、協定した見積もりの内容で、修理前に示談交渉を始める場合もあります。
⑵人身事故の場合
怪我を負ってしまった場合の事故では、示談交渉の開始のタイミングは、怪我が「完治(治癒)」、もしくは「症状固定(これ以上治療を継続したとしても良くも悪くもならず、痛みが身体に残存する状態)」となった時に始めるのが最適です。
何故かというと、完治や症状固定と判断された場合、それ以降の損害賠償金については、保険会社は支払いをしませんので、損害が確定となるからです。 示談交渉を開始できる時期は、完治、症状固定から約1か月後が目安となります。約1か月かかる理由は、病院と保険会社の間での治療費の支払いの都合です。
たとえば、8月末で怪我が完治、症状固定をした場合、病院から保険会社へ8月分の治療費を請求されるのは、書面作成の都合もあり、翌月の9月中旬~下旬頃が目安です。 保険会社はその内容が妥当な請求であるのかを確認し、問題なければ支払いをします。支払いが済むと、損害が確定となりますので、示談交渉が開始となります。 被害者が死亡した場合の事故においては、被害者が死亡してから少し期間を空けてから示談交渉が開始となる場合が多いです。 本来であれば、被害者が亡くなった時点で、通院は無くなりますので、損害は比較的に早い段階で確定します。
しかし、被害者遺族の心情を考慮して、通常はすぐには行うことはいたしません。もしも、すぐに行ってしまった場合、被害者遺族は「なんて非常識だ!」となり、示談交渉が難航する可能性が高くなってしまいます。 目安としては、四十九日の費用が葬儀関係費用で請求できる場合がありますので、四十九日後が済んでから1~2か月後に開始することが多いです。
2 交通事故の示談が成立するまでにかかる日数
示談交渉が開始して、成立するまでにはどのくらいの日数がかかるのでしょうか?
⑴物損事故の場合
物損事故の場合は、比較的に長引かないことが多いです。
修理も先ほど述べたように協定を結んでから行うため、金額で揉めることは少なく、大きな争いにはなりづらいです。
しかし、事故歴や修理歴があることで事故車扱いとなり、車両価値が下がってしまったことによる損害、いわゆる評価損(査定落ち、格落ち損害とも言います)について争う時は、時間はかかり、裁判になるケースもあります。
特に争いがない場合においては、示談交渉開始から示談成立までは、1ヶ月は見てもらうとよいでしょう。
⑵人身事故の場合
人身事故は、物損事故よりも示談開始から成立までの期間は、長引くケースが多いです。
人身事故の損害賠償金は、物損事故に比べると非常に高額です。
そういった事情から、保険会社はできる限り支払う金額が少なくなるよう、算定基準の中でも一番低い基準である自賠責保険基準か、もしくは各保険会社で独自に計算基準を定めている任意保険基準で計算をします。
よって、示談提示額が低くなりますので、結果被害者は不信感を募らせ、示談交渉が難航することもあります。
特に争点がない場合においては、1~2か月ほどの期間で示談交渉開始から成立までは収まりますが、慰謝料や休業損害について争われる場合は、3ヶ月以上かかる可能性は大いにありえます。
死亡事故の場合、被害者ではなく、遺族の相続人が示談交渉にあたるため、長引きます。相続人が複数人いる場合は、全員の同意がない限りは示談ができませんので、時間がかかるのが一般的です。
また、被害者遺族は加害者に対しての怒りや許せないという感情があることにより、示談交渉が進まないケースが多いです。
示談交渉開始のタイミングは早くても、交渉自体に時間がかかり、弁護士が介入したとしても、非常に早い場合で1~2か月程ですが、大半は半年以上かかります。
3 示談交渉に日数がかかるケース
示談交渉開始から成立までに日数がかかる主なケースをご紹介します。
⑴後遺障害がある場合
症状固定をした被害者の中には、後遺障害等級認定の申請を受ける方も多くいらっしゃいます。
この場合、損害が確定するのは【後遺障害等級の認定結果が下りた段階】となるため、すぐに示談交渉の開始はできません。
この後遺障害等級認定の申請ですが、申請から結果が下りるまで、準備期間含め2~3ヶ月かかります。
後遺障害等級の認定結果が出た段階で、すべての損害が確定となり、示談交渉の開始となるため、通常の人身事故より開始までに日数は非常に要します。
さらに、後遺障害等級認定の結果によって示談交渉にかかる日数は変わります。後遺傷害の等級には1級~14級とあり、損害賠償額が全く異なります。高い等級であればあるほど、損害賠償額は高額となるため、保険会社は支払いを渋りますし、被害者も低い金額であれば、等級に見合っていないという不満を持ち、示談は難航します。
なお、後遺障害等級の認定の結果が、もしも不服だった場合は、等級の再審査を行う、異議申立てという制度があります。
異議申立ては、一度出た結果を覆すことになるため、再検査を行うことや、新たな根拠資料集めをするなど、時間や手間を要するため、さらに示談交渉開始のタイミングは遅くなります。
⑵過失割合に争いがある場合
過失割合に争いがある場合は、人身事故、物損事故に関わらず、示談の成立までにかなりの日数を要します。
過失割合が被害者に大きければ大きいほど、加害者側の保険会社は支払う損害賠償金は少なくて済みます。
その結果、被害者本人が交渉相手の場合、保険会社は不当な過失割合を主張してくる可能性があります。
被害者は法的知識がなかったとしても、過失割合が不当であるとはわかりますので、結果長引くことになります。
特に、被害者が死亡している場合や、交通事故の衝撃で前後の記憶がない場合は、加害者側の主張で過失割合は決められ、被害者側に不利に設定されやすいです。
こういった過失割合で争う場合は、過失割合を精査するために、警察の作成する実況見分調書を取り寄せる場合、その取り寄せにも1~3ケ月程、事故の内容によってはそれ以上かかることもあります。
なお、損害賠償額の内容については、争いはなくても、過失割合についてのみ折り合いがつかないケースもあります。
⑶被害者が示談に対応しない
保険会社の中には、対応が悪く、被害者の気持ちを全く考えずに示談交渉を進める担当もいます。
被害者の中には、保険会社の対応により「絶対に示談をしたくない!」となってしまう方も多くいらっしゃいます。
そうなると示談成立までは通常以上に日数を要します。
一度不信感を抱いた相手が提示した示談内容に、被害者は素直に頷くことはできないでしょう。
4 示談交渉を弁護士におまかせしたい方は、大阪(なんば・梅田)・堺・岸和田・神戸の弁護士法人法律事務所ロイヤーズ・ハイへ
交通事故においての示談にかかる日数についてご説明をさせていただきましたが、いかがでしたでしょうか?
示談交渉は思った以上に神経を使い、日常生活を送りながら保険階差と話すことはかなりの精神的負担を強いられます。
少しでも早く示談交渉を終わらせたい、状況を好転させたいという方は、弁護士に相談してみてはいかがでしょうか?
弁護士が介入すると、示談交渉は代理人として被害者の代わりに行ってくれます。弁護士が介入することで、損害賠償金も算定基準も保険会社が使用している算定基準よりも高いものを使用しますので、損害賠償金が増額する可能性も上がります。
また、示談交渉が長引く原因である、後遺障害の損害賠償金や過失割合についても、弁護士に依頼をすれば、法的根拠をもってしっかりと交渉をしてくれます。
少しでも示談交渉に不安をお持ちの方、慰謝料増額をしたい被害者の方は、大阪(なんば・梅田)・堺・岸和田・神戸の弁護士法人法律事務所ロイヤーズ・ハイに、まずは一度ご相談くださいませ。
このコラムの監修者
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太田 泰規(大阪弁護士会所属) 弁護士ドットコム登録
大阪の貝塚市出身。法律事務所ロイヤーズ・ハイのパートナー弁護士を務め、主に大阪エリア、堺、岸和田といった大阪の南エリアの弁護活動に注力。 過去、損害保険会社側の弁護士として数多くの交通事件に対応してきた経験から、保険会社との交渉に精通。 豊富な経験と実績で、数々の交通事故案件を解決に導く。