交通事故に遭ったとき、乗っていた自動車が修理できないほどに破損することは少なくありません。
車両の損傷がひどく、廃車するしかないとなった場合、被害者の方にはどれくらいの負担がかかるのでしょうか?
ここでは廃車費用についてご説明を致します。
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目次
1 廃車に必要な費用とは?
そもそも廃車費用とはどういったものがあるのでしょうか?
まずは、必要な廃車費用の内訳と相場金額をご紹介します。
⑴レッカー費用
交通事故に遭い、車両が自走できなくなった場合、交通事故の現場から廃車を行う施設もしくは修理工場へ車両を移動させなければなりません。
その時にかかる費用をレッカー費用(牽引費)といいます。
各保険会社の特約で等級・保険料に影響なくレッカー費用を負担してもらえる場合もありますが、レッカー会社やロードサービスへ被害者の方本人で依頼をするとなると、1~3万円程度はかかります。なお、運搬する距離によって費用は変わります。
⑵廃車解体費用
事故車両が完全に修理は不可能と判断され、廃車にせざるを得ないと判断された場合、廃車の手続きを完了するために【廃車解体】を行うこととなります。この廃車の解体ですが、専門業者があり、平均費用は5千円~2万円とされています。
⑶廃車手続き費用
廃車をするうえで絶対に行わなければならないのが、【陸運局での永久抹消登録手続き】です。これを行わなければ、翌年も自動車税を支払うことになります。この手続きは、申請書類を購入する必要がありますが、費用は100円程度です。
なお、陸運局は平日の16時までしか空いていません。そのため、仕事の関係で手続きができない方は、行政書士に依頼することもあります。行政書士へ廃車手続きを依頼する場合は、平均すると6千円~2万円程度がかかります。抹消代行費用は事務所や案件によっても異なりますので、しっかり確認するようにしましょう。
最後に、忘れてはいけないのが、【リサイクル料金】です。
自動車を解体することで発生したゴミを処分するための費用です。これは、車両の所有者が平成17年より以前に新車として購入している車の場合は、解体業者等に支払う必要があります。平成17年以降については、購入時にリサイクル料金は支払っているため、廃車時に再度支払うことはありません。
リサイクル料金の相場は、軽自動車は8千円程度、普通自動車が1万円、外国産の車両であれば2万円程度です。詳しい金額はネットで料金を検索できるサービスもあるので活用をしてみましょう。
2 廃車費用は誰が負担するのか?
廃車費用は被害者の方が負担しなければならないのでしょうか?
⑴交通事故が原因なら加害者に請求できる
交通事故が原因で、車両が物理的に修理不可能である、もしくは修理額が車両の時価額より高額な場合は全損扱いとなり、廃車を余儀なくされます。
この場合の廃車費用は【加害者に請求が可能】となります。廃車費用は交通事故によって発生損害の一部として言えるからです。
基本的に交通事故は双方に過失があることが多いので、過失の割合分を相手に請求できます。例えば、被害者の方の過失が2割、加害者の過失が8割だった場合は、廃車費用の8割分を相手に支払ってもらうことになります。
⑵過失割合が0なら相手が負担
加害者側の過失が10割の場合は、被害者の方は、原状回復をするための金額のすべてを受け取ることが可能です。
なお、廃車となる車から同等の車を購入する際の費用や購入から乗り始めるまでの費用等は基本的には相手側に請求が可能です。レッカー費用も廃車費用の1つですので、請求をします。
ただし、被害者の方が、注意をしなければいけないのは、廃車の場合は、修理費ではなく、【買替費用】を請求することとなりますが、この買替費用は、【中古車の相場等を元に、車の時価額分】の賠償金が支払われることとなります。同等クラスの新車の費用ではありません。
そのため、時価額が低いことから、「こんな安い金額で新車は買えない!」と被害者の方が保険会社ともめることは少なくありません。
相手から支払われる【買替費用】は、車両を新しく購入するための費用と考えるのではなく、【事故車両の時価相当の補償金】と覚えておきましょう。
⑶廃車にする必要がない場合
交通事故にあって車両が損傷した場合、必ずしも廃車にしなければいけないわけではありません。修理できる場合であれば、修理を行います。
しかし、被害者の方の中には「修理するのであれば、この機会に廃車にして新車を買おう」と自主的に廃車にすることもあります。この場合は、修理をすればまだ乗ることができる、つまり廃車にする必要がないのに、被害者の意思で廃車にするので、加害者側に廃車費用を請求することはできません。
この場合は、廃車費用や買替費用ではなく、車両の修理費用が支払われることになります。
3 廃車になった時の任意保険料
車が廃車になった時の自身の任意の保険料はどうなるのでしょうか?
処分が決定しているにも関わらず、料金を支払い続けるのは被害者の方にとって大きな負担となります。被害者の方は以下の手続きを行うようにしましょう。
⑴次の車の納車まで時間がかかるなら中断
車両を廃車し処分する場合は、「自動車保険の中断証明書」を発行してもらうようにしましょう。廃車=保険解約と考えている方もいらっしゃるかと思いますが、中断をすれば、ノンフリート等級を一定の期間であれば保存が可能です。ただし、中断をするためには、条件を満たす必要があるので、加入している任意保険会社に中断証明書を発行するための条件は事前に確認する必要があります。また、中断証明書は、取得した保険会社以外の保険会社でも適用が可能となります。
以下は主な条件ですが、各保険会社によって異なる場合もあります。
中断証明書発行の条件
- ・廃車や譲渡、売却により自動車を手放す場合
- ・車検切れや、一時抹消している場合
- ・一時的な観光目的以外で海外に渡航する場合
- ・車が盗難にあってしまった場合
- ・再開時の等級が7等級以上の場合(後程詳しくご説明します)
また同じ等級で保険を開始するためには以下の条件が追加されます。
- ・中断証明書の有効期限内であること
- ・新車を購入、取得をしてから1年以内に契約を開始すること
- ・海外渡航による中断については、帰国日から1年以内であること
- ・等級を引き継ぐ記名保険者が本人、もしくは配偶者や同居の家族であること
⑵7等級以上で中断可能
中断証明書を発行するうえで、非常に重要な条件が「再開時の等級が7等級以上の場合」であることです。ノンフリート等級は、運転手の事故の履歴から、運転手の事故リスクの高さを1~20級で分けており、数字が大きければ大きいほど、事故のリスクが低い運転手であるとされ、保険を使用する可能性が低いと考えられます。
被害者の方が覚えておかなければならないのは、この等級が1~6等級の場合は、中断証明書は発行されません。
ちなみに、初めて自動車保険へ加入する際は「6等級」からスタートします。1年間無事故で保険を利用しなければ、翌年は7等級に上がる仕組みです。
廃車時に、7等級以上であり、他の条件を満たしていれば、中断証明書は取得可能となります。
4 物損事故のご相談は、大阪(なんば・梅田)・堺・岸和田・神戸の弁護士法人法律事務所ロイヤーズ・ハイへ。
廃車費用についてご説明をさせていただきましたが、いかがでしたでしょうか。
物損事故は、知識がなければ被害者の方が大きく損をする可能性があります。例えば買い替えをする際の諸費用も、被害者の方が請求をしても「それは当社では支払えません」と言われてしまうことも多く、何も知らない被害者の方は「そういうものか。」と納得してしまうこともあります。
それでは被害者の方が適正な損害賠償金を受け取ることができない事態になってしまいます。
物損事故だけの場合、弁護士費用が相手から受け取る損害賠償金よりも上回ってしまうケースがあり、なかなか相談しづらいかもしれませんが、弁護士特約をつけていれば、自己負担なしで示談交渉を弁護士に任せることができます。
物損事故の費用関係にお困りの方は、交通事故を多く取り扱う大阪(なんば・梅田)・堺・岸和田・神戸の弁護士法人法律事務所ロイヤーズ・ハイにご相談ください。
このコラムの監修者
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太田 泰規(大阪弁護士会所属) 弁護士ドットコム登録
大阪の貝塚市出身。法律事務所ロイヤーズ・ハイのパートナー弁護士を務め、主に大阪エリア、堺、岸和田といった大阪の南エリアの弁護活動に注力。 過去、損害保険会社側の弁護士として数多くの交通事件に対応してきた経験から、保険会社との交渉に精通。 豊富な経験と実績で、数々の交通事故案件を解決に導く。