交通事故の被害者の方は、基本的には慰謝料を含む損害賠償金を加害者側から受け取ることができます。
しかし、事案によっては被害者の方が慰謝料を受け取ることができない場合もあります。交通事故の損害賠償金の中でも大半を占める場合が多い慰謝料が受け取れないとなると被害者の方にとっては非常に大きなダメージとなります。
ここでは、実際に交通事故の慰謝料がもらえないケースについてご紹介させていただきます。
目次
交通事故で慰謝料がもらえないケース
被害者の方が本来もらえるはずの慰謝料がもらえない代表的なケースは以下の通りです。
通院を途中でやめてしまった
入通院に対する慰謝料は、入院や通院の期間や日数を基準として計算がされます。そのため、通院を途中でやめたり、頻度が少なかったりする場合、本来もらえるはずであった慰謝料を受け取れないこともあります。
通院をやめた場合、計算の対象とはなりませんし、通院頻度が少なければ、治療の必要はなかったと保険会社より判断される可能性が高いです。
被害者の方は適正な慰謝料を受け取るためにも、必ず定期的な通院を続けることが大切です。可能であれば、病院へは週2~3回は通い、月10回程度の通院を目指すと良いでしょう。仕事などで通うことが難しい場合は、最低でも月1回の医師による診察を受けるようにしましょう。
後遺障害等級の認定を受けていない
後遺障害に対する慰謝料は、後遺症が残っているだけでは受け取ることはできません。必ず後遺障害等級の認定を受ける必要があります。
等級は1級から14級、等級該当なしがあり、1級から14級のいずれかが認定された場合において、等級に応じた慰謝料が支払われます。等級が高ければ高いほど、金額も大きく異なります。
後遺障害等級の認定を受けたけれども、等級に該当しなかった場合、そもそも後遺障害等級の認定を受けていない場合には、慰謝料を被害者の方は受け取ることができません。
被害者の方は後遺症があり、適切な後遺障害等級を認定してもらうには、被害者の方自身が少しでも有利となる書類を用意する必要があります。なお、医師が作成する後遺障害診断書にも、書き方のコツや認定には不利な表現も存在します。
そして、後遺障害等級認定の可能性を上げるためには、しっかりと必要書類を用意し、加害者側の保険会社に申請を依頼する「事前認定」ではなく、被害者の方自身で申請を行う「被害者請求」にて申請することを強くお勧めします。
時効による請求権の消滅
交通事故の損害賠償請求権にも時効があり、時効が成立してしまうと、慰謝料はもちろんのこと、損害賠償金のすべてに対して請求ができず、受け取ることができなくなります。
損害賠償請求権の時効は以下となります。
①物損事故が3年、人損事故が5年
②交通事故発生日より20年
民法の改正により、2017年4月1日以降の交通事故は上記の時効が適用されますが、2017年3月31日以前の交通事故については人損事故も3年とされています。
②は加害者がわからない場合=ひき逃げなどの事故に適用されます。基本的には①が適用され、時効のカウントが開始されるのは、「被害者が損害および加害者を知ったとき」からとなります。
ただし、実務上では、「加害者が債務を承認した=支払い義務を認めた」日に時効は更新されます。たとえば、加害者側から被害者の方へ治療費などの支払いが継続的に行われている場合は、時効の起算日が支払いのたびに更新されて、新たな時効のカウントが開始します。
以下にあげる日から5年または3年が経過した場合、被害者の方の損害賠償請求権は消滅し、被害者の方は損害賠償金をもらえません。
・治療費や休業損害、慰謝料の一部といった、被害者の損害賠償とされる一部を支払ったとき
・保険会社から金額の提示や支払い条件の提案などの通知があったとき
・損害賠償のことについて保険会社(ないしは加害者)と話をしたとき
なお、時効の起算日については、考え方が当事者間で異なる場合もあり、争点になることもあります。時効について不安がある方は、早めに弁護士に相談することをおすすめします。
慰謝料の算定方法
慰謝料とは
そもそも慰謝料とは何でしょう?
交通事故の被害者の方が、加害者に対して請求できる損害賠償には、治療費や休業損害、通院交通費等があります。
その中の1つに【慰謝料】という項目があります。
慰謝料とは、肉体的な苦痛、精神的な苦痛に対しての損害賠償金をいいます。
交通事故の被害者の方は、怪我による痛みの肉体的苦痛だけでなく、本来は通わなくてもいい病院へ、入院したり、通院したりしなければ行かならない精神的な苦痛を感じます。
怪我を負うことや、後遺症が残ることは、被害者の方にとって精神的なダメージがかなり大きいと考えられ、この精神的苦痛を金銭で解決するために慰謝料が存在します。
先ほども少し触れましたが、交通事故の場合、被害者の方が請求できる慰謝料は3種類あり、事案によって異なります。
・入通院慰謝料(傷害慰謝料)
交通事故の怪我により、被害者の方がやむを得なく入院や通院をすることになった場合、そのことについて被害者の方が受けた精神的苦痛に対する賠償金をいいます。
・後遺障害慰謝料
交通事故の怪我により、被害者の方が入院、通院にて治療を行うも、後遺症が残存した場合、後遺障害等級認定の申請を行います。審査先の第三者機関である損害保険料率算出機構の自賠責損害調査事務所が調査した結果、後遺障害等級の認定が下りた場合は、後遺障害が残ったことへの精神的な苦痛を賠償することが可能となります。
・死亡による慰謝料
交通事故の被害者の方が亡くなった場合に、被害者の方が死亡させられたことに対する慰謝料を請求することができます。さらに、本人への医者労だけではなく、遺族(相続人)の独自の慰謝料も認められています。
慰謝料の計算基準
慰謝料は、様々な事情から考慮し算出されることが理想とされます。しかし一方で、すべての交通事故案件に対して、個別に考慮することは難しいです。
そのため、交通事故の慰謝料はある程度定型化されており、相場もあります。さらに慰謝料を算定する基準には3つの基準があり、どの基準を使用するかで、大幅に慰謝料の金額が変わります。
・自賠責基準
自動車損害賠償責任保険、通称自賠責で使用されている基準を「自賠責基準」といいます。自賠責保険は、交通事故の被害者の方々をできる限り多く、迅速にかつ平等に救済するために、支払われる金額には支払限度額が設けられています。「被害者の方への最低限度の補償」を目的としていることから、3つの中で最も低い基準となります。
・任意保険基準
自賠責保険は、原付を含むすべての車両が必ず入らなければいけない保険です。一方で、個人の任意で自由に加入が決めることができる保険を「任意保険」といい、その任意保険会社で使用されている基準を「任意保険基準」といいます。
以前は、旧任意保険基準というものが定められていましたが、撤廃されてからは、各保険会社で独自に設定しています。
加害者の任意保険会社が被害者の方本人へ提示する際はこの基準を使用します。
現在は各保険会社で独自で設定されていることから、明確な計算方法はわかりませんが、自賠責基準と同等か、もしくは少し高い金額の場合があります。保険会社によっては、旧任意保険基準の金額を参考に算出していることもあります。
・裁判所基準(弁護士基準)
3つの中でも最も高い基準であり、「最も適正な損害賠償金を算出できる基準」と言われています。
「民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準(通称:赤い本)」という本に記載されている裁判所基準は、過去の裁判例を基に作られています。弁護士が示談交渉をする際か、裁判となった場合に使用されます。
事案にも寄りますが、自賠責基準や任意保険基準よりも2~3倍慰謝料が増額することもあります。
特に、後遺障害慰謝料は、等級によっては自賠責基準よりも数百万円以上高額になることもあり、死亡による慰謝料についても同様に数百万円以上上がることもあります。
慰謝料が減額されるケース
被害者の方の慰謝料が減額されるケースの代表例は以下の3つです。
・損益相殺
被害者の方が交通事故により、何らかの金銭的な利益を得たとき、その分は減額される対象となります。
たとえば、労災から支給された休業補償であったり、厚生年金で給付金を受け取ったりした場合が対象として考えられます。
厳密にいうと、減額というよりも、すでに慰謝料等の賠償金と同等視できる利益を得ているので、その分はもらえなくなるというものです。
どういったものが損益相殺の対象になるかは、事前に確認しておく方が良いでしょう。誤って損益相殺の対象外のものまで示談時に相殺してしまう危険性を避けるためです。
以下が、損益相殺の対象になるものとそうでないものになります。
【損益相殺の対象となるもの】
・加害者本人や加害者の任意保険会社からの支払い
・自賠責保険会社からの支払い
・労働者災害補償法による遺族年金
・国家公務員災害補償法による遺族補償金
・国民年金法による遺族厚生年金
・国家公務員等共済組合法による遺族年金
・国家公務員等退職手当法による退職手当
・無保険車傷害保険金
・人身傷害補償保険金
・労働保険法による休業補償、障害補償
・国民年金法による障害基礎年金
・厚生年金保険法による障害厚生年金
なお、遺族年金等、被害者の方に将来に渡り、継続的に支払うことが予定されている利益は、すでに支払われておる分や将来の支払いが確定している分が対象となります。
【損益相殺の対象とならないもの】
・社会礼儀の範囲での見舞金
・労働災害補償保険法による遺族特別年金、一時金、支給金
・生命保険金
・傷害保険金
損益相殺については、対象となるにしても慰謝料との相殺がされるものなのか否かは、法律の専門家である弁護士に相談をすることをお勧めします。
・過失相殺
被害者の方に過失がある場合、その過失分が減額の対象となります。
被害者40%、加害者60%の過失割合であった場合、損害賠償金が100万円で相手より提示された場合、最終的には40%分が減額されるため、60万円を示談金として受け取ることになります。
被害者の方の過失相殺分を減らすためには、いかに被害者の方が自身の過失割合を減らすかがポイントとなります。
③素因減額
交通事故に遭って怪我を負う前から、被害者の方には身体的、精神的に持病(既往症)があり、加えて同じ箇所を事故でさらに痛め、悪化した場合には、損害賠償金は減額になる可能性が高いです。
被害者の方に損害を拡大する要因があったという点から、損害賠償金を減額し、損害を公平にするとした考え方です。
慰謝料についてのご相談は、交通事故を多く取り扱う大阪(なんば・梅田)・堺・岸和田・神戸の弁護士法人法律事務所ロイヤーズ・ハイへ
慰謝料がもらえない場合、減額される場合について説明をさせていただきました。
基本的に被害者の方が保険会社より提示される金額は、裁判となった場合に認定される金額よりも、大幅に低額です。
被害者の方が慰謝料を含め、妥当な損害賠償金を得るためには弁護士に相談をすることが最善と言えるでしょう。
弁護士であれば、裁判外でも裁判所基準で保険会社と示談交渉ができ、慰謝料増額の可能性が高くなります。
ロイヤーズ・ハイでは、随時被害者の方にアドバイスをしながら、示談成立まで進めることから、被害者の方が慰謝料をもらえなくなるという事態にはいたしません。減額の要因についても、しっかりと検討し、被害者の方にとってプラスになるよう示談交渉は進めてまいります。
慰謝料について、適正な金額を受け取りたいとお考えの方は、交通事故を多く取り扱う大阪(なんば・梅田)・堺・岸和田・神戸の弁護士法人法律事務所ロイヤーズ・ハイにぜひ一度、ご相談ください。