交通事故問題は、被害者の方と加害者側の保険会社や加害者本人が、当事者同士で話し合いを行い、双方が解決案に同意し、解決をするという、いわゆる「示談」で紛争の解決を行うケースがほとんどです。
しかし、事案によっては、損害賠償の金額や過失割合などについて双方の主張に大きく差が出てしまい、なかなか示談交渉が上手く進まないこともあります。
このように、示談が難航した場合は調停や訴訟といった解決の場を裁判所に移行することがあります。また、第三者の立場の方に間に入ってもらい、示談あっせんを受けることもあります。
ここでは、示談あっせんとは何か、どうすれば受けられるのかを説明させていただきます。
目次
1 交通事故の示談あっせんについて
⑴示談あっせんとは
示談あっせんとは、損害賠償の交渉で、当事者間の話し合いが難航した場合に、公平かつ中立な第三者機関から、担当弁護士が仲介をし、示談が上手くまとまるよう、場を取りまとめることをいいます。
⑵示談あっせんはどこで受けられるか
示談あっせんは、ADR機関で受けることが可能です。
ADRとは「Alternative(代替的)」「Dispute(紛争)」「Resolution(解決)」の略称であり、裁判の手続きをせずに紛争を解決する方法をいいます。そして、ADRで紛争の解決を図る機関を、ADR機関といいます。交通事故問題を解決するための代表的なADR機関は以下の2つです。
①交通事故紛争処理センター
公平かつ中立な立場で、示談あっせん(和解あっせん)をし、解決を手助けします。このセンターの基本的な利用料は無料です。被害者の方にかかるのは、センターに行く際の交通費と、申し立てに必要な証明書等の手数料などしかかかりません。
紛争処理センターは、裁判所基準(損害賠償金を算出するにあたり、一番高い基準)とほぼ同額の損害賠償金を受け取れる可能性があることがメリットの1つです。また、1年以上かかる裁判に比べると、比較的に短時間で解決できる可能性があることもメリットとして挙げられます。
②日弁連交通事故相談センター
公益財団法人日弁連交通事故相談センターは、日本弁護士連合会が、交通事故の被害者の方を救済目的として設立している機関です。
無料で法律相談や示談あっせんをしており、公平かつ中立に交渉をサポートします。
全国に156の相談所が設置されていることから、利用者にとっては、非常に足を運びやすいです。全国統一のナビダイヤルで10分間無料の電話相談が可能であり、また原則5回までとはなりますが、無料の面接での相談も行っています。
⑶示談あっせんの流れ
まず、各ADR機関に被害者の方は足を運び、法律相談を行います。そこで、示談あっせんが可能であると判断された場合には、以下の流れで進んでいきます(※各機関で多少の違いはあります)。
①被害者の方が示談あっせんの申し立てを行います。 ②1回目の期日開催。当事者双方の呼び出しがあり、担当弁護士が双方の主張を確認します。 ③2回目以降の期日開催(それ以後は前回期日から1か月以内)。 ④示談あっせん案がセンター側より提示されます。 示談あっせん案に双方が同意すれば示談成立し、同意でなければ示談不成立となります。 |
2 示談あっせんの利用について
示談あっせんは、示談が難航している事案のすべてが受けることができるわけではありません。
⑴示談あっせんが適しているケース
示談あっせんが適しているケースは、以下の4点をすべて満たしている場合です。
・被害者の方の怪我が完治し治療が終了、または症状固定をしていること。 ・後遺障害等級認定の結果内容に争いが無いこと。 ・過失割合に大きな争いが無いこと。 ・相手の保険会社から示談金についての具体的な提示案があること。 |
⑵示談あっせんが可能なケース
そもそも、示談あっせんは、自賠責保険(または自賠責共済)への加入が必須となる車両による「自動車での事故」の場合が可能となります。
その中でも、人身事故、怪我を伴う物損事故の場合は、対応が可能です。この場合、自賠責保険、自賠責共済のみ、または無保険の場合でも可能となります。
物損事故の場合は、損害賠償をする加害者側が、以下の任意保険(任意共済)のいずれかに加入していれば、示談あっせんが対応と可能となります。
・あいおいニッセイ同和損害保険株式会社 ・アクサ損害保険株式会社 ・楽天損害保険株式会社 ・イーデザイン損害保険株式会社 ・SBI損害保険株式会社 ・共栄火災海上保険株式会社 ・セコム損害保険株式会社 ・セゾン自動車火災保険株式会社 ・ソニー損害保険株式会社 ・損害保険ジャパン株式会社 ・そんぽ24損害保険株式会社 ・大同火災海上保険株式会社 ・東京海上日動火災保険株式会社 ・日新火災海上保険株式会社 ・AIG損害保険株式会社 ・三井住友海上火災保険株式会社 ・三井ダイレクト損害保険株式会社 |
⑶示談あっせんが受けられないケース
残念ながら、以下のような場合は、示談あっせんが受けられません。
・すでに裁判や調停を行っている場合。 ・すでに他の機関へ示談あっせんを申し入れている場合。 ・不当な目的をもって示談あっせんを申し入れしたと認められる場合。 |
また、交通事故の中でも多い割合を占める「自転車事故」案件については、原則示談あっせんを受け釣ることができません。
⑷示談あっせんがうまくいかなかった場合
もしも、第三者機関にて示談あっせんが上手くいかなかった場合でも、審査手続きに移行し、解決を図ります。
もし、センターが行った示談斡旋が打切りや不成立となった場合は、センターに設置されている審査会で、審査手続に移り、審査会から示される損害賠償の解決方法を図ることができます。
審査の結果については、基本的に事故の被害者が納得した場合は、加害者側の保険会社はそれを拒否することはできないとされています。
もし、被害者の方が審査会の出した内容に納得ができない場合は、訴訟に移行することも可能です。
3 示談が難航している場合は、交通事故を多く取り扱う大阪(なんば・梅田)・堺・岸和田・神戸の弁護士法人法律事務所ロイヤーズ・ハイにご相談ください。
示談あっせんについてご説明をさせていただきました。
交通事故紛争処理センターや日弁連交通事故相談センターは、基本的に法律相談も示談あっせんも無料で利用が可能です。被害者の方にとっては、金銭的負担が少ない中で、センターの弁護士が間に入り、示談の手助けをしてくれるこという大きなメリットがあります。
しかし、注意をしなければならないことは、センターは100%、被害者の味方ではないということです。あくまでも公平・中立であるという立場は崩しませんので、被害者の方によっては、どのような結果となるか、多少不安に感じられる方もいらっしゃるでしょう。
示談あっせんを受けることを検討されている方は、まずは一度、交通事故を多く取り扱う大阪(なんば・梅田)・堺・岸和田・神戸の弁護士法人法律事務所ロイヤーズ・ハイにご相談ください。