交通事故 慰謝料 損害賠償
2020.10.26 2024.04.25

交通事故で受け取れる損害賠償の相場を知りたい

交通事故で受け取れる損害賠償の相場を知りたい

交通事故の被害に遭った方は、相手の加害者が加入する保険会社(もしくは相手方本人)へ損害賠償金を請求します。

請求するものは、「交通事故の被害を受けたことにより、被害者が受けた損害」となります。 

よく耳にする慰謝料は、損害賠償金の一部であり、その他にも被害者の方は相手に請求が可能となります。

ここでは、交通事故で受け取れる損害賠償金について、またその中の項目の1つである慰謝料の相場についてご説明を致します。

交通事故で受け取れる損害賠償金の種類

交通事故の被害者の方は、まず、相手にどういったものが請求できるのかを確認しましょう。

以下はあくまでも、代表例であり事案によっては請求できるものが増えますし、一方で、条件を満たしていなければ、請求できないものもあります。

慰謝料

慰謝料とは、被害者が受けた精神的苦痛という損害に対して加害者側が金銭的に賠償をするものです。

交通事故で怪我を負った被害者の方は、痛みによる肉体的な苦痛だけでなく、入院や通院といった治療により身体的自由を奪われ、精神的な苦痛も受けます。また、被害者の方が事故の怪我が影響で、仕事を休むとなると、職場での人間関係、業務そのものへの影響、昇進も厳しくなるといった、給与の損害について補償を受けても補えない、心理的なストレスが大きくなります。

このように交通事故の被害に遭ったことで受けた、肉体的、精神的な苦痛に対しては「慰謝料」として被害者の方は受け取ります。

なお、交通事故の慰謝料は、入通院慰謝料(傷害慰謝料)、後遺障害慰謝料、死亡慰謝料の3種類あります。後程詳しくご説明をいたします。

治療費・入院費

交通事故が原因による怪我を治療するためにかかった費用です。治療の必要性があると判断された場合に支払われます。

つまり、「完治(治癒)」もしくは「症状固定(これ以上治療をしても良くも悪くもならない状態)」と判断されるまでは、治療費は支払われる対象となります。

この治療費・入院費には、入院中の雑費や検査費用、手術費用、処方箋費用、また診断書等の文書作成費用も含まれます。

逸失利益

交通事故に巻き込まれなければ、本来得られるはずだった収入を得られなくなったことについての損害を指します。

後遺障害が残った場合や、死亡事故により被害者の方が亡くなった場合に請求が可能となります。

被害者の方が、後遺症により労働能力が低下もしくは喪失した場合、後遺障害による逸失利益が請求可能となります。そのため一生に渡り残るような後遺障害(例:寝たきり等常時介護必要な場合、高次脳機能障害等)は、高額な逸失利益になる可能性が極めて高いです。

死亡事故の場合は、亡くなった方が本来得られるはずだった収入より生活費を差し引いて算出されます。また、被害者の方の年齢や家族での役割等も影響します。

休業損害

交通事故の怪我により、仕事を休業せざるを得なくなった場合、本来ならば得ることができた収入から減少した金額がこれにあたります。 

サラリーマンや公務員といった給与所得者の場合、勤務先に休業損害証明書を作成してもらいます。事故が無かった場合の給与額や、休業したことによる給与減額について記載をしてもらい、事故の前年度の源泉徴収票と共に提出をし、請求を行います。

また、個人事業主の場合は、確定申告書を基に日額を算出し、休業日数は実際に通院した日数をベースに計算をすることが一般的です。ただし、個人事業主は給与所得者と異なり、出勤日などの概念が無いことから、「休んだことにより収入が減少した」ということを証明することが難しく、保険会社との交渉は難航しやすいです。

さらに、主婦・主夫といった家事従事者についても休業損害の請求が可能です。ただし、主婦の休業損害については、実際収入を得ていないことから、収入をどのように判断するかが、争点になりやすいです。

個人事業主や主婦・主夫の方の休業損害を請求する場合は、早期の段階で弁護士に相談することをおすすめします。

この他にも、交通事故の被害に遭ったことで受けた損害については、請求が可能となる場合がほとんどです。ただし、立証できる資料(領収書の原本や明細書等)が必要となります。

慰謝料の種類

次に慰謝料の種類についてそれぞれ説明をします。

入通院慰謝料(傷害慰謝料)

被害者の方が交通事故により負傷し、入院・通院を余儀なくされた場合に、被害者の方が受けた精神的な苦痛に対する慰謝料です。

入院の期間、通院の期間、日数を基本に計算されます。その為、入院や通院をしていなければ、怪我をしていたとしても、入通院慰謝料は請求できません。

軽い怪我であっても医師の診察は受けることが大切です。

後遺障害慰謝料

治療を続けたにも関わらず、被害者の方の怪我が治らず、後遺症が残ってしまった場合、後遺症が残ったことによる精神的苦痛に対する慰謝料です。ただし、請求する場合は後遺障害等級認定の申請を行い、第三者機関の自賠責調査事務所による調査の結果、1~14級のいずれかの後遺障害等級が認定されなければなりません。

つまり、後遺症が残っていたとしても、等級認定の申請をしなかった場合、もしくは等級が認められなかった場合は、後遺障害慰謝料は請求ができません。

死亡慰謝料

交通事故の被害者の方が亡くなってしまった場合に請求ができる慰謝料です。死亡慰謝料には2種類あります。

1つめは、被害者の方本人の慰謝料です。亡くなった被害者の方には、肉体的、精神的な苦痛が存在したものと考えられ、死亡させられたことによる慰謝料が請求可能です。

2つめは、ご遺族の方への慰謝料です。ご遺族=相続人となる方は、突然の交通事故で大事な人を失います。この現実はご遺族の方にとっても大きな精神的苦痛であると考えられ、また、被害者の精神的苦痛とは別のものと考えられます。そのため、相続人(被害者の配偶者、子供、父母、兄弟姉妹等)となるご遺族の方は、独自の固有の慰謝料が認定されます。

たとえば、もしも、入院した後数日後に亡くなった場合は、入通院慰謝料と死亡慰謝料の2種類の慰謝料を請求します。

また、後遺障害等級の認定が下りた場合は、後遺障害慰謝料と、それまでの治療期間の入通院慰謝料が請求可能です。 

なお、交通事故で請求できる慰謝料は、基本的には、被害者の方が怪我、ないしは亡くなった場合のみです。つまり、物に対する慰謝料請求は例外を除いては認められません。

慰謝料の相場と計算方法

慰謝料の算定基準は大きく分けて3つあります。最も低い基準を自賠責保険基準、最も高い基準を弁護士基準(裁判所基準)、間に位置するのが任意保険基準です。

自賠責保険基準

最低限の被害者の補償を目的としている自賠責保険で使用されている基準です。迅速かつ公平な対応をすることから、基準額、支払い限度額が設定されています。

 

・入通院慰謝料

自賠責保険基準では、1日あたり日額が定められています。入院、通院で

金額の違いはなく、1日あたり4,300円とされています。

※2020年3月31日以前の事故の場合、日額1日あたり4,200円

 

次に、慰謝料を請求する対象日数ですが、こちらは以下の数値の少ない方の数字を採用します。

①入院をした期間と通院をした実日数を合計し2倍した値

②初診から治療終了までの治療期間

求める式は以下となります。

【日額4,300円×対象日数】

(例)

【入院期間30日、通院実日数60日、治療期間が210日の場合】

①(30日+60日)×2=180日

②210日

この場合、対象日数は②の180日となります。よって、被害者の方が受け取れる入通院慰謝料は、4,300円×180日=77万4000円となります。

・後遺障害慰謝料

後遺障害慰謝料は以下の表のとおりです。

表を見ていただくとわかるように、2020年4月1日以降の事故は、それ以前の事故よりも、慰謝料は増額されています。

 

別表Ⅰ 後遺障害により介護が日常的に必要な場合の後遺障害に使用

後遺障害等級 2020年3月31日以前 2020年4月1日以降
第1級 1,600万円 1,650万円
第2級 1,163万円 1,203万円

 

別表Ⅱ その他、日常的な介護が必要ない場合の後遺障害に使用

後遺障害等級 2020年3月31日以前 2020年4月1日以降
第1級 1,100万円 1,150万円
第2級 958万円 998万円
第3級 829万円 861万円
第4級 712万円 737万円
第5級 599万円 618万円
第6級 498万円 512万円
第7級 409万円 419万円
第8級 324万円 331万円
第9級 245万円 249万円
第10級 187万円 190万円
第11級 135万円 136万円
第12級 93万円 94万円
第13級 57万円 57万円
第14級 32万円 32万円

※13級、14級の後遺障害慰謝料に変更はありません。

 

・死亡慰謝料

自賠責保険基準では、以下の内容が支払いの限度額となります。

死亡による慰謝料 内容 支払基準
被害者本人の慰謝料 400万円(※350万円)
ご遺族の慰謝料

※請求者(親、配偶者、子)の人数により金額は異なります。

請求者が

1名の場合:550万円

2名の場合:650万円

3名以上の場合:750万円

※被害者に被扶養者がいる場合においては、上記の金額に200万円が加算されます。

※印は2020年3月31日以前の事故の場合の基準

 

ご遺族の方が請求できる死亡慰謝料は請求する人数によって変わります。

また、被害者の方に被扶養者がいる場合、上記の金額に200万円が加算されます。

たとえば、被害者の方には、配偶者の妻と子供が1人おり、そしてこの妻と子供が被扶養者だった場合、以下の通りとなります。

本人への慰謝料…400万円(※350万円)

遺族への慰謝料…650万円+200万円

合計額…1,250万円(※1,200万円)

(※)内は2020年3月31日以前の交通事故の場合

任意保険基準

任意保険基準は、各保険会社が過去の実績などを基に、独自で算定方法を定めています。そのため、詳しい計算方法や算定基準は非公開です。

以下の各慰謝料の表はあくまでも、おおよその金額となります。

※以前まで、各保険会社が共通で使用していた旧任意保険基準がベースとなります。

 

・入通院慰謝料

旧任意保険基準では、入院と通院の期間をベースに、以下の表で算出します。

万円

(単位)

入院 1ヶ月

 

2ヶ月 3ヶ月 4ヶ月 5ヶ月 6ヶ月
通院   25.2

 

50.4 75.6 95.8 113.4 128.5
1ヶ月 12.6 37.8 63 85.7 104.6 121 134.8
2ヶ月 25.2

 

50.4 73.1 94.5 112.2 127.3 141.1
3ヶ月 37.8 60.5 81.9 102.1 118.5 133.6 146.1
4ヶ月 47.9 69.3 89.5 108.4 124.8 138.6 151.1
5ヶ月 56.7 76.9 95.8 114.7 129.8 143.6 154.9
6ヶ月 64.3 83.2 102.1 119.7 134.8 147.4 157.4
7ヶ月 70.6 89.5 107.1 124.7 138.6 149.9 160
8ヶ月 76.9 94.5 112.1 128.5 141.1 152.5 162.5

 

(例)

【入院期間30日、通院実日数60日、治療期間が210日の場合】

1ヶ月は暦ではなく、「1月あたり30日」と考えます。

上記の例の場合、治療期間は210日=7ヶ月となります。

そのうち30日=1ヶ月は入院しているので、通院期間は7ヶ月-1ヶ月=6ヶ月となります。

縦列を通院期間、横列を入院期間としてみます。仮に通院だけ6か月の場合は、64万3000円となります。

今回は、入院と通院の両方がありますので、交差する部分が相場となります。交差する箇所は83万2000円となり、これが旧任意保険基準で算出される入通院慰謝料です。

 

・後遺障害慰謝料

旧任意保険基準では以下の内容となります。

後遺障害等級

旧任意保険基準

1級

1,300万円

2級

1,120万円

3級

950万円

4級

800万円

5級

700万円

6級

600万円

7級

500万円

8級

400万円

9級

300万円

10級

200万円

11級

150万円

12級

100万円

13級

60万円

14級

40万円

 

・死亡慰謝料

被害者の方の家庭内での役割

一家の支柱 1,700万円程度
母親・配偶者 1,500万円程度
その他(独身者、未成年者等) 1,500万円程度

 

自賠責保険基準と異なり、死亡慰謝料の相場金額は、被害者の方が家庭内でどのような立場にいたのかによって大きく異なります。

たとえば、被害者の方が家庭の経済を支えている一家の支柱の場合、死亡したことにより、家庭内での経済的支柱も失われるという点から、高額な慰謝料となります。

なお、自賠責保険基準と異なり、基本的に被害者の方本人の慰謝料とご遺族の方の慰謝料は、分けて計算されることはありません。

弁護士基準

最も高額な損害賠償金が算出される基準を弁護士基準(裁判所基準)といいます。過去の裁判例を基に算出されていることから、最も適正な金額が算出されると考えられます。弁護士に依頼し示談交渉をする際、もしくは裁判となった時に使用することができます。

 

・入通院慰謝料

公益財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部が発行している「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準(通称赤い本)」に弁護士基準は記載がなされています。

被害者の方の怪我の程度によって、2つの表を使い分けられます。

 

むち打ち以外の怪我の場合の傷害部分の慰謝料基準表(損害賠償額算定基準:別表Ⅰ)

万円

(単位)

入院 1ヶ月

 

2ヶ月 3ヶ月 4ヶ月 5ヶ月 6ヶ月
通院   53

 

101 145 184 217 244
1ヶ月 28 77 122 162 199 228 252
2ヶ月 52 98 139 177 210 236 260
3ヶ月 73 115 154 188 218 244 267
4ヶ月 90 130 165 196 226 251 273
5ヶ月 105 141 173 204 233 257 278
6ヶ月 116 149 181 211 239 262 282
7ヶ月 124 157 188 217 244 266 286
8ヶ月 132 164 194 222 248 270 290

 

 

むちうちなど他覚的所見がない場合に使用(損害賠償額算定基準:別表Ⅱ)

万円

(単位)

入院 1ヶ月

 

2ヶ月 3ヶ月 4ヶ月 5ヶ月 6ヶ月
通院   35

 

66 92 116 135 152
1ヶ月 19

 

52 83 106 128 145 160
2ヶ月 36 69 97 118 138 153 166
3ヶ月 53 83 109 128 146 159 172
4ヶ月 67 95 119 136 152 165 176
5ヶ月 79 105 127 142 158 169 180
6ヶ月 89 113 133 148 162 173 182
7ヶ月 97 119 139 152 166 174 183
8ヶ月 103 125 143 156 168 175 184

 

(例)

【入院期間30日、通院実日数60日、治療期間が210日の場合】

表の見方は旧任意保険基準と同じです。

1月あたりを30日と考えるため、治療期間は7ヶ月、入院期間は1ヶ月、差し引きして、通院期間は6ヶ月と考えます。

入院軸と通院軸が交差する部分が弁護士基準の入通院慰謝料の相場となります。

 

むちうち以外の場合は別表Ⅰを確認します。入通院慰謝料は交差する149万円となります。

一方で、むちうちや打撲などといった他覚所見のない場合は、別表Ⅱの交差する部分を見ていただくと、113万円と算定されます。

 

・後遺障害慰謝料

赤い本の弁護士基準では以下の通りで定められています。

後遺障害等級

赤本基準

1級

2,800万円

2級

2,370万円

3級

1,990万円

4級

1,670万円

5級

1,400万円

6級

1,180万円

7級

1,000万円

8級

830万円

9級

690万円

10級

550万円

11級

420万円

12級

290万円

13級

180万円

14級

110万円

 

 

・死亡慰謝料

被害者の家族での役割

一家の支柱 2,800万円
母親・配偶者 2,500万円
その他(独身者、未成年者等) 2,000万円~2,500万円

 

任意保険基準と同じく、被害者の方の家庭内での役割で慰謝料の相場は異なり、また、被害者の方本人と遺族の方の慰謝料は分けずに、合算した金額で取り扱われています。

損害賠償金についてのご相談は交通事故を多く取り扱う大阪(なんば・梅田)・堺・岸和田・神戸の弁護士法人法律事務所ロイヤーズ・ハイへ

損害賠償金の種類、また代表的な項目の1つである慰謝料を3つの算定基準で相場金額をご説明させていただきました。

3つのどの慰謝料でも、自賠責保険基準と任意保険基準、弁護士基準は大幅な差額が生じます。わかりやすい部分で確認すると、後遺障害の14級の慰謝料は、自賠責保険基準32万円、旧任意保険基準40万円程度、弁護士基準110万円とその差は明らかです。

被害者の方は、知らなければ不当に低い金額のまま示談をしてしまうことになります。

弁護士基準で適正な慰謝料を含む損害賠償金を請求するには、弁護士に依頼をするか、裁判をするしかありません。

加害者側から損害賠償金を提示されたらまずは弁護士に相談をしましょう。

請求項目に漏れはないのか、適正な金額で提示されているのか、等確認してもらいましょう。

慰謝料を増額したい方は、交通事故を多く取り扱う大阪(なんば・梅田)・堺・岸和田・神戸の弁護士法人法律事務所ロイヤーズ・ハイにご相談ください。

このコラムの監修者

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