「交通事故の治療が終わったけれど、これからどうやって進めていくの?」
「示談してからどれくらいで示談金を受け取れるの?」
交通事故の被害者となってしまった方が疑問や不安に思うことの1つに示談金を一体いつ受け取れるか?というものがあります。
交通事故問題の多くは、当事者間で話し合いを重ねて、損害賠償の内容、金額を決めていき、双方が合意すれば、示談成立となります。
ここでは、示談から支払いまでの期間、示談交渉を始めるタイミング、慰謝料を含む示談金を早く受け取るための方法について、ご説明をさせていただきます。
目次
1 示談から支払いまでの期間
⑴示談成立から2週間で支払われる
被害者の方と加害者側の保険会社で損害賠償の内容、金額について話し合いをし、双方が合意となると示談が成立し、被害者の方へ示談金を支払われる手続きに移ります。
示談金の支払いがされる期間は示談成立から、最低でも2週間ほどかかります。工程は3段階に分けられます。
①相手の保険会社から被害者の方の手元に示談書が届くまで3日~5日程度
示談が成立をしてから、保険会社は示談書の作成、発送を行います。そのため、数日はかかることが見込まれます。
②被害者の方が内容を確認し、示談書へ署名・捺印をして返送するまで3日程度
被害者の方が示談書の内容を確認し、問題が無ければサイン・押印をして送り返します。万が一誤りがあったとしても、サインをして送り返してしまうと示談成立とみなされてしまう可能性がありますので、必ず氏名、住所、事故の内容、金額等を確認して書面を作成することが重要です。
被害者の方次第となりますが、到着して3日程度で返送している方が多いようです。
③相手の保険会社が受領し、支払い手続きを行い、示談金が支払われるまで3日~7日程度
示談書を受け取った相手保険会社は、内容に不備が無いか確認をし、問題がなければすぐに支払い手続きに回します。早ければ相手の保険会社に到着してから3日程度で指定した口座に振り込まれますが、場合によっては7日程度かかります。
基本的に示談書は郵便でやりとりを行うことから、示談金が支払われるまで多少の時期の変動はあります。最初に述べましたように示談成立から示談金受け取りまでは、最低でも2週間はかかると考えましょう。
示談書を返送してから1週間以上経っても振り込まれない場合は、一度保険会社に問い合わせすることをおすすめします。
⑵交通事故から示談開始までの流れ
交通事故から示談が開始されるまでは、基本的な流れは以下の通りです。
①交通事故発生、事故直後の対応
交通事故が発生したら、必ず警察に報告をします。警察への報告は道路交通法で義務とされており、怠ると罰則があります。
また、保険金や損害賠償金を請求するために必要である、交通事故証明書は警察の聴取の内容で作成がされます。警察に通報しない=発行されない可能性が高くなるため、必ず報告するようにしましょう。
相手の氏名や連絡先、また車のナンバーなどを、警察が到着するまでの間に控えておきましょう。事故直後の情報、事故現場の情報は多ければ多いほど、後々過失割合で揉めた際などに役に立ちますので、可能であれば事故現場の様子、車両の損害部分を写真に残しておくことをおすすめします。
②治療開始
交通事故の被害に遭った場合、必ず病院へ行きましょう。交通事故の怪我はその場ですぐにわかる怪我と、むちうちなどの場合は、数時間後~数日後に痛みが出てくることがあります。事故当日と初診日があまりにも空きすぎてしまうと、「交通事故が原因での怪我なのか?」と因果関係を疑われてしまう可能性が非常に高くなり、最悪の場合治療費を払ってもらえないこともありえます。
少しでも痛みがある場合や違和感がある場合は、早期に病院へ行くようにしましょう。
③完治または症状固定
治療を行った結果、怪我が完治、もしくは症状固定(治療を継続しても、良くも悪くもならない、改善の見込みがない状態)となるまで継続して治療を続けます。
入院・通院の期間、通院の頻度・回数は、損害項目の1つである、慰謝料請求の際に大きく影響を受けることになります。
④後遺障害の等級認定
症状固定と医師に診断された場合は、後遺症が残ったこととなるので、多くの被害者の方は後遺障害等級認定の申請に進みます。
後遺障害等級認定は申請から等級の認定結果が出るまで2~3か月程度は最低でもかかります。
⑤示談交渉開始
被害者の方の怪我が完治、もしくは症状固定をし、後遺障害等級の認定結果が出たら示談交渉開始です。なお、金額面以外にも、過失割合に争いがある場合は、示談交渉時に過失割合の交渉も行うことが多いです。
⑶示談開始から成立までの流れ
示談開始から成立までは物損事故、人身事故、死亡事故等、事案によって異なります。
①物損事故の場合
物損事故の場合は、示談交渉から成立までは期間としては1ヶ月程度が多いです。
修理金額は事前に保険会社と修理工場が打ち合わせをしていることが多いため、揉めることは少なく、また全体の損害額が小さくなることも多いため、大きな争点もなく、長引くことはあまりないといえます。
しかし、事故により車両価値が下がったことによる損害=評価損や、過失割合で争いがある場合は、長引く可能性が非常に高くなります。
②人身事故の場合
人身事故は、金額のみが争点であれば、1~2か月程度の交渉期間で示談が成立するケースが多いです。長くかかっても3ヶ月程度でしょう。
しかし、その一方で、事実関係に争いがあることにより、過失割合も争点となる場合や、休業損害について認めるか認めないか等の争点がある場合は、4ヶ月以上かかることも少なくありません。
人身事故の損害賠償金は非常に高額であり、保険会社もそういった面からできる限り支払う金額を減らすことを考えるため、低い金額での提案を行うことが多いです。
その結果、示談金額が低いことに対して、被害者の方が不信感や不満を持ち、示談交渉が難航することもあります。
③死亡事故の場合
死亡事故の場合、被害者の方が亡くなっているため、示談交渉は遺族の方である相続人が行います。相続人は加害者への怒りや許すことができない感情もあることから、示談交渉は進まず、その結果、示談交渉は長引きます。
特に、相続人の方が複数名いる場合は、示談するためには、全員の同意が必要となることから、時間はかかります。
また、損害賠償金が高額となることから、保険会社も交渉に慎重なるため、半年以上はかかることが多いです。
なお、あくまでも上記でご説明をした期間は弁護士が介入した場合にかかる期間です。被害者の方自身で始めた場合は、より長引く可能性が高くなります(後程ご説明を致します)。
さて、どの事故であっても、任意保険会社との示談交渉の場合は、まず保険会社より「この金額で示談をしませんか?」といういわゆる「示談案」が送られてくる、ないしは連絡がくることが多いです。
物損事故については損害項目が少ないため、口頭でも問題ないことが多いですが、人身事故の場合、口頭で示談案を言われた場合は必ず、書面にて「損害賠償額の内訳・計算書」等といった、金額や計算根拠が書かれた書面をもらうようにしましょう。
計算書=示談案には、被害者の方の損害賠償額の項目が記載されています。治療費や慰謝料、休業損害、通院交通費といったものがあげられます。後遺障害の等級認定が下りた場合は、後遺障害の慰謝料、逸失利益なども含まれます。
被害者の方は、この示談案について、すぐに了承することは決して行ってはいけません。知識がない場合、保険会社が提示する金額は適正であると思ってしまいますが、これは大きな誤りです。
知識のない被害者がこれを読むと、あたかもそれが適正な金額と思い込んでしまいがちですが、それはまったくの誤解です。
あくまでも、示談案に書かれた金額は保険会社の希望する損害額であり、算定基準も低いものを使用されていることがほとんどです。
弁護士に依頼をすると使用することができる裁判所基準で計算をすると、倍以上の金額になることも少なくありません。
適正な金額であるかどうかは、必ず弁護士に相談をすることが大切です。
2 示談交渉を始めるタイミング
示談交渉を始めるタイミングは、事案によって異なりますが、共通していることは「すべての損害が確定した段階」です。たとえば、物損事故の場合は、事故から1ヶ月後を目安に開始されます。自動車の修理やその他の損害が確定するには1か月程度は必要となるからです。
では、人身事故の場合はどうなるのでしょうか?
⑴治療終了後
被害者の方の治療が終了、ないしは症状固定となった場合は、損害賠償期間が終了となります。それ以降の治療関係について、保険会社は支払う必要はありません。
そのため、「すべての損害が確定した段階」となることから、交渉を行うことが可能となります。
⑵後遺障害等級認定後
治療は終了したけれど、医師に症状固定と判断された場合は、後遺症について、後遺障害等級認定の申請を行い、等級の結果が下りてから示談交渉を開始するようにしましょう。
主治医である医師に「後遺障害診断書」を作成してもらいます。
後遺障害の等級には1~14級があり、いずれかの等級が認定された場合は、等級に応じた後遺障害慰謝料、逸失利益が請求可能となります。
したがって、後遺障害等級認定申請を行わなければ、たとえ後遺症が残っていたとしても後遺障害慰謝料や逸失利益は請求ができないということになります。
ここで注意をしなければならないのは、保険会社によっては、治療期間が長期化している事案については、後遺障害については説明せずに、強引に示談交渉を行うこともあります。
保険会社の対応に、交通事故の知識や経験がない被害者の方は焦ってしまい、交渉を開始してしまうこともありますが、これは被害者の方にとっては全く得策ではありません。
後遺障害の慰謝料や逸失利益は、下りた等級によっては数百万円単位で損害賠償金が増額します。
もしも、等級申請を行わないまま示談を進めてしまった場合は、被害者の方にとって、大きな損失となりうる可能性があります。
示談交渉は必ず、後遺障害等級の認定後に行うようにしましょう。
3 慰謝料を早く受け取る方法
事案によって、とはなりますが、交通事故の発生から慰謝料などの示談金が支払われるまで、半年から1年ほどかかることは少なくありません。
被害者の方の中には、病院までの交通費や場合によっては治療費、交通事故の怪我の影響で仕事を休まざる得なくなることもあり、その結果収入が減り、生活が困窮する方もいらっしゃいます。
以下では、慰謝料を含む保険金を早期に受け取る方法をご案内します。
⑴仮渡金制度を利用
被害者の方がより迅速にお金を受け取るために、自賠責保険には、「仮渡金制度」が存在します。
仮渡金制度では、少ない必要書類を自賠責保険に提出するだけで、請求から約1週間から10日程度後にはお金が支払われます。
仮渡金は、損害項目ごとに支払われるのではなく、提出された書類を基に一定の金額を支払われることとなります。
この支払われる金額は、提出された診断書をもとに、被害者の方の傷害の程度に応じて定められています。
症状、状態 | 金額 |
1.死亡された場合 | 290万円 |
2.以下のいずれかの傷害を負った場合 ・脊柱の骨折で脊髄を損傷したと認められる症状を有するもの ・上腕または前腕の骨折で合併症を有するもの ・大腿または下腿の骨折 ・内臓の破裂で腹膜炎を併発したもの ・14日以上病院に入院することを要する傷害で、医師の治療を要する期間が30日以上のもの | 40万円 |
3.以下のいずれかの傷害を負った場合(上記2を除く) ・脊柱の骨折 ・上腕または前腕の骨折 ・内臓の破裂 ・病院に入院することを要する傷害で、医師の治療を要する期間が30日 ・14日以上病院に入院することを要する傷害 | 20万円 |
4.医師の治療を11日以上要する傷害を負った場合(上記2.3を除く) | 5万円 |
つまり、仮渡金制度では5万円~40万円を被害者の方は受け取ることができます。
ただし、仮渡金制度は1回のみしか請求できないので、請求するタイミングはよく考えなければなりません。
また、あくまでも損害賠償金の仮払いとなるため、被害者の方が受けとった金額は、最終的な損害賠償金から差し引きされます。また、万が一仮渡金制度で受け取った金額が、損害賠償金を上回った場合は、超えた分の差額について返金が必要となります。
⑵被害者請求制度を利用
交通事故の場合、被害者の方は、加害者が加入する自賠責保険に直接、損害賠償金の請求が可能となります。これを「被害者請求」といいます。
【第三条の規定による保有者の損害賠償の責任が発生したときは、被害者は、政令で定めるところにより、保険会社に対し、保険金額の限度において、損害賠償額の支払をなすべきことを請求することができる。】
自動車損害賠償保障法第16条第1項より
根拠条文から、16条請求とも呼ばれます。
被害者保護という視点から、被害者の方の損害賠償額が確定していない、治療中の段階から請求が可能となります。
仮渡金制度よりも提出書類は多いですが、自賠責保険で定められている、傷害部分の支払い限度額120万円以内であれば、被害者の方の被った損害(慰謝料、休業損害、治療費等)の請求が可能となります。
⑶保険会社の一括対応を利用
治療費については、被害者の方本人が負担するのではなく、加害者側の保険会社が直接病院へ支払い手続きを行ってくれることが、交通事故の場合は多いです。
任意保険会社は、自賠責保険分の保険金も含め被害者の方に一括して支払いを行います。その後、自賠責保険に対して、自賠責保険の支払い限度額内を求償します。
これを「一括対応」といいます。
任意保険会社から送られてくる各医療機関へ提出する同意書へ署名・捺印を行い、返送するだけで手続きは完了します。
ただし、被害者の方の過失割合が高い場合や、保険会社が治療は不要であると判断した場合は、一括対応は受けることができません。あくまでも任意保険会社の一括対応は、法律で定められたものではなく、任意保険会社のサービスの1つだからです。
⑷損害賠償金の内払いを利用する
交渉次第とはなりますが、場合によっては、慰謝料や休業損害、通院交通費などを示談前に先に受け取ることができることもあります。
これを「損害賠償金の内払い」といいます。
任意保険会社は、事故の規模や被害者の方の怪我の程度に応じて、実際の支出を伴う通院交通費や、減ってしまった収入=休業損害については内払いに応じてくれることがあります。
また、事情によっては慰謝料の内払いも対応してくれることもあります。ただし、慰謝料は通院交通費や休業損害といった明確に損害がわかるものではありませんので、なぜ慰謝料の内払いが必要であるのかは説明が必要となります。
また、内払いは、あくまでも損害賠償金の前払いです。仮渡金制度と同じく、最終的な示談金からは差し引かれます。また、受け取りすぎた場合は返金する必要があります。
4 弁護士に依頼すれば示談が早く終わる
ここまでお伝えした通り、交通事故発生から示談成立までは、様々な手続きがあり時間はかかります。
できる限り早い解決を望まれる場合は、弁護士に依頼をすることをおすすめします。
弁護士に依頼をすれば、示談交渉や後遺障害の等級認定申請については、被害者の方本人で対応をするよりも早く期間が短くすることが可能となります。
特に示談交渉はその差が顕著に現れます。
示談交渉で、被害者側と加害者側が争うのは、慰謝料や休業損害といった損害賠償の内容と金額、そして過失割合の2つです。
この2つには一定の基準があります。しかし、その基準の知識やその他の法的知識が無い、被害者の方の場合、妥当な金額や内容がわからないことから、保険会社の提案する内容に納得がいかず、また争うべきポイントが分からないため、示談交渉が長引いてしまう傾向があります。
この点は、交通事故問題に強い弁護士であれば全く問題はありません。
損害賠償の内容や適正な金額、また、事故態様から過失割合が妥当であるか否か等を判断することが可能となります。
また、争う場合はどういったポイントで主張、また相手に反論するかを熟知していることから、交渉がスムーズに進む可能性が高くなります。
後遺障害の等級認定の申請については、相手の保険会社が行う「事前認定」と被害者の方本人が行う「被害者請求」がありますが、前者は保険会社の担当によっては、中々申請がされず時間がかかる可能性もあります。
一方で被害者請求は被害者の方本人が行うため、手続きを早期に進めることができますが、手続き方法に詳しくない場合、かえって時間がかかることもあります。
この点、交通事故問題の経験が豊富な弁護士に依頼をすれば、被害者請求で代わりに申請を行ってくれます。弁護士は、迅速に必要書類を収集し手続きを進めてくれるため、短期で申請までの手続きをすすめることが可能です。
5 示談についてのご相談は、交通事故を多く取り扱う大阪(なんば・梅田)・堺・岸和田・神戸の弁護士法人法律事務所ロイヤーズ・ハイへ
示談交渉にかかる期間や被害者の方が示談金を受け取るタイミングなど、示談についてご説明をさせていただきました。
まずは、被害者の方は、弁護士に相談をすることを強くお勧めします。
弁護士に依頼すれば、自身で行うよりも短期間で示談交渉などといった手続きを進めてくれるだけでなく、保険会社が算定する基準よりも高い基準で損害賠償金を算出するため、必然的に損害賠償金が上がる可能性が高うなります。
また、被害者の方は弁護士に依頼をすれば、被害者の方は保険会社に誤った対応をとらず済むため、不利益を受けません。
示談交渉など交通事故における手続きについて少しでもご不安な方は、交通事故を多く取り扱う大阪(なんば・梅田)・堺・岸和田・神戸の弁護士法人法律事務所ロイヤーズ・ハイにまずは一度ご相談ください。