交通事故が起きたとき、最初に事故の状況について説明をする相手は【警察】となります。
警察は交通事故に対してどのようなことを行ってくれるのでしょうか?
ここでは、意外に知らない、交通事故での警察の役割についてご説明をさせていただきます。
目次
1 警察に交通事故の相談ができるのか
⑴警察への交通事故の報告は義務
交通事故が起きたら、必ず警察に報告をします。
道路交通法第七十二条では、警察への報告は義務とされており、警察への報告を怠った場合には、3ヶ月以下の懲役または5年以下の罰金が定められています。
双方に怪我もなく軽い物損事故だった場合や、業務中の事故、また、加害者側が免許取り消しの処分を受けてしまう可能性等があり、通報拒むこともありますが、被害者の方にとって警察に報告をしないということは、何の得にもなりません。利は加害者にしかありません。
本来は警察の報告は加害者側の義務ですが、拒否をされた場合は、違法であることを説明し、それでも報告をしない場合は、被害者の方が行いましょう。
⑵相談に応じてくれるわけではない
交通事故に遭った時、「警察に頼れば、なんとかしてくれる」と、警察が相談に乗ってくれると思っている方は少なくありません。
確かに先ほど述べたように、交通事故に遭ったら警察に報告をすることは必須です。
しかし、警察が被害者の方の相談に乗ってくれる、悩みを解決してくれるというわけではありません。
では、警察はどういったことを対応してくれるのでしょうか?
2 交通事故で警察がすること
⑴実況見分調書
まず、実況見分を行い、実況見分調書を作成します。
実況見分とは、警察が、事故や犯罪が起きた時に、現場における犯人や被害者、そして目撃者その他の位置関係や状況を明確にすることです。
交通事故の場合、警察は、事故の当事者らが現場に立ち会い、交通事故が発生した当時の状況について確認をします。
具体的には、事故がどのような原因で発生し、どのようになったかを記録するものです。
この時に作成された調書を【実況見分調書】と言います。
基本的に、交通事故の場合は、被害者の方と加害者は、双方の声が届かない程度の距離を置いて、それぞれ別々に警察から事情を聞かれます。
主張が双方で異なった場合、聞こえているとその場で諍いが起きてしまう可能性もあるからです。
⑵供述調書
実況見分調書を元に、警察は「供述調書」というものを作成してくれます。
供述調書とは、交通事故の直後に、加害者と被害者の方の当事者間の供述を記載した書類です。
供述を聴取した後、内容に間違いがないか加害者と被害者の方に確認を取り、双方の署名・捺印が行われて完成となります。
供述調書は、検察庁へ警察から送られ、刑事処分(起訴・不起訴)の判断がなされます。
注意しなければならないことは、実況見分調書、供述調書については、共に【事実ではないことは、認めないこと】が大事です。
たとえば、被害者の方が病院に運ばれている間に、加害者の方のみで実況見分を行う場合があります。
この時、残念ながら加害者は自分に都合のいいように警察に説明をすることは少なくありません。
警察は加害者の言うことをベースに作成するしかありませんので、加害者側に有利な内容で記載されて可能性は高いです。
これに被害者の方が署名・捺印をしてしまうと、その内容を認めたことになり、最終的に過失割合での争い時や裁判において、非常に不利になる場合があります。
基本的には、供述調書は後日、現場の所轄警察署へ出頭して作成され、署名・捺印をしますので、事故現場で求められる事はあまりありません。
しかし、交通事故に関する書類に署名・捺印を求められた場合は、たとえそれが事故直後で混乱する中であっても、必ず書類の内容と事実に相違が無いか確認をし、事実と違うことがある場合は、署名・捺印は拒否をしましょう。
⑶被害届は受理される
交通事故の被害者の方は警察に【被害届の提出をすること」が可能です。
被害届を提出するということは、「加害者を刑事罰に科してほしい」と警察に依頼をすることになります。
もしも、加害者の事故を起こした原因やその後対応に「許せない」という気持ちをお持ちの被害者の方で、刑事罰を望む場合は、警察に被害届を提出することを検討しましょう。
被害届については、警察署に赴き、被害届を提出したいことを伝えると書類を用意してもらえますので、被害者の方が作成して提出をしましょう。
交通事故の被害者の方本人が入院中の場合などは、家族や、場合によっては弁護士などが提出すること可能です。
なお、加害者がどのような刑事罰に処されるかは、警察が決めているわけではありません。
交通事故の場合、加害者は「過失運転致死傷罪」の疑いが警察よりかけられます。飲酒運転や道路交通法に違反していた場合は、他の罪の疑いがかかることもあります。
警察は、加害者が「過失運転致死傷罪」として罪に問うべきか否かを最初に判断し、罪に問うべきであると判断した場合は、検察庁へ書類送検することになります。つまり、警察の時点で「罪に問わない」と判断される場合もあります。
その後、検察が起訴、不起訴を判断し、起訴という判断が下された場合、有罪・無罪の裁判することとなります。
3 交通事故で警察がしてくれないこと
では警察がしてくれないことは、どういったことでしょうか?
⑴過失割合の決定
まず、過失割合について、警察には決定権がありません。
よく「警察から、『あなたの過失はないと思う』と言われたのに過失があるのが納得できない。」と被害者の方からご相談をいただくことがあります。
確かに、過失割合は、交通事故の当事者間の責任割合を示すことから、警察が決めるものであると思っている方は多くいらっしゃいます。
しかし、これは誤りであり、警察は過失割合を決めることはできません。
過失割合は、被害者の方が受け取る損害賠償金に大きく影響します。
そのため、民事不介入の警察は決定権を持つことはありません。
過失割合を提示するのはおおむね賠償金を支払う義務のある加害者側の保険会社であり、その割合に納得が否かない場合は、被害者の方自身か被害者の方が加入する任意保険会社、または弁護士が交渉をして、最終的な過失割合を決めていきます。
⑵慰謝料や損害賠償の相談
先ほども少し述べましたが、警察は民事不介入という原則があります。
そのため、慰謝料や損害賠償についての相談に対して警察は対応してくれません。交通事故の慰謝料や損害賠償は刑事事件ではなく、民事事件の分野です。
被害者の方が慰謝料や損害賠償の相談をするのであれば、自身が加入する保険会社か弁護士となります。
⑶示談交渉への対応
示談交渉についても、損害賠償金の内容、また金額を決めることになりますので、警察が対応をすることはありません。
被害者の方の損害賠償金は、加害者側の任意保険会社(もしくは加害者本人)と被害者の方(または被害者の方の代理人となった弁護士)が協議をして決めていきます。
つまり、警察は損害賠償金に関することは一切対応を致しません。
4 交通事故に遭ってしまったら、交通事故を多く取り扱う大阪(なんば・梅田)・堺・岸和田・神戸の弁護士法人法律事務所ロイヤーズ・ハイにご相談ください。
交通事故における警察の役割について、ご説明をさせていただきました。
警察は損害賠償金や過失割合といった民事関係については相談に乗ってはくれません。
その代わりに、警察は交通事故の詳細について捜査をし、最終的な過失割合を決める場合の重要な資料となる、供述調書や実況見分調書を作成してくれます。
損害賠償金や示談交渉の相談は、交通事故問題に精通する弁護士に相談をしましょう。
交通事故の損害賠償金関係のご相談は、交通事故を多く取り扱う大阪(なんば・梅田)・堺・岸和田・神戸の弁護士法人法律事務所ロイヤーズ・ハイにご連絡ください。
このコラムの監修者
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太田 泰規(大阪弁護士会所属) 弁護士ドットコム登録
大阪の貝塚市出身。法律事務所ロイヤーズ・ハイのパートナー弁護士を務め、主に大阪エリア、堺、岸和田といった大阪の南エリアの弁護活動に注力。 過去、損害保険会社側の弁護士として数多くの交通事件に対応してきた経験から、保険会社との交渉に精通。 豊富な経験と実績で、数々の交通事故案件を解決に導く。