交通事故 後遺障害 高次脳機能障害
2020.11.16 2024.04.25

交通事故で高次脳機能障害になった場合の症状について知りたい

交通事故で高次脳機能障害になった場合の症状について知りたい

交通事故に遭い、障害を負ったことで、大きく生活が変化する被害者の方は珍しくありません。

その中でも、治療を続けたにもかかわらず、後遺症として身体に障害が残ってしまった場合は、適切な損害賠償金を受け取るために、後遺障害の等級認定を受ける必要があります。

後遺障害の1つに「高次脳機能障害」と呼ばれるものがあります。

高次脳機能障害は、脳が損傷し、神経回路が傷つくことで生じる障害です。

障害の症状は多岐に渡り、記憶障害や注意障害、性格の変化等で現れます。

これは、日常生活に大きく支障を生じさせる重い障害である一方で、第三者からは見ても異常があるようには見えません。

さらに、被害者の方本人にも症状について自覚していないことが多いため、ますます周囲の理解を得にくい現状があります。

ここでは、高次脳機能障害の代表的な症状と、高次脳機能障害の後遺障害等級についてご説明をいたします。

交通事故の高次脳機能障害の症状

「脳の高次機能」というのは、記憶、思考、知覚、学習等の認知面、さらに感情面を含む精神状態を司る脳の機能をいいます。

冒頭でも述べたように、高次脳機能障害は、脳の損傷によって引き起こされます。

脳の損傷原因は、脳梗塞・脳出血・くも膜下出血等の脳血管障害や交通事故・労働災害等における受傷による外傷性脳損傷、その他にも脳炎や低酸素脳症等があります。

この中でも、高次脳機能障害の原因の大半を占めるのが、交通事故等による外傷性脳損傷と言われています。

では、具体的にはどのような症状があるのでしょうか?

 

認知障害

認知障害には、記憶障害、注意障害、そして遂行機能障害があります。

・記憶障害

受傷する以前の記憶、つまり過去の記憶を思い出すことができない逆行性の記憶障害と、新しいことを記憶できない前向性の記憶障害の2つに分かれる、高次脳機能障害の症状の中でも最も発症の多い症状です。

具体的な例を上げると、逆行性の記憶障害の場合、家族の顔や名前がわからなかったり、学生時代に思い出を全く覚えていなかったりします。

前向性の場合は、上司に仕事を任されても、任されたこと自体を忘れてしまうことや、物をどこに置いたか忘れてしまう等があります。

また、何度も同じ質問をしてしまうことも特徴の一つです。

・注意障害

集中力や注意力が低下する症状です。気が散りやすく、行動に統一性がなくなっていきます。

1つのことを集中して進めることができないだけでなく、2つ以上のことを同時に進めようとすると、混乱をきたしてしまうということがあります。

さらに、集中力がないことから、常にぼーっとしてしまうという症状も見られます。

その他にも、以前は関心があったことに対して、全くの無関心になってしまうという症例もあります。例えば、受傷する前は釣りが趣味であった被害者の方が、事故後は釣りの話を家族から聞いても、全く関心を示さないというものです。

・遂行機能障害

行動を計画して、実行することができないという症状です。人に言われるまで行動ができません。

また、物事に対しての優先順位をつけることができないことから、行き当たりばったりの行動がみられます。

さらに、約束の時間を守れないといった症状もあります。

 

行動障害

周囲の状況に合わせての行動、発言ができないという特徴があります。

また、自分中心に物事が進まなければ満足しない、自分の行動を制御できない、さらに、社会のルールやマナーが守れないという症状もあります。

具体的な例を挙げると、金銭管理が自身で全くできなくなったり、身だしなみに気を遣わなくなったりというものです。

じっとしていることができず、大声で叫んだり、症状が酷い場合は周りに暴力行為に及んだりすることもあります。

また、複数の動作が組み合わさることで、全く行動ができなくなる症状を指します。

例えば、「書く」「話す」「聞く」の単体の行動は可能です。

しかし、「書きながら話す」、「聞きながら書く」等といった「2つ以上のことが同時にできない」というものです。

 

性格変化

性格変化とは、感情面のコントロールがうまくできなくなるといった症状です。

具体的には、衝動的な行動や無気力、無関心の他、常にイライラしており、怒りっぽくなってしまった

周りの方にとっては、別の人間と接しているかのような錯覚に陥るレベルまで酷い場合もあります。

上記に挙げた、代表的な症状以外にも、失語症、失行症といった、思い通りに言葉を発することができない、日常生活において体には異変が無くてもうまく動作ができなくなるといったものもあります。

また、高次脳機能障害となった被害者の方の中には「障害に対する自覚が無い」という、病識欠如といった症状を発症するケースも多いです。

自覚症状がないため、治療やリハビリの拒否、また物事が上手くいかないことを他人のせいにするなどといったことがあります。

高次脳機能障害は、外見上は事故前と変化がないことが多いです。

その上、本人には自覚症状が無く、また、周囲の方々も「事故に遭ったせいでイライラしているのかな?」と思い【高次脳機能障害であること】に気づくことができず、症状が発見されにくいです。

頭部を強くぶつける等、何らかの衝撃を受けた事故で、上記のような症状の兆候が見られるケースでは、高次脳機能障害を疑い、すぐに医師の診察を受けましょう。

ただし、先ほども述べたように、被害者の方は気付くことが難しいため、ご家族の方が気付かなければ見過ごされてしまいます。

高次脳機能障害になったらどうする?

被害者の方が高次脳機能障害になったらどうすれば良いのでしょうか?

 

後遺障害等級の認定を受ける

まず、高次脳機能障害を含め、身体に完治せずに残った障害については、後遺障害等級の認定申請を行いましょう。

高次脳機能障害を含め、完治せずに残ってしまった症状について適切な補償を受けるには、「後遺障害」として等級が認定される必要があります。

ただし、高次脳機能障害は上記に挙げた症状にあるように、多岐に渡り、周りの方の協力が非常に重要となります。治療期間からのしっかりと準備を進めていかなければ、適切な認定結果を得ることは難しいです。

【高次脳機能障害における等級認定の条件】

高次脳機能障害を後遺障害として認定されるためには、大きく分けて以下の4つの条件を確認しましょう。

・交通事故の後、昏睡、半昏睡状態が6時間以上、あるいは意識障害が1週間以上継続している。

・交通事故により脳挫傷やくも膜下出血、びまん性軸索損傷(広範囲に散在する軸索損傷)があると診断名で出ていた。

・初期画像と比較して、慢性的な脳室の拡大、萎縮が認められる。

・高次脳機能障害の症状を疑う症状がある。

4つめについては、先ほど述べた高次脳機能障害特有の症状があるかどうかです。そして、その症状があることで、日常生活や仕事に影響が出ているかどうかも非常に重要です。

なお、医師の診断も大切ですが、ほとんどの場合、被害者の方と医師は交通事故後に初めて会うことになります。

そのため、日ごろの生活の支障具合、さらにご本人の性格の変化などを正確に把握することは極めて困難となるでしょう。

高次脳機能障害の症状について正確に医師が把握するためには、ご家族の方や周りの方々の協力が必須です。

「高次脳機能障害が出る可能性がある」と医師に診断された場合や、事故後、被害者の方に高次脳機能障害の兆候があると感じた場合は、どのような症状がみられるか等、メモに取るようにしましょう。

なお、その際は、日付も共に記載しておくことが大切です。

これらの条件を満たしているかを確認するために、検査・資料収集を行いましょう。該当していることが、調査機関に伝わるように申請しなければなりません。

ただし、これらすべての条件をすべて満たしていなければいけないわけではありません。条件が欠けていたとしても、認定の可能性はあります。

被害者の方に高次脳機能障害の疑いがある時は、まずは後遺障害等級の認定申請をするようにしましょう。

なお、高次脳機能障害の後遺障害等級申請は、集める資料も多く、また専門的な知識が必要であることから、弁護士に相談することをおすすめします。

 

損賠賠償の請求

後遺障害等級の認定申請を行い、等級が認定された場合でも、適正な金額が支払われるとは限りません。

特に高次脳機能障害の場合、損害賠償金が高額になることから、保険会社が支払いを渋るケースもあります。

適正な損害賠償金を受け取るためには、弁護士の介入は不可欠と言っても過言ではありません。

その理由は以下となります。

・後遺障害慰謝料の増額

後程、具体的な金額について述べますが、慰謝料を算定する基準には3つの基準があり、どの基準を使用するかによって、大きな差が出ます。

弁護士に依頼をした場合は、最も高額な基準である裁判所基準で示談交渉が進むのに対し、被害者の方自身で示談交渉を行った場合、相手の保険会社は、最も低額な算定基準である自賠責基準か、それを少し上回る任意保険基準(※算定方法は各保険会社で定めているため、明確な算定方法は非公開)で提示がなされます。場合によっては2~3倍金額に差が出ることもあります。

被害者の方は、弁護士に示談交渉を依頼し、裁判所基準でしっかり慰謝料を請求するようにしましょう。

・将来必要となる費用の確保

高次脳機能障害の場合、将来の介護費用も争点となります。

介護の必要が生じた際に「どの範囲まで将来の介護費を賠償させるか」という、非常に交渉が複雑化する傾向があります。

専門的知識や医学的知識がなければ、保険会社と交渉を進めていくことは極めて困難です。

交通事故問題の経験が豊富な弁護士でなければ、将来の介護費用の適正な金額の確保は難しいでしょう。

何故、将来の介護費用が難しいかというと、示談成立後も被害者の方の介護を続くことから、介護費用だけでなく、家屋などのリフォーム費用などといった、「将来かかる可能性のあるもの」を「何年の先の分まで」請求することが必要となります。

今後かかるであろう費用をひとつひとつ可能性、事実として積み上げる必要があるため、被害者の方自身や、被害者の方の介護と並行してご家族が交渉していくことは厳しいと言えます。

高次脳機能障害の後遺障害等級

等級によって慰謝料が変わる

後遺障害等級は1~14級の等級があり、症状の重さによって認定される等級は異なります。

等級が高ければ高いほど、補償される金額も高額となります。つまり、どの等級が認定されるかにより、慰謝料額等が異なります。

高次脳機能障害の場合は、以下の等級が認められる可能性があります。

 

別表第1 

等級 介護が必要な後遺障害 慰謝料
1級1号 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの

 

※食事・排泄・入浴など、生活維持に必要な身の回り動作に全面的介護を要する状態。就労することも不可能。

裁判所基準

2800万円

 

自賠責基準

1600万円

(1650万円)

2級1号 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの

 

※自宅に置いての日常生活に問題はないが、著しい判断力の低下や情動の不安定などがあり、外出することができない。

具体的には食事、排泄、入浴などの生命維持に必要な身辺動作に、随時家族からの声かけや看視を欠かすことができない状態。就労することも不可能。

裁判所基準

2370万円

 

自賠責基準

1163万円

(1203万円)

※()内は2020年4月1日以降の交通事故の場合

 

別表第2

等級 後遺障害 慰謝料
3級3号 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの

 

※自宅周辺を1人で外出はできるため、日常の生活範囲は自宅に限定はされていない。家族の声かけや、介助なしでも日常の動作は行える。

しかし、記憶力や注意力の他、新しいことを学習する、傷害の自己認識、円滑な人間関係の形成・維持が困難な状態のため、一般就労が全くできない状態。

 

裁判所基準

1990万円

 

自賠責基準

829万円

(861万円

5級2号 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの

 

※単純で分かりやすい、繰り返し作業だけである仕事に限定をすれば、一般就労は可能。

ただし、新しい作業を覚えること、環境の変化で作業ができなくなることなどの問題がある状態。

よって障害がない人に比べて作業能力がかなり制限される。職場の方の理解や援助がない限りは就労がかなり厳しい状態。

 

裁判所基準

1400万円

 

自賠責基準

599万円

(618万円)

7級4号

 

 

 

 

 

神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの

 

※一般就労が可能で、かつ維持も可能。ただし、作業の手順が悪い、期限を忘れる、ミスが極端に多くなる等、障害がない人と同じ作業・条件で行うことはかなり厳しい状態。

 

裁判所基準

1000万円

 

自賠責基準

409万円

(419万円)

9級10号

 

 

 

 

 

神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの

 

※7級4号と同じく、一般就労が可能で、かつ維持も可能。ただし、問題を解決していく能力に障害が残る。また、作業効率や作業持続力などに問題が出てくる状態。

 

裁判所基準

690万円

 

自賠責基準

245万円

(249万円)

※()内は2020年4月1日以降の交通事故の場合

 

上記の表からわかるように、被害者の方の日常生活にどこまで影響を及ぼすか、また仕事について、障害のない人と比べてどの程度できないか等が、後遺障害等級の判断基準となります。

なお、高次脳機能障害の疑いがある方の中で、12級13号:局部に頑固な神経症状を残すもの、14級9号:局部に神経症状を残すもの、が認定されるケースがありますが、これは「高次脳機能障害を検討されたものの高次脳機能障害としては認定されなかった」ということになります。

高次脳機能障害として認定されたことになるのは、9級10号以上の等級を獲得できた時となります。

 

認定された等級認定に不満がある場合

後遺障害等級認定を行い、納得のいかない、不満のある結果となった場合は、異議申し立てを検討しましょう。

異議申し立てを行う場合は、後遺障害診断書を修正したり、また新たに検査を行い、データを取得したり、医師に協力を得て、追加資料を提出する必要があります。

ただし、異議申し立てを行うためには交通事故の専門的知識・医学的知識が必要となり、被害者の方やご家族の方で、資料を用意して行うことは、非常に困難であり、また時間と手間もかかります。

高次脳機能障害の異議申し立ては弁護士に相談をすることをおすすめします。

弁護士に依頼をした場合、異議申し立てだけでなく、その後の加害者側のとの示談交渉も任せることができますので、被害者の方やご家族の負担は大幅に軽減されることになります。

高次脳機能障害のご相談は、交通事故を多く取り扱う大阪(なんば・梅田)・堺・岸和田・神戸の弁護士法人法律事務所ロイヤーズ・ハイへ

高次脳機能障害になってしまった場合の症状、並びにどのように対応していくのかについてご説明をさせていただきました。

以上を踏まえてお伝えしたいことは、高次脳機能障害の疑いがある場合は、早期の段階で弁護士に相談・依頼をすることを強くおすすめします。

先ほども申し上げましたが、被害者の方が高次脳機能障害だった場合、後遺障害等級認定を受けるためには、治療段階から気を付けていかなければならないこと、また手続きには多くの資料を用意しなければならないといったことがあります。

さらに、仮に後遺障害等級が認定されたとしても、保険会社から妥当な損害賠償金を受け取れるとは限りません。

高次脳機能障害は、後遺障害等級が下りた場合、将来の介護費用や被害者の方の本来得るはずだった収入(逸失利益)など、損害賠償額が巨額になる可能性があります。

そのため、保険会社との示談交渉は難航する傾向があります。

弁護士に依頼をすると、手間のかかる手続き関係は弁護士が代理人として行います。

さらに、最も高額な損害賠償額を算出する裁判所基準で被害者の方の損害を算定し請求することから、被害者の方やご家族の方が交渉を進めるよりも、スムーズであり、かつ増額する可能性が高くなります。

被害者の方に高次脳機能障害の疑いがある場合は、交通事故を多く取り扱う大阪(なんば・梅田)・堺・岸和田・神戸の弁護士法人法律事務所ロイヤーズ・ハイにご相談ください。

このコラムの監修者

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