交通事故の発生の多い場所を知っていれば、危険な場所に接近した際、注意深く走行することができます。
そこで、交通事故における死亡者数について、複数の観点から考察します。
目次
都道府県別 交通事故死亡者数
死亡者数ワースト・ベスト5
ア. 2020年
ワースト5 | 人数 | ベスト5 | 人数 |
---|---|---|---|
1. 東京都 | 155人 | 1. 鳥取県 | 17人 |
2. 愛知県 | 154人 | 2. 和歌山県 | 18人 |
3. 北海道 | 144人 | 2. 島根県 | 18人 |
4. 神奈川県 | 140人 | 4. 徳島県 | 20人 |
5. 千葉県 | 128人 | 5. 山梨県 | 21人 |
イ. 2019年
ワースト5 | 人数 | ベスト5 | 人数 |
---|---|---|---|
1. 千葉県 | 172人 | 1. 山梨県 | 25人 |
2. 愛知県 | 156人 | 1. 島根県 | 25人 |
3. 北海道 | 152人 | 3. 石川県 | 31人 |
4. 兵庫県 | 138人 | 3. 福井県 | 31人 |
5. 東京都 | 133人 | 3. 鳥取県 | 31人 |
以上の通り、東京都・千葉県・愛知県といった都市部の都道県が死者数の多い傾向にあるといえます。都市部の人口が多いという事実を踏まえれば、致し方ない面もあるかと思われます。しかし、大阪府や埼玉県といった更に人口の多い府県も存在するにも関わらず、なぜ千葉県や兵庫県の死者数が上回っているのかにつき、下記で検討します。(※1)
また、北海道の死者数の多い理由は、信号機の数が少なく道幅が広いという高速度運転を誘発する環境、積雪量が多いこと、車保有率が高く車移動が主流であるため自動車を利用する機会が多いといった、交通事故が発生しやすい地理的要因が考えられます。
他方、死亡者数の少ない県は、人口の少ないことが最大の要因であると考えられます。
ウ. なぜ、愛知県や千葉県が、大阪府や埼玉県よりも死者数が多いのか。
(※1)
㋐ 愛知県
最大の理由として、車保有率の高さが考えられます。他の三大都市圏と比較し、鉄道網があまり発達していないため、車移動の比重が高いと考えられること、世界最大規模の自動車会社の本社があり、関連企業を含め、自動車産業が発展しているといえることが要因であると考えられます。人口の多い都市部で、車を運転する時間が多ければ、比例して交通事故の危険が高まることは当然であるといえます。
他に考えられる理由としては、車が多いことによる路上駐車が多く、都市部である環境と重なり、見通しの悪い状況が多く作出されている点があります。
また、「名古屋走り」という言葉に表されるように、運転マナーの悪さも大きな影響を与えていると考えられます。ウインカーを出さずに車線変更をする者が多いこと、右折車両が対向車よりも先に進行するといった、名古屋には独自の道路交通法があるのではないかと疑われる数多くの慣習のことをいいます。これらの慣習は、他車の予測可能性に欠けるため、交通事故の増加に大きな影響を与えていると考えられます。
㋑ 千葉県
まず、東京都の隣の件であるため、越境通勤者が多く自動車の利用者の多いこと、首都高速といった交通事故の多い路線があることが考えられます。また、意外と面積が広く、地域によっては公共交通機関が発達しておらず、車利用者が多いという特徴もあります。名古屋同様、人口の多い件において、車を利用する割合が高ければ、交通事故の発生件数も多くなってしまうものと考えられます。
10万人当たりの死亡者数ワースト・ベスト5
ア. 2020年
ワースト5 | 人数 | ベスト5 | 人数 |
---|---|---|---|
1. 香川県 | 6.17人 | 1. 東京都 | 1.11人 |
2. 福井県 | 5.34人 | 2. 大阪府 | 1.41人 |
3. 高知県 | 4.87人 | 3. 沖縄県 | 1.51人 |
4. 三重県 | 4.10人 | 4. 神奈川県 | 1.52人 |
5. 佐賀県 | 4.05人 | 5. 埼玉県 | 1.65人 |
イ. 2019年
ワースト5 | 人数 | ベスト5 | 人数 |
---|---|---|---|
1. 徳島県 | 5.57人 | 1. 東京都 | 0.96人 |
2. 鳥取県 | 5.54人 | 2. 神奈川県 | 1.44人 |
3. 香川県 | 4.89人 | 3. 大阪府 | 1.48人 |
4. 高知県 | 4.67人 | 4. 埼玉県 | 1.76人 |
5. 栃木県 | 4.21人 | 5. 福岡県 | 1.92人 |
5. 岐阜県 | 4.21人 |
以上のように、死者数の多さと、10万人当たりの死者数の多さは比例するものではないことが分かります。
まず、このような結果となったことについて考えられる要因は、地方における高齢者が当事者となる事故です。都市部であれば、運転免許の返納、運転を辞めるという選択をすることが比較的容易であるといえます。しかし、地方部は公共交通機関の発達が未熟であるがために、日常生活の手段として自動車の運転が不可欠であるからです。
また、地方部では自動車の数が少ないことから、制限速度が高めに設定されていたり、自然と速度を出し過ぎることも多いといえるため、発生した事故が重大な結果となってしまうリスクが高いといえることも、要因として考えられます。この統計の反面として、都市部では、事故の発生件数自体は多くても軽微な事故であることが多いということも推察することができます。
死亡者の増減数ワースト・ベスト5
ア. 2020年
ワースト5 | 増減数 | ベスト5 | 増減数 |
---|---|---|---|
1. 東京都 | +22人 | 1. 千葉県 | -44人 |
2. 香川県 | +12人 | 2. 岐阜県 | -41人 |
3. 福井県 | +10人 | 3. 新潟県 | -29人 |
4. 石川県 | +9人 | 4. 兵庫県 | -28人 |
5. 神奈川県 | +8人 | 5. 茨城県 | -23人 |
5. 熊本県 | -23人 |
イ. 2019年
ワースト5 | 増減数 | ベスト5 | 増減数 |
---|---|---|---|
1. 滋賀県 | +18人 | 1. 埼玉県 | -46人 |
2. 北海道 | +11人 | 2. 福岡県 | -38人 |
2. 鳥取県 | +11人 | 3. 愛知県 | -33人 |
4. 徳島県 | +10人 | 4. 神奈川県 | -30人 |
5. 宮城県 | +9人 | 5. 富山県 | -20人 |
5. 大分県 | +9人 |
以上のように、特定の都道府県において増減数の顕著な特徴があるといった事実はないと考えられます。交通事故の死者数の増減数ベスト4位であった神奈川県が、2020年度はワースト5位になっていることからも分かります。
また、一度多数の方が死亡する年があった場合、次の年に減少数が多くなることは当然ともいえます。
したがって、増減数については大きな意味があるとはいえないと考えられます。
もっとも、2年間通じて、減少数の幅の方が大きく表れていることは良い傾向であるといえます。この点については、交通事故死亡者数の推移とともに詳しくご説明致します。
過去5年間の交通事故発生件数と死亡者数
交通事故死亡者数の推移
2016年から2020年の統計
年 | 件数 | 死亡者数 |
---|---|---|
2016年 | 499,201件 | 3904人 |
2017年 | 472,069件 | 3694人 |
2018年 | 430,345件 | 3532人 |
2019年 | 381,327件 | 3215人 |
2020年 | 309,000件 | 2839人 |
以上から、交通事故発生件数、死亡者数のともに減少の継続の傾向が分かります。この要因としては、シートベルト着用率が向上していること、走行速度が低下していること、事故原因の悪質性の低下、法令を遵守する歩行者が増加していることが考えられます。
そして、上記要因となった背景にある事実として、シートベルトの重要性における啓発活動の浸透、オービスや可搬式オービスといった高速走行を困難にさせる科学技術を用いた取締り方法の整備、自動ブレーキ装着率が増加していること、飲酒運転の厳罰化や・危険運転致死傷罪の新設といった制裁規定の浸透、歩行者のモラルの向上といったことが考えられます。
死亡者に占める高齢者の割合(※2)
約50%から60%の間において推移しています。
65歳以上は約30%である人口分布率と比較しても、死亡者に占める高齢者の割合は高いものであるといえます。
このように、高齢者の死亡者数に占める割合が高くなる理由として、高齢者の身体能力が若いころに比べ、低下していることが考えられます。
まず、高齢者の身体は若い人と比較し、丈夫でないことが考えられます。骨の強度や、筋肉量が低下すれば、同じ事故であっても致命傷となる確率が上がると考えられます。
次に、高齢者の判断能力の低下が考えられます。
ドライバー側の高齢者の判断能力の低下としては、ブレーキを踏む判断や、アクセルとブレーキの正しい選択といった場面において大きな影響を及ぼすと考えられます。
他方、歩行者側の高齢者の判断能力の低下としては、道路を渡る際のタイミングの悪さからくる飛び出し、危険な場所からの横断を躊躇う判断力の低下といったこと等に表れることが考えられます。
以上のように、高齢者には交通事故死亡リスクが多くの面から高いものといえます。
(※2)65歳以上を高齢者と定義しています。
交通事故が起きやすい場所
交差点付近の事故発生率
交差点内の交通事故発生率は、約35%とその他の場所と比較して最も高い割合となっています。
このように交差点における交通事故の発生率が高くなる理由として、歩行者と交錯するという性質、車両の進行方向も交錯するという性質といった、道路自体の要因が考えられます。
また、交差点はドライバーにとって、確認事項が多く、確認漏れによる事故のリスクが高いことも考えられます。
交差点において、ドライバーが確認すべき事項としては、信号の表示、左・右折車両の動向、対向車両の動向、後方車両の動向、横断者の有無、といったことをはじめ、さらに多くのことを確認する必要があります。
全ての確認事項を漏れなく、網羅的に確認できている人など皆無ではないかと考えています。巻き込み確認・サイドミラーに加えた視覚による後方確認といった教習所では行っていたことを、慣れてくると行わなくなっている人が多い点にも表れていると考えられます。
以上の点から、ドライバー側としては確認事項を徹底し、あらゆる想像力を働かせながら運転すること、歩行者側としてはドライバーが自分の存在を確認していると信じず、回避行動を含めた想像力の働いた行動が求められると考えられます。
事故に遭われたら、交通事故を多く取り扱う大阪(なんば・梅田)・堺・岸和田・神戸の弁護士法人法律事務所ロイヤーズ・ハイにご相談ください。
本記事では、交通事故の発生する危険な都道府県・場所についてご説明致しました。
都道府県別の統計からも分かるように、交通事故による死亡を防止するためには、都市部・地方部特有の事情を把握しておくことです。
都市部は交通量が多いため、必然的に事故リスクの高い場面に遭遇する数が多いといえます。他方、地方部は、交通量が少ないため、速度超過が起こりやすく、一度起きた事故が重大化するリスクが高いといえることです。
そのため、都市部では他車・歩行者の動向に注意することを徹底し、地方部では制限速度等交通規定の順守が強く求められるといえます。また、両者に共通して、予想外の行動にも対処できるように、日常から漫然と生きるのではなく、想像力を常に働かせておくことが重要といえると考えられます。
そして、交通事故の被害に万一遭われた場合は、交通事故を多く取り扱う大阪(なんば・梅田)・堺・岸和田・神戸の弁護士法人法律事務所ロイヤーズ・ハイにご相談ください。