妊娠している方は、特に身体へのケアが重要ですが、交通事故に遭ってしまうこともあります。
その際、母体のみならず、胎児の安全までも考慮して治療を行う必要があるため、いくつかの注意点があります。
そこで本記事では、妊婦の方が交通事故の被害に遭った場合、受診すべき病院、胎児への影響を考えた治療範囲や施術方法についてのご説明を致します。
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目次
1 妊娠中に交通事故が起きた場合
⑴まず整形外科を受診
交通事故被害に遭った場合は、医療機関における診断を受け、身体に異常がないこと、あるならば異常の早期発見の確認が重要です。
そのため、まず整形外科を受診しましょう。整形外科を受診する目的は、母体に異常が起きていないかの確認、異常が起きている場合は母体の治療のためです。この点については、妊娠していない被害者の方も同様ですが、妊娠している方は特に注意が必要です。
⑵産婦人科の受診も必要
妊娠している方特有の受診先として、産婦人科の受診も不可欠です。胎児については整形外科では基本的には診断の対象外ですので、胎児に異常がないかを確認することの目的です。
⑶むちうち、捻挫等なら整骨院も併用
前述の通り、整形外科と産婦人科の受診は不可欠であることを前提に、整骨院の利用が治療に有用であるケースもあります。
具体的には、むちうち症や捻挫といったような慢性的な痛みのあるケースでは、整骨院における継続的なマッサージ等の施術が症状の改善に役立つ場合があります。
整骨院を受診する場合は、保険会社から確実に慰謝料を支払ってもらうためにも、整形外科において医師から整骨院利用への指示や同意をもらうことを忘れないようにしましょう。
参考:交通事故でむちうちのため、整骨院へ通院した場合の請求項目
2 胎児に影響が出ない治療範囲
⑴レントゲン検査や投薬に制限
まず、妊婦の方はレントゲン診断を受けるにあたり、胎児への影響について不安を覚えられる方も多いと思います。
しかし、実際にはレントゲン診断を受けることができますし、母体の治療のことを考えると、受けることが望ましい場合もあります。
また、負傷箇所の多さや撮影を要する枚数、その他個別具体的な事情によって異なる可能性もあるため、全ての場合に当てはまるわけではありませんが、母体や胎児への影響について正確に把握する必要があるといえるため、公益社団法人日本放射線技術学会の説明を要約してご説明致します。
第一に、中絶が必要になるのは、100Gy以上の胎児線量という相応のレベルで放射線被ばくをした場合です。一部の放射線治療等を除けば、通常はこの数値を超えることは極めて稀であるとのことです。
第二に、出生前死亡や奇形・精神発達障害のリスクの増加につきましては、通常多く実施されるレントゲン診断等によって自然発生率を上回ることは原則としてないとのことです。
また、人工的な放射線被ばくの無い場合と比較し、100Gy以下の胎児線量のレントゲン診断等を受けた場合、放射線誘発の小児がんや白血病のリスクが明白に増加するということはありません。
第三に、レントゲン撮影等をする際に、胎児がX線ビーム内に入らなければ、撮影部位を限定しているため、胎児の被ばくはほとんどないとのことです。妊娠早期であれば、さらにその影響は低いとのことです。
以上の通り、結論としては、特殊な被ばく量の多い放射線等を除くという制限はあるものの、医学界は妊娠している方がレントゲン診断を受けることを否定的には考えていません。
もっとも、いくら医学的な学会に見解や科学的な根拠という理論上の根拠があったとしても、心情的な不安が残ることはあると思います。その際は、医師に一度相談してみましょう。
次に、麻酔や投薬治療については母体への吸収を通じて胎児に影響が出る場合もあります。この点については、薬の成分や、体質など様々な具体的な事情を考慮して、影響の有無や程度を医師や薬剤師が判断すべきことであると考えられます。外見からは妊娠していると分からない場合もありますので、必ず医師や薬剤師に妊娠している旨を告げ、影響の有無・程度についての相談をしましょう。
3 胎児に影響が出ない施術方法
⑴湿布や電気治療等を制限
まず、湿布は外用消炎剤というところ、皮膚から吸収された消炎作用が血管を収縮させ、炎症物質を閉じ込め、痛みが広がらないようにするという働きがあります。
胎児に血管を伝い栄養を受け取っているところ、この働きにより妊婦の方の血管が収縮する結果、胎児が血流障害を起こしてしまうというリスクがあるのです。
もっとも、全ての湿布にこの働きのある危険な症状があるとは限りません。医師や薬剤師への相談が重要です。
次に、電気治療は電流を身体に流すという性質や、少量であっても電磁波が伴う場合もあります。これらの電気による影響が胎児に対して影響を与えてしまうことも考えられる点がリスクです。
もっとも、この治療法もすべての場合に使用できないというものではありません。そのため、医師への相談が重要です。
⑵マッサージ等の手技療法
前述の理由から、妊娠中はマッサージ等の手技療法がリスクの少ない治療法であると考えられています。
血流が良くなったりと、体調維持の為にも良い影響がある場合もあるようです。
マッサージ等の手技療法は、整骨院で行われることが適切な場合もあります。この場合は、後々のトラブルの防止のために、医師からの整骨院利用への指示や同意をもらってから行くようにしましょう。
4 交通事故を多く取り扱う大阪(なんば・梅田)・堺・岸和田・神戸の弁護士法人法律事務所ロイヤーズ・ハイにご相談ください。
本記事では、妊婦の方が交通事故の被害に遭った場合、受診すべき病院、胎児への影響を考えた治療範囲や施術方法についてのご説明を致しました。
このように、妊娠していたとしても受けることのできる治療はあります。
まず、母体を健康に保つことが胎児の健康につながるといえるため、できる限りの治療をすることが望ましいと考えられます。
医師への相談が最も重要です。セルフジャッジで受診をするか否かを決めることは避けましょう。
そして、妊娠している方が交通事故に遭った際、治療費が通常と比較して高額になる恐れや、交通事故による胎児への影響の有無や程度により、損害賠償額が高額になる可能性があるため、トラブルとなることもあります。
交通事故後に妊娠している方がトラブルになった場合、妊娠しているだけで負っている身体への負担、交通事故による負傷という身体への負担、胎児への影響という精神的負担に加えて法的処理という精神的負担を負うことになります。
そのような負担を負っている方に対し、保険会社は平気で低い賠償額を提示してきますし、舐めた態度を取ってくることもあります。
そのような相手に対し、被害者本人が単独で利益を守ることは難しいでしょう。そこで、交渉力に長けている法の専門家である弁護士に相談されることをお勧め致します。
その際は、多くの負担を負っている被害者の方に対し、寄り添ったリーガルサービスをご提供する大阪(なんば・梅田)・堺・岸和田・神戸の弁護士法人法律事務所ロイヤーズ・ハイにご相談ください。