事故に遭われた方が、お仕事をされている場合、会社員の方は休業損害証明書を、自営業の方は確定申告書等の収入のわかる書面を元に相手の保険会社に請求をしていきます。では、主婦・主夫の方はどうなるのでしょうか?収入はないから0円になるのでしょうか?
交通事故に遭われた主婦・主夫の方にとって家事や育児を十分にできず、非常につらい思いをされている方は少なくないです。そうなった時にどうするのか、をここではご紹介します。
目次
主婦・主夫の休業損害を請求できるのか?
家事従事者の対象
そもそも休業損害とは、交通事故による怪我の影響で仕事ができなくなり、治癒あるいは症状固定までの期間働くことができず、収入が減少したことによる損害のことをいいます。事故に遭わなければ得るはずだった給与を相手方から休業損害として支払われることになります。では主婦・主夫の場合はどうなるのでしょうか?
実はこれも請求が可能です。主婦がしている家事労働は社会的に金銭的評価ができるものと考えられているからです。
休業損害は仕事をしている人と家事をしている人=家事従事者が請求できるもの、となります。もちろん男性も家族のために家事を行っている方なのであれば請求対象に含まれます。なお、交通事故にあっても収入が減らない年金生活者や生活保護受給者は休業損害の請求はできません。
必要書類
請求にあたっては、【主婦・主夫】であることを証明するために必要な書類があります。それは【住民票】です。役所にて【家族分の記載がある住民票】が取り寄せていただく必要があります。なお、保険会社によっては、家族の皆様の職業を確認するケースや兼業主婦の方の場合は事故の前年度の源泉徴収票の提出を求められることもあります。
パート、アルバイト等で不定期に収入がある場合は?
基礎収入額の算定
主婦の方の中には、パートをされている方も少なくはないです。兼業主婦の方の1日あたりの基礎収入は、現実の収入額あるいは女性労働者の全年齢平均の賃金額の高い方を基礎とします。なお、週30時間以上フルタイムで働かれている場合は、原則、給与所得者として扱われることがほとんどです。
まったく収入のない家事従事者の場合は?
主婦手当の請求
収入がまったくない家従事者、いわゆる専業主婦の方の場合も、主婦の休業損害を請求できます。
そもそもこういった慰謝料や休業損害を計算するに当たっては、3つの算定基準が使用されます。低い基準から自賠責保険基準、任意保険基準、裁判所基準(弁護士基準ともいいます)となり、弁護士が介入した時は一番高く、かつ適正であるとされる裁判所基準が使用可能となります。自賠責保険基準は被害者を最低限救済することが目的となるため、金額は低く、任意保険基準も各保険会社が独自で定めている基準での計算となるため、自賠責保険基準と同じく低い傾向があります。
ただ、金額は低いですが、主婦の休業損害については自賠責保険会社でも認められています。自賠責保険基準では、【日額5,700円×通院日数分】で計算されます。主婦手当について請求することは何らおかしいことではありません。
家事労働の経済的な価値
先ほど述べたように、家事については実際に収入が発生しているわけではありません。しかし、もしこの家事を他の人に依頼をした場合には、対価を支払うことになります。例えば、家政婦などの家事代行サービスはそれに値します。よって家事労働には経済的価値があると考えられます。最高裁でも昭和49年7月19日に下記のような判決がされています。
家事労働に属する多くの労働は、労働社会において金銭的に評価されうるものであり、これを他人に依頼すれば当然相当の対価を支払わなければならないのであるから、妻は、自ら家事労働に従事することにより、財産上の利益を挙げている
こう考えると、主婦・主夫の休業損害は支払われるべきものだとなります。
主婦・主夫だと会社員より安くなるのか?
相場
主婦の日額についてですが、裁判所基準では、おおよそ約1万円程度とされています。これについては後ほど計算式も含めてご説明をいたします。
では会社員はどのように計算されているのでしょうか?
会社員の方は基本的に【実損害分】になります。勤務先に書いてもらった休業損害証明を元に、事故前3か月前の給与を合計し、その数字を稼働日数ないしは90日で割り、日額を出します。日額から【実際に仕事を入院・通院のために休んだ日、遅刻早退をした日】をかけます。結果会社員の方はもともとの収入によって大きく金額は左右されます。
主婦・主夫の場合、休業損害の算定方法は?
年齢別平均賃金
主婦の1日のあたりの基礎収入は自賠責基準・任意保険基準では【日額5,700円】とされます(令和2年4月1日以降の交通事故関しては日額6,100円に改正されています)。
対して裁判所基準は、【事故前年度の賃金センサスの女性労働者の全年齢平均の賃金額を365日で割ったもの】が日額とされます。例えば、平成31年(令和元年)に事故に遭われた主婦の方の場合、平成30年の賃金センサスの女性労働者の全年齢平均の賃金額は382万6,300円であり、365日で割ると、日額10,483円となります。賃金センサスによる日額は年度によって多少異なりますが、相場はおよそ1万円程度となります。なお、専業主夫であっても、計算は専業主婦と同じです。裁判所基準であっても女性の労働者の全年齢平均の賃金額を基礎とされます。
計算式
日額が分かれば、次は休業日数です。先ほど、会社員の方は休業した日数で計算すると述べましたが、主婦の場合は、【入院していた日数・実通院日数】を基礎とすることが多いです。具体的な数字で見てみましょう。
(計算例)専業主婦の方が3か月で30日通院をした場合(平成31年事故)
・自賠責基準…日額5,700円×30日=171,000円
・裁判所基準…日額10,483円×30日=314,490円
実際計算をすると、自賠責基準と裁判所基準の差がどれほどのものかわかります。ただし、主婦・主夫の休業損害は「通院の日すべての日数」が認定されることは非常に難しいです。何故ならば、人間の体は徐々に痛みに慣れて、家事への影響が軽減されていくと考えられるからです。
では、どのように計算をするのでしょうか?これは様々な方法がありますが、保険会社によっては最初の1か月分しか認めません、とするケースは少なくありません。弁護士が入った場合は、事故から完治あるいは症状固定までの期間において、段階的に休業割合を減らし休業日数を計算することがあります。例えば、事故から完治まで180日としましょう。最初の30日間は100%家事ができなかった、次の30日間は80%休業、その次は60%休業・・・といったように割合を保険会社と交渉をしていきます。
いずれにせよ、保険会社は主婦・主夫の休業損害については否定的な考えた方が多いので、この「主婦・主夫の休業損害の期間」はかなり争点になります。
主婦の休業損害のご請求は大阪(なんば・梅田)・堺・岸和田・神戸の弁護士法人法律事務所ロイヤーズ・ハイにおまかせください。
主婦・主夫の休業損害の対応は保険会社によって様々で、中では全く認めてくれない保険会社もあります。主婦の休業日数は会社員の方と違い、明確ではないからです。
そういった事態になる前に、まずは弁護士に相談し、適切なアドバイスを受けるが望ましいと言えます。
主婦・主夫の休業損害を支払わないとされたとき、ご自身による交渉は非常に困難です。弁護士に相談することで、被害者請求により、自賠責保険会社への請求も検討できます。
収入が発生していないから、相手方に支払いが無理だと言われたからと諦める前に、交通事故を多く取り扱う大阪(なんば・梅田)・堺・岸和田・神戸の弁護士法人法律事務所ロイヤーズ・ハイに一度ご相談ください。