目次
1 保険会社からの賠償金は妥当な金額?
交通事故の示談時に保険会社から支払われる賠償金額(示談金額)が、妥当なのかどうか、正確に判断できる方は多くはないでしょう。そもそも、保険会社の示談金提示額は何を根拠とし、算出しているのか不明瞭な点があるからです。
では、『損害賠償金がいくらであれば相場だと言えるのか?』という疑問があるかと思いますが、実は損害賠償金に相場というものがありません。よくインターネット上の記事では『相場』として特定の金額が記載されているケースが多いですが、それは単純に「慰謝料」の相場であることが多く(正確に言えば慰謝料にも相場ありません)、「損害賠償金」の相場ではないことに注意が必要です。
2 保険会社から受ける損害賠償金が妥当かどうか判断するには?
⑴損害賠償金(示談金)に含まれる項目を把握しておく
例えば、保険会社から支払いを受ける賠償金には主に6つの項目があります。
①治療費
②車の修理費
③入通院慰謝料
④後遺障害慰謝料
⑤交通費(入院等にかかる)
⑥休業損害(休む必要性を認められた場合)
※逸失利益:別途
通常、保険会社の提示する賠償金額は、弁護士の用いる基準よりも低く算定していることがほとんどです。理由として、保険会社は保険金の支払いを極力抑えたいわけですから、被害者の治療費や修理費以外といったわかりやすいもの以外(慰謝料や過失割合)は、あいまいなままにしておきたいというのが本音です。
⑵過失割合の適正な算定が行われているか
過失割合(かしつわりあい)とは、交通事故当事者のどちらが、どの程度悪いのかを数値化したもので、歩行者と自動車の場合、原則的には自動車側の過失割合が高くなります。この過失割合が【加害者:被害者】で7:3なのか、6:4なのかで、被害者が受ける損害賠償額に大きな差が生じます。
過失割合には明確に基準を定めていますが、実際の過失割合を決定するのは保険会社です。 保険会社の担当者は交通事故に詳しい人間ではありますが、過去の交通事故判例と事故状況を照合して、過失割合の数字を事務的に決めているケースが多く、正確な数字ではない場合もあります。
そのため保険会社から提示された過失割合が、何を根拠に決定しているのか、根拠の提示を求めることが良いでしょう。
⑶慰謝料は弁護士基準を元に算出されているか
交通事故の慰謝料には『自賠責保険基準』『任意保険基準』『弁護士基準(裁判所基準)』の3の基準があり、基本的には「弁護士基準」を元に算出するのが最も適正な金額になります。
自賠責基準が最低限の保障を目的とした基準であることに対して、弁護士基準(裁判所基準)は、過去の判例を元に導き出される基準であるため、最も妥当性の高い慰謝料が認められる傾向にあります。
例:入通院慰謝料における基準別の金額例 1ヶ月(30日)の治療期間中に14日通院をした場合
●自賠責基準の場合
・4,200円×治療期間 ・4,200円×実通院日数(実通院日数)×2
※金額が少ない方を適用 4,200円×30日=12万6,000円 4,200円×14日×2=11万7,600円 ← 採用
●弁護士基準の場合
<通常の弁護士基準による入通院慰謝料の表(単位:万円)>
<むちうち症で他覚症状がない場合に適用される入通院慰謝料表(単位:万円)>
⑷弁護士に損害賠償額の算定を依頼する
自分が保険会社から提示された損害賠償金が適正なのかどうか、正確に算定したい場合は弁護士に依頼するのが最も安心な方法かと思います。事故容態、提示された金額、過失割合の内容など、細かい状況を弁護士に伝えることで、適正な損害賠償金の算定が可能です。
もし、提示された金額が相場よりも低く、妥当性が薄い場合は、そのまま弁護士に依頼することで保険会社との示談交渉も任せることができます。被害者自身で『妥当ではない』と主張することも勿論できますが、交通事故に詳しくない方からの主張を取り合わない可能性も考えられます。 不本意な金額で納得させられてしまう前に、早急な相談がおすすめです。