交通事故に遭えば,治療費などがかかるうえに,仕事を休まざるをえない場合があります。
収入が入らなくなれば多額の経済的損害を被るので,収入分の金銭も加害者に請求したいと考えるでしょう。
また,後遺障害が残れば,後遺障害が残ったことに対する慰謝料も請求したいと考えるでしょう。
そこで,交通事故の被害者は,加害者に対して,どこまでの損害について損害賠償請求をすることができるか,どのように損害賠償請求すればよいかについてご説明いたします。
目次
1 交通事故の損害賠償とは
交通事故の被害者は,違法な行為によって損害を受けているので,加害者に対して不法行為に基づく損害賠償請求をすることができます。
民法709条では不法行為について規定されています。
(不法行為による損害賠償)
第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
2 交通事故で加害者に請求できる14個の項目
それでは,交通事故の加害者に対して,どのような損害を請求できるのでしょうか。
財産的損害 | 積極損害 | 治療費 | 治療のために病院にかかった実費全額を指す |
通院交通費 | 治療のために病院へ通院するための交通費を指す | ||
車の修理費 | 事故を原因として,車の修理にかかった費用を指す | ||
代車費用 | 交通事故が原因で,車を使用できない期間に,代わりの自動車を使用するのにかかった費用を指す | ||
装具・器具購入費 | 交通事故が原因で怪我を負い,購入が必要になった器具等の費用を指す。例えば,松葉づえやメガネの費用などがある | ||
付添看護費 | 被害者の通院に付き添いが必要だった場合にかかる費用を指す | ||
入院雑費 | 入院中に発生した日用雑貨の購入費などの雑費を指す | ||
将来介護費 | 交通事故が原因で後遺障害が残り,介護が必要になった場合の介護費用を指す | ||
葬儀費用 | 被害者が死亡した場合,通夜や葬儀などの法要にかかったお金を指す | ||
消極損害 | 逸失利益 | 交通事故を原因とする後遺障害や,被害者が死亡した場合に得られなくなった将来の収入に対する補償を指す | |
休業損害 | 事故前の収入を基礎として,交通事故による受傷によって休業したことの収入減を指す | ||
精神的損害 | 慰謝料 | 入通院慰謝料 | 怪我の治療などが原因で精神的苦痛を受けたことに対する金銭的な補償を指す |
後遺傷害慰謝料 | 後遺障害が原因で,将来にわたって不便を強いられたり,辛い思いをすることで生じる精神的苦痛に対する金銭的補償を指す | ||
死亡慰謝料 | 被害者が死亡した場合の,被害者本人・遺族の精神的苦痛に対する金銭的な補償を指す |
なお,⑴交通事故による損害事故で整骨院の施術費などを請求できるか,⑵交通事故で受け取れる損害賠償の相場について,それぞれ当事務所の次のコラムでご紹介しているので,ご覧ください。
3 交通事故で加害者に請求する方法とその流れ
⑴加害者に損害賠償請求する方法4つ
①示談
当事者同士が話し合って、双方が納得できる条件で話をまとめて解決する方法です。
費用的にも時間的にも負担が少なく、もっとも簡単に解決できる方法と言えます。
②調停
簡易裁判所において、裁判のような厳格な手続きを行わずに、調停委員が立ち会って話し合いによって解決する手続きです。
③裁判(訴訟)
当事者の話し合いによって解決できない場合に、当事者の具体的な言い分や証拠物に基づいて裁判官が事実認定をし、事故の責任の有無や過失割合の程度、賠償すべき金額などについて法律的判断を下すという手続きです。
④和解
裁判で争っている間に、当事者が和解の申し出をした場合や裁判所から和解勧告があった場合に行われる手続きで、裁判官に当事者の間に立ってもらい、話し合いによって紛争を解決する司法手続きです。
なお、示談が成立している場合に、その内容に強制力をもたせる(示談の内容が守られない場合に、相手方の資産の差し押さえ等を行うことによってその内容を強制的に実現させる)ために簡易裁判所に和解調書を作成してもらう手続きを「即決和解」と言います。
⑵加害者に損害賠償請求する流れ
①示談で合意できる場合
(ア)交通事故による損害が確定
示談交渉は,損害が確定してから開始します。
具体的な内容については,後述の,4交通事故で加害者に請求する際の注意点の中の,⑴示談交渉の開始時期で記載しています。
(イ)示談交渉
加害者が任意保険に加入していれば,保険会社が示談交渉の相手方となります。
加害者が任意保険未加入であれば,加害者と直接示談交渉を行うことになります。
(ウ)示談成立・示談書の作成
示談が成立すれば,示談書を作成します。
示談は成立後にやり直すことができないのが原則です。
そのため,示談書を作成するにあたっては内容に見落としがないよう,注意深く確認しましょう。
なお,交通事故の示談を取り消すことができるかについて,当事務所の次のコラムで詳しくご紹介しているので,ご覧ください。
交通事故の示談を取り消すことはできる?取り消しについて知りたい!
②示談で合意できない場合
示談交渉で合意できなければ,調停や訴訟を利用します。
訴訟を利用した場合,判決や和解によって解決がなされます。
4 交通事故で加害者に請求する際の注意点
⑴示談交渉の開始時期
請求もれを防ぐため,示談交渉は損害が確定した時点から行います。
そのため,示談交渉の開始時期に注意しなければいけません。
損害の確定する時期は,事故の種類によって変わります。
①後遺症なしの人身事故
怪我が完治すれば,それ以上新たな損害が生じることはないです。
そこで,怪我が完治した時点から示談交渉を始めることができます。
②後遺症ありの人身事故
後遺障害等級認定の結果が出れば,後遺障害慰謝料や後遺障害逸失利益を請求できるかどうかと,請求できる額が分かります。
そのため,後遺障害等級認定の結果が出た時点から示談交渉を始めることができます。
③死亡事故
葬儀と四十九日の法要が終わってから示談交渉を始めることが多いです。
なぜなら,四十九日の法要までの葬儀費用を請求することができるからです。
なお,交通事故の示談交渉にかかる期間について,当事務所の次のコラムでご紹介しているのでご覧ください。
交通事故の示談交渉にはどのくらいの期間がかかるのか知りたい!
⑵時効
交通事故の加害者に対する損害賠償請求権には時効があります。
時効期間が過ぎれば,損害賠償請求を行うことはできないので,時効が過ぎるまでに示談を成立させる必要があります。
民法724条,724条の2において時効期間が定められています。
(不法行為による損害賠償請求権の消滅時効)
第七百二十四条 不法行為による損害賠償の請求権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないとき。
二 不法行為の時から二十年間行使しないとき。
(人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効)
第七百二十四条の二 人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効についての前条第一号の規定の適用については、同号中「三年間」とあるのは、「五年間」とする。
そこで,時効期間は損害項目ごとに,以下のようになります。
傷害に関する費目:事故の翌日から5年 後遺障害に関する費目:症状固定の翌日から5年 物損に関する費目:事故の翌日から3年 死亡に関する費目:死亡の翌日から5年 |
5 弁護士に依頼するメリット
⑴示談が早く成立する可能性が高い・示談交渉の手続きを代理してもらえる
示談交渉に慣れている方はほとんどいないでしょう。
そのため,被害者ご本人で示談交渉を行えばストレスがかかりますし,示談交渉も長期間にわたる可能性があります。
これに対して,弁護士は示談交渉に慣れているので,示談交渉をスムーズに進めることができますし,被害者にかかる負担が小さくなります。
⑵示談金の増加が期待できる
加害者側の保険会社が提示する示談金は相場よりも低いことが多いです。
一方で,弁護士が交渉すれば,「弁護士基準」と呼ばれる過去の裁判例をもとに設けられた基準に基づいて示談交渉を行うことができます。
「弁護士基準」で計算した方が,示談金が高くなります。
また,弁護士相手であれば,保険会社は訴訟に発展することを恐れ,態度が軟化する可能性も高いです。
そのため,示談金の増加を見込めます。
6 まとめ
損害賠償請求できる項目,損害賠償請求の方法,その際の注意点についてご説明させていただきました。
損害賠償請求を行うことができる項目,相場がいくらかについて知らなければ不当に低い金額のまま示談をしてしまうことになります。
示談交渉に慣れている方は少ないので,弁護士基準で適正な損害賠償金を請求するには、弁護士に依頼をするしかありません。
加害者に対して損害賠償請求を行おうと考えている場合,まずは弁護士に相談をしましょう。
当事務所の弁護士は,交通事故案件の経験が豊富です。交通事故に遭って損害賠償請求を行いたい方は、交通事故を多く取り扱う大阪(なんば・梅田)・堺・岸和田・神戸の弁護士法人法律事務所ロイヤーズ・ハイにご相談ください。