交通事故の怪我が原因で仕事を休んだり、辞めざる得なくなったりする被害者の方がいます。
この場合、被害者の方は金銭的な余裕がなくなり、一刻も早く示談金を受け取りたいと考えるでしょう。
では、交通事故の慰謝料を含む示談金はいつ受け取れるのでしょうか?
ここでは慰謝料の支払いの時期について、中心にご説明をいたします。
目次
1 交通事故の慰謝料支払いが遅いのはなぜか?
⑴慰謝料が支払われるまでの流れ
交通事故の示談交渉が終わり、示談が成立すると、加害者の保険会社より慰謝料を含む示談金が支払われます。
この成立から振り込みまでですが、期間を分けると3段階あり、少なくとも2週間はかかるとお考え下さい。
①相手方である加害者の保険会社から示談書(もしくは免責証書)が届くまでの期間
②被害者が示談書の内容に問題がないかどうかを確認し、署名や捺印の他、必要事項の記載をし、郵送するまでの期間
③加害者の保険会社が被害者の口座に振り込むまでの手続きの期間
①、②に関しては数日~1週間程度、③についは不備がなければ相手の手元に書面が届いてから2~3日程度見たほうが良いでしょう。
⑵示談交渉にかかる期間
加害者側の保険会社との示談交渉には時間がかかります。
そもそも、示談が始まるタイミングは【すべての損害が確定した段階】となります。
示談交渉の開始の時期目安は以下の通りです。
①物損事故
交通事故後1か月後に交渉開始ができるケースが多いです。
双方の車両の修理や、買い替えなどの時期がおおよそ1か月で終了するからです。ただし、トラックなどの社用車の場合、修理をすることが遅れることがあるため、そういった場合は開始が遅れることもあります。
なお、過失の割合等に争いがなければ交渉開始~成立までは1~2か月が目安です。
②人身事故
怪我が完治した場合は、その1か月後が示談交渉の開始時期の目安です。
多くの病院が、被害者の治療費を保険会社へ請求するタイミングが治療を終えた月の翌月となるため、治療終了~開始までは1か月は要します。
残念ながら身体に後遺障害が残り、症状固定となった場合、後遺障害等級認定の申請を行うこととなります。
この場合、被害者の損害が確定するのは後遺障害の結果次第となりますので、結果が出た段階での示談交渉となります。
なお、治療を終了=症状固定をしてから、申請をし、結果が出るまでは最低でも4か月程度は見たほうが良いでしょう。
示談交渉開始から示談成立までは、案件にもよりますが、1か月~3か月程度、後遺障害の等級が重い場合は、半年ほどかかることもあります。
③死亡事故
死亡事故については、すぐに亡くなられた場合については、病院の通院期間がないため、損害が比較的に早く確定します。よって示談交渉を早く始めることは可能です。
しかし、実際はある程度の期間を空けてから示談交渉を開始します。
理由としては、被害者遺族への配慮です。被害者は死亡していますので、交渉は被害者遺族の相続人になります。
被害者遺族の気持ちを考え、多くの場合は、四十九日も葬儀関係費用として請求できるものがあるので、四十九日から終わり、数週間後に示談交渉が開始されることが多いです。
また、死亡事故の場合、民事責任だけでなく、刑事責任を問う刑事裁判を行われることもあるため、刑事裁判が終了後に行われる可能性もあります。
示談交渉開始から示談成立までは、死亡事故の場合は3か月~半年、長い場合は1年ほどかかることもあります。
参考:交通事故後の示談交渉を弁護士に依頼した場合の期間はどれくらい?
2 慰謝料請求の注意点
⑴慰謝料の種類と基準
交通事故における慰謝料は、精神的苦痛に対する損害賠償金です。この慰謝料には3つの種類があります。
①入通院慰謝料(傷害慰謝料)
交通事故により被害者が、傷害を負い、入通院を余儀なくされた場合に認められる慰謝料です。入院、通院と治療を受けた期間の長さ、日数に応じて支払われるので、入通院慰謝料と呼ばれますが、傷害を負った場合、認定されるので、傷害慰謝料とも呼ばれています。
傷害を負い、病院に通院した場合に発生する慰謝料の為、病院に行かなかった場合は、被害者は受け取ることはできません。
基本的に入通院の期間を基礎として算定するため、期間が長くなればなるほど、慰謝料の金額は上がります。
また、入院と通院では、入院したほうが重症とみなされ、たとえ同じ期間であっても、慰謝料は通院より入院の方が高額になります。
②後遺障害慰謝料
交通事故により被害者が、傷害を負い、さらに、後遺障害が残存し、自賠責調査事務所で審査された結果、後遺障害の等級が認定された場合に、後遺障害が残ってしまったことによる身体的、精神的苦痛として認められる慰謝料です。
後遺障害の慰謝料は、残った傷害の内容、等級によって大きく金額は変わります。等級が重くなればなるほど、後遺障害慰謝料は高額となります。
③死亡慰謝料
交通事故により被害者が、死亡した場合、死亡させられたことに対する慰謝料です。
被害者遺族も被害者が死亡したことで、精神的な苦痛を受けるため、死亡慰謝料は遺族にも独自の請求権が認められます。
そしてこれらの慰謝料を計算する基準も3つあります。
自賠責基準、任意保険基準、裁判所基準とあり、最も低い基準が自賠責基準、高い基準が裁判所基準となります。
(ア)自賠責基準
被害者救済目的である、強制保険の自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)の基準となるため、最低限度のものとなります。被害者にとっては十分な補償とはいえない基準です。
(イ)任意保険基準
各保険会社が使用する独自の基準です。明確な計算方法等は明らかにされていませんが、過去の事例や、実績を経験に算出されているといわれています。
実際は、自賠責基準と同等か、少し高くなりますが、裁判所基準よりもはるかに下回る金額ではあります。
(ウ)裁判所基準(弁護士基準)
最も高いとされる、裁判所基準は過去の裁判例を元に算出されています。
この基準は、弁護士に依頼した場合、「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準(通称赤い本)」を参考に、示談交渉にて使用されます。
計算方法は赤い本に記載があるため、被害者自身でもこの基準を用いて損害賠償額の計算は可能です。
しかし、保険会社は弁護士が入らない限りはこの基準での交渉は応じないことが多いです。よって、弁護士基準とも呼ばれます。
慰謝料請求時は上記のことを理解したうえで、保険会社からの提案を検討しなければいけません。
なぜなら、保険会社から提示される損害賠償額は、自賠責基準か任意保険基準で計算され、低額であることがほとんどだからです。
⑵病状固定までは治療を継続
被害者の中には、交通事故から時間が経つと、通院の日数が減る方がいます。
通院に行くのが面倒という気持ちの面以外に仕事が忙しい等、被害者にとって事情は様々です。
完治の場合は、痛みが軽減し、通院の日数が減ることは想定できますが、症状固定の場合は、痛みの残存が続いていることとなるので、日数が減ることはプラスには働きません。
日数が減ることにより、相手の保険会社は慰謝料を減額することがありえます。
治療は症状固定までは継続するようにしましょう。
⑶後遺障害等級の認定
被害者は、後遺障害が身体に残ってしまった場合、被害者は後遺障害等級認定を受けることができます。
痛みが残存し、症状固定となった場合、後遺障害に申請をしないまま、示談交渉に入ることは基本的にはおすすめできません。
しかし、保険会社の中には、事件を早く終わらせたいがために、示談交渉を早くしなければいけないと急かす担当もいます。
それにより被害者は精神的な負担が大きいから早く終わらせたいと考えて交渉を始めようとしたりする方も少なくはありません。
被害者の方が適正な損害賠償金を得ることを考えると、これは得策ではありません。
後遺障害の等級が認定された場合は、先ほど述べた後遺障害の慰謝料以外に、逸失利益(被害者に後遺障害が残ったことにより、労働能力が喪失され、本来であれば得られたはずの収入の減少分)を請求ができます。
この逸失利益は認定された等級や、本人の年齢、収入によって大きく左右されますが、高額な損害賠償金になる可能性が高いです。
後遺障害については、専門性の高い分野になりますので、交通事故の経験が豊富な弁護士に相談することをおすすめします。
3 慰謝料が増えるケース
基本的に慰謝料は、先ほどの算定基準を元に計算され、被害者に支払われます。ただし、例外的に慰謝料が増えるケースがあります。
以下代表的な例です。
⑴精神的苦痛の程度
明らかに精神的苦痛が強いと判断される場合、増額がなされます。
例えば、加害者が飲酒運転や無免許運転、大幅なスピード違反により、事故を起こした場合は、加害者の悪質性を考慮すると被害者の精神的苦痛が大きいと考えられ、慰謝料が増額されやすいです。
また、加害者が反省しておらず、被害者に暴言を吐いたり、謝罪もせず、事故についても虚偽を述べたりした場合も増額の1つのケースです。
被害者自身の生活に影響した場合も増額がされることがあります。
事故の怪我が原因で、仕事を失職せざるを得なかった場合や自営業の方は廃業した場合も通常よりも大きな精神的苦痛を被害者は受けたと主張ができます。
他にも、被害者が入学、留学できなくなったケースや、後遺症により目指していた職業に就けなくなった場合も慰謝料が増額されることがあります。
女性の場合、流産をすること、また治療のために投薬をせざるを得ない状況となり、中絶を余儀なくされることもあります。この場合、被害者の女性の精神的苦痛は大きくなると考えられ、慰謝料は増額されます。
⑵逸失利益と慰謝料
後遺障害の逸失利益は、労働に直結しない後遺症の場合、認定を否定されることがあります。
たとえば、醜状障害や味覚・嗅覚の障害、生殖機能障害、歯牙障害といったものです。
このような場合は、逸失利益は認められない代わりに、慰謝料を増額することにより、損害賠償金の総額で考える実際の裁判例もあります。
参考:交通事故の逸失利益はどうやって計算するの?2パターンの具体的な計算方法と弁護士を入れるメリット
4 慰謝料のご相談は、大阪(なんば・梅田)・堺・岸和田・神戸の弁護士法人法律事務所ロイヤーズ・ハイへ!
慰謝料についてご説明をさせていただきましたが、いかがでしたでしょうか?
支払い時期は示談時であることが一般的ですが、金銭的に生活を送ることが困難であるとなった場合は、示談交渉前でも休業損害や慰謝料の前払いを受けることができます。
ただ、こういった内容も被害者本人で対応するには限界があります。
早く慰謝料を含む示談金を受け取りたい場合は、示談交渉をスムーズに進める必要があり、その場合、弁護士に介入してもらうことが良いでしょう。
慰謝料増額の可能性もあり、示談内容に不満な場合もしっかりと最適な対応をしてくれ、保険会社とのやりとりも被害者はしなくて済みますので精神的な負担軽減と安心感が得られます。
慰謝料について悩まれている方、相手の提示内容に不満がある方は、まずは、交通事故を多く取り扱う大阪(なんば・梅田)・堺・岸和田・神戸の弁護士法人法律事務所ロイヤーズ・ハイにご相談ください。