交通事故の被害に遭うことは突然で、またその相手は選ぶことはできません。
結果、加害者が任意保険に加入しておらず、自賠責保険にしか加入していないこともあります。
そういった場合、被害者はどうすればいいのでしょうか?
ここでは、加害者が自賠責保険のみに加入している場合についてご説明します。
目次
自賠責保険の補償
自賠責保険の支払い基準と限度額
そもそも自賠責保険とは、自動車による交通事故で被害者となった方を救済するために、自動車損害賠償法により、原付を含み、すべての車の所有者に加入を義務付けられている保険です。
自賠責保険に加入していない場合は、一般道は本来走行することを許されておりません。
さて、その自賠責保険ですが、多くの被害者の方を公平に迅速に対応するため、支払額は定額化された基準が定められており、支払われる保険金にも限度額が設けられています。
以下が各損害部分での限度額となります。
・傷害による損害…支払限度額 被害者1名に対して最大120万円
治療関係費用、書面作成時の文書料、休業損害、入通院(傷害)慰謝料がここに含まれます。治療関係費用とは、診察費や手術費以外にも、通院にかかる交通費、近親者等の付き添いによる看護費(医師が看護の必要を認めた場合、もしくは被害者が12歳以下の場合)等があります。
・後遺障害による損害…支払限度額 被害者1名に対して最大4,000万円
被害者に後遺障害が残り、審査の結果、後遺障害等級の認定が下りた場合は、傷害部分の損害とは別に、後遺障害による損害に対して支払いがあります。
後遺障害等級は1級~14級あり、等級に応じて1人あたり75万円~4,000万円が支払われることになります。ここには後遺障害が残ってしまったという精神的苦痛に対する慰謝料と、後遺障害により被害者の労働能力が減少したことで、本来発生したはずの収入の減少分、いわゆる逸失利益が含まれています。
・死亡による損害…支払限度額 被害者1名に対して最大3,000万円
死亡による損害は、葬儀費用の他、被害者が死亡しなければ得るはずだった収入(ただし、生活費を控除したもの)と、死亡させられたことによる被害者の慰謝料が含まれます。また、被害者だけでなく、遺族にも慰謝料は支払われます。ここでいう遺族は、被害者の父母、配偶者、子があたります。
自賠責基準での傷害部分の慰謝料計算方法
自賠責保険基準の場合、傷害部分の慰謝料は以下の計算方法で算出されます。
入通院慰謝料=1日あたり4,200円×入通院日数
※2020年4月1日以降の事故の場合は1日あたり4,300円
入通院日数とは2つの算出方法があり、少ない方の数字を取ります。
・実際に入院した期間と、通院した実日数を足して2倍
・総治療期間日数
わかりやすくよくある事例でみてみましょう。
(例1)入院した期間20日間、通院した日数30日、総治療期間70日
(20日+30日)×2=100日
100日>70日 のため、総治療期間の70日が採用されます。
よってこの場合の慰謝料は以下となります。
入通院慰謝料=4,200円×70日=294,000円
(例2)入院した期間10日間、通院した日数20日、総治療期間70日
(10日+20日)×2=60日
60日<70日 のため、実際に入院した期間と通院の実日数を足して2倍した60日が採用されます。
よってこの場合の慰謝料は以下となります。
入通院慰謝料=4,200円×60日=252,000円
車の修理代は出ない
自賠責保険の限度額や計算方法についてこれまで述べましたが、物についての損害賠償はどのように計算されるのでしょうか?
結論からいうと、物の損害賠償は自賠責保険の支払い対象にはなりません。
自賠責保険は人身事故の損害に限られています。そのため、車が破損した場合の修理費や買い替えの費用、もしも徒歩や自転車の場合は、壊れた携帯電話や破損した衣類は、加害者に請求するしかありません。
なお、よく誤解されがちなのですが、事故で破損した眼鏡やコンタクトレンズは人身損害にあたりますので、50,000円(税抜)までは支払いが可能となります。
被害者ができる請求
自賠責保険に被害者請求
加害者の自賠責保険に被害者自らが直接請求することを【被害者請求】といいます。
この被害者請求には仮渡金請求と本請求の2種類があります。
・仮渡金請求
被害者の方はすぐに損害賠償金を受け取れるわけではありません。基本的に加害者との示談が成立して損害賠償金は受け取ることが可能となります。
加害者が任意保険に加入していない場合は、多くの被害者の方が一時的に治療費用等を立て替えされます。また、怪我の影響で仕事を休まざる得ない場合もあります。
その結果、事故の怪我の程度や被害者の方の経済状況にもよりますが、治療期間が長く続くと、生活を圧迫することになる被害者がいます。
そういった方のためにあるのが【仮渡金制度】です。これは、正確な損害が確定する前に、被害者が必要なお金を自賠責保険へ請求が可能です。医師の診断書から支払わる金額が判断されます。
なお、最終的に損害賠償金が確定したら、仮渡金の分は損害賠償金から差し引かれます。もしも、仮渡金が損害賠償金を上回った場合は差額分を、加害者に損害賠償責任がないと判断された場合は全額を被害者は返還しなければなりません。
・本請求
被害者の怪我が治癒(完治)、もしくは症状固定により治療が終了し、損害が確定をした段階で請求することをいいます。
もしも、症状固定後に後遺障害等級認定申請を行う場合は、等級結果が下りてからとなります。
請求する際に必ずしも加害者と示談をしている必要はありませんが、すでに加害者から支払いを受けている分は差し引かれて被害者に支払われます。
加害者に損害賠償請求
自賠責保険の限度額以上に損害を被ることはあります。
加害者が任意保険に加入をしていれば、保険会社へ差額分を請求しますが、自賠責保険にしか加入をしていない場合は、加害者本人へ損害賠償を請求します。
任意保険の特約
加害者が任意保険に未加入の場合、経済的に余裕がないケースが多いです。こういった場合は、被害者側の任意保険の特約を使用することも1つの方法です。
無保険車傷害特約
無保険車との自動車事故において、記名被保険者もしくは、その家族の方、契約の車に搭乗していた方が死亡した場合、または後遺障害が残ってしまった場合に、加害者から十分な補償を支払われなかったときに使用できる特約です。
加害者が負担すべき損害賠償金を基本に、自賠責保険等から支払われるべき金額の超過する部分を、被保険者1名につき、保険金額を限度として補償され、保険金が支払われます。
なお、ここでいう無保険車は、任意保険の対人賠償保険の契約がない、自動車やバイク等をいいます。
人身傷害保険特約
記名被保険者またはその家族の方、契約の車に搭乗中の方が、自動車事故に遭い、死傷した場合に使用できる特約です。歩行中の事故でも使用可能な場合があります。
被害者本人の過失割合に関わらず、死傷された方の損害について、実損害額のすべてを、保険金額を限度に、被保険者ごとに補償される特約です。
この実損害額には、傷害の場合は、治療費だけでなく、休業損害や看護料、死亡や後遺障害の場合は逸失利益まで補償がなされます。
適正な慰謝料、示談金を受け取りたい方は、大阪(なんば・梅田)・堺・岸和田・神戸の弁護士法人法律事務所ロイヤーズ・ハイへまずはご相談を!
交通事故に遭われた被害者の方は、自身の損害については、加害者の保険会社が支払ってくれると思っている方が多いかと思いますし、実際はその場合が多いです。
しかし、残念ながら任意保険に加入していない方が一定数います。万が一その方と事故に遭った場合、被害者は自賠責保険による最低限の補償しか受けられないことがほとんどです。
もしも、自賠責保険にしか加入していない相手との交通事故に遭遇してしまった場合は、自分の加入している保険会社に相談をしましょう。
また、自賠責保険の被害者請求の手続きが不安であったり、自賠責保険で補償しきれなかった分を加害者本人に請求をしたかったりする場合は、弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士が介入すれば、そういった面倒な手続きは基本的に行ってくれますし、被害者の代理人として加害者本人に損害賠償を請求してくれます。
被害者が最低限の金額しか受け取れない、もしくはそれすらも受け取れないというのは、決してあってはなりません。
方法の1つとして弁護士に相談することも視野に入れておきましょう。
もしも、弁護士に相談すると決めた際には、交通事故を多く取り扱う大阪(なんば・梅田)・堺・岸和田・神戸の弁護士法人法律事務所ロイヤーズ・ハイにご相談ください。