交通事故 症状固定
2021.01.12 2024.05.28

症状固定とは何か、過去の判例ではどうなっているのかを知りたい

症状固定とは何か、過去の判例ではどうなっているのかを知りたい

交通事故に遭い、怪我をした場合、被害者の方は加害者側の保険会社に治療費を負担してもらうことが一般的です。 

では、この治療費はいつまで負担してもらえるのでしょうか?

これは、怪我が『完治』した場合、もしくは『症状固定であると判断されるまで』とされています。

症状固定とは、『これ以上治療を続けても、症状が良くも悪くもならない、回復しない状態』をいいます。

ここでは、症状固定とは何か、症状固定による争いにはどういったものがあるのかをご説明させていただきます。

1 症状固定とは

【45秒かんたん解説!】

⑴症状固定になったらどうなるか

被害者の方の怪我が「症状固定」と判断された場合、その日以降の治療費は、加害者側の保険会社に請求はできなくなります。

先ほどもご説明させていただいたように、症状固定は「良くも悪くもならない状態」、つまり治療の効果がなくなってしまった状態となりますので、症状固定日以降の治療費は「意味がないもの」として考えられてしまいます。

同様の理由で、通院の交通費や看護費用なども請求ができなくなります。

また、同時に休業損害や慰謝料などといった損害賠償も請求ができなくなる期間となります。

しかし、症状固定は、症状が身体に残存している状態ではありますので、症状固定後も治療を続けたい方は少なくありません。

症状固定となった被害者の方は、医師に相談の上、後遺障害等級の申請を行うことをおすすめします。

何故ならば、申請をした結果、後遺障害等級1~14級の何らかの等級が認定された場合は、後遺障害慰謝料と後遺障害の逸失利益、また等級や障害の内容によっては、将来介護費、装具費が請求できる可能性もあるからです。

⑵症状固定は誰が決めるのか

では、この症状固定については、いったい誰が決めるのでしょうか?

これは、被害者の方本人と主治医で相談をして決めることが本来の形です。

怪我が完治しているのか、症状固定の段階か否か、つまり治療を終えるべきかどうかは、医学的なこととなるので、医学の専門家である医師の判断が必要となります。

また、治療について、継続することが必要か否かについては、患者である被害者の方本人の自覚症状も判断材料の一つとなります。

よって、医師に対して、痛みがあるにも関わらず、「良くなった」などと伝えてしまうと、治療が早く終わってしまうこともありえますので、痛みがある場合は、しっかりとその旨を伝えるようにしましょう。

2 症状固定で争われる点は何か

先ほど述べたように、一度症状固定と判断されると、症状固定日以降の治療費等は、相手の保険会社より支払いがなされません。

そのため、症状固定日については、争いとなることがあり、特に裁判になった場合は争いになることが多いです。

なお、症状固定日は、基本的に後遺障害診断書の症状固定日欄に記載されています。

では、この症状固定日は、どのような点で争われるのでしょうか?

⑴症状固定日が正しいのか

症状固定日が争点となる時は、第一に「主治医によって診断された症状固定日が正しいのか否か?」がポイントとなります。

相手の保険会社からは、後遺障害診断書に記載のなされた症状固定日は誤りであり、本来はもっと早期の段階で症状固定であった、と主張され、損害賠償期間が争われます。

保険会社が症状固定日を早めたい理由は、症状固定日が早まれば、その分通院期間が短くなるため、保険会社は被害者の方に支払う損害賠償金が少なくなるからです。

その一方で、被害者にとっては、症状固定日が遅ければ、治療費を長く支払ってもらえるし、損害賠償期間も長くなりますので、受け取れる損害賠償金が高くなります。

このように述べると、中には、「症状固定日を先延ばしにする方が得ではないか?」と考える方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、治療継続の必要性、治療期間について、妥当ではないと判断された場合、主治医が判断した症状固定日であっても、否定されることがあります。

つまり、主治医が判断した症状固定日が必ずしも、「正しい症状固定日」として判断されるとは限らないのです。

⑵症状固定日はいつなのか

では、「正しい症状固定日がいつなのか?」が争点となった場合、症状固定日はどのように判断されるのでしょうか?

示談交渉の段階では、相手の保険会社が自社の顧問医へと意見を求め、症状固定日が妥当ではないと主張したり、被害者の方が弁護士を入れた場合は、弁護士から主治医へ意見を仰ぎ、症状固定日が妥当であることを主張したりして、示談を試みます。

この際、双方の主張が平行線となった場合は、裁判へ移行することとなります。

裁判となった場合、被害者の方の事故から症状固定日までの診断書や検査結果などの医療カルテを基に、「被害者の方が症状固定状態である=回復が見込めないといえる時期」がいつであったかを裁判所が検証し、判断します。

その結果、主治医が判断した症状固定日よりも前に、被害者の方が症状固定の状態であったと裁判所が判断した場合は、裁判所が判断した症状固定日以降の治療費を含む損害賠償については、加害者側が負担すべき対象から外されることになります。

症状固定日が争点となった場合、相手の保険会社の主張が認められてしまうと、被害者の方が受け取ることができる損害賠償金が減額されてしまいますので、被害者の方は、医師が判断した症状固定日が正しいものであると、的確に立証、反論をしていかなければなりません。

しかし、これについては、医学的な知識や交通事故問題の知識などといった、専門的な知識が必要となりますので、被害者の方自身が立証、反論していくことは非常に難しいです。

症状固定日が争点となった場合は、交通事故問題に詳しい弁護士にまずは相談することをおすすめします。

3 症状固定にかかわる判例

⑴治療費打ち切りを争ったケース

まず、治療費の打ち切りを争ったケースです。

被害者の方が、交通事故より頸椎捻挫となり、通院を行っていましたが、相手の保険会社より治療費を打ち切られました。裁判では、打ち切り後の治療費ついて争われ、その結果全期間を認定された判例です(横浜地方裁判所 平成5年8月26日)。

頚椎捻挫等により、16カ月間の通院(実治療日数305)を行った被害者の方ですが、そのうち3ヶ月を超える期間の治療について、因果関係を争われました。

この事案では、被害者の方には「騙して利益を得る」といった意図は認められず、また、医師についても、不必要な治療を行っていた、とまではみることはできないと判断され、被害者側の請求通り治療費全額の約317万円が認められました。

裁判所はこの判決の中で、毎月診療報酬明細書が送られていながらも、支払いを中途に止めていただけであり、止めた後の治療について何ら異議も伝えずにいた保険会社には、本来あるべき責務について、十分に果たしていたとは言い難いと判断をしています。

⑵症状固定後の治療費を争ったケース

次に、症状固定後の治療費について争ったケースです。

重ねて述べますが、基本的には症状固定日以降の治療費については、相手の保険会社へ請求しても認められないものが多いです。

しかし、被害者の方が負った怪我の内容によっては、例外的に認められるケースがあります。

それは、症状固定後も、引き続き保存的治療やリハビリが必要であったり、将来的に必ず手術をする必要があったりする場合です。

例えば、被害者の方が、交通事故により右大腿部を切断する傷害を負った事案では、症状固定後の治療費も認められています(名古屋高等裁判所 平成2年7月25日判決)。

この事故では、被害者の方は昭和53年8月14日に症状固定として、病院を退院していますが、その後も義足を作製するために病院へ通院をしていました。そして、再び右大腿切断部に瘻孔(ろうこう)が生じたことから、再入院をしました。

同月に退院はしたものの、その後も義足を作製する必要があることから、通院が発生したため、症状固定後の治療費についても、因果関係があると判断されました。

この他にも、事故により歯が損傷し、インプラントの治療費や矯正治療費が発生した事案では、将来のインプラント更新費、将来のインプラントメンテナンス費用も認められた判例もあります(仙台地方裁判所 平成24年2月28日)。

このように、症状固定後の治療費についても認められる可能性がありますので、症状固定後にも治療費用がかかることが分かっている場合や医師からも継続的にリハビリを通うように言われている場合等は、交通事故問題に詳しい弁護士に相談するようにしましょう。

4 症状固定についてのご相談は、交通事故を多く取り扱う大阪(なんば・梅田)・堺・岸和田・神戸の弁護士法人法律事務所ロイヤーズ・ハイへ

症状固定について、ご説明をさせていただきました。

症状固定は、あくまでも被害者の方本人と主治医が協議をしたうえで、判断がされます。

しかし、相手の保険会社は、被害者の方へ支払う損害賠償金をできる限り抑えるために、事故態様や過去の事例を元に、「そろそろ症状固定をしませんか?」や「症状固定だと思うので、治療費を打ち切ります」と被害者の方へ伝えることも少なくありません。

この時、安易に提案を受け入れてはいけません。一度治療費が打ち切られると、再開されることは、ほぼありえません。

まだ痛みがあり、治療の効果がある、必要性がある場合については、必ずその旨を相手の保険会社へ伝えましょう。

それでも、保険会社より症状固定と判断すると告げられてしまった場合は、個人で交渉することは困難なため、弁護士に相談をすることをおすすめします。

治療を終える時期について保険会社と揉めているなどといった、症状固定についてお悩みの方は、交通事故を多く取り扱う大阪(なんば・梅田)・堺・岸和田・神戸の弁護士法人法律事務所ロイヤーズ・ハイにぜひ一度ご相談ください。

このコラムの監修者

カテゴリ一覧

アクセスランキング

新着記事

CONTACTお問い合わせ

ご相談など、お気軽に
お問い合わせください。

電話アイコンお電話でのお問い合わせ

06-4394-7790受付時間:8:30〜19:00(土日祝日も可)

メールアイコンwebフォームよりお問い合わせ