交通事故の中には、自転車に乗っていた方が、自動車と衝突したにも関わらず、事故直後に身体は痛くなく、怪我をしない場合もあります。
この場合、被害者である自転車の運転手の方は、「怪我をしていないから、問題ないだろう」と、自動車の方の氏名や連絡先を聞かずに、立ち去ってしまうこともあります。同様に、自動車の方も、無事を確認し、特に怪我がない様子であれば、そのまま立ち去ることがあります。
しかし、これは絶対にやってはいけません。
ここでは、自転車と自動車の交通事故が起きたとき、自転車の方が怪我をしていなかった場合について、ご説明をさせていただきます。
目次
1 怪我なしの自転車と車の交通事故ですること
⑴必ず警察を呼ぶ
冒頭でも述べましたが、自転車に乗車中に交通事故に遭っても、その場で痛みを感じなかったため、怪我をしていないと判断した際に、自動車の方の情報を確認せず立ち去ってしまう方がいます。また、自動車側の方も、怪我がなければ問題ないと判断し、立ち去ることもあります。
これは、絶対にやってはいけません。
交通事故が起きたら、怪我をしていなくても、必ず警察に呼び、事故について報告をしなければなりません。
道路交通法第72条では、交通事故が遭った場合は、警察への報告は「義務」とされています。もしも、報告を怠った場合は、3ヶ月以下の懲役、または5万円以下の罰金を科せられる可能性があります。
また、加害者が被害者の方に、「お金は支払うので、警察に連絡をしないでほしい」と懇願したり、被害者の方が加害者に通報をするように伝えても、拒まれたりすることがあります。
この時、現場で怪我の確認が取れなかった場合、被害者の方の中には、「反省しているし、通報しなくてもいいか。」「面倒ごとになるのも嫌だな」と判断し通報をしないという選択肢を選ばれる方もいらっしゃるでしょう。
しかし、ここで覚えておいてほしいことは、被害者の方にとって警察に通報をしないことは、何の得にもならず、利は加害者にしかないということです。
警察に通報をしなければ、『交通事故証明書』が発行されません。交通事故証明書がなければ、後に、痛みなどが発症したとしても、保険金が下りない可能性が高く、かなりのリスクがあります。
⑵本当に怪我をしていないか確認
自動車と接触をした自転車の方は、たとえ一見怪我なくても、本当に怪我をしていないか、病院へ行き医師の診察を受けて、確認をしましょう。
事故に遭った瞬間は、痛みはない、怪我はしていない、と判断したとしても、数日後に痛みが現れ、重傷であったということもあります。
特に事故直後は、当事者は興奮状態にあり、痛みを感じないということも言われます。
自身で判断するのではなく、必ず医師に診てもらいましょう。
特に、万が一、転倒をして頭を強く打ったなどの場合は、後々重い障害が生じることがありますので、脳外科など、専門医に診てもらうようにしましょう。
2 怪我なしの自転車と車の交通事故でしてはいけないこと
怪我なしの自転車と自動車の交通事故において、してはいけないことは一体どのようなことでしょうか?
⑴警察を呼ばずに示談する
先ほども述べたように、必ず事故に遭ったら警察には通報をしなければなりません。
被害者の方が絶対にしてはいけないことは、警察を呼ばず、事故現場で、そのまま示談をしてしまうことです。
事故現場で、損害賠償金の具体的な金額について話をし、さらに内容に合意をしてしまってはなりません。
口頭であっても、双方が合意を示せば、基本的には示談は成立となります。
交通事故に遭った時、被害者の方が受け取れるのは治療費だけではありません。
傷害慰謝料や休業損害、また病院に行くための通院交通費など、事案によって様々です。
そして、被害者の方が受け取れる損害賠償金は、確定させるまでに時間がかかります。
基本的には、治療が終わったタイミング、または後遺症が残ってしまった場合は、後遺障害の等級が確定するタイミング、といった、これ以上賠償金が発生しない、すべての損害が確定した段階で確定となります。
よって、その場で怪我をしていないからといって、安易に示談をしてしまうことは、決して行ってはならないのです。
⑵安易に物損事故で処理しない
事故の当日、怪我をしていないと判断しても、物が壊れる程度の衝撃が互いに遭った場合は、軽い捻挫や打撲といった目に見えない怪我を負っている可能性があります。
安易に物損事故で処理をすることはおすすめできません。
比較的軽傷の事故の場合、手続きが面倒なので、物損事故で処理を進めてしまう被害者の方は少なくありません。
しかし、現場で怪我をしている可能性が少しでもあるのであれば、人身事故で届けるべきですし、その場で痛みがなく、後日痛みが出た場合でも、警察へ人身事故である旨を報告しましょう。
加害者から頼まれたり、その場で怪我がなかったりしたからといって、安易に物損事故処理で進めることは避けましょう。
3 自転車事故で怪我をしていなくても人身事故で処理すべき理由
⑴人身事故と物損事故の違い
物損事故と人身事故の違いは、交通事故により人が怪我をしたもしくは亡くなったか否かの違いだけです。
しかしその一方で、取り扱われ方にはいくつもの差があり、賠償金の金額や事故後の実況見分の有無、また保険の適用範囲、加害者である自動車の運転手への処罰の有無など、があります。
怪我をしていなくても、怪我をしている可能性があるのであれば、軽微な事故であっても、人身事故で扱った方が良いと考えられます。
⑵人身事故にするメリット
では、被害者の方が人身事故にするメリットは何があげられるのでしょうか?
大きなメリットは、実況見分調書が作成されるということです。
実況見分調書は、警察官が作成する資料であり、人身事故として扱われた段階で作成され、交通事故の状況が詳細に記されます。
双方の主張が異なり、事故状況が争いとなる事故の場合、後々の損害賠償金請求の際に、交渉の材料として使用できることが大きなメリットです。
一方で、物損事故の場合は、実況見分調書のような詳細な資料は作成されず、物件事故報告書といった簡易な書面が作成されることになります。
つまり、事故状況が争いとなった時に十分な立証ができない可能性があります。
なお、『人身事故か物件事故か』で警察の処理が、直接損害賠償の補償範囲に影響することはありません。
⑶人身事故に切り替える方法
事故当日に怪我なく、物損事故として警察に処理をしてもらったけれど、翌日以降に痛みが出る方もいらっしゃいます。
この場合、人身事故に切り替えることは可能です。
人身事故に切り替えるは以下の通りです。
①病院で診察を受け、診断書を作成してもらう。
痛みを感じた時点で、病院や整形外科などへ行き、医師に診断書を作成してもらいましょう。
なお、少なくとも交通事故より1週間以内に診察を受け、診断書を作成してもらうようにしましょう。事故より1週間以上経過してからの通院の場合、交通事故と怪我の因果関係が争点になる可能性があります。
医師には、いつ、どのような交通事故に遭ったことを必ず伝えてください。また、当日は痛くなかった場合はその旨を伝え、いつからどこに痛みが出てきたのかも説明するようにしましょう。
痛む部分はすべて伝えるようにしてください。
作成してもらった診断書には『交通事故により負傷した』ことが証明できるような内容で作成してもらうようにしましょう。
②警察署に診断書を提出する
作成してもらった診断書は、警察署に持参し、物損事故から人損事故に切り替える申請書と一緒に提出をしましょう。
事前に、担当の警察署に電話をして、切り替えを希望する旨を伝えておく方がよりスムーズに進みます。
先ほど、診断書は、1週間以内に診断書を作成してもらうよう述べましたが、診察が1週間以上経過している場合、警察署に申出書と共に提出しても、事故との因果性を認められず、受理されない可能性があります。
また、人身事故に切り替えるのはいつでもできるわけではありません。
警察では物損事故から人身事故の切り替えは、一定期間内では対応をしてもらえますが、時間が経過しすぎると、「人身事故だったか判断ができない」として、切り替え申請を受け付けられない可能性があります。
少なくとも交通事故から1週間~10日以内に行うようにしましょう。
もしも、人身事故に切り替えができなかった場合は、「人身事故証明書入手不能理由書」を作成する必要があります。
この書類は、人身事故ではあるければ、人身事故証明書を提出できない理由を説明するための書類です。
こちらを提出されれば、警察では物損事故扱いであっても、保険金関係では人身事故扱いとなりますので、治療費や休業損害、慰謝料などの損害賠償金を保険会社へ請求できますし、また後遺障害の等級申請も可能となります。
4 自転車で事故に遭ってしまったら、交通事故を多く取り扱う大阪(なんば・梅田)・堺・岸和田・神戸の弁護士法人法律事務所ロイヤーズ・ハイにご相談ください。
自転車と自動車の交通事故が起きたとき、自転車の方が怪我をしていなかった場合を中心にご説明をさせていただきました。
実際に事故に遭ってしまったら、それも怪我をしていないとなると、後々痛みが出てきたとしても、物損事故のままで対応すべきか、人身事故に切り替えるべきかわからない方も多くいらっしゃいます。
そのような場合は、一度交通事故問題に詳しい弁護士に相談をしましょう。
弁護士に相談をすれば、被害者の方の状況や事案によって、適切なアドバイスをしてくれます。
病院に行っていないのであれば、どうすればいいのか、警察へはどのように対応すればいいのか、そういった点も最適な方法を判断してくれます。
また、依頼をすれば、人身事故入手不能理由書をはじめ、提出しなければならない書類も、作成してもらえることも可能です。
自転車で事故に遭い、怪我をしていないけれどどうすればいいのか、わからない…といったお困りの方は、交通事故を多く取り扱う大阪(なんば・梅田)・堺・岸和田・神戸の弁護士法人法律事務所ロイヤーズ・ハイにご相談ください。