少子高齢化が原因で、会社の後継者不足で悩むケースが非常に多くなっています。中には廃業を選択する会社もありますが、これまで育ててきたものを無くしてしまうことに抵抗がある経営者は少なくありません。
そのような場合は、会社売却を検討します。会社を売却することによって、事業用の資産や従業員、ノウハウなどを残すことができるため非常にメリットが大きいのです。
しかし、会社売却をするためにはいくつか知っておかなければいけない注意点があります。
今回は、会社売却の注意点の中でも特に知っておいてほしいものを3つピックアップしてご紹介します。
目次
大前提として希望する条件では会社売却ができない可能性がある
まずは、希望する条件で会社を売却できない可能性があるということです。会社を売却する際に、どのくらいの価格で売りに出したいかを条件として掲げるケースが多くなっています。
買い手によっては希望通りの条件で買い取ってくれる可能性もありますが、希望する価格よりも低い価格を提案されるケースの方がずっと多いです。
業績が良いうちに売却するのがセオリー
低い価格を提案されることを見越した価格設定にして、妥協できるのはどの程度なのか事前に考えておくことをおすすめします。そうすることで、交渉をスムーズに進められるためです。
少しでも高く売りたいのであれば、業績が良いうちに売却するようにしましょう。業績が良ければ買い手にとってメリットが多くなりますが、業績が悪いのはデメリットでしかないからです。
負債額が大きいと価格は当然下がる
また、負債が大きい場合も価格は下がってしまいます。不要だと見なされる資産や負債がある場合は、売却前に片付けておくと良いでしょう。
会社に限ったことではありませんが、売却には理想的なタイミングというものがあります。
タイミングを間違えてしまうと、買い手が見つからない可能性すら出てきます。
そうなることを防ぐためには、きちんと自社の状況を把握し、売却をする適切なタイミングかどうかを見極めることが重要になるのです。
税金の支払いが発生する可能性がある
会社を売却したことによる利益が発生すると、税金がかかってしまいます。課せられる税金は売却の方法(事業譲渡もしくは株式譲渡)によって異なります。それぞれの方法でかかる税金について見ていきましょう。
事業譲渡の場合
事業譲渡の場合は、事業の一部を買い手に譲渡するという方法です。売却する事業は、売り手が指定できるため売り手にとってのメリットは大きい方法だと言えます。
事業譲渡で利益を得た場合、法人税が課税されます。法人事業税、法人住民税も含まれているので注意が必要です。
それだけではなく、事業譲渡によって収入を得るため、消費税の課税対象にもなります。
消費税と合わせると40%以上の税金がかかるため、かなり高い税率になってしまいます。
なぜかというと、法人税は累進課税制度が適用されているためです。
累進課税制度によって事業譲渡で得る利益が大きくなる分、税率が高くなってしまうのです。
株式譲渡の場合
株式譲渡は、会社売却の中で最も一般的な方法となっています。株式を買い手に譲渡することで、会社自体を売り渡すという方法です。株式譲渡をした場合は、誰名義の株式を譲渡して利益を得たのかによってかかる税金が変わります。
経営者自身が保有する株式を譲渡したのであれば、経営者に所得税と住民税が課税されます。しかし、会社名義の株式を譲渡した場合は、会社の収益となるのです。
そのため、法人税が課税されることになります。
買い叩かれてしまう可能性がある
買い手が売り手よりも規模が大きいと、買い叩かれてしまう可能性があります。不利な条件を提示されてしまったけど断り切れない場合には特に可能性が高まります。
買い叩かれないようにするためには、経営者自身が売却の適正価格を把握している、買い手探しに焦らないといった点が重要になるでしょう。売却の適正価格を把握いれば、買い手側から低い金額を提示されたとしても明確な理由を伝えて断ることができます。
また、買い手探しに焦らないようにすることで、買い手の条件が適切かどうかを判断するための余裕を持てます。余裕がないと、買い手が提示した条件を鵜呑みにして、適正価格よりも大幅に低い価格で売ることになりかねません。
買い叩かれないようにするためには、余裕を持った売却スケジュールを立てるようにしましょう。
そうすることで、買い手と売り手双方が満足できる結果になります。
会社売却をした場合のメリット・デメリット
会社売却を検討しているのであれば、そのメリットとデメリットについても知っておく必要があります。
最後に、どのようなメリット・デメリットがあるのか見ていきましょう。
メリット
事業承継ができる
会社売却による大きなメリットは、事業承継ができるという点です。少子高齢化が進んでいる現在、後継者がいないと悩む会社が多くなっています。
子どもや役員を跡継ぎにできれば良いですが、全ての会社でそれを実現できるわけではありません。しかし会社売却をすれば、きちんと事業承継ができるのです。
社員の雇用を継続し、取引先との関係をも保っておきたいのであれば、会社売却を選ぶのが賢明だと言えるでしょう。しかし、買い手が既存の社員を解雇してしまうケースもあります。
事業承継ができるというメリットの恩恵をしっかりと受けるためには、売却前に買い手と話をしっかりとすり合わせることをおすすめします。
会社が成長する可能性がある
売却先の会社との相乗効果で、売却前よりも成長する可能性も考えられます。それも、会社売却の大きなメリットです。
魅力的な製品を生み出すことはできても営業に自信がないという会社だった場合、営業を強みとする会社に買われることで、より良い製品開発に力を入れられます。
それだけではなく、製品の魅力を営業マンが発信してくれるため、売上が伸びる効果も期待できるでしょう。そのため、会社の成長に限界を感じて売却を検討することのも価値があると言えます。
デメリット
会社売却をする際に、既存の社員の処遇を維持する必要があります。しかし、全てのケースで処遇を維持できるというわけではありません。
なぜかというと、買い手にすべてが委ねられるためです。これまでとは違う会社に取り込まれることになるので、まったく同じような処遇で仕事を続けられるわけではないと割り切らなければいけないということになります。
中には、買い手の会社に馴染むことができなかったり、職場の雰囲気が変わることに反発したりする人も出てくるでしょう。
それだけではなく、会社売却をきっかけに多くの社員が退職してしまう可能性があることも覚えておかなければいけません。
会社売却には、このようなメリット・デメリットが考えられます。
メリットとデメリットを把握していれば、理想的な会社売却を実現しやすくなるでしょう。
特にデメリットは売却後の後悔を生む可能性もあるため、知っておかなければいけないポイントだと言えます。
会社の売却は、後継者問題で悩む経営者にとって魅力的な方法です。しかし、魅力的な方法だからと言ってまったく注意点やデメリットがないわけではありません。
まとめ
会社売却を検討しているのであれば、今回ご紹介した
- 希望する条件で会社を売却できない可能性がある
- 税金の支払いが発生する可能性がある
という2つの注意点は最低限知っておくべきだと言えるでしょう。
また、会社売却によって生まれるメリットとデメリットも知っておくべきです。注意点やメリット・デメリットを知っていれば、後悔のない売却を実現できます。
会社売却を検討している人は、ぜひ参考にしてみてください。