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不当解雇を主張された場合の対処法

問題改善のための努力や解雇回避努力を尽くしたような場合でも、元従業員から不当解雇の主張がなされることがあります。企業としては相当な事情があったとしても、裁判まで行ってしまうと解雇の有効性を示す証拠を集めなければならず、時間と手間がかかってしまいます。

そのため、元従業員から不当解雇を主張されたら、まずは相手の言い分をしっかりと聞き、何を根拠として不当解雇を主張しているのか確認をし、その内容に応じて適切な対策を講じていくことになります。

この記事では、企業が元従業員から不当解雇を主張された場合の対応に必要な知識をご説明します。

不当解雇による元従業員からの請求、2つのパターン

元従業員が不当解雇を訴える際は、解雇撤回の主張か慰謝料の請求のいずれかがなされます。不当解雇を主張された際は、相手方の要求を理解した上で、その内容に合わせて対応を検討していくことになります。

解雇撤回の主張

元従業員が以前の職場で働き続けたいと望んでいる場合、解雇撤回の主張が為されることが考えられます。この時の対応の仕方は断るか解雇を撤回するかのいずれかになります。

解雇撤回を断る際は、最悪訴訟に発展しうることも考慮した上で、不当解雇ではない証拠を揃えることになります。とはいえ訴訟に発展してしまうと、裁判があったことが公になってしまい、会社の評判に対してネガティブな影響があることも考えられます。したがって、できるだけ話し合いでの解決を目指すべきです。

一方、解雇撤回を受け入れる際は、復職の条件を定めた上でその内容を元従業員に伝え、加えて解雇をしてから解雇撤回をするまでの賃金(もしくは賃金の60%以上の休業手当)を支払うことになります。

慰謝料の請求

不当解雇であった場合、解雇を伝えた時から現在に至るまで雇用が継続していることになります。そのため、当該期間に発生したであろう賃金を未払い賃金として請求されることが予想されます。

不当解雇が主張される際には上記のいずれかの請求がなされることが予想されますが、元従業員としても以前の会社で働き続けるのは精神的な気まずさなどもあります。したがって、実務上は解雇撤回ではなく未払い賃金や解決金を支払うことで解決を図ることが多くなっています。

不当解雇を主張する理由を確認する

元従業員から不当解雇の主張があった場合、どういった理由で不当解雇だと主張しているのかをまず確認しましょう。解雇手続きに問題があったのか、解雇理由に問題があったのか、それとも単なる言いがかりなのか、その回答によって今後の対応が変わってきます。

解雇の有効性に関する証拠を集める

基本的には話し合いでの解決を目指すべきですが、紛争性が高くなってきた場合に備えて早い段階から証拠を集めておくのが無難です。

解雇の理由に客観的合理性と社会的相当性がなければ、解雇権の濫用で不当解雇となってしまいます。裁判になった場合は解雇の有効性について厳しく判断がされますので、解雇の正当性に関する証拠は必ず残しておきましょう。

元従業員の問題行動や、成績などについて、私的や改善努力を繰り返したものの、改善が期待できなかった事実などが証拠として具体的です。メールや書面などで次のようなやりとりがなされていた場合、裁判の際に有利な事実になる可能性があります。

  • 欠勤の多さを示す勤怠データなど
  • 口的な問題行動や成績について指摘をしていること
  • 改善や成果の期待値についてお互いが合意していること
  • 改善のための指導が数回繰り返されたが改善が見られなかったこと
  • 元従業員の問題行動がもたらした具体的な悪影響や損失
  • その他解雇回避努力をしたが効果がなかったこと

上記の証拠を押さえるために、元従業員と関係のある社員と面談をするなどして、具体的な問題点について洗い出しておくといいでしょう。話し合いをする際にこのような事実をやんわりと提示することで、相手にも落ち度を認識してもらい、適切な落とし所を見つけやすくなります。

不当解雇を主張された際の解決方法

不当解雇を主張された場合、話し合いでの解決が難しければ労働審判や通常訴訟に発展することが考えられます。

話し合い

たびたびお伝えしているように、まずは話し合いでの解決を目指したいところです。

その理由は、次の2点です。
労働審判や通常訴訟まで発展すると時間と手間・費用がかさむから
裁判になれば、情報が公開されるため、不当解雇が認められた場合に企業のイメージダウンにつながりかねないから

解雇をするためには厳しい要件を満たさなければなりません。そのため、従業員がまだ退職していないようなケースでは、退職金を上乗せする旨を伝えるなど、退職は避けられないが、必要な金銭的補助はするという方向性で解決を目指すのも1つです。

この段階では、相手方の主張にもしっかりと耳を傾け、相手方の言い分も理解しておくべきです。不誠実な対応をしてしまえば、感情的いざこざから問題がさらに大きくなりかねません。

労働審判

労働審判は、裁判所にて企業の代表者と従業員が話し合いにより和解を目指す手続きです。話し合いには労働審判間や労働審判員が同席をするので、あらかじめ集めた解雇の有効性を示す証拠がより重要になってきます。

この段階で双方の合意が得られれば調停成立となりますが、どちらかが異議を申し立てた場合は通常訴訟へと移行し、より手間と時間と労力がかかります。

通常訴訟

紛争がこじれにこじれた場合は通常訴訟に移行することも考えられます。この段階まで来れば手続きに法的知識が必要になってくるので、弁護士に対応を依頼するのが普通です。

労働審判や通常訴訟に発展した際の反論方法

裁判所を巻き込むような紛争に発展した場合は、法的に合理的な主張をする必要があり、証拠がより重要になってきます。不当解雇が適切でないことに対する反論の仕方には次のようなものがあります。

  • 自主退職であることを立証する
  • 懲戒解雇の正当性を立証する
  • 整理解雇の正当性を立証する
  • 普通解雇の正当性を立証する
自主退職であることを立証する

そもそも解雇をしたのではなく、元従業員が自己都合により退職をしたことを根拠に不当解雇を主張する方法です。退職勧奨がなされており、元従業員がこれに合意したことを示す書類などがあれば有効な証拠として活用できます。

整理解雇の正当性を立証する

業績の悪化でやむを得ず人員整理を行った場合は、整理解雇の要件を満たしている証拠を収集することになります。

整理解雇の4要件は次のとおりです。

  • 人員整理の必要性
  • 解雇回避努力義務の履行
  • 被解雇者選定の合理性
  • 手続きの妥当性

上記4要件それぞれの必要性や合理性を証明するような資料を集めていきましょう。

懲戒解雇の正当性を立証する

懲戒解雇の正当性を主張する際は、次の4点に対応する証拠を集めていくことになります。

  • 就業規則に①どのような行為が懲戒事由になるのか、②懲戒の内容は具体的に何なのか、といった点が明示されている
  • 元従業員が懲戒事由にあたる行為をした証拠がある
  • 懲戒事由になる行為に対して適切な処分の内容になっているか
  • 元従業員に弁明の機会が与えられていた
普通解雇の正当性を立証する

整理解雇・懲戒解雇以外の理由で解雇をする場合はこれにあたります。普通解雇をするには客観的に合理的で社会通念上相当な理由が必要です。前述したように、元従業員の問題となる行動や重要なやりとりに関して、解雇がやむを得なかったことを示す証拠を収集しておきましょう。

まとめ

不当解雇を主張された際の対応は以上となります。まずは元従業員に対して不当解雇を主張する根拠を提示してもらいつつ、その内容に合わせて適切な資料や証拠を集めていきましょう。