契約書の作成を弁護士に依頼するメリットは、将来のトラブルや損失を未然に防げる点です。起きてもいないトラブルに対してコストを払うのは気が引けるかもしれないですが、取引先などと紛争になった際は契約書が証拠となります。自社に不利な条項が書かれていることに気付けなければ、不本意な取引を継続することになる恐れがあります。
この記事では、契約書の作成を弁護士に依頼するメリットや費用などについて、詳しくご説明します。
目次
契約書の作成を弁護士に依頼するメリット
契約書を弁護士が作成すると、具体的に次のようなメリットがあります。
社内の事情や都合を踏まえた内容に修正できる
不利な内容が盛り込まれるのを防ぎやすい
必要な条項が抜けていないか確認できる
法改正を意識した内容にできる
相手方との交渉方法についてアドバイスをもらえる
万一相手方とトラブルになった際に対応を任せられる
社内の事情や都合を踏まえた内容に修正できる
契約書を作成する際はテンプレートを活用することでスムーズに作業を進められます。しかし、テンプレートはあくまでテンプレートでしかなく、どの企業が使用しても概ね問題がないような抽象度の高い内容となっています。
したがって、契約に至るまでの背景や個別の事情を契約書に落とし込むためには当然修正が必要になってきます。弁護士が契約書を作成する際は、契約に至った背景や取引の実態をヒアリングしたうえで、各企業の事情を踏まえた内容で契約書を作成します。
不利な内容が盛り込まれるのを防ぎやすい
取引は必ずしも公平な力関係のもとでなされるわけではありません。相手方から受け取った契約書を吟味しなければ、いざトラブルが生じた際に自社ばかりが損失を被ることも予想できます。弁護士が契約書を確認した場合、自社が不利になるような記載があるかどうかを判断したり、より支障の少ない表現に変更したりすることが可能です。
必要な条項が抜けていないか確認できる
口約束をしている場合や相手に気を使っている場合、著作権など他の法律で保護されているような場合など、契約書にどこまでの内容を記入するべきなのか逐一適切に判断するのは簡単ではありません。
例えば、ネット広告の営業を受けたときには「絶対に効果が出る」と説明をされ契約に至ったが、契約書には『効果は保障しない』といった旨の記述があったとします。この場合、口約束の内容ではなく契約書に書かれている内容が証拠になるため、仮に費用倒れをしてしまった際などに損害賠償請求をするのが難しくなってきます。
法改正や法改正を意識した内容にできる
契約を締結した時点では適法な内容の契約書であっても、将来法改正がされたことで不適切、もしくは違法な契約内容になってしまうことも考えられます。
消費税増税に伴う請求額の変更などがいい例です。仮に、H Pに掲載するコラムの制作を請け負っていたとしましょう。増税前に契約を締結していたとして、コラムの単価を10,800円(税込)で納品していたとします。
増税後、税率が10%になったので11,000円を請求したいところですが、新しい税率を踏まえた金額で請求できるかどうかは、契約書の内容によります。消費税一つとっても、契約書の内容によっては将来的に大きな損害を生むきっかけになりかねません。
このように、契約書を作成する際は現段階での適法性を踏まえるのは大前提として、将来的な法改正までも見据えておく必要があります。
相手方との交渉方法についてアドバイスをもらえる
相手から送られてきた契約書の内容を書き換えた場合など、内容によっては取引自体がなくなったり、取引先との関係が悪化したりといったことも考えられます。
一方で、必要な変更を加えなければ自社ばかりが損をすることにもなるので、2つのリスクの間で板挟みになることもあるでしょう。弁護士に依頼をしていれば、適切な内容の契約書の作成に加え、取引先との交渉の仕方について助言を得たり、交渉の代理を頼んだりすることが可能です。
万一相手方とトラブルになった際に対応を任せられる
取引先が契約を履行しないような場合に、弁護士に対応をお願いすることもできます。売掛金や報酬の未払いなどがあった場合は、以下のような対応をします。
- 内容証明郵便を送付する
- 訴訟を提起する
- 契約を解除する
- 損害賠償請求をする
内容証明郵便を送付する
内容証明郵便で請求をすることによって、請求の内容と配達日の証拠を残せます。弁護士名義で送付を行うことによって、相手方にプレッシャーを与えられます。
訴訟を提起する
内容証明郵便を送っても契約が履行されないようであれば、通常訴訟に移行します。訴訟をするようなケースであれば、弁護士に依頼をしないと対応は難しいでしょう。判決が出ればその内容をもとに相手と交渉をできるようになる他、最悪の場合は強制執行ができるようになります。
契約を解除する
契約者双方に債務が発生するような契約であった場合、相手が債務を履行しなくてもこちらは債務を履行し続けなければなりません。契約を解除することで、このような不当な拘束力からの離脱を図ります。
損害賠償請求をする
契約不履行により損害を被った場合は、相手方に対して損害賠償請求をします。損害賠償請求は契約解除とともに行うことが可能です。
以上でお伝えしたような、社内のみでの解決が困難なトラブルが頻発するようであれば、弁護士と顧問契約を結ぶことも検討するといいかと思います。
社内で契約書を作成する際の注意点
社内で契約書を作成する際に気をつけたいポイントを3つご紹介します。
最新の書式を使用する
契約書のテンプレートを使う際は、最新のものを使うようにしましょう。法改正は頻繁に行われているため、動向を常に負っていないと適法性のない契約書を作ってしまう原因になります。
起こりうるトラブルを予想して作成する
契約書は取引をするにあたって将来発生しうるトラブルを防ぐために作成するものであるため、当該取引において具体的にどのようなトラブルが発生しうるのか推定して条文に落とし込むことが重要です。
例えば商品を納品する契約を結ぶ場合であれば、次のようなトラブルが予測できます。
- 商品に不良品が混じっていた場合はどうするか
- 納期が遅れた場合はどうするか
- 期限になっても代金が支払われない場合はどうするか
- 途中で仕様変更の指示があった場合はどうするか
このような形で問題点をリストアップし、抜け漏れのないよう条文に落とし込んでいきましょう。
関連法令を調べておく
事業内容や取引の内容に関係のある法令についても最低限は理解しておきたいところです。例えば、エステを経営しているとしましょう。エステは特定継続的役務提供という取引方法の1つで、特定商取引法で規定されているルールを守る必要がでてきます。
クーリングオフに関する事項や中途解約による事項など、契約書に書かなければいけない内容がいくつか決められています。違反をした場合は業務停止命令を下されたり刑事罰に処されたりと重いペナルティが予想されます。
このようなトラブルを避けるためにも、現在関わっている事業が具体的にどんな法令と関係があるのか、確認することは欠かせないでしょう。
契約書の作成を依頼した際の弁護士費用
最後に、契約書作成を依頼した場合の弁護士費用相場についてお伝えします。
定型的な契約書の場合
取引の内容がオーソドックスであり、契約書のレビューやアドバイスのみで対応可能な案件であれば、弁護士費用の相場は3万円〜10万円程度となります。
非定型的な契約書の場合
取引の内容が非定型的であり、条項の追加などの対応が多く発生するような場合は10万円〜20万円程度が相場となります。契約金額が300万円を超えてくると、10万円以上の費用がかかってくることが多いようです。非定型的な内容の契約書を作成することが多いようであれば、顧問契約を結んだ方が費用を安く抑えられる場合もあります。
まとめ
弁護士に契約書の作成を依頼すると、将来発生しうるトラブルや損失を未然に回避しやすくなります。弁護士費用は安くはないかもしれませんが、契約書の内容が原因でトラブルになれば、より大きな金銭的損失を被ったり、解決まで時間と手間がかかったりします。法令に違反すれば、行政処分の対象となり会社の信用が傷つくことも避けられません。他社と取引を行う際は契約書の作成はつきものです。契約書の作成方法や法律知識については、早い段階で理解するに越したことはないでしょう。