著作権を侵害された場合は、現在の状況が著作権侵害にあたるかどうか理解した上で、著作権侵害をした人に対してどのようなアプローチをするのか決める必要があります。
この記事を読むと、次の2点について理解できます。
著作権侵害にあたるかどうかがわかる
著作権侵害をされたときにどういう手段が選べるのかがわかる
目次
著作権侵害とは?
最初に、そもそも著作権侵害とは具体的にどういう状態を指すのか確認していきましょう。著作権侵害が認められるためには、以下の3点を全て満たしている必要があります。
- 著作物侵害が認められるための3つの性質を全て満たしている
- 著作者の許諾がない
- 著作権が及ばない範囲の使用ではない
1.著作物侵害が認められるための3つの性質を全て満たしている
著作権侵害が成立するためには、次の3つの性質を全て満たしている必要があります。
- 著作物性
- 依拠性
- 類似性
それぞれ具体的に解説します。
既存の創作物に著作物性があるか
著作物とは、思想や感情を創作的に表現したものです。創作性とは、作者の個性と言い換えることもできます。創作性がなければ著作物にはならないので、模倣・複製をされても著作権侵害にもなりません。
著作物にあたらないものには、例えば次のようなものがあります。
- 単なるデータ
- 事実を書き記しただけの文章
- 誰が書いても同じ表現になるプログラム
- 工業製品
新規の創作物に依拠性が認められるか
新しく作られたイラストやデザインが、既存の著作物を参考にして作られている場合、依拠性があるため著作権侵害の疑いがあります。
例えば、製作者が既存の著作物を参考にせずに創作物を作成したような場合は依拠性がないことになります。
新規の創作物に類似性が認められるか
類似性とは、新規の創作物と既存の創作物が直感的に似ていることをいいます。既存の著作物を参考に作成されたデザインであっても、類似性がなければ著作権侵害にはなりません。
2.著作者の許諾がない
著作者の許諾がある場合は著作権侵害にはなりません。
3.著作権が及ばない範囲の使用ではない
著作物は、著作権者の権利を侵害しない範囲で自由に使用できます。
著作権が及ばない範囲というのは、具体的に次の2点です。
- 私的複製
- 引用
私的複製とは、自分や家族で利用するために著作物を複製することをいいます。ただし、インターネット上に違法にアップロードされている動画をダウンロードすると違法ダウンロードとして刑事罰の対象になります。
また、引用をする場合は次のルールを正しく守っている必要があります。
- 主と従の関係が明確であること
- 引用部分が他の部分と明確に区別されていること
- 出典元が記されていること
- 引用の必要性があること
- 改変していないこと
著作権侵害が認められやすいケース・認められにくいケース
ここでは、著作権侵害が認められた場合とそうでない場合の例をご紹介します。
著作権侵害が認められやすいケース
- インターネット上に公開している写真や文章を無断で転用された
- 使用を許諾した著作物の内容を勝手に変えて公開されてしまった
- 著作物を無断でS N Sのアイコンにされた
- 音楽を無断でコピー・演奏し、YouTubeなどに公開された
- キャラクターやイラストを無断で転載された
- 漫画・音楽・映画などをインターネット上に無断でアップロードされた
著作権侵害が認められにくいケース
- 著作権の保護期限が過ぎている
- 憲法や法令・裁判の判決
- イラストやデザインがありふれたものであり、創作性がない
- パロディーやオマージュなどの二次創作(グレーゾーン)
- ルールを守った上での引用
著作権侵害をされたときにできる対応4つ
著作権侵害が明らかな場合は、以下の手段により被害の拡大を防ぎましょう。
- 差し止め請求をする
- 損害賠償請求をする
- 名誉回復などを求める措置をする
- 刑事事件として捜査を求める
1.差し止め請求をする
著作権侵害をやめるように伝えることを差し止め請求といいます。差し止め請求は、著作権侵害をした人に故意や過失がなくても可能です。
被害の程度が軽いような場合は、著作権侵害をやめるように連絡を入れて様子をみましょう。被害の程度が重いような場合は、裁判所に仮処分の申し立てをするとスムーズに著作権侵害を止めさせやすくなります。
ただし、仮処分は通常の訴訟では間に合わないような場合でないと認められないので、経済的損失が大きいような場合に利用するようにしましょう。
2.損害賠償請求をする
著作権侵害によって損失を被った場合は、損害賠償請求をしましょう。損害賠償請求をする際は、具体的にどの程度の損害を被ったのか、根拠となるような金額を推定する必要があります。
具体的には、対象物の販売数量や侵害者が得た利益などから推定被害額を算出します。
例えば、定価500円の漫画の海賊版が侵害者によって1,000冊販売されたとします。この場合、海賊版が販売されなければオリジナルの漫画が1,000冊売れるはずだったと推定し、500円×1,000冊=500,000円を損害賠償として請求します。
3.名誉回復などを求める措置をする
著作権侵害行為により、著作者の名誉に傷をつけられた場合は、名誉回復などの措置を求めることができます。名誉回復の方法には、例えば週刊誌や新聞で謝罪広告を出してもらう方法などがあります。
4.刑事事件として捜査を求める
上記のように民事的な責任を追及するだけではなく、刑事事件として立件して侵害者に責任を取ってもらうよう、捜査機関に訴えることもできます。
著作権を侵害した場合、最大で10年以下の懲役または1,000万円以下の罰金、もしくはその両方に処せられることがあります。
著作権侵害は親告罪といって、捜査を始めるためには被害者が被害届を提出したり、告訴をしたりする必要があります。
まとめ
この記事では、著作権侵害の定義と著作権侵害をされた場合に取れる手段についてご説明してきました。実際に著作権侵害で争いになる場合は、対象物に著作権性があったか、依拠性や類似性があるか、損害賠償金の推定方法が適切だったか、など状況によって様々なポイントが争点となります。
著作権侵害についてちょっと聞いてみたい、という方は、『公益社団法人著作権情報センター』に連絡をすると、著作権に関する悩みに対して専門の相談員が無料で電話相談に応じてくれます。
また、侵害者に連絡を入れるだけでトラブルが解決するような場合は問題ないのですが、仮処分を行うような場合や損害賠償の金額を計算する際には、法的に適切な手順で請求を進めていかないと、時間はかかったのに状況は平行線、ということにもなりかねません。
著作権侵害を放置することによって金銭的損失やイメージダウンが予想されるような場合は、弁護士への依頼を検討しましょう。