交通事故 交通事故基礎知識 慰謝料 損害賠償 被害者請求
2023.09.22 2024.07.01

交通事故の加害者が死亡!被害者の慰謝料や損害賠償請求の相場に影響する?

交通事故の加害者が死亡!被害者の慰謝料や損害賠償請求の相場に影響する?
交通事故の加害者が死亡!被害者の慰謝料や損害賠償請求の相場に影響する?

交通事故に遭い,負傷すれば加害者に損害賠償請求することを考えます。

しかし,加害者が死亡してしまったら,損害賠償請求を行うことはできないのでしょうか?

こちらは被害者であるのに損害賠償請求を行うことができないのであれば,納得がいきません。

加害者が死亡してしまった場合にどうすればよいか,ご説明します。

目次

1 加害者が死亡した場合、被害者の損害賠償請求は誰にできる?

加害者が死亡した場合、被害者の損害賠償請求は誰にできる?

⑴加害者の相続人

加害者は,被害者に対して損害賠償債務を負います。

そして,加害者が死亡すれば,加害者の相続人はこれらの債務を相続します。

(相続開始の原因)

第八百八十二条 相続は、死亡によって開始する。

(相続の一般的効力)

第八百九十六条 相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。

そのため,加害者が死亡しても,加害者の相続人に対して損害賠償金を請求することができます。

ただし,加害者の相続人は,「相続放棄」を行うことができます。

(相続の放棄の効力)

第九百三十九条 相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす。

相続放棄を行えば,加害者の相続人は損害賠償債務を相続せずにすみます。

また,加害者の相続人が相続放棄をしなくとも,相続人に資力がなければ,彼らに損害賠償金を請求しても,支払を受けることはできません。

⑵自賠責保険

加害者が死亡しても,被害者は自賠責保険会社に賠償金を請求することができます。

これを,「被害者請求」といいます。

⑶任意保険

加害者が死亡しても,加害者が任意保険に加入していれば,一定の条件のもとで被害者は任意保険会社に賠償金を請求することができます。

具体的な条件については,2 加害者が死亡した場合、損害賠償請求をする方法の,⑶任意保険の中で説明しています。

2 加害者が死亡した場合、損害賠償請求をする方法

⑴加害者の相続人

①相続人を調べる

加害者の相続人が誰かを調べます。

加害者に…相続人
配偶者・子がいる配偶者・子
配偶者はいるが,子はいない配偶者・親
子はいるが,配偶者はいない
配偶者も子もいない
配偶者も子も親もいない兄弟姉妹

加害者に配偶者や子がいる場合,同居していることが多いので,配偶者・子がいるかを調べることは比較的容易です。

これに対して,親や兄妹姉妹について調べるには,場合によっては戸籍を調べる必要があります。

しかし,弁護士でなければ他人の戸籍を調べることはできません。

そのため,加害者の相続人全員を調べることは難しいです。

②相続人に連絡する

相続人が判明すれば,連絡をとります。

突然損害賠償請求されると相続人の方も驚くでしょうから,慎重に連絡しましょう。

③交渉する

相続人と交渉して,示談金の額を決定します。

損害賠償債務は,相続人が相続分に応じて分割して相続することになります。

そのため,相続人が複数いる場合,相続人全員と交渉する必要があります。

しかし,全員と示談交渉をする手間は大きいので,代表者一人と示談交渉を進めることをおすすめします。

④示談書を作成する

相続人と示談交渉を進めて,合意ができれば,その内容で示談書を作成します。

なお,(ア)交通事故の示談の進め方,(イ)示談書のひな形について,当事務所の次のコラムでご紹介しているので,ご覧ください。

(ア)交通事故の示談の進め方を知りたい

(イ)交通事故後の示談書にひな形はある?

⑵自賠責保険

日本では,自動車の所有者に自賠責保険への加入が義務付けられています。

そこで,被害者は自賠責保険に対して「被害者請求」をすることになります。

これは,加害者側から賠償が受けられない場合、加害者が加入している保険会社(組合)に損害賠償額を直接請求する方法です。

まず,交通事故証明書に記載されている加害者の自賠責保険に連絡をとり,保険金請求用の書類一式を送ってもらいます。

そして,必要な書類を作成し,加害者の自賠責保険に提出します。

必要書類は以下の通りです。

被害者請求の必要書類(〇:必ず提出 △:必要に応じて提出)

必要書類発行者作成者被害者請求
傷害後遺障害死亡
支払請求書(保険金・損害賠償額・仮渡金)請求者
請求者本人の印鑑証明書市区町村
交通事故証明書自動車安全運転センター
人身事故証明書入手不能理由書(物件事故として届けられている場合や,交通事故証明書に被害者名のない場合)事故当事者
事故発生状況報告書事故当事者
加害車両の・自動車検査証(写)・標識交付証明書(写)または軽自動車届出済証(写)(原動機付自転車または軽自動車(二輪),車検対象車でない場合)加害車両の所有者
診断書医療機関
診療報酬明細書医療機関
施術証明書・施術費明細書医療機関
入退院・通院交通費/休業損害 請求意思確認シート被害者など  
通院交通費明細書被害者など  
休業損害証明書,確定申告書(写),所得証明書など勤務先や市区町村など
住民票または戸籍抄本(事故当事者が未成年の場合)市区町村 
委任状および委任者の印鑑証明書(委任を受けて請求される場合)委任者
看護料領収証,付添看護料自認書付添者
その他損害を立証する書類,領収証など 
死亡診断書または死体検案書医療機関  
省略のない戸籍(除籍)謄本市区町村  
後遺障害診断書医療機関  

もっとも,自賠責保険は被害者の最低限度の救済を目的としているので,以下のように支払われる保険金の額は少ないです。

傷害による損害(被害者1名につき)120万円
後遺障害による損害①神経系統の機能や精神・胸腹部臓器への著しい障害で,介護を要する障害(被害者1名につき)常時介護を要する場合(第1級)であれば,4000万円。随時介護を要する場合(第2級)であれば,3000万円
①以外の後遺障害(被害者1名につき)(第1級)3000万円~(第14級)75万円
死亡による損害(被害者1名につき)3000万円

なお,交通事故の被害者請求については,当事務所の次のコラムでもご紹介しているので,ご覧ください。

交通事故の被害者請求について知りたい。

⑶任意保険

加害者が加入している任意保険会社に対して,被害者が直接請求できる場合について,以下のように約款で定められていることが多いです。

(ア)被保険者と損害賠償請求権者の間での判決、裁判上の和解・調停、または示談により、法律上の損害賠償責任の額が確定した場合
(イ)損害賠償請求権者が被保険者に対する損害賠償請求権を行使しないことを被保険者に対して書面で承認した場合
(ウ)損害賠償額が保険証券記載の保険金額を超えることが明らかとなった場合
(エ)被保険者またはその法定相続人の破産または生死不明であった場合、あるいは被保険者が死亡しかつその法定相続人がいない場合

被害者は,加害者が死亡しかつ法定相続人がいない場合には,加害者が加入していた任意保険の保険会社と示談交渉を行い,示談金の支払いを受けることができます。

※「法定相続人がいない」とは,加害者の法定相続人がそもそもいない場合に加え,加害者の法定相続人全員が相続放棄をした場合も含みます。

3 加害者が死亡した場合、損害賠償請求の相場に影響する?

交通事故の加害者が死亡したことによって,損害賠償金が減額されてしまうことがあるのでしょうか。

交通事故の損害賠償金が減額されるのは,⑴過失相殺⑵素因減額⑶損益相殺の事由があった場合です。

⑴過失相殺

被害者側に過失がある場合,過失割合に応じて損害賠償金が減額されます。

なお,自賠責保険の保険金は最低限の保障であるので,過失があることを理由に減額はされません。

⑵素因減額

被害者の持病などが原因で治療が長期化する,後遺障害が残った場合に,損害賠償金が減額されます。

⑶損益相殺

事故により利益を得た場合,被害者が二重取りをしないよう,得た利益を損害賠償金から減額します。

事故により得た利益には,自賠責保険から支払われる保険金があります。

加害者が死亡したからといって,被害者に過失があるなどと判断されるわけではありません。

そのため,加害者が死亡したことを理由に,損害賠償金は減額されません。

しかし,交通事故の状況から被害者に過失があると判断される場合や,自賠責保険から保険金を受け取っている場合には,損害賠償金が減額されることに注意しましょう。

4 弁護士に依頼するメリット

弁護士に依頼するメリット

交通事故の加害者が死亡した場合,まずは⑴相続人・自賠責保険への請求を行うことが考えられます。

相続人がおらず,加害者が任意保険に加入していた場合には,⑵任意保険会社に保険金を請求することが考えられます。

自賠責保険への被害者請求の手続きは,必要書類も多数にわたるうえに煩雑なので,ご自身で行うには時間も手間もかかります。

また,相続人に請求するにあたっては,相続人は加害者本人ではないので,「自分とは関係ない」と言って示談交渉に応じない可能性があります。

さらに,任意保険会社に請求するにあたっても,示談交渉で言いくるめられ,低額の示談金しか得られない可能性があります。

弁護士に依頼すれば,対応方針を提示してくれます。

また,弁護士はこれらの手続きを行ってくれるので,相続人や保険会社との対応に気を煩わせる必要がなくなります。

さらに,弁護士は交渉に長けているので,多額の示談金を得られる可能性があります。

5 まとめ

交通事故の加害者が死亡した場合,誰に損害賠償金を請求するかが重要になります。

加害者の相続人が示談金を支払ってくれる場合や,加害者が任意保険に加入している場合は,損害賠償金の支払いを受けることができるでしょう。

しかし,相続人が不明である場合や,加害者が任意保険に加入していなければ,十分な損害賠償金を受け取ることができません。

交通事故の加害者が死亡してしまっても,弁護士に相談すれば,泣き寝入りせずに満足な支払いを受けることができるでしょう。

交通事故被害に遭われて,加害者が死亡してしまったのであれば,交通事故分野に詳しい弁護士に相談されることをお勧めします。

当事務所では,交通事故を多く取り扱っています。交通事故被害に遭われて,加害者が死亡し,対応に困っている方は,大阪(なんば・梅田)・堺・岸和田・神戸の弁護士法人法律事務所ロイヤーズ・ハイにご相談ください。

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