交通事故 交通事故基礎知識 後遺障害 慰謝料
2023.12.01 2024.07.04

交通事故による肩甲骨骨折の後遺障害等級認定基準と慰謝料請求の相場を解説

交通事故による肩甲骨骨折の後遺障害等級認定基準と慰謝料請求の相場を解説

肩甲骨は,背中側の上部にある逆三角形状の大きな平たい骨です。

肩甲骨は,腕や肩が自由に動くために必要不可欠であるので,肩甲骨骨折の後遺障害が残ればかなり行動制限が生じます。当コラムでは,肩甲骨骨折の後遺障害についてご説明いたします。

1 交通事故による肩甲骨骨折とは?

バイク等に乗っていて交通事故に遭い,地面に肩から叩きつけられ,肩甲骨に衝撃を受けると肩甲骨骨折を発症することがあります。

肩甲骨体部の横骨折,縦骨折であることが多いですが,鎖骨骨折,肋骨骨折,肩鎖靭帯の脱臼骨折を合併することもあります。

肩甲骨を骨折すれば,三角巾,ストッキネット,装具等で3週間程度肩を固定する保存的療法をとります。

肩甲骨単体の骨折であれば,3カ月程度で後遺障害を残すことなく治ります。

2 交通事故による肩甲骨骨折の後遺障害等級と認定基準とは?

(1)変形障害

後遺障害等級後遺障害認定基準
12級5号鎖骨、胸骨、ろく骨、けんこう骨又は骨盤骨に著しい変形を残すもの裸体になったときに変形や欠損が明らかに分かる程度のものに限定される。エックス線写真によってはじめて変形が発見しうる程度のものは,除く。

(2)運動障害

後遺障害等級後遺障害認定基準
8級6号一上肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの強直/完全弛緩性麻痺かそれに近いもの
10級10号一上肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの患側の関節可動域が,健側の関節可動域の2分の1以下であるもの
12級6号一上肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの患側の関節可動域が,健側の関節可動域の4分の3以下であるもの

強直=関節がまったく可動しないか,患側の関節可動域が健側の関節可動域の10%程度以下に制限されたもの,患側の関節可動域が健側の10度以下に制限されたもの

完全弛緩性麻痺に近い状態=患側が他動では稼働するが,自動では健側の関節可動域の10度程度以下となったもの。

また,患側の関節可動域が健側の関節可動域の10度以下に制限されている場合もこれにあたります。

運動障害があるかどうかは,他動運動(第三者または器具などの外力によって動かす)による測定値で判断します。

後遺障害等級を認定する際は,肩関節の日常動作で最重要な動き(主要運動)で判断します。

もっとも,主要運動の可動域が等級評価の対象とされる数値をわずかに上回る場合(それ以下となれば障害認定できる関節可動域の数値に対して,肩関節の屈曲・伸展の場合は+10度を加えた数値以下の可動域制限がある場合をいう。)は,参考運動の1つについて可動域角度が2分の1または4分の3以下に制限されていれば後遺障害等級認定します。

例えば,患側の可動域が85度,健側の可動域が160度である場合,患側の可動域は健側の可動域の2分の1(160度÷2=80度)ではありません。

しかし,肩関節の場合,80度+10度=90度までなら,健側の可動域の2分の1をわずかに上回る場合として,参考運動の状態も参考にして,後遺障害10級10号を認定することができます。

(3)神経症状

後遺障害等級後遺障害認定基準
12級13号局部に頑固な神経症状を残すもの障害の存在が医学的(ないしは他覚的)に証明できるもの
14級9号局部に神経症状を残すもの障害の存在が医学的に説明可能なもの

3 交通事故で肩甲骨骨折した場合の慰謝料請求の相場は?

交通事故で肩甲骨骨折して,入院・通院した場合,その期間に応じて入通院慰謝料を加害者に請求することができます。

加害者が保険に加入していれば,保険会社が請求先となります。

また,後遺障害慰謝料も請求することができます。

後遺障害慰謝料とは,後遺障害が残ったことで受ける肉体的・精神的苦痛に対する補償です。

入通院慰謝料,後遺障害慰謝料には3つの支払基準があります。

自賠責基準,任意保険基準,弁護士基準です。

任意保険基準は,各保険会社の基準であるため,非公開です。

(1)変形障害

後遺障害等級後遺障害自賠責基準弁護士基準
12級5号鎖骨、胸骨、ろく骨、けんこう骨又は骨盤骨に著しい変形を残すもの94万円290万円

(2)運動障害

後遺障害等級後遺障害自賠責基準弁護士基準
8級6号一上肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの331万円830万円
10級10号一上肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの190万円550万円
12級6号一上肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの94万円290万円

(3)神経症状

後遺障害等級後遺障害  
12級13号局部に頑固な神経症状を残すもの94万円290万円
14級9号局部に神経症状を残すもの32万円110万円

なお,弁護士基準での入通院慰謝料については,当事務所の次のコラムでご紹介しているのでご覧ください。

弁護士基準での入通院慰謝料と通院日数について知りたい

4 弁護士に依頼するメリットとベストな依頼タイミングとは?

(1)弁護士に依頼するメリットとは?

①治療に専念することができる

弁護士に依頼すれば,弁護士は被害者の代理人として保険会社とのやり取りの窓口になってくれます。

保険会社が早期の治療打ち切りを提案したとしても,弁護士が交渉して治療終了時期を延長してもらえることもあります。

保険会社とのやり取りや,治療打ち切りに気を揉まず,治療に専念することができます。

②後遺障害申請に有効なアドバイスを受けることができる

後遺障害等級認定を受けることができるのは,これ以上回復が見込めない(症状固定)と医師に診断された後です。

そのため,少なくとも6ヶ月以上の通院期間が必要です。

また,後遺障害認定基準を踏まえた検査を受けたうえで,後遺障害診断書を作成する必要もあります。

このように,後遺障害申請を行うにあたっては,通院期間,検査,後遺障害診断書の内容など様々なポイントがあるので,経験豊富な弁護士に依頼すれば的確なアドバイスを受けることができます。

③後遺障害申請の手続を代行してもらえる

後遺障害申請には,事前認定・被害者請求の2つがあります。

事前認定とは,加害者の加入している任意保険会社が主体となる申請方法であるのに対し,被害者請求とは,被害者が資料収集などを行い主体となる申請方法です。

被害者請求の方が,被害者ご自身の納得いく資料を集めることができる結果,後遺障害等級認定を受けやすいので,おすすめです。

弁護士に依頼すれば,被害者請求を代わりに行ってもらえるので,資料収集・提出の手間がかからずに後遺障害等級認定を受けることができます。

④適切な後遺障害等級を獲得できる

弁護士は,後遺障害申請のポイントを踏まえて申請手続きを行うので,障害の程度に応じた後遺障害等級認定を受けることができる可能性が高まります。

⑤示談金の相場が分かる

被害者が加害者側に請求することができる損害項目は,治療費や入通院慰謝料,後遺障害慰謝料など多岐にわたります。

そのうち,入通院慰謝料・後遺障害慰謝料は弁護士基準と自賠責基準では金額が大きく異なります。

全て自賠責基準で算定されていても,これに気づかず示談に応じてしまえば,基本的に示談をやり直すことはできません。

弁護士に依頼していれば,弁護士が入った場合の示談金の相場を把握しているので,示談金の額を教えてもらえます。

そのため,相場よりも低い金額で示談が成立することを防ぐことができます。

⑥示談金を増額できるかもしれない

弁護士が示談交渉に入れば,保険会社も無下に対応することはできないので,誠実に対応してもらえるでしょう。

また,弁護士基準を適用することができます。

そのため,示談金を増額できる可能性が高まります。

⑦ストレスを軽減できる

慣れない保険会社とのやり取りや後遺障害申請を自分で行なうのであれば,体も不完全な状態なので,ストレスは大きいです。

弁護士が保険会社とのやり取り,後遺障害申請などを行うので,被害者にかかる精神的・身体的ストレスが格段に減ります。

(2)弁護士に依頼するベストなタイミングは?

交通事故後,示談金を受け取るまでは以下のような流れになっています。

①事故発生
②病院を受診
③入通院での治療
④症状固定との診断
⑤後遺障害申請
⑥示談交渉
⑦示談成立
⑧示談金獲得

事故発生直後に依頼すれば,その後の交通事故対応全てを弁護士に依頼することができます。

後遺障害等級認定を受けることができるように通院する,被害者のストレスを大きく軽減するには①の段階で依頼することが理想的です。

②~⑤の段階であっても,後遺障害申請を行う前であれば,弁護士に依頼することで適切な後遺障害等級認定を受けることができる可能性が高まるので,弁護士に依頼することをおすすめします。

⑥の段階であっても,弁護士が示談交渉に入れば交渉をスムーズに進める,弁護士基準を適用するなどして示談金を増額できることがあるので,弁護士に依頼することをおすすめします。

十分な示談金を獲得するには,①~⑤までの段階で弁護士に依頼すべきです。

遅くとも,⑥の段階までには弁護士に依頼しましょう。

なお,交通事故で相談する弁護士の選び方,交通事故後,弁護士に相談するタイミング,については,当事務所の次のコラムでご紹介しているのでご覧ください。

交通事故で相談する弁護士の選び方について知りたい!

交通事故後、弁護士に相談するタイミングを知りたい。

5 まとめ

交通事故による肩甲骨骨折の後遺障害についてご説明させていただきました。

交通事故で肩甲骨を骨折した場合,早い段階で弁護士に依頼するに越したことはないです。

弁護士費用特約があれば,弁護士費用の心配は不要です。

また,当事務所では,お電話での相談・依頼も可能です。交通事故による肩甲骨骨折の後遺障害で悩まれている方は,弁護士法人法律事務所ロイヤーズ・ハイにご相談ください。

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