交通事故に遭った時に、被害者は加害者の保険会社から損害賠償を受け取ります。その金額については、保険会社の提示金額に被害者の合意により決まりますが、その金額に妥当性があるか否か判断をしたり、不当だと思った場合は保険会社と交渉をしたりを被害者が行うことになります。そういった場合、被害者には大きな負担を強いられます。
ここでは、そういった負担を軽減するための「弁護士特約」についてご説明をします。
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目次
1 弁護士特約とはいったいどういう内容なのでしょうか?
⑴弁護士特約とは
弁護士特約とは、各保険会社で多少名称は異なりますが、「保険会社が交通事故問題においての弁護士費用をある一定の金額までは代わりに支払ってくれる」というものになります。
主に自動車保険にて加入できる特約の1種で、弁護士特約を使えば、弁護士に依頼をする費用関係は保険会社が負担することになるので、被害者は費用について心配せずに、安心して使用ができます。比較的新しい制度ではありますが、徐々に浸透しつつあり、2017年時点では自動車保険に加入しているおおよそ7割ほどの方が弁護士特約をつけています。
⑵弁護士特約を使う場合の条件
弁護士特約を使用する場合、よく「100%被害者でなければ使えない」と思っていらっしゃる方がいますが、そうではありません。被害者側に過失の割合が多少あったとしても、使用は可能です。実際に、保険会社に提示された過失割合が高すぎるとして、過失割合を減らすために、使用する方もいらっしゃいます。基本的には「被害者」であれば使用可能です。
また、特約を契約している自動車以外の事故でも使えます。たとえば、バスやタクシー、友人の車に乗っている時や自転車や歩行者の時も使用できます。原則、下記のような、被害者に重大な過失がなければ使用は可能となります。
- ・無免許運転、居眠り運転、飲酒運転、薬物を使用しての運転
- ・自殺行為や、本人の犯罪行為によって事故が起きた場合
- ・同居の親族や配偶者に対する損害賠償請求
- ・被害者自身の車両不足(欠陥や腐しょく、さび等)
- ・自動車事故とは関係のない日常での事故
- ・台風や津波、地震など自然災害による事故
このように、被害者側に原因がある場合等には使用はできません。まずは、自身の交通事故で使用できるかどうかを、保険会社に確認をしてみることが大事です。
また、使用できるのは保険契約者のみではありません。弁護士費用特約に加入している被保険者の配偶者や同居の親族、子ども、また別居で未婚の子どもにも使用できますので、もし自身が特約をつけていなかったとしても、家族の方が付けていないかどうかを確認してみましょう。
2 交通事故の被害者となった場合にすることは?
⑴加入保険の弁護士特約確認
弁護士特約を使用する場合は、まず加入している保険会社に弁護士特約が付いているかと確認しましょう。保険証書に加入有無の記載があるとは思いますが、先ほど述べたように【使えない場合】がありますので、保険会社に直接確認することをおすすめします。問題がなければ、保険会社に使用したい旨を伝えて、同意が得られたら、弁護士に相談をしましょう。保険会社によっては「依頼をする弁護士が決まったら再度連絡をください」と言われますので、連絡を忘れないようご注意ください。
相談をし、依頼をする弁護士が決まったら、弁護士に保険会社の名前と担当者の名前を伝えるようにしてください。あとは、弁護士が保険会社に連絡をし、費用の打ち合わせ等を行ってくれます。
⑵弁護士特約のメリット
弁護士特約のメリット、つまり弁護士を入れたときのメリットは大きく分けて4つです。
①弁護士費用がかからない ②損害賠償金を大幅に増額できる可能性がある ③ケースに応じて解決策を見出してくれる ④手続きや相手の保険会社との示談交渉を任せられる |
①弁護士費用がかからない
特約がない場合だと、受け取る損害賠償金額よりも弁護士費用が高くついてしまう可能性があります。しかし、弁護士特約を付けていれば保険会社が費用は支払ってくれますので、そういった心配はありません。
②損害賠償金を大幅に増額できる可能性がある
慰謝料等を計算するときに、計算基準には3つの基準があります。自賠責保険基準、任意保険基準、裁判所基準(弁護士基準ともいいます)といいますが、弁護士が介入すれば、一番高くかつ適正な基準である裁判所基準で交渉が可能です。なお、自賠責保険基準は、公平かつ迅速にできる限り多くの被害者救済を目的に最低限の補償をするといったものになるので、一番低い基準となります。
任意保険基準は各保険会社が過去の判例や実績を元に独自で決めた基準となり、明確な計算基準は明らかにはなっていませんが、自賠責保険基準と同じか、少々高い基準であるとされています。弁護士を入れると入れないとで、最終的に数十万円の差が出る時もあります。
③ケースに応じて解決策を見出してくれる
交通事故は被害者の相談のタイミングや事故の状況等によって、各々どうすればいいのか異なります。被害者は何が最善かわからないまま、物事を判断し進めていかなければいけません。交通事故は1つ間違えると、被害者にとって大きな損失に繋がる可能性があります。弁護士特約を使い、弁護士を入れることで、その人に最善な解決策を弁護士が導き出して進めてくれます。
④手続きや相手の保険会社との示談交渉を任せられる
交通事故を解決するまでに、被害者にとって大きな負担は【保険会社とのやりとり】です。被害者は、仕事をしながら、日常生活に戻れるよう怪我の治療を続けることとなります。そういった中で、保険会社から連絡があれば、やりとりをしたり、手続きがあれば仕事の合間に書類を作成したりと進めていかなければいけません。これが1度や2度の話ではないので、時間も取られますし、保険会社によっては対応が高圧的であることや話を全く聞いてくれないこともあり、被害者の精神的ストレスになります。
弁護士に依頼をすれば、こういった保険会社とのやりとりは代わりに行ってくれますし、面倒な手続きも弁護士が代理人として行えることが多くあります。また、弁護士は過失割合の妥当性も検討し、不当であれば交渉をしますし、損害賠償についても適正な金額となるよう示談交渉を進めてくれます。
⑶弁護士特約のデメリット
弁護士特約のデメリットは実はあまりありません。よく使用を迷われている方で保険料が上がることや、等級が下がることをご心配されている方もますが、弁護士特約はそういった心配は必要ありません。使用しても、翌年の保険料は上がりませんし、等級も下がることはないからです。
あえてデメリットを上げるとすれば、弁護士特約はオプションの特約となりますので、オプションの保険料が年間1,500円~3,000円程度かかるという点ぐらいです。弁護士費用は、着手金だけでも10万円ほどかかる法律事務所がほとんどですので、万が一に備えて入っていることをおすすめします。
3 交通事故被害者側の弁護士費用はどれくらいかかるのでしょうか?
⑴弁護士費用相場
弁護士特約について述べてきましたが、では、もし特約がない場合、費用はどのくらいかかるのでしょうか? 弁護士の費用は主立って以下の5種類があり、相場もおおよそ決まっています。
①法律相談料 ②着手金 ③報酬金 ④実費 ⑤日当 |
①法律相談料
1時間あたり5,000円~10,000円。最近では初回無料相談としている法律事務所が多いです。
②着手金
0~30万円程度。弁護士に正式に依頼するとなった際の費用で、前払いの性質があり、たとえ依頼者が解任をしたり、思った結果にならなかったりしても、返金はありません。また、請求する金額によって変動するため、最初に10万円だけ支払い、のちほど報酬金と一緒に払うというケースもあります。
③報酬金
0~20万円程度+示談金の10%程度となることが多いです。成功報酬ともいいます。これも示談金によって大きく変動する可能性があります。
④実費
資料を取り付けるための費用や相手とのやりとりにかかった郵送代、実務上必要な費用です。弁護士が裁判所や医師に意見を聞くために病院に行った交通費もここに含まれます。案件によってかかる金額は異なるので、先に一定額を依頼者から預かるか、いったん弁護士が立て替えるかの2通りです。
⑤日当
弁護士が事務所から離れている時の費用をいいます。弁護士の時間を拘束することになるので、時間に応じての費用が発生します。例えば、遠方の裁判所に出廷した際の移動時間や、医師との面談時間がここ含まれます。実費と同じく相場は案件に寄って異なります。
⑵特約利用の場合の限度額
弁護士費用の相場をお伝えしましたが、特約を使用すれば、弁護士費用を無制限で支払ってくれるわけではありません。各保険会社で上限金額が設定されています。多くの保険会社は「1事故1人につき相談費用10万円、弁護士依頼関係費用は300万円まで」としています。
例えば、家族4人で交通事故の被害者となった場合、それぞれに相談料10万円と弁護士依頼関係費用は300万円までの枠が与えられます。この枠を超えるような事故は、死亡事故であったり、重傷事故により等級の高い後遺障害が認定された場合であったりする場合が想定されます。よって、交通事故に多いむちうちなどでは超えることはまずありません。
また、たとえ超えた場合であっても、先ほどメッリトでご説明をいたしましたように、弁護士が入れば慰謝料等損害賠償金の増額が見込めますので、損害賠償金からの差し引きで費用は間に合うことが多いです。
⑶負担額を軽くするポイント
もし、弁護士特約がなく、弁護士費用を自己負担せざる得ない時は、無料相談をしている法律事務所を探してみましょう。また、交通事故の場合、事務所によっては、最終的に受け取った損害賠償金のから着手金や報酬金等すべての費用の精算をする、いわゆる成功報酬型の事務所もあります。弁護士特約がない=相談をしない、となるのではなく、まずは費用負担が少ない事務所を探してみましょう。
4 弁護士への依頼を検討されている方は、大阪(なんば・梅田)・堺・岸和田・神戸の弁護士法人法律事務所ロイヤーズ・ハイへ!
弁護士特約ですが、確かに加入率は上がってきていますが、使用率は実はそこまで高くありません。なぜなら、保険会社は弁護士費用をできれば払いたくないので、保険会社は使用を自ら勧めません。
また、「揉めてから使えばいいのではないのか?」「弁護士を入れるということは裁判をすることですよ。」「弁護士は保険会社が選んだ弁護士でなければいけません。」等といわれることもあります。結果、弁護士特約の保険料は払っているのに、使わずにいる人も少なくはないです。
弁護士特約は、基本的には、いつどのタイミングで使用しでも問題ないですし、必ずしも裁判にはなりません。そして、弁護士特約を使う本人は、弁護士は選ぶことができます。弁護士にも得意分野がありますし、大事な損害賠償の話にもなりますので、自分で選んだ弁護士に相談をすることをおすすめします。使わなければ、弁護士特約は損ですので、遠慮はせず積極的に使用しましょう。
「弁護士特約を使用することに悩んでいる…」
「本当に使っても損はないの…?」
「揉めていないのに使っても問題ないのか…?」
こういった疑問をお持ちの方も、弁護士特約はつけているけれど、弁護士への依頼を悩んでいる方も、ぜひ一度、大阪(なんば・梅田)・堺・岸和田・神戸の弁護士法人法律事務所ロイヤーズ・ハイにご相談ください。