交通事故 休業損害 慰謝料
2020.10.28 2024.04.25

交通事故に遭った被害者が専業主婦の場合、慰謝料はいくらになるのか?

交通事故に遭った被害者が専業主婦の場合、慰謝料はいくらになるのか?

交通事故に巻き込まれてしまった時、被害者の方は加害者へ慰謝料を請求することとなります。

この時、被害者の方が現実の収入がない主婦(主夫)である場合、慰謝料に影響があるのかと不安になられる方も少なくありません。

ここでは専業主婦(主夫)の方が事故に遭った場合の慰謝料やその他の損害賠償金についてご説明をさせていただきます。

専業主婦が交通事故にあったときに受け取れる損害賠償

損害賠償の種類

交通事故の被害者の方が請求する「慰謝料」は損害賠償として請求できるものの1つです。

慰謝料以外にも事案にもよりますが、以下のものが請求可能となります。

 

人身事故の場合

損害賠償金の内訳

内容

慰謝料 精神的苦痛に対して支払われる
治療費・入院費 怪我の治療にかかる費用。検査費や手術費、処方箋代の他、入院の雑費なども含まれる。
通院交通費 通院のためにかかった交通費(タクシーも必要性が認定された場合、かつ領収書があれば可)
休業損害 休まずに働いていれば本来得ることができた収入の減少分に対して支払われる。
逸失利益 交通事故の被害に遭わなければ得ることができたと考えられる将来の経済的利益。
付添看護費 入通院で付添が必要と医師が判断、または被害者の方が12歳以下の場合に認められる費用。
器具等購入費 治療や後遺症によってかかる費用(例:松葉杖、車椅子等)。
家屋改造費 後遺症によって自宅のバリアフリーが必要となった際の費用(例:手すりを付ける、段差をなくす等)。
葬儀関係費用 墓碑建立費、仏壇費、仏具購入費、遺体処置費、遺体運送費等の諸経費。

 

物損事故の場合

損害賠償金の内訳

内容

修理費 車両の修理にかかる費用。
代車使用料 修理期間、買い替えた車両を用意するまでにかかったレンタカー使用料。
評価損(格落ち損) 車両の市場価値の減少分。
休車損 営業用の車両が事故車となった場合に、修理または買い替えに必要かつ相当な期間の損害。
登録手続関係費 税金、廃車に関する費用、自動車検査登録手続費用、車庫証明手続費用、納車手数料等の諸経費。
雑費 車両保管料、レッカー代、時価査定料、通信費、交通事故証明書交付手数料、廃車料等の諸経費。
携行品 車に積んでいた物や、バイクの場合だとヘルメット等、身に着けていた衣服や携帯等が含まれる。

 

なお、これらはあくまでも代表例です。「交通事故による損害である」と相手の保険会社が認めた場合は上記以外の損害についても支払われることもあります。

また、物損事故の場合、精神的損害=慰謝料が認められることは、長年連れ添ったペットが亡くなった場合など例外的なものを除いてほぼありません。

 

兼業か専業かでもらえる損害賠償は変化するのか

主婦の中にも、兼業主婦と専業主婦の方がいらっしゃいますが、もらえる損害賠償に変化はあるのでしょうか?

兼業主婦と専業主婦でもらえる損害賠償に変化があるのは、「休業損害」です。

そもそも、主婦の方でも、休業損害は請求が可能です。後程詳しく説明を致しますが、主婦については実際の収入が発生していない為、休業損害は発生しないと思われていたり、保険会社からそのように説明を受けたりすることがあります。

しかし、主婦の方が被害者の場合は、主婦の休業損害は請求が可能となります。仮に、主婦の方が交通事故で怪我をし、家事や育児ができなくなった場合に、第三者へ依頼をするとなると労働対価として金銭が発生します。

つまり、主婦の方の家事労働には経済価値が認められると考えられ、休業損害は発生すると考えられます。

では、実際の収入がない専業主婦ではなく、パートやアルバイトといった実際に収入が発生している兼業主婦の方の場合ですが、この方の場合でも【主婦としての】休業損害を請求できる可能性があります。

兼業主婦の方の収入が女性の平均賃金を超えない場合、主婦休損として休業損害が請求できるという考えを裁判所は持っています。

また、パート、アルバイト分の休業損害を受け取ったとしても、その休業損害分と主婦の休業損害分に差額が発生する場合は、差額を追加で相手の保険会社へ請求することが可能です。

専業主婦が受け取れる慰謝料

慰謝料とは

慰謝料とは、交通事故の怪我により被害者の方が負った精神的苦痛を金銭で癒すものとなります。

主婦の慰謝料については、冒頭でもご説明したように少なく見積もられるのでは?と心配されている方は多くいらっしゃいます。

結論から申し上げると、主婦でも会社員でも、また学生であっても、交通事故において怪我を負い、慰謝料を請求する際は、立場や職種に関係なく、基本的には慰謝料は請求が可能となります。

交通事故で怪我を負った場合に請求が可能となる慰謝料は、入通院慰謝料と後遺障害慰謝料の2つがあげられます。

入通院慰謝料は入院期間や通院期間、日数が計算の基に計算がされ、後遺障害慰謝料については、その障害の重さに応じて認定された等級を基に算出されることから、主婦であるから計算方法が変わるということはありません。

ただし、交通事故の慰謝料には、入通院慰謝料、後遺障害慰謝料の他に、被害者の方が亡くなった場合に死亡慰謝料というものがありますが、死亡慰謝料は、家庭内の役割によって慰謝料が変わることもあります。

例えば、亡くなった方が家庭内で経済的支柱である場合は、被害者遺族の家庭内の経済的支柱を失うこととなるので、慰謝料は高額となることはあります。

慰謝料の相場

交通事故の慰謝料算定基準は大きく分けて3つあります。そのため、慰謝料の相場は、その基準を使用するかによって大きく変動します。

3つの基準は、自賠責基準、任意保険基準、弁護士基準(裁判基準)といいます。

・自賠責基準

通常、すべての車両が加入している自動車損害賠償責任保険(通称自賠責保険)で使用される算定基準を自賠責基準といいます。

自賠責保険は、交通事故により怪我をした被害者の方を救うことを目的としており、被害者の方へ【最低限度の補償を行う】保険です。そのため、各損害賠償額の項目ごとに支払い基準や支払い限度額が設定されています。

3つの基準の中で、最も低い金額を算出する基準となります。

・任意保険基準

任意保険は、個人の任意で加入するか否かを決めることができ、加入した任意の保険会社が使用する基準を任意保険基準といいます。

少し前まではすべての保険会社で算定基準は統一されており、その基準を基に慰謝料等は計算されていました。

しかし、現在では、統一基準は撤廃され、各保険会社が独自に過去のデータ等を参考に作られていると考えられています。正確な計算方法や算定表等は非公開です。

保険会社から被害者の方へ実際に提示される金額は、自賠責基準を少しだけ上回る金額か、もしくは同等金額となることもあります。

・弁護士基準(裁判基準、裁判所基準)

弁護士基準は、過去の裁判例を参考に作成されています。そのため、裁判基準、裁判所基準とも呼ばれています。

弁護士が被害者の方に代わって示談交渉を行う場合や、訴訟となった場合に使用されます。

過去の裁判例をベースにした算定表であることから、「最も適正な損害賠償金を算出できる基準」ともされており、算定基準の中でも、最も高額な慰謝料を算出します。

事案にもよりますが、自賠責基準や任意保険基準と比べて、慰謝料の金額が最終的に2~3倍になる可能性もあります。

慰謝料の計算方法

各算定基準での、入通院慰謝料、後遺障害慰謝料について見ていきましょう。

【入通院慰謝料】

(自賠責基準)

自賠責基準では、通院・入院1日あたりにつき4,300円と定められています。したがって、以下の式で算出されます。

日額4,300円×対象日数=自賠責基準の入通院慰謝料

※2020年3月31日以前の事故については1日あたり4,200円

慰謝料を請求する対象日数は、以下の2つの数字のうち「少ない値」が使用されます。

①実際の入院期間と通院した実日数を足して2倍した値

②病院への初診日から治療終了までの治療期間

(任意保険基準)

任意保険基準は、先ほども述べたように、各保険会社で独自で算定基準を定めているため、明確な計算方法はわかりません。

以下は、撤廃される前に全保険会社が使用をしていた「旧任意保険基準」を基にご説明いたします。

現在でも、旧任意保険基準を参考している保険会社も少なくはないと考えられていますが、あくまでも推定となります。

 

万円

(単位)

入院 1ヶ月

 

2ヶ月 3ヶ月 4ヶ月 5ヶ月 6ヶ月
通院   25.2

 

50.4 75.6 95.8 113.4 128.5
1ヶ月 12.6 37.8 63 85.7 104.6 121 134.8
2ヶ月 25.2

 

50.4 73.1 94.5 112.2 127.3 141.1
3ヶ月 37.8 60.5 81.9 102.1 118.5 133.6 146.1
4ヶ月 47.9 69.3 89.5 108.4 124.8 138.6 151.1
5ヶ月 56.7 76.9 95.8 114.7 129.8 143.6 154.9
6ヶ月 64.3 83.2 102.1 119.7 134.8 147.4 157.4
7ヶ月 70.6 89.5 107.1 124.7 138.6 149.9 160
8ヶ月 76.9 94.5 112.1 128.5 141.1 152.5 162.5

 

上記の表の見方のポイントは以下となります。

 

・縦列を通院の期間、横列を入院の期間として見ます。

・入院と通院の両方がある場合は、各月が交差する場所が相場となります。

・暦ではなく「ひと月あたり30日」と考えます。

 

(弁護士基準)

「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準(通称赤い本)※公益財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部が発行」に掲載される算定表を基に入通院慰謝料は計算されます。

表は別表Ⅰ、別表Ⅱと2種類存在し、被害者の方が負った怪我の程度や内容等で使用する表は変わります。

表の見方のポイントは、先ほどお伝えした旧任意保険基準の算定表と同じです。

 

むちうち以外の怪我の場合の傷害部分の慰謝料基準表

(損害賠償額算定基準:別表Ⅰ)

万円

(単位)

入院 1ヶ月

 

2ヶ月 3ヶ月 4ヶ月 5ヶ月 6ヶ月
通院   53

 

101 145 184 217 244
1ヶ月 28 77 122 162 199 228 252
2ヶ月 52 98 139 177 210 236 260
3ヶ月 73 115 154 188 218 244 267
4ヶ月 90 130 165 196 226 251 273
5ヶ月 105 141 173 204 233 257 278
6ヶ月 116 149 181 211 239 262 282
7ヶ月 124 157 188 217 244 266 286
8ヶ月 132 164 194 222 248 270 290

 

 

むちうちなど他覚的所見がない場合に使用

(損害賠償額算定基準:別表Ⅱ)

万円

(単位)

入院 1ヶ月

 

2ヶ月 3ヶ月 4ヶ月 5ヶ月 6ヶ月
通院   35

 

66 92 116 135 152
1ヶ月 19

 

52 83 106 128 145 160
2ヶ月 36 69 97 118 138 153 166
3ヶ月 53 83 109 128 146 159 172
4ヶ月 67 95 119 136 152 165 176
5ヶ月 79 105 127 142 158 169 180
6ヶ月 89 113 133 148 162 173 182
7ヶ月 97 119 139 152 166 174 183
8ヶ月 103 125 143 156 168 175 184

 

 

以下は、同じ事故について、3つの算定基準で計算をした結果です。

 

(例)入院期間30日間、通院実日数60日、治療期間210日の場合

・自賠責基準

計算式)日額4,300円×180日=77万4000円

 

対象日数は、①(30日+60日)×2=180日、②210日となりますので、①の180日を採用することになります。

 

・任意保険基準

計算式)横軸入院1ヶ月と縦軸通院6ヶ月の交差するマス=832,000円

 

1ヶ月を30日と考えると治療期間210日=7ヶ月と算出されます。

そのうち30日=1ヶ月は入院期間となるため、通院期間=治療期間7ヶ月-入院期間1ヶ月=6ヶ月と算出されます。

 

・弁護士基準

パターン①むちうち以外の受傷の場合

別表Ⅰ:計算式)横軸入院1ヶ月と縦軸通院6ヶ月の交差するマス=149万円

 

パターン②むちうちなどの他覚所見のない場合

別表Ⅱ:計算式)横軸入院1ヶ月と縦軸通院6ヶ月の交差するマス=113万円

 

3つを比べていただくと明らかなように、弁護士基準で計算された入通院慰謝料が圧倒的に高額となります。

【後遺障害慰謝料】

後遺障害慰謝料は1~14級の等級に応じて慰謝料の相場は決まります。

以下は各基準で定められた慰謝料の相場金額をまとめたものです。

 

別表Ⅰ 後遺障害により介護が日常的に必要な場合の後遺障害に使用

後遺障害等級 自賠責保険基準 任意保険基準 裁判所基準
第1級 1600万円※

1650万円

1600万円 2800万円
第2級 1163万円※

1203万円

1300万円 2370万円

 

別表Ⅱ その他、日常的な介護が必要ない場合の後遺障害に使用

後遺障害等級 自賠責保険基準 任意保険基準 裁判所基準
第1級 1100万円※

1150万円

1600万円 2800万円
第2級 958万円※

998万円

1300万円 2370万円
第3級 829万円※

861万円

1100万円 1990万円
第4級 712万円※

737万円

900万円 1670万円
第5級 599万円※

618万円

750万円 1400万円
第6級 498万円※

512万円

600万円 1180万円
第7級 409万円※

419万円

500万円 1000万円
第8級 324万円※

331万円

400万円 830万円
第9級 245万円※

249万円

300万円 690万円
第10級 187万円※

190万円

200万円 550万円
第11級 135万円※

136万円

150万円 420万円
第12級 93万円※

94万円

100万円 290万円
第13級 57万円 60万円 180万円
第14級 32万円 40万円 110万円

※印は2020年3月31日以前の交通事故の場合(13級、14級は変更なし)

 

入通院慰謝料と同様に、弁護士基準が最も高額となります。

追突事故等で被害者の方がなりやすい、むちうちの場合、14級ないしは12級が認定される可能性があります。

仮に14級が認定された場合、算定基準によっては2~3倍以上の金額がことなることになります。

専業主婦が受け取れる休業損害

休業損害とは

休業損害とは、交通事故の怪我が影響で仕事を休まざる得なくなり、その結果、減ってしまった収入に対する損害賠償です。

先ほども述べましたように、主婦の方は実際の収入が無くても、家事には経済的価値があると考えられ、請求が可能となります。

 

専業主婦が受け取れる休業損害の相場

専業主婦の方が受け取ることができる休業損害についても、算定基準は自賠責基準、任意保険基準、弁護士基準とあることから、相場は算定基準で大きく異なります。

なお、男性で家事従事者である場合も、主夫として請求は可能となります。

また、主婦の休業損害は「家事にどれほどの影響があったのか?」をどこまで説明できるかによって、金額も変わります。

 

専業主婦が受け取れる休業損害の計算方法

3つの算定基準の計算方法ですが、計算式は共通です。

主婦(主夫)の休業損害=基礎収入日額×休業日数

 

自賠責基準 日額6,100円

(※2020年3月31日以前の交通事故の場合5,700円)

任意保険基準 自賠責基準が適用されるケースが多い
弁護士基準 事故前年度の賃金センサスの女性の全年齢平均賃金÷365日 ※男性の家事従事者もこちらを使用

例)令和2年の交通事故の場合、令和元年賃金センサス388万円÷365日=日額10,630円

 

日額を見ていただくとわかるように、約1.5倍以上の金額であることがわかります。

休業日数は、事故当日から治療終了するまでの間に、仕事を欠勤したり、遅刻、早退したりした日数をいいます。

主婦の方の場合、ほぼ毎日家事や育児を行うといった点から、明確には、主婦業を「いつ休んだか」を証明することができません。

そこで、3つの算定基準共通で、通院日数=休業日数と考えるのが基本となっています。

たとえば通院期間60日のうち30日間病院へ通院した主婦の方の場合、休業損害は以下の通りになります。※2020年(令和2年)の事故と想定

 

算定基準 自賠責基準(任意保険基準) 弁護士基準
計算式 6,100円×30日 10,630円×30日
金額 18万3000円 31万8900円

 

算定基準が異なるだけで、13万5900円もの差額が見られます。いかにどの算定基準を使用するかで、主婦の方が受け取る金額に差が出るかわかります。

なお、重ねて申し上げますが、主婦の方の休業損害はいかに家事に影響があったかを相手側に理解してもらわなければなりません。

また、通院した日数すべてが休業日数として計算されるとは限りません。怪我の回復具合に応じて、休業日数は算定されることが多いです。

さらに、休業損害を多くもらおうと考えて、通院日数を不必要に多くした場合、その通院に必要性がないと判断され、治療費の打ち切りをなど別の問題に見舞われる可能性もあります。

必要性かつ妥当性のある通院を行うようにしてください。

主婦の方の損害賠償については交通事故を多く取り扱う大阪(なんば・梅田)・堺・岸和田・神戸の弁護士法人法律事務所ロイヤーズ・ハイにご相談ください。

専業主婦の方の慰謝料や休業損害といった損害賠償金についてご説明をさせていただきました。 

主婦の方が休業損害を請求する場合は、その必要性、妥当性、また認定する期間等、交通事故問題でも比較的に争点になりやすいです。

主婦の休業損害をこれから請求する、現在示談が難航しているといった方は、弁護士に相談することを強くお勧めします。

また、弁護士に依頼をすることで初めて最も高額である弁護士基準で示談交渉が可能となり、受け取れる損害賠償金が上がる可能性が高くなります。言い換えれば、主婦である被害者の方本人で示談交渉をした場合は、十分な金額を得ることができないということです。

主婦の方で交通事故に遭われたら、多く取り扱う大阪(なんば・梅田)・堺・岸和田・神戸の弁護士法人法律事務所ロイヤーズ・ハイにまずは一度ご相談ください。

適正な損害賠償金を受け取ることができるようサポートさせていただきます。

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