交通事故の中でも多い事故の1つである追突事故ですが、被害に遭われた方の多くが見た目ではわからない怪我、いわゆる【むちうち症】となることが多いです。
むちうち症は、交通事故の場合、追突による急激な力が身体に加わることで、身体が大きく前後に揺すられます。その衝撃により、前方に上半身がお知らされる一方で、後方には、細い首の上にある重い頭が残る状態にとなります。その結果、首部分が負傷することとなります。
ここでは、むちうち症を中心に、後遺症はどのように対応していけば良いのかをご説明させていただきます。
関連記事:【まとめ】後遺障害とは?よくある4つのケースと認定されるメリット・デメリットを解説
目次
1 交通事故の後遺症治療について
⑴整形外科で診察
まず、交通事故に遭った場合、必ず整形外科などの病院で医師の診察を受けるようにしましょう。
どんなに小さな事故でも、身体には負担が加わっています。交通事故に遭った直後は、痛みを感じていなかったとしても、数時間後~翌日に身体に痛みが生じることは少なくありません。
特にむちうち症の場合は、翌日~5日後くらいに症状出ることが多いです。
そのため、自覚症状がなかったとしても、医師の診察を受けることが非常に重要です。
また、病院で医師の診察を受けた際は「診断書」を作成してもらいましょう。
診断書は、警察に人身事故として届け出する際に必要であり、また、保険会社へ治療費等を請求する際にも、怪我をしたことを証明するために必要となります。
被害者の方の中には、交通事故後に医師の診察は受けず、接骨院や整骨院に通う方がいらっしゃいますが、必ず病院の診察を先受けるようにしましょう。
相手の保険会社が治療費を支払う場合、後に保険会社から支払われない可能性があります。後程詳しく説明を致します。
参考:交通事故後の痛みが現れたら整形外科と整骨院どちらを受診すべき?
⑵後遺症の種類と症状
むちうち症は、医学的に定義が難しいとされていますが、首から背骨にかけての神経症状の一種であると言われています。
ほとんどの場合、レントゲンでは異常は発見されません。あくまでもレントゲンは、「骨の検査」だからです。交通事故の怪我は、筋肉や靭帯、そして神経を痛めることがほとんどです。
そのため、「身体がどれだけ痛みのない状態で動かすことができるのか」という検査を本来はすることが大切です。
レントゲンに異常が出ていなかったとしても、痛みがあるのであれば、通院は定期的に続けるべきでしょう。
なお、むちうち症など神経を痛めている可能性がある場合は、MRIの撮影などで異常がわかることもあります。
むちうちの後遺症 | |
頚椎捻挫型 | 首の捻挫 首・肩・背中の痛みやコリなど |
神経根症状型 | 首の神経根に負荷がかかった場合 手などの身体の一部に、痺れの症状、また力が入らないなど |
脊髄症状型 | 脊髄損傷した中でも最も重症な場合 脚部の痺れの他、歩行障害、知覚障害など |
脳脊髄液減少症 | 脳髄液が漏れ出してしまった場合 全身の痛みや聴力、視力、味覚の障害の他、倦怠感、自律神経症など |
バレー・ルー症状型 | 首の神経までが傷ついた場合 頭痛、後頭部の痛みをはじめ、耳鳴りや眩暈、息苦しさなど |
この中でも大部分を占めるのは「頚椎捻挫」であり、首に負担が生じたことで起きる、首の捻挫となります。
2 接骨院・整骨院で治療する場合の注意点
被害者の方の中には、リハビリの効果があまり出ないことや仕事の都合で整形外科に通うよりも、接骨院や整骨院で施術を受けて治療していきたいという方がいらっしゃいます。
ただ、接骨院や整骨院での施術の場合、保険会社から治療費(施術費)や適切な慰謝料を支払ってもらえない場合があります。
これは、正しい手順を守っていないことが大きな要因の1つです。
正しい手順や手続きを行えば、治療費(施術費)を相手の保険会社は負担をしてくれる可能性は高いです。
⑴医師の同意書
接骨院や整骨院で治療を受けるための正しい流れは以下となります。
1:整形外科などの病院で医師の診察を受ける 2:接骨院・整骨院に通う許可を医師にもらう 3:接骨院・整骨院に通う旨、医師から許可を得たことを相手の保険会社へ伝え、通院の許可を得る 4:接骨院・整骨院への通院を開始する 5:1ヶ月に1度以上は医師の診察を受け、病院で症状について、 また、治療を継続することの必要性を診断してもらう 6:医師が治療の必要性がないと判断するまで、継続的に 病院、並びに接骨院・整骨院に通う |
先ほども述べましたが、相手の保険会社や医師の許可が無く接骨院・整骨院に通った場合は、治療費(施術費)を支払ってくれない可能性が非常に高くなります。
接骨院・整骨院での施術は、医師の同意が非常に重要です。
交通事故の接骨院・整骨院の利用は、示談交渉の中でも争点になる1つであり、後遺障害の等級認定申請にも影響しうる可能性もあります。
よって、接骨院・整骨院での施術については事前に医師に取り付けているおくことが必要となります。
可能であれば、医師に同意書を作成してもらいましょう。
医師からの同意を口頭ではもらえたけれども、何らかの理由で書面の作成をしてもらえない場合は、保険会社に事情を説明し、医師と保険会社の間で話してもらうようにすることも1つの方法です。
また、手順5の病院への通院ですが、30日以上通院が空いてしまった場合、たとえ接骨院・整骨院での治療を続けていたとしても、治療費を打ち切られてしまう可能性は、非常に高いです。
医師の診察は必ず30日以内に1度以上、期間が空かないことに気を付けましょう。
⑵症状固定は医師が行う
接骨院・整骨院での施術がメインとなったとしても、最終的に、症状について診断をするのは、整形外科などの病院で診察をしてくれる被害者の方の主治医=「医師」です。
よって、被害者の方は普段から医師とのコミュニケーションはしっかりとることを心掛けなければなりません。
何故ならば、医師は、被害者の方の【症状固定】の時期の判断をします。
症状固定とは、「一定の後遺障害が残り、これ以上治療を続けても良くも悪くもならない、改善の見込みがない状態」をいいます。
この状態になると、原則として、加害者側に治療費を払ってもらうことができなくなります。
あくまでも治療費は、「被害者の方の怪我の治療のため」に支払われているため、症状固定のように、治療をしても症状は回復しないとなると保険会社も払う必要性が無くなり、賠償期間が終了となります。
医師とのコミュニケーションが希薄な場合、被害者の方にとって不本意なタイミングで症状固定であると判断されることもあります。
整形外科などの病院で医師に診察をしてもらう時は、医師に自分の具体的な症状を伝えることが非常に大切です。
3 後遺症を認定してもらうための治療の注意点
むちうちの後遺症を認定してもらうために、被害者の方はどのようなことを、気を付けていかなければならないのでしょうか?
⑴症状固定まで治療する
後遺症として認定をしてもらうためには、後遺障害の等級認定の申請を行わなければいけません。
そして、その申請を行うためには「症状固定まで治療を継続すること」が必要となります。
これはむちうち症以外のケースでも同様です。
何らかの理由で、症状固定前に治療をやめてしまうと、治療の必要性が無かったと考えられてしまい、最終の通院日=症状固定の日と考えられてしまいます。
被害者の方は、必ず医師が症状固定と判断する日までは治療を続けるようにしましょう。
後遺障害の等級認定手続きは、症状固定まで通院を続けることから始まると考えると良いでしょう。
なお、症状固定については、担当の医師が判断します。
相手の保険会社が「そろそろ症状固定としませんか?」等という場合は、賠償期間を早く終わらせたいがための提案です。
先ほどお伝えしましたように、症状固定ということは、治療費を支払う必要が無くなります。
被害者の方の通院期間が長引くと、保険会社からすると支払額が上がり、また後遺障害の等級が認定された場合は、後遺障害の慰謝料や逸失利益を支払うこととなります。
そのため、早めに通院をやめさせるために、そのように言うこともあります。
重ねてお礼を申し上げますが、通院を途中でやめてしまう=後遺障害の等級認定を受けられません。
後遺症の可能性がある場合は、医師が症状固定と判断するまでは、しっかりと通院は継続しましょう。
⑵後遺障害等級認定を受ける
後遺障害慰謝料や逸失利益を受け取るためには、後遺障害の等級認定に申請をし、1級~14級のいずれかの等級を認定されなければなりません。
後遺障害等級認定を受けるためには、まず後遺障害診断書を医師に書いてもらう必要があります。
後遺障害診断書を作成することができるのは、医師だけです。また、後遺症の認定のためには、交通事故後、主治医として治療・経過観察をし、症状固定と判断した医師に書いてもらわなければなりません。
むちうち症の場合、接骨院・整骨院の通院が中心となる方もいらっしゃいますが、接骨院・整骨院の先生は、柔道整復師であり、医師ではありませんので、後遺障害診断書を作成することはできません。
医師に作成をしてもらったら、必要書類を用意し、申請の手続きに移りますが、申請には「事前認定」と「被害者請求」の2種類があります。
前者は相手の保険会社を通しての申請、後者は被害者の方本人で行う申請です。
後遺障害等級認定の可能性を少しでも上げるのであれば、手間がかかるかもしれませんが、被害者請求をおすすめします。
事前認定であれば、保険会社に後遺障害診断書を提出するだけですので、特段手間がかかりませんが、あくまでも申請するのは「加害者側の」任意保険会社です。
損害賠償額が大きく変わる、大事な後遺障害等級の認定申請を任せてしまった場合、適切な手続きがなされているのか、不透明でわかりません。
後遺障害等級の認定の申請は、身体に残った醜状障害等の場合を除くと、提出した書類で判断されることになります。
※醜状障害の場合、調査機関との面談が入ることもあります。
このような点から、後遺症を認定してもらうためにも、被害者請求によって等級申請は行うようにしましょう。
なお、弁護士に依頼をすれば、このような手間はすべて弁護士が行ってくれますので、被害者の方の負担は軽減されます。
なお、むちうちの後遺症の場合は、14級9号か12級13号が認定される可能性があります。
後遺障害等級表(むちうち症の場合) | |
後遺障害12級 | 後遺障害14級 |
「局部に頑固な神経症状を残すもの」に該当している | 「局部に神経症状を残すもの」に該当している |
他覚症状がないと認められない | 自覚症状を推定できる資料があれば認定を受けることができる |
後遺障害慰謝料の金額 裁判所基準:290万円 自賠責基準:94万円 労働能力喪失率:14% | 後遺障害慰謝料の金額 裁判所基準:110万円 自賠責基準:32万円 労働能力喪失:5% |
12級と14級の差を見ていただくとわかるように、等級が1~2級異なるだけで、受け取れる金額は大幅に変わります。
さらに弁護士に依頼をすれば、慰謝料算定するにあたって最も高額な金額を算定できる裁判所基準で計算を行うため、増額する可能性が上がります。
また、労働能力喪失率とは、後遺症が残ったことにより、被害者の方の労働能力がどれだけ失われたかという指数になります。
逸失利益(後遺症がなければ本来得るはずだった経済的利益)を計算する場合に基準となる数字です。
労働能力喪失率は上位等級になればなるほど、数値は大きくなり、逸失利益の金額も高額となります。
4 むちうちの後遺症についてのご相談は、交通事故を多く取り扱う大阪(なんば・梅田)・堺・岸和田・神戸の弁護士法人法律事務所ロイヤーズ・ハイへ
むちうち症の場合、治療の期間や費用については争点になりやすいです。
何故ならば、むちうち症は目に見えない怪我だからです。
そのため、保険会社は個々の事情ではなく、過去の実績や対応から、まだ痛みがあるにも関わらず、治療費の打ち切りを告げたり、改善傾向にあるにもかかわらず、症状固定を勧めてきたりします。
保険会社は、日々交通事故問題を取り扱うプロです。
一方で、多くの被害者の方は、交通事故に遭うことも初めてで、知識もありません。知らないまま、被害者の方にとってはマイナスの選択をご自身でされている可能性もあります。
そういった事態を避けるためにも、むちうち症と診断されたら、早期の段階で交通事故問題に詳しい弁護士に相談をするようにしましょう。
むちうち症について、相手の保険会社との交渉は難航しているなど、お悩みがある方は、交通事故を多く取り扱う大阪(なんば・梅田)・堺・岸和田・神戸の弁護士法人法律事務所ロイヤーズ・ハイにぜひご相談ください。