交通事故 後遺障害 治療費 症状固定
2020.11.12 2024.04.25

交通事故の傷跡に対する治療・対応について知りたい

交通事故の傷跡に対する治療・対応について知りたい

交通事故で負った怪我や、その手術等の結果、一生消えることのない傷跡として、被害者の方の顔や身体など他人の目に触れる箇所に残ることがあります。

このような後遺症を「醜状障害」といいます。

他の後遺障害と同様に、醜状障害は、後遺症として後遺障害等級の認定申請を行い、等級が認定された場合は、後遺障害分の損害賠償を請求できます。

こちらでは、醜状障害について、どのようなものが醜状障害と言えるのか、どういった場合に後遺障害として認定されるのかをご説明します。

交通事故の傷跡に対する治療について

症状固定の判断が難しい

まず、受傷や手術等といった傷跡について、多くの被害者の方が悩まれるのが、「症状固定」の時期です。

医師から傷跡が残る可能性があると言われた後、治療を終了する=後遺障害に申請することをいつにするかが、判断が難しくなります。

傷跡が他の怪我と大きく違うのはその治療方法です。

交通事故の怪我の中でも多い、むちうちや打撲といった場合は、リハビリを行い、完治を目指して治療を行います。

一方で、傷跡の場合は、特別リハビリを行うことはなく、塗り薬や貼り薬といったもので、時間の経過を待つしかありません。

医師からも、「傷跡はいずれ薄くなるものなので、また1ヶ月後に診察に来てください。」「様子を見て、傷跡が気になるようであれば、手術も考えましょう」という説明を受けることが多いです。

そうなった場合、被害者の方は【いつ傷跡が治るのか?】【いつ治療を終えていいのか?】と先が見えないことに不安になる方もいらっしゃるでしょう。

このようなとき、被害者の方はどうすれば良いのでしょうか?

後遺障害の認定を検討する

傷跡が残ってしまった被害者の方は、後遺障害等級申請の認定を検討しましょう。

一般的に、後遺障害の申請は、【受傷をして6ヶ月経過した段階】と言われます。

6ヶ月未満の場合、まだ十分な治療をしたと言えない、良くなる見込みがあると判断されることもあり、申請をしても認定される可能性が低くなります。

まずは、6ヶ月間は治療をしていくことが大切です。

なお、症状固定であると医師に診断された場合、それ以降の治療費を保険会社が支払うことは基本的にありません。

相手の任意保険会社が支払う治療費はあくまでも【治療】の為の費用であり、【良くも悪くもならない、改善の見込みがないと判断された状態】=【症状固定】の場合は、賠償する必要がなくなるからです。

もしも将来、傷跡を消すための手術を行うことになったとしても、手術費は基本的に自己負担となります。場合によっては、将来手術費を被害者の方の損害として認められるケースもありますが、非常に難しいです。

傷跡が残ってしまった場合、受傷後6ヶ月経過した段階で、症状固定とし、後遺障害の申請を行うべきか、手術をする可能性がある以上固定はせず、後遺症の申請はしない方がいいのか、悩まれる方も少なくありません。

たとえば、事故により切り傷を負い、受傷直後に傷痕を縫合した場合の醜状の症状固定については、【抜糸されてから6ヶ月目安で傷痕が安定する】と言われています。

つまり、怪我から症状固定まで時期は、傷の創面同士がくっついてから6ヶ月後程度が目安といえるでしょう。

その一方で、傷の下の骨を損傷したり、皮膚の縫合がされず癒合が遅れたりした場合等、様々な要因で治療期間は変化します。

また、レーザー治療や移植手術等をするといった、治療方法によっても、症状固定の時期は異なります。

手術に関しては、本人の傷跡の箇所や程度等によって、医師がすべきか否か、また手術をするのであれば、いつするのか否かを判断すると思いますので、その判断を頼りにすると良いでしょう。

一方で、後遺障害の等級認定を受ける場合は、受傷後6ヶ月以降に申請を行うと、等級認定は下りやすいと言えます。

傷跡については、先ほどもお伝えしたように、時間の経過を待つしかないという怪我です。

そのため、治療終了の時期や症状固定の時期も、事案によりけりであり、一概にいつ、どうすべきである、とは言えません。

被害者の方は必ず主治医の先生の意見を参考にし、治療終了の時期や後遺症の申請時期を検討することをお勧めします。

傷跡が付いた場合の後遺障害等級

醜状障害とは

醜状障害とは、【他人の目に触れる場所(顔や首、手足以外で衣服で隠れない場所等)に、人目につく傷痕が残存した場合】を言います。

なお、顔や首以外にも、醜状障害として認定される場合があります。

ただしその場合は、足の付け根までの部分や肩の付け根部分までに、手のひら大の以上の傷跡が残っていることが後遺症として認定されるラインです。

また、傷跡ではなく、事故が原因で、顔面に麻痺が残り、口が歪んでしまった場合や鼻や耳が欠損した場合、色素が抜けてしまったり、沈着してしまったりした場合も醜状障害の1つとして扱われます。

醜状障害の後遺障害等級

醜状障害が後遺障害として認められる場合、何級の等級が認定されるのでしょうか?

区分 等級 障害の程度
外貌

 

 

・第7級12号

・第9級16号

・第12級14号

・外貌に著しい醜状を残すもの

・外貌に相当程度の醜状を残すもの

・外貌に醜状を残すもの

上・下肢 ・14級4号

 

・14級5号

 

・上肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの

・下肢の露出面に手のひらの大きさの醜いあとを残すもの

 

この「外貌」は、頭部や顔面部、頸部のように、上下肢以外の通常、露出すると考えられる部分をいいます。わかりやすく言うと、首から上の、普段から他人の目に触れる箇所を指します。

次に、「醜状」「醜いあと」は、瘢痕(はんこん)や、切り傷、手術痕といった線状痕があります。また、ケロイドや欠損等も含まれます。

これらを後遺障害として認定してもらうためには「人目につく程度以上」というものである必要があります。

また、上肢・下肢についての醜状障害で等級が認められているのは、「人目につきやすい、露出面に醜状が残った場合」となります。

自賠責保険の基準では、上肢については肩関節以下から指先まで、下肢については、股関節以下から足の背まで)が露出面とされています。

被害者の方が醜状障害を認定してもらうためには、「人目につく程度以上の傷跡であることが必要」ことがポイントです。

たとえば、外貌醜状の場合ですが、瘢痕、線状痕、組織陥没等が被害者の方に残ったとします。

しかし、その醜状部分が、眉毛や頭髪等で隠れてしまう場合は、「眉毛や頭髪等で隠れてしまう部分」は醜状としてみなされません。

顔面に4センチの切り傷が残ってしまっても、頭髪で3センチ隠れてしまう場合は、後遺障害の評価対象については、残りの1センチ部分となります。

2個以上の瘢痕や線状痕が重なり、1個の瘢痕や線状痕と同等の醜状と考えられるケースでは、面積や長さ等を合わせて等級認定がなされます。

つまり、醜状障害を申請する際は、どの部分にどれくらいの醜状が残っており、どの程度人目に触れるのかが重要となります。

そのため、後遺障害申請の際に、必ず提出する必要がある、医師が作成する「後遺障害診断書」には、症状の程度(傷跡の箇所、大きさ)を正確に記載してもらう必要があります。

この部分が正確ではなく、箇所、大きさに不備がある場合は、後遺障害の等級申請に不利に働いてしまいかねません。

ただ、醜状障害は重ねて申し上げますが、「人目に付く程度以上」という判断基準があります。よって、提出された書面上で、後遺障害として該当する可能性がある場合は、調査機関との面接が入り、書面と相違がないか、症状の程度、箇所、形態を人の目で確かめることもあります。

以上のように、醜状障害について、後遺障害に該当するか否かは専門的な知識が必要となりますので、申請を検討している方は、弁護士に相談をするようにしましょう。

傷跡が付いた場合の逸失利益

醜状障害が後遺障害としていずれかの等級認定された場合、被害者の方には、「傷跡が残ってしまった」という精神的苦痛が発生すると考えられ、また、普段の生活だけでなく、醜状部分の部位によっては、仕事面にも悪影響が出る場合があります。

通常、後遺障害が認定された場合は、後遺障害が残った精神的苦痛に対する慰謝料と、後遺症により労働能力喪失され、本来得るはずだった経済的利益、いわゆる逸失利益を、被害者の方の損害として請求が可能です。

しかし、醜状障害に関しては、逸失利益の有無、またその程度が相手の保険会社と大きく争点となることが多いです。

これは、一般的に、醜状障害自体は、身体的機能を左右するものではなく、それにより、現在・将来ともに労働能力が喪失されたとは言えず、減収を伴うものではないという考え方が保険会社にあるからです。

事実、過去の裁判例においても、傷跡が残った場合の逸失利益は否定されることは少なくないです。

ただし、見た目が決定的に、又は非常に重視される職業があることも事実です。

被害者の方の後遺症が人の目につくような醜状障害だった場合、対人関係の構築・維持や、円滑な意思疎通の妨げになることもありえるでしょう。

よって、最近の裁判例では、事案によっては、醜状障害による逸失利益の発生を認めるケースも増えてはきました。

以下は、醜状障害の逸失利益について、詳しく述べていきます。

顔に傷が残った場合

まず、逸失利益が被害者の方の損害として認められるか否かは、醜状障害の内容や障害の程度を、実質的に検討する必要があります。

例えば、顔の醜状障害により第7級12号、つまり外貌醜状が【著しい】程度に達していた場合、対人関係等に相当程度の影響があると考えられることから、労働能力の喪失は肯定される可能性が高いです。

反対に、顔ではなく、腕や足といった醜状障害は、たとえ露出面に傷跡等が残ったとしても服装などで隠せることが多いです。そのため、顔に傷が残った場合に比べると、他人に与える影響(印象)は少ないと考えられ、労働能力の喪失については認められる可能性は低く、逸失利益も認められづらいと言えます。ただし、これは被害者の方の職業にもよります。

性別による差はない

後遺障害等級の認定については、性別による差はなく、男性、女性ともに、同じ基準での認定の可否が決定されます。

なお、平成22年以前は性別による違いはありました。しかし、法改正がなされたことで男女平等に等級が決められることとなりました。

現在では、【男女の性別は関係なく傷跡の場所や程度によって】、等級が決定します。

ただし、逸失利益については、裁判では被害者の方が女性の場合、肯定されやすい傾向があります。

 

傷跡が仕事に影響する場合

被害者の方の傷跡が仕事に支障をきたすレベルの場合、逸失利益は認められやすい傾向があります。

たとえば、モデルや芸能人といった、【人に見られる仕事】【容姿を重視される仕事】を職業としている場合は、醜状障害の内容や程度によっては、継続することすら不可能になることもありえます。

また、サービス業や営業職などといった対人関係や意思疎通が重要と考えられる仕事については、労働能力に対する影響が肯定される可能性もあります。

このように、逸失利益の発生を、相手の保険会社に認めてもらうためには、被害者の方の労働能力や収入に影響が生じることを示していくことが重要です。

また、逸失利益の存在を認定されたとしても、次に労働能力喪失率がどの程度になるかが争点になります。

ちなみに、過去の裁判例では、自賠責保険や労災で定められている等級ごとの労働能力喪失率をそのまま採用することはなく、事案ごとで判断がされています。

これは、被害者の方の障害の程度が事案によって異なることだけでなく、職業や性別等の要素に影響されるからと考えられます。

なお、醜状障害は、身体的機能に影響するものではないことから、全体的には、各等級で定められている喪失率よりも低い喪失率が認定されている傾向です。

なお、労働能力の喪失について、直接的な影響が認めがたく、逸失利益を否定された事案であっても、特に考慮すべき事情(例えば、未婚の女性が著しい外貌醜状障害を負った場合、事実上、婚姻の機会、選択の幅が狭まる等)が被害者の方にあるケースでは、後遺障害慰謝料で調整されることがあります。

醜状障害についてのご相談は、交通事故を多く取り扱う大阪(なんば・梅田)・堺・岸和田・神戸の弁護士法人法律事務所ロイヤーズ・ハイへ

醜状障害についてご説明をさせていただきました。

以上の通り、醜状障害については、後遺障害等級を認定してもらうために様々な専門的知識が必要となります。

また、後遺障害が認定されたとしても、逸失利益の部分で、労働能力の喪失を立証していかなければならなく、保険会社と争う可能性が非常に高いです。

被害者の方は、適正な損害賠償金を受け取るためには、交通事故問題の経験が豊富な弁護士にまずは相談をしましょう。

経験が豊富な弁護士であれば、治療をいつまで続けていくのか、後遺障害の申請の適正なタイミングについてもアドバイスをしてくれます。また後遺障害が認定された場合においては、逸失利益についてもしっかりと検討してくれるでしょう。

醜状障害についてお悩みの方は、交通事故を多く取り扱う大阪(なんば・梅田)・堺・岸和田・神戸の弁護士法人法律事務所ロイヤーズ・ハイにご相談ください。

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