交通事故に遭い、被害者となった時、相手の保険会社から「調査会社に調査依頼をします」と言われる時があります。
調査会社は保険会社から依頼を受けた民間の企業であり、交通事故当時の事故状況や道路状況、運転者の状況などについて調査をします。
被害者の方は、急に調査会社が出てくるとなると、何をされるのか不安になることも珍しくありません。
このコラムでは、具体的には保険会社はどのような調査するのか、何故調査が必要であり、調査会社が介入することで、被害者の方にどのような影響があるのか、等についてご説明をさせていただきます。
目次
1 保険会社はどんな調査をおこなうのか?
⑴事故の過失割合
信号待ちの停車中の追突事故や、加害者の自動車のセンターラインオーバーが原因の事故などといった、被害者の方の過失が0となるような事案以外、基本的には被害者側にも幾分の過失が認められることが多いです。
交通事故の過失割合は、交通事故の結果に対する双方の責任割合であり、過去の裁判例をベースに、当事者が契約する保険会社の担当が協議し決まります。
なお、過去の裁判例と全く同じ事故ということはありませんので、実際の事故とより近い、類似した裁判例を探します。その上で、実際の事故の状況、当事者たちの証言を基に、割合を修正して決定します。
⑵治療期間
交通事故に遭った被害者の方の治療費は、基本的には加害者側の保険会社が負担をすることになります。
そのため、保険会社は被害者の方の怪我がどの程度のものなのか、またどのような治療を行っているのか等詳しく調べる必要があります。
病院から毎月治療費の請求と共に保険会社に送られてくる診断書、診療報酬明細書を基に状況の把握を行います。
さらに、被害者の方の治療期間が長期に渡る場合、「治療の必要性・妥当性」を確認するため、被害者の方の怪我の状況や治療内容、回復具合、また今後の治療の見通しなどを直接医療機関に問い合わせを行い調査することもあります。
治療期間が長くなると、単純な医療費だけでなく、慰謝料の金額にも影響があるため、できる限り自社からの出費を抑えたい保険会社にとっては、医療調査は頻繁に行われます。
⑶後遺障害等級の認定
被害者の方の怪我が残念ながら完治に至らなかった場合、後遺障害等級の認定申請を行うことになります。
被害者の方は後遺障害診断書という申請に必ず必要である書類を主治医に作成してもらい、保険会社に提出します。
保険会社は提出された後遺障害診断書の他、医療機関より画像や必要書類を集め内容を精査し、調査機関である、損害保険料率算出機構自賠責損害調査事務所へ送り、後遺障害等級認定の申請手続きを行うことになります。
このように、加害者側の任意保険会社から申請を行うことを「事前認定」といいます。一方で、加害者側の任意保険会社を通さず、被害者の方が自ら手続きを「被害者請求」といいます。
一見、保険会社を通す方が被害者の方の手間や負担が軽減されるように思われますが、保険会社は自社からの支払いを少なくしたいがために、保険会社の顧問医に被害者の方の治療関係資料を確認してもらい、等級認定に不利な意見書作成してもらい、申請時に添付したり、事案によっては必要書類を付けずして申請を行ったりすることも考えられます。
⑷示談交渉
被害者の方の怪我が完治した段階、もしくは後遺障害等級の認定結果が出た段階で、被害者の方のすべての損害が確定したことになりますので、示談交渉が開始されます。
示談交渉は、加害者側の保険会社が被害者の方の損害を調査し、必要であれば書類の提出を求め、損害の計算を行います。
計算が終わり次第、示談案を被害者の方に送り、被害者の方の合意が取れれば示談成立となり、被害者の方に示談金が振り込まれることになります。
⑸損害賠償
被害者の方の損害賠償金は請求すれば、すべての金額が支払われるわけではありません。
請求の内容に、根拠があるのか、必要性、妥当性があるのかが判断されます。
例えば、休業損害を請求した場合は、その休業は果たして必要性があったのかどうか、治療状況を考慮して判断がされます。
場合によっては、調査をいれて医師に必要性を確認することになります。
特に、主婦・主夫の休業損害については、労働価値が認められていることから、請求は可能ですが、実際には収入の実損害がないものを請求することから、日額や認定日数については、保険会社は顧問医に相談をし、慎重に判断を行うことも珍しくありません。
2 保険会社が調査する理由
⑴過失割合は意見が分かれることが多い
交通事故における過失割合は、被害者の方が受け取る損害賠償金に大きく影響します。
被害者の方の過失割合が大きければ大きいほど、加害者側が支払うべき損害賠償金は減額されます。つまり、過失割合は双方の意見が分かれることが多いです。
冒頭でも述べましたが、過失割合は、事故当時の現場状況等を踏まえ、過去の裁判例を用いて、より近い内容をあてはめて、加害者側と被害者側で協議をし、割合を調整します。
ただ、事故当時の状況について、加害者と被害者の方の双方の意見が食い違い、過失割合が定まらないことも珍しくありません。
このような時に、保険会社は調査会社に依頼をし、事故の原因を究明します。
⑵保険金詐欺の可能性
交通事故の被害者となれば、基本的には保険金の請求が可能となります。
そのため、偽装事故を起こし、「保険金詐欺」を行う、いわゆる「当たり屋」がいます。
被害者の方に事故歴が異様に多い場合や事故態様に不審な点がある場合、保険会社は偽装事故の疑いをもち、保険会社を介入して調査を行うことがあります。
⑶保険金を少なくしたい
調査会社は、「保険会社の依頼を受けた第三者機関であり中立な立場である」とお考えの被害者の方もいらっしゃるかもしれませんが、これは大きな誤りです。
調査会社は、保険会社より調査依頼を受け、調査を行い、報酬を受け取っています。中には、保険会社が出資して設立された調査会社もあります。
つまり、基本的に調査会社は中立な立場ではないと言えます。
保険会社が保険金を少なくしたいと考えたとき、調査会社に依頼することも少なくありません。
何故なら、調査会社は、加害者側に有利な証拠を積極的に集めることはしますが、被害者側に有利に動くようなことはしないと考えらからです。
3 調査時に注意すること
調査会社を入れると保険会社に言われた場合、被害者の方はどういったことに注意をすべきでしょうか?
⑴調査には協力する
「調査をします」と言われると、感情的になって被害者の方の中には、調査を拒否する方もいらっしゃいます。
しかしこれは得策ではありません。基本的には調査に協力はした方がいいと言えます。
何故なら、調査を拒むことで、保険会社側からすると、「何か不都合なことがあるに違いない」といらぬ疑いを持たせてしまう可能性があります。
また協力をする際は、「嘘をつかないこと」が重要です。嘘をついてしまうことで、事故現場や話の整合性が取れず、信憑性がないと評価され、被害者の方にとってマイナスに働いてしまうこともあります。
それでも、調査を拒否するとなると、過失割合について争点がある場合、双方の主張が平行線となることから、解決まで長期間かかることが予想されます。
偽装事故を疑われている場合は、示談交渉での解決が困難となります。
⑵あいまいな回答をしない
「嘘をつかない」と同様に「あいまいな受け答えをしない」ということも非常に重要です。
交通事故当時のことについて、「ほとんど覚えていない」という被害者の方は多くいらっしゃいます。
突然のことに前後の記憶が飛んでいる方もいらっしゃいます。
こういった場合、被害者の方は「覚えていないことが不利になるのでは?」と考えて、あいまいな回答をしてしまうことがあります。
これは調査会社だけでなく、警察から事情を聞かれた際も同様なのですが、覚えていないことについては「覚えていない」としっかり答えましょう。
あいまいな回答は、場合によっては加害者側にとって有利に解釈されてしまうこともありえます。
4 調査会社を入れると言われたら、交通事故を多く取り扱う大阪(なんば・梅田)・堺・岸和田・神戸の弁護士法人法律事務所ロイヤーズ・ハイにご相談ください。
保険会社の調査並びに調査会社についてご説明をさせていただきました。
調査会社を入れるということは、被害者の方にとってプラスに働くことはあまりありません。調査会社が保険会社に渡す調査報告書は、加害者側に有利な内容になっていることがほとんどです。
調査結果に納得ができない時、個人で保険会社と交渉をすることは非常に難しいです。
このような場合は弁護士に依頼をするようにしましょう。
調査会社が入れると保険会社に言われてしまったら、まずは、交通事故に強い弁護士で大阪で口コミが高評価である、なんば・梅田・堺・岸和田・神戸の弁護士法人法律事務所ロイヤーズ・ハイに一度ご相談ください。