交通事故 交通事故基礎知識 後遺障害 慰謝料
2023.10.19 2024.05.15

「腰椎圧迫骨折」の後遺障害等級はいくつ?保険金の相場と慰謝料の請求方法

腰椎は上半身を支え,前後左右へ曲がるので,身体のうねりを担っていて,日常的な動作に役立っています。

腰椎圧迫骨折の後遺障害が残れば,上体を前後左右に倒すことができなくなる,腰椎の痛みが生じるなどの症状が残ります。

腰椎圧迫骨折の後遺障害が生活に与える影響は非常に大きいです。

当コラムでは,腰椎圧迫骨折の後遺障害についてご説明いたします。

目次

1 腰椎圧迫骨折の症状は?

腰椎とは,どこを指すのでしょうか。

まず,背骨(正確には「脊柱」と言います)を構成する骨のことを「脊椎」と言います。

そして,脊椎は「椎骨」と呼ばれる骨が連結した構造になっており,そのうち,腰部にある椎骨が「腰椎」です。

腰椎圧迫骨折とは,腰椎の椎体が圧迫されて潰れた状態になる骨折のことです。

交通事故によって,自動車が横転したり,バイク・自転車が転倒して尻もちをついた際に,腰椎圧迫骨折を発症することが多いです。

骨粗しょう症が進行している高齢者では,軽微な追突事故であっても,事故の衝撃で腰椎圧迫骨折を発症することがあります。

腰椎圧迫骨折を発症すれば,以下のような症状があります。

(1)疼痛

骨折部を中心に,特に体を動かすと非常に強い痛みが生じます。

(2)即打痛

骨折部を軽く叩くと痛みがあります。

(3)後湾変形

背中が曲がり,背筋を伸ばしにくくなります。

(4)神経症状

骨が潰れると神経が圧迫されて神経麻痺の症状を引き起こすことがあります。

2 腰椎圧迫骨折の後遺障害等級は?

腰椎圧迫骨折を発症し,治療を受けても変形障害や運動障害の残った場合,後遺障害等級認定がなされる可能性があります。

6級5号変形障害:脊柱に著しい変形を残すもの運動障害:脊柱に著しい運動障害を残すもの
8級2号(変形障害は相当等級)変形障害:脊柱に中程度の変形を残すもの運動障害:脊柱に運動障害を残すもの
11級7号変形障害:脊柱に変形を残すもの

(1)6級5号(変形障害)

6級5号の「脊柱に著しい変形を残すもの」とは,XP,CT,MRI画像により腰椎圧迫骨折を確認することができ,かつ,次のいずれかに該当するものです。

① (ア)と(イ)の両方を満たしている

(ア)脊椎圧迫骨折等により2個以上の椎体の前方椎体高(脊椎のお腹側の高さ)が著しく減少し,後彎(脊柱が前に倒れてしまった状態)が生じているもの

(イ)減少したすべての椎体の後方椎体高(脊椎の背中側の高さ)の合計と減少後の前方椎体高の合計との差が,減少した椎体の後方椎体高の1個当たりの高さ以上であるもの

②(ア),(イ),(ウ)の全てを満たしている

(ア)脊椎圧迫骨折等により1個以上の椎体の前方椎体高が著しく減少し,後彎が生じているもの

(イ)減少したすべての椎体の後方椎体高の合計と減少後の前方椎体高の合計との差が,減少した椎体の後方椎体高の1個当たりの高さの50%以上であるもの

(ウ)コブ法(エックス線写真により,側彎度を測定する方法)による側彎度が50°以上となっているもの

(2)6級5号(運動障害)

① 頚椎・胸腰椎それぞれに脊椎圧迫骨折等が存しており,それがXP等により確認できるもの
② 頚椎・胸腰椎のそれぞれに脊椎固定術が行われたもの
③ 項背腰部軟部組織に明らかな器質的変化が認められるもの
④ 荷重機能障害のため,頚部および腰部の両方の保持に困難があり,常に硬性補装具を必要とするもの

(3)8級2号(変形障害)

8級2号の「脊柱に中程度の変形を残すもの」とは,XP(レントゲン撮影),CT,MRI画像により腰椎圧迫骨折を確認することができ,かつ,次のいずれかに該当するものです。

①(ア)と(イ)の両方を満たしている

(ア)脊椎圧迫骨折等により1個以上の椎体の前方椎体高が減少し,後彎が生じているもの

(イ)減少したすべての椎体の後方椎体高の合計と減少後の前方椎体高の合計との差が,減少した椎体の後方椎体高の1個当たりの高さの50%以上であるもの

②コブ法による側彎度が50°以上であるもの

③環椎(第1頚椎のこと)または軸椎(第2頚椎のこと)の変形・固定(環椎と軸椎との固定術が行われた場合を含む。)により,次のいずれかに該当するもの。

(ア)60°以上の回旋位となっているもの

(イ)50°以上の屈曲位または60°以上の伸展位となっているもの

(ウ)側屈位となっており,エックス線写真等により,矯正位の頭蓋底部の両端を結んだ線と軸椎下面との平行線が交わる角度が30°以上の斜位となっていることが確認できるもの

(4)8級2号(運動障害)

8級2号の「脊柱に運動障害を残すもの」とは,次のいずれかに該当するものをいいます。

①    頚部または胸腰部の可動域が参考可動域角度の2分の1以下に制限されたもの
②    頚椎または胸腰椎に脊椎圧迫骨折等を残しており,そのことがXP等により確認できるもの
③    頚椎または胸腰椎に脊椎固定術が行われたもの
④    項背腰部軟部組織に明らかな器質的変化が認められるもの
⑤    頭蓋・上位頚椎間に著しい異常可動性が生じたもの
⑥ 荷重機能の障害のため,頸部または腰部のいずれかの保持に困難があり,常に硬性補装具を必要とするもの

(5)11級7号(変形障害)

11級7号の「脊柱に変形を残すもの」とは,次のいずれかに該当するものです。

①    脊椎圧迫骨折等を残しており,そのことがXP等により確認できるもの
②    脊椎固定術が行われたもの
③    3椎以上の脊椎について,椎弓切除術等の椎弓形成術を受けたもの

厚生労働省 せき柱及びその他の体幹骨,上肢並びに下肢の障害に関する障害等級認定基準

厚生労働省 関節の機能障害の評価方法及び関節可動域の測定要領 各論

3 腰椎圧迫骨折の後遺症による慰謝料の相場は?

腰椎圧迫骨折の後遺障害が残った場合,後遺障害慰謝料を請求することができます。

後遺障害慰謝料とは,後遺障害が原因で,将来にわたって不便を強いられたり,辛い思いをすることで生じる精神的苦痛に対する金銭的補償のことです。

慰謝料の算定基準は,3種類あります。

(1)自賠責基準

車を運転する人全員に加入が義務付けられている自賠責保険が定める基準です。

自賠責保険は,交通事故被害者への最低限の補償を行うものなので,3つの基準の中では最も慰謝料の金額が低くなります。

(2)任意保険基準

各任意保険会社が定めている慰謝料の基準です。

(3)弁護士基準

過去の裁判例等に基づいて作られた基準で,弁護士が慰謝料の算定に使います。

3つの基準の中では最も慰謝料の金額が高くなります。

弁護士が交渉すれば,「弁護士基準」に基づいて示談交渉を行うことができるので,より高額の示談金を獲得できる可能性が高まります。

後遺障害慰謝料の相場は後遺障害の等級によって変わります。

6級5号自賠責基準:512万円弁護士基準:1180万円
8級2号相当自賠責基準:331万円弁護士基準:830万円
11級7号自賠責基準:136万円弁護士基準:420万円

4 腰椎圧迫骨折の後遺障害に対する慰謝料の請求方法と注意点

⑴慰謝料の請求方法

後遺障害慰謝料を請求するには,後遺障害等級認定を受ける必要があります。

後遺障害等級認定を受けてから,相手方と示談交渉を行い,示談交渉が成立すれば後遺傷害慰謝料を含めた示談金を受け取ることができます。

具体的な流れは以下のようになっています。

①通院

非器質性精神障害が残存していることを医学的に証明するため,専門医の適切な治療を受けましょう。

②症状固定

後遺障害は,「これ以上治療を続けても症状が改善しない」と判断されてから認定されます。

「これ以上治療を続けても症状が改善しない」時点を「症状固定」と言います。

③後遺障害認定申請

後遺障害等級認定申請を行います。

後遺障害等級を申請するには,

(ア)事前認定
(イ)被害者請求

の2つの方法があります。

(ア)事前認定(加害者請求)

事前認定とは,加害者が加入している保険会社に申請を任せる申請方法です。

加害者側の保険会社が手続きを行うので,被害者本人には手間がかかりません。

一方で,十分な資料・証拠を収集してくれず,後遺障害が認定されないおそれがあります。

(イ)被害者請求

被害者請求とは,被害者(または代理人の弁護士)が行う申請方法です。

被害者が手続きを行うので,手間・時間がかかるおそれがあります。

一方で,提出書類を被害者が確認できるので,有利な資料・証拠を提出可能です。

また,先払い金や仮渡金を受け取ることができます。

④調査

自賠責保険調査事務所が送付された請求書類に基づき調査します。

⑤後遺障害等級認定

調査結果が自賠責保険に送られ,その内容に応じた等級認定の結果が出ます。

⑥示談交渉

相手方と後遺傷害慰謝料を含めた損害賠償金について示談交渉します。

⑦示談金の支払い

示談が成立すれば,示談金が支払われます。

⑵注意点

①後遺障害等級認定を受けてから示談交渉を始める

後遺傷害慰謝料を受け取るには,後遺障害慰謝料等級認定を受けなければなりません。

相手方の保険会社から示談を急かされたとしても,後遺障害等級認定を受けてから示談交渉を始めましょう。

②MRIやCT検査を受けておく

腰椎圧迫骨折の後遺障害等級認定を受けるには,XP(レントゲン撮影),CT,MRI画像により腰椎圧迫骨折を確認することができる必要があります。

そのため,腰椎圧迫骨折を画像で確認できるような検査を受けておきましょう。

③適切な治療を受ける

「専門医による適切な治療を受けていれば症状は改善していたはず」と判断されて,後遺障害の認定を受けられない可能性があります。

④適切な後遺障害等級を認定してもらう

認定された後遺障害等級によって,後遺障害慰謝料の額が異なります。

症状が重いのであれば,上の等級の後遺障害を認定してもらいましょう。

⑤弁護士に依頼する

弁護士に依頼すれば,後遺障害等級認定申請を代わりに行ってもらえますし,資料集めのアドバイスも受けられます。

また,弁護士が交渉すれば,より高い弁護士基準で後遺障害慰謝料を算定してもらうことができます。

なお,交通事故の示談の進め方について,当事務所の次のコラムで詳しくご紹介しているのでご覧ください。

交通事故の示談の進め方を知りたい

5 まとめ

腰椎圧迫骨折の後遺障害等級認定を受けるには,CT,MRIなどの検査を受ける必要がありますし,どの等級にあたるかどうかの判断にも医学的な知識が必要になります。

適切な後遺障害等級の認定を受け,十分な賠償金を獲得するには,早い段階で弁護士を入れることをお勧めします。

ロイヤーズ・ハイには交通事故に精通した弁護士が多数在籍しています。交通事故に遭い,腰椎圧迫骨折に悩まれている方は,交通事故を多く取り扱う大阪(なんば・梅田)・堺・岸和田・神戸の弁護士法人法律事務所ロイヤーズ・ハイにご相談ください。

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