自転車やバイクで走行中に交通事故に遭い,転倒する際に足をひねり足首に体重がかかると足首を骨折することがあります。
足首を骨折すると,松葉杖や車いすで移動しなければならないうえに,後遺障害が残り,足関節が動かしにくくなる場合もあります。
当コラムでは,足首骨折の後遺障害についてご説明いたします。
目次
1 交通事故で足首を骨折したらどうなる?症状や治療法
足首,すなわち足関節は,頸骨(けいこつ),腓骨(ひこつ),距骨(きょこつ)で構成されています。
足首骨折の種類は,足関節果部骨折,距骨骨折など多岐にわたります。
足首を骨折すると,患部に痛みや腫れが生じる,強い痛みがあって歩けないなどの症状が生じます。
骨の位置がほとんどずれていなければギプス固定で治療しますが,骨のずれが大きければ手術を行います。
2 交通事故による足首骨折は後遺症が残りやすい?後遺障害等級と認定基準
足首骨折で後遺障害が残った場合の後遺障害等級と認定基準は以下のようになっています。
⑴足関節の可動域制限
等級 | 障害 | 認定基準 |
8級7号 | 一下肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの | ・強直/完全弛緩性麻痺かそれに近い・置換術(人工関節または人工骨頭を挿入置換したもの)では,患側の関節可動域が,健側の関節可動域の2分の1以下 |
10級11号 | 一下肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの | ・患側の関節可動域が,健側の関節可動域の2分の1以下・置換術では,患側の関節可動域が,健側の関節可動域の2分の1を超える |
12級7号 | 一下肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの | 患側の関節可動域が,健側の関節可動域の4分の3以下 |
強直 | 関節がまったく可動しないか,これに近い状態(健側の関節可動域の10%程度以下に制限されたもの・健側の関節可動域の10度以下に制限されたもの) |
完全弛緩性麻痺に近い状態 | 他動では稼働するが,自動では健側の関節可動域の10度程度以下になったもの・関節可動域が10度以下に制限されている |
自動運動と他動運動 | 機能障害の有無は,他動運動による測定値で認定することが原則です。ただし,我慢できないほどの疼痛のように他動値によることが適切でない場合は,自動運動による測定値を用います。 |
可動域制限が認められただけでは,後遺障害等級認定はなされません。
交通事故が原因で可動域制限が生じたと立証できて初めて後遺障害等級が認定されます。
そこで,後遺障害申請をする際は,以下のポイントを明らかにしなければいけません。
①骨折している骨と部位 ②骨折の形状,治療内容,骨癒合状況 ③靭帯も損傷しているか ④足関節の可動域制限の程度 ⑤疼痛があれば,疼痛の原因は何か ⑥X線,CT,3DCT,MRI検査などで骨折状況などが明らかか |
⑵疼痛
等級 | 障害 | 認定基準 |
12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの | 障害の存在が医学的に証明できるもの |
14級9号 | 局部に神経症状を残すもの | 障害の存在が医学的に説明可能なもの |
3 交通事故による足首骨折に対する慰謝料の相場と計算方法
足首骨折をすると,被害者は加害者(ないしは保険会社)に対して入通院慰謝料を請求することができます。
また,足首骨折による後遺障害が残れば後遺障害慰謝料も請求することができます。
交通事故で請求できる慰謝料には,自賠責基準,弁護士基準,任意保険基準があります。
自賠責保険は,自動車事故の人身被害に遭った方に最小限の金銭的補償をすることを目的としています。
そのため,自賠責基準で計算される慰謝料額は低いです。
これに対して,弁護士基準は,弁護士が示談交渉を行う場合に使用できる基準で,これまでの裁判例などに基づいてまとめられた基準です。
弁護士基準で計算した方が,慰謝料額は高くなります。
⑴入通院慰謝料
入通院慰謝料とは,交通事故で受傷したこと自体による苦痛,入通院を強いられたことで生じた精神的苦痛に対する慰謝料です。
自賠責基準では,1日あたり4300円が認められます。
弁護士基準では,入通院期間に応じて,以下の表から入通院慰謝料を算定することができます。
入院 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 | 13月 | 14月 | 15月 | |
通院 | B/A | 53 | 101 | 145 | 184 | 217 | 244 | 266 | 284 | 297 | 306 | 314 | 321 | 328 | 334 | 340 |
1月 | 28 | 77 | 122 | 162 | 199 | 228 | 252 | 274 | 291 | 303 | 311 | 318 | 325 | 332 | 336 | 342 |
2月 | 52 | 98 | 139 | 177 | 210 | 236 | 260 | 281 | 297 | 308 | 315 | 322 | 329 | 334 | 338 | 344 |
3月 | 73 | 115 | 154 | 188 | 218 | 244 | 267 | 287 | 302 | 312 | 319 | 326 | 331 | 336 | 340 | 346 |
4月 | 90 | 130 | 165 | 196 | 226 | 251 | 273 | 292 | 306 | 316 | 323 | 328 | 333 | 338 | 342 | 348 |
5月 | 105 | 141 | 173 | 204 | 233 | 257 | 278 | 296 | 310 | 320 | 325 | 330 | 335 | 340 | 344 | 350 |
6月 | 116 | 149 | 181 | 211 | 239 | 262 | 282 | 300 | 314 | 322 | 327 | 332 | 337 | 342 | 346 | |
7月 | 124 | 157 | 188 | 217 | 244 | 266 | 286 | 304 | 316 | 324 | 329 | 334 | 339 | 344 | ||
8月 | 132 | 164 | 194 | 222 | 248 | 270 | 290 | 306 | 318 | 326 | 331 | 336 | 341 | |||
9月 | 139 | 170 | 199 | 226 | 252 | 274 | 292 | 308 | 320 | 328 | 333 | 338 | ||||
10月 | 145 | 175 | 203 | 230 | 256 | 276 | 294 | 310 | 322 | 330 | 335 | |||||
11月 | 150 | 179 | 207 | 234 | 258 | 278 | 296 | 312 | 324 | 332 | ||||||
12月 | 154 | 183 | 211 | 236 | 260 | 280 | 298 | 314 | 326 | |||||||
13月 | 158 | 187 | 213 | 238 | 262 | 282 | 300 | 316 | ||||||||
14月 | 162 | 189 | 215 | 240 | 264 | 284 | 302 | |||||||||
15月 | 164 | 191 | 217 | 242 | 266 | 286 |
単位:万円
入院または通院のみであれば,入院または通院期間に該当する額が入通院慰謝料です。
入院1か月後に3カ月通院したのであれば,115万円が入通院慰謝料となるように,該当する月数が交差するところの額が入通院慰謝料となります。
⑵後遺障害慰謝料
足首骨折の後遺障害慰謝料は,自賠責基準,弁護士基準それぞれで異なります。
①足関節の可動域制限
等級 | 障害 | 自賠責基準 | 弁護士基準 |
8級7号 | 一下肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの | 331万円 | 830万円 |
10級11号 | 一下肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの | 190万円 | 550万円 |
12級7号 | 一下肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの | 94万円 | 290万円 |
②疼痛
等級 | 障害 | 自賠責基準 | 弁護士基準 |
12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの | 94万円 | 290万円 |
14級9号 | 局部に神経症状を残すもの | 32万円 | 110万円 |
4 交通事故で足首を骨折した場合の弁護士への相談方法
⑴弁護士への相談方法
弁護士に交通事故の対応を任せるまでは,以下の流れが一般的です。
①弁護士を探す
各都道府県の弁護士会や,自治体での法律相談もありますが,時間が短く,十分なアドバイスを受けることは難しいでしょう。
そこで,法律事務所に相談することをお勧めします。
インターネットで検索するのが,いつでも楽に調べることができるという点で,おすすめの方法です。
「交通事故 足首骨折 弁護士」などの検索用語を入れて調べましょう。
事務所ホームページに足首骨折の後遺障害コラムを記載している事務所であれば,後遺障害案件の取り扱い経験が豊富で,頼りになる可能性が高いです。
②問い合わせ
興味のある法律事務所が見つかれば,問い合わせて,初回相談の予約をとりましょう。
可能であれば,同時に料金体系も聞いておき,自分で用意できる金額か確認しておくのがベストです。
なお,ご自身の加入されている保険に弁護士費用特約が付いていれば,基本的には弁護士費用のことを気にせず,事故対応を弁護士に依頼することができます。
弁護士費用特約については,当事務所の次のコラムでご紹介しているのでご覧ください。
③相談
相談の際は,担当弁護士ときちんとコミュニケーションが取れそうか,安心して事故対応を任せることができるかも考えておきましょう。
④依頼(委任契約の締結)
初回相談で担当弁護士に相談する決心が付いたら,依頼しましょう。
⑵弁護士へ相談する際のポイント
初回相談の時間は決まっていることがあります。
また,事務所によっては,30分〇円~というように相談料がかかります。
そのため,分かりやすく手短に伝えることが大事です。
要望を明らかにして,事故の詳細をメモなどにしてまとめておきましょう。
また,相談の際は,証拠も持参しましょう。
メモに加えてドライブレコーダーや加害者の情報,加害者の加入している保険会社名,被害状況が分かる書類・写真などです。
なお,弁護士に無料相談できるかについては,当事務所の次のコラムでご紹介しているのでご覧ください。
5 まとめ
足首骨折の後遺障害が残っても,歩行や外出が難しいので,弁護士事務所に依頼することが億劫になるのではないでしょうか。
しかし,弁護士基準で十分な慰謝料を獲得するには,弁護士に依頼することが不可欠です。
当事務所では電話相談も承っているので,外出が難しい方でも自宅から相談することができます。
交通事故で足首骨折の後遺障害が残り,悩まれている方は,大阪(なんば・梅田)・堺・岸和田・神戸の弁護士法人法律事務所ロイヤーズ・ハイに一度ご相談ください。
このコラムの監修者
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太田 泰規(大阪弁護士会所属) 弁護士ドットコム登録
大阪の貝塚市出身。法律事務所ロイヤーズ・ハイのパートナー弁護士を務め、主に大阪エリア、堺、岸和田といった大阪の南エリアの弁護活動に注力。 過去、損害保険会社側の弁護士として数多くの交通事件に対応してきた経験から、保険会社との交渉に精通。 豊富な経験と実績で、数々の交通事故案件を解決に導く。