交通事故 交通事故基礎知識 過失割合
2024.01.25 2024.01.25

【まとめ】自動車事故の類型別過失割合よくある12パターン

【まとめ】自動車事故の類型別過失割合よくある12パターン

交通事故の被害者に不注意があれば,加害者が賠償責任全てを負担するのは公平でないとして,損害額から被害者の不注意分の減額がなされます。

ここでの被害者の不注意の割合を,「過失割合」と言います。

当コラムでは,自動車同士の事故での過失割合についてご説明いたします。

目次

1 交通事故の過失割合の決め方と流れ

交通事故の過失割合には一定の基準があります。

しかし,最終的な過失割合を決定するのは,事故の当事者です。

警察が決めるのではなく,警察は,実況見分を行うだけです。

当事者双方に過失があれば,当事者が契約している保険会社の担当者が話し合って過失割合を決めます。

⑴事故状況に関する認識をすり合わせる

実況見分調書,現場写真,ドライブレコーダーの映像,当事者の証言等を参考にして事故状況をすり合わせます。

信号の色や一時停止をしていたかなどで双方の意見が食い違っている場合,ドライブレコーダーなどの客観的な証拠があればすり合わせが容易になります。

⑵基本過失割合を確認する

基本過失割合とは,過去の裁判例などを参考にした過失割合のことです。

交通事故の過失割合は,基本過失割合をもとに,事故状況などを考慮して決定します。

事故当事者が歩行者,自転車,単車,自動車のどれにあたるのか,どのような状況で事故が発生したのかを確認して,基本過失割合を探しましょう。

⑶基本過失割合から修正を行う

事故の起こった時間帯,信号の色, 被害者の年齢,運転者が安全確認を行っているか,運転者が法令違反行為や速度違反を行っているかなどが修正要素です。

事故類型ごとに,修正要素に当てはまる事情があれば基本過失割合を修正していきましょう。

⑷話し合いを重ねて合意点を探す

双方が合意すれば過失割合が確定し,示談金の額も決定します。

なお,過失割合の決定方法,賠償金の負担割合については,当事務所の次のコラムでご紹介しているのでご覧ください。

過失割合はこうして決定します

交通事故の過失割合による賠償金の負担割合について知りたい

2 自動車事故の類型別過失割合

⑴交差点における直進車同士の事故

信号機の設置された交差点青信号車と赤信号車0(青信号)100(赤信号)
 黄信号車と赤信号車20(黄信号)80(赤信号)
 赤信号車同士の事故5050
信号機の設置されていない交差点ほぼ同幅員の交差点40(左方車)60(右方車)
 一方通行違反がある2080(一方通行違反車)
 一方が明らかに広い道路30(広路車)70
 一方に一時停止の規制がある2080(一時停止の規制あり)
 一方が優先道路10(優先車)90

⑵交差点における右折車と直進車の事故

   直進車右折車
同一道路を対向方向から進入した信号機の設置された交差点直進車・右折車ともに青信号2080
  直進車・右折車ともに黄信号で進入した4060
  直進車が赤信号で進入,右折車が青矢印で右折した100
  直進車・右折車ともに赤信号で進入した5050
 信号機の設置されていない交差点ほぼ同幅員の生活道路3070
  広路直進車と狭路へ右折している自動車2080
交差道路から進入したほぼ同幅員の道路右折車が左方車4060
  右折車が右方車3070
 一方が明らかに広い道路広路直進車と狭路から広路へ右折している自動車2080
  狭路直進車と広路から狭路へ対向右折している自動車6040
  狭路直進車と広路から狭路へ同一方向右折している自動車5545
 一方に一時停止の規制がある右折車に一時停止の規制がある1585
  直進車に一時停止の規制があり,右折車が左方車7030
  直進車に一時停止の規制があり,右折車が右方車6040
 一方が優先道路直進車が優先道路を走行しており,右折車は優先道路へ右折する1090
  直進車が非優先道路を直進しており,右折車は優先道路から非優先道路へ対向右折する8020
  直進車が非優先道路を直進しており,右折車は優先道路から非優先道路へ同一方向右折する7030

⑶左折車と直進車の事故

 直進車左折車
同幅員の交差点5050
一方が明らかに広い道路3070
一方に一時停止の規制がある2080
一方が優先道路(直進車が優先車)1090

⑷右折車同士の事故

同幅員の交差点6040
一方が明らかに広い道路30(広路を走行している)70
一方に一時停止の規制がある25(一時停止の規制なし)75
一方が優先道路20(優先車)80

⑸左折車と対向右折車の事故

左折車右折車
3070

⑹右左折車と後続直進車の事故

  後続直進車右左折車
右折車と追越直進車の事故追越しが禁止される通常の交差点9010
 追越しが禁止されない交差点(右折車があらかじめ中央に寄らない場合)5050
 追越しが禁止されない交差点(右折車があらかじめ中央による場合)9010
あらかじめ中央に寄らない右左折車と後続直進車の事故右左折車が曲がる方向に寄るのに支障のない場合2080
 右左折車が道路条件等により予め曲がる方向に寄ることができない場合4060

⑺T字型交差点における事故

  直進車右左折車
直線路直進車と右左折車の事故同幅員の交差点3070
 一方が明らかに広い道路20(広路車)80
 一方に一時停止の規制がある1585(一時停止の規制あり)
 一方が優先道路10(優先車)90
右折車同士の事故同幅員の交差点4060
 一方が明らかに広い道路30(広路車)70
 一方に一時停止の規制がある2575(一時停止の規制あり)
 一方が優先道路である20(優先道路右折車)80

⑻路外出入車と直進車の事故

①路外から道路に入る場合

②路外に出るために右折する場合

 直進車路外出入車
路外から道路に入る場合2080
路外に出るために右折する場合1090

⑼対向車同士の事故(センターラインオーバー)

直進車センターラインオーバーした自動車
100

⑽同一方向に進行する車両同士の事故

①追越車と被追越車の事故

②進路変更車と後続直進車の事故

追越車と被追越車の事故追越禁止場所でない10(被追越車)90(追越車)
 追越禁止場所0(被追越車)100(追越車)
進路変更車と後続直進車の事故 30(後続直進車)70(進路変更車)

⑾追突事故(被追突車に道路交通法24条違反があるとき)

道路交通法24条違反は,急ブレーキの禁止違反のことです。

被追突車追突車
2080

⑿転回車と直進車の事故

 直進車転回車
転回中に衝突した2080
転回終了後衝突した3070

3 自動車事故の過失割合に不満がある場合の対処法

⑴過失割合に納得できない理由

①事故状況の認識が異なる

当事者双方の事故状況に関する認識が異なると,基本過失割合の類型の選択に争いが生じます。

基準となる過失割合がそれぞれ異なるため,過失割合に納得できないでしょう。

②加害者側は被害者側の過失割合を多めに主張してくる

加害者側の保険会社は,多額の保険金を支払いたくないがために,被害者側の過失割合を多く見積もってくることが多いです。

事故状況と比べて不当に高い過失割合では不満に感じるでしょう。

③話し合いで過失割合を決定する

過失割合は,後遺障害等級のように認定機関が決定するわけではありません。

当事者の話し合いで決定するので,お互いに妥協することも大事です。

適切な妥協点を見つけることができなければ,一方が不満を感じてしまいます。

④保険会社の担当者が基本過失割合を理解していない

経験が少ない担当者や,過失割合に関する知識が不十分な担当者は,どの基本過失割合が適用されるか理解していないことがあります。

正しい基本過失割合で計算できなければ,どちらかの過失割合が必要以上に大きくなってしまうので,納得いく過失割合とはなりません。

⑵過失割合に不満がある場合の対処法

①事故状況に関する客観的証拠を探す

事故状況に関する認識を統一するには,客観的な証拠を用いることが有効的です。

ドライブレコーダーなど事故当時の状況が残っている映像を探しましょう。

②加害者側の保険会社に過失割合の根拠を示すよう求める

どの過失割合の基準を参考にしたのか尋ねて,その基準を適用することが正しいのか確認しましょう。

何の根拠もなしに被害者側の過失割合が多く算定されている場合は,相手からの主張を受け入れる必要はありません。

③基本過失割合の修正要素を見落としていないか確認する

修正要素にあたる事情があれば,相手方の過失割合が加算されるので,被害者にとっては有利です。

前方不注視や速度違反などの修正要素がないか確認しましょう。

④示談交渉を続ける

過失割合に納得できなければ示談交渉を続けましょう。

示談書に署名押印して示談が成立するまでは,示談交渉を続けることができます。

⑤ADRを利用する

示談交渉で過失割合に納得できず,交渉が決裂してしまったらADRを利用しましょう。

ADRとは,民事トラブルについて,中立な第三者が当事者双方の言い分を聞いたうえで話し合いを支援し,合意による紛争解決を図る手続です。

⑥訴訟を提起する

ADRでも過失割合に納得できなければ,訴訟を提起して過失割合や損害賠償額を決定します。

⑦弁護士に依頼する

基本過失割合,修正要素を適切に把握するには,弁護士が頼りになります。

詳しくは,5 自動車事故の過失割合で揉めた場合に弁護士に依頼するメリットをご覧ください。

参照:政府広報オンライン 法的トラブル解決には、「ADR(裁判外紛争解決手続)」 1 ADR(裁判外紛争解決手続)とは?

政府広報オンライン 身近な民事トラブルを話合いで解決 「訴訟」に代わる「民事調停」 1 民事調停とはどんな制度?

4 自動車事故の過失割合に影響を及ぼす証拠

⑴ドライブレコーダー

自分の覚えている事故状況と相手方の主張する事故状況が異なる場合,ドライブレコーダーが重要な証拠です。

ただし,事故時のデータが上書きされたりデータが消去されてしまうことがあるので,ドライブレコーダーの映像データは別途保存しておきましょう。

⑵防犯カメラの映像

ドライブレコーダーと同様に,防犯カメラ映像も客観的な証拠として有力な証拠となります。

自動車にドライブレコーダーを搭載していなければ,防犯カメラ映像が唯一の客観的な証拠です。

まず,防犯カメラ所有者に映像の開示を頼みましょう。

開示に応じてくれなければ,開示しても防犯カメラ所有者の責任が問われることはないと伝えて,映像を開示してくれるよう説得しましょう。

それでも応じてくれない場合,弁護士照会という制度を使いましょう。

弁護士照会とは,弁護士が依頼を受けた事件について,その職務活動を円滑に行うために証拠や資料収集を行うことができる制度です。

また,民事訴訟を提起し,証拠保全を申し立てる方法もあります。

⑶事故現場の写真

事故現場の様子が悲惨であれば,どちらかが前方不注意であったり,スピード違反をしていたのではないかと疑われます。

加害者に前方不注意やスピード違反があれば過失割合が修正されます。

⑷事故車両の写真

事故車両の損傷箇所の写真は,事故の規模や衝突時のスピードを示唆します。

そこから加害者にスピード違反などの修正要素があれば,加害者の過失割合が高くなります。

⑸実況見分調書

実況見分調書には,事故現場の道路状況,ブレーキ痕の有無,事故の発生状況などが記載されるので,詳細な事故状況が分かります。

検察庁に連絡して実況見分調書の閲覧・謄写の申込をすれば実況見分調書を入手することができます。

詳細な事故状況が分かると,適切な基本過失割合を選択することができます。

⑹信号サイクル表

信号サイクルとは,信号灯が青→点滅→赤と一周することです。

信号サイクルが分かれば,事故当時の信号の色が分かります。

各都道府県の警察本部等に開示を請求するか,もしくは弁護士に依頼して照会することが考えられます。

⑺当事者の証言

加害者・被害者・目撃者の証言があれば,これも証拠になります。

参照:日本弁護士連合会 弁護士会照会制度(弁護士会照会制度委員会)

5 自動車事故の過失割合で揉めた場合に弁護士に依頼するメリット

⑴適切な過失割合で合意できる

弁護士は参考にすべき裁判例を探したうえで,過失割合の根拠を提示して主張できます。

また,加害者の過失割合が増える修正要素があれば,これも主張することができます。

交通事故に関する法的知識を持っている弁護士に任せることで,裁判例や修正要素を選択して交渉を進め,最終的には適切な過失割合で合意することができます。

⑵手続を一任できる

交通事故被害者にとって,保険会社とのやり取りは初めてのことで,どう答えるといいか,保険会社からの要望に従っていいのか分からず疲れてしまいます。

弁護士に依頼すると,弁護士は被害者の代理人として保険会社とのやり取りを行います。

弁護士に依頼すれば,手続を一任できるので,どう対応したらいいか分からないという不安を解消できるうえに,ストレスから解放されます。

⑶早期解決が望める

弁護士は過失割合の交渉に慣れており,このあたりで合意した方がいいというラインも把握しているので,示談交渉がスムーズに進みます。

6 まとめ

損害賠償額が500万円の場合,被害者の過失割合が0であれば500万円全額を受け取ることができるのに対して,被害者の過失割合が10であれば450万円しか受け取ることができません。

このように,過失割合が10違えば,示談金が何十万円,何百万円も変わります。

十分な示談金を受け取るには,ご自身の過失割合をなるべく低くすることが大事です。

当コラムで説明したように,交通事故被害者が過失割合を交渉で低くすることは非常に難しいです。そのため,交通事故の過失割合で悩まれている方は,ぜひ弁護士法人法律事務所ロイヤーズ・ハイにご相談ください。

このコラムの監修者

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