交通事故 示談
2020.10.14 2024.07.23

交通事故で軽傷だった場合の示談金について知りたい

交通事故で軽傷だった場合の示談金について知りたい

交通事故にて被害者の方が怪我を負った場合、たとえ軽傷であっても慰謝料の請求は可能です。

しかし、被害者の方が慰謝料を請求するためには、知っておかなければならない知識が多数あります。

こちらの記事をご覧いただいている方の中には、すでに保険会社から示談金を提示され、金額にご納得できないという方もいらっしゃるかもしれません。

ここでは、軽傷だった場合に請求ができる慰謝料などを含む示談金についてご説明をさせていただきます。

関連記事:慰謝料と示談金の違いについて知りたい。

1 交通事故で軽傷の場合

⑴軽傷でも慰謝料は受け取れる

交通事故の慰謝料には、入通院慰謝料、後遺障害慰謝料、死亡に対する慰謝料の3種類があります。この3種類の慰謝料にいずれにも共通することは、被害者の方が加害者から受けた精神的苦痛に対する損害賠償ということです。

軽傷であっても、被害者の方は交通事故の遭ったことで、日常生活を過ごす中で恐怖を感じたり、治療のために病院や整形外科に通院をすることを余儀なくされたりするため、精神的負担が強いられると考えられます。

したがって、軽傷であっても被害者の方は相手に慰謝料の請求は可能となります。

軽傷の場合、受け取れる慰謝料は入通院慰謝料が想定されます。治療期間や症状の具合によっては後遺障害慰謝料が請求できる可能性もあります。

それぞれの慰謝料の違いをご説明します。

⑵入通院慰謝料

被害者の方が、交通事故により怪我を負い、入院や通院を余儀なくされた場合に、被害者の方が受ける精神的苦痛に対する慰謝料です。

被害者の方が注意をしなければいけないのは、入通院慰謝料は、必ず病院や整形外科に入院ないしは、通院をしなければ加害者側に請求をすることはできません。

つまり、軽傷だから病院の診察は受けず、通院もしなかったというケースでは、入通院慰謝料は請求できないと、被害者の方は覚えておきましょう。

⑶後遺障害慰謝料

被害者の方が、交通事故の怪我により受傷をし、治療を続けるも、後遺症が残ってしまった場合、後遺障害等級認定の申請を行う場合が多いです。

等級認定申請により、第三者機関である損害保険料率算出機構の自賠責調査事務所による審査の結果、1~14級までの等級のいずれかが認められた場合、等級に応じた慰謝料が請求可能となります。これを後遺障害慰謝料といいます。後遺症が残ったことによる被害者の方の精神的な苦痛に対して支払われます。

慰謝料は、算定するにあたり自賠責基準、任意保険基準、裁判所基準の3つの基準があります。以下の表は各基準で算定をした後遺障害の等級別の慰謝料です。

なお、任意保険基準は、各保険会社で設定されており、計算方法は非公開となっております。よって、以下の表は推定となります。

別表Ⅰ 後遺障害により介護が日常的に必要な場合の後遺障害に使用

後遺障害等級自賠責基準任意保険基準裁判所基準
第1級1600万円

※1650万円

1600万円2800万円
第2級1163万円

※1203万円

1300万円2370万円
※令和2年4月1日以降の交通事故の場合

別表Ⅱ その他、日常的な介護が必要ない場合の後遺障害に使用

後遺障害等級自賠責保険基準任意保険基準裁判所基準
第1級1100万円

※1150万円

1600万円2800万円
第2級958万円

※998万円

1300万円2370万円
第3級829万円

※861万円

1100万円1990万円
第4級712万円

※737万円

900万円1670万円
第5級599万円

※618万円

750万円1400万円
第6級498万円

※512万円

600万円1180万円
第7級409万円

※419万円

500万円1000万円
第8級324万円

※331万円

400万円830万円
第9級245万円

※249万円

300万円690万円
第10級187万円

※190万円

200万円550万円
第11級135万円

※136万円

150万円420万円
第12級93万円

※94万円

100万円290万円
第13級57万円60万円180万円
第14級32万円40万円110万円
※印は2020年4月1日以降の交通事故の場合(13級、14級は変更なし)

軽傷の場合で、後遺障害に該当するケースで多い症状は捻挫やむちうちです。痛みやしびれが後遺症として残るケースがあります。痛みやしびれに対しての後遺障害は、12級や14級が認定される可能性があります。

なお、ご覧いただくとわかるように、算定基準で大幅に差額が発生します。被害者の方本人が相手の保険会社と示談交渉をする際は、相手の保険会社は、各社の任意保険基準か自賠責基準で被害者の方に提示をします。

裁判所基準は法的に拘束力がないため、示談交渉段階では、被害者の方自身では認めてもらうことはできません。

裁判所基準で示談交渉をするためには、弁護士に依頼することが必須となります。

2 軽傷の場合の入通院慰謝料の計算方法

先ほども述べましたように、慰謝料を算定する際の基準は、自賠責基準、任意保険基準、裁判所基準の3つの基準があります。

それぞれの算定基準で入通院慰謝料で計算をした時に、軽傷の方はどれほどの差額が出るのか、計算方法と一緒に確認していきましょう。

⑴自賠責基準

自賠責基準では、入院・通院の1日あたりの慰謝料の支払い額は、日額で設定されています。

自賠責基準入通院慰謝料=日額4,200円×対象日数
※2020年4月1日以降の交通事故は日額4,300円

よって、入通院慰謝料は、慰謝料が支払われる対象となる日数で金額が異なります。

慰謝料が支払われる対象となる日数は、以下の2つの方法で計算され、そのうち、「少ない方の値」が使用されます。

①治療開始(交通事故後の初診日)~治療終了までの治療期間
②実際に入院、通院をした日数を足して2倍

例えば、2020年5月1日の交通事故で、入院はなく、通院を10日、治療期間が30日のむちうちの被害者の方の場合です。

この場合、①は30日、②は10日×2=20日となります。

そのため、②で算出された20日が使用され、下記の慰謝料が算出されます。

(計算式)日額4,300円×20日=8万6000円

⑵任意保険基準

任意保険基準は先ほども述べたように、現在は各保険会社で独自に定めているため、明確な計算方法は非公開です。

しかし、多くの保険会社では、以前まで各保険会社が統一して使用をしていた基準=旧任意保険基準を現在でも参考していると考えられます。

ここでは旧任意保険基準の算定表をご紹介します。

万円(単位)入院1ヶ月2ヶ月3ヶ月4ヶ月5ヶ月6ヶ月
通院 25.250.475.695.8113.4128.5
1ヶ月12.637.86385.7104.6121134.8
2ヶ月25.250.473.194.5112.2127.3141.1
3ヶ月37.860.581.9102.1118.5133.6146.1
4ヶ月47.969.389.5108.4124.8138.6151.1
5ヶ月56.776.995.8114.7129.8143.6154.9
6ヶ月64.383.2102.1119.7134.8147.4157.4
7ヶ月70.689.5107.1124.7138.6149.9160
8ヶ月76.994.5112.1128.5141.1152.5162.5

自賠責基準とは異なり、明確な日額が設定はされていません。

通院と入院の期間から金額は割り出されることになります。

自賠責基準で見た、同じ例(2020年5月1日の交通事故で、入院はなく、通院を10日、治療期間が30日のむちうちの被害者の方の場合)で算出してみましょう。

表の見方のポイントは以下となります。

  • ・縦の列を通院期間、横の列を入院期間としてみる。
  • ・入院と通院がある場合は、それぞれの月が交差する場所が相場となる。
  • ・暦ではなく、「ひと月あたり30日」と考える。

例の場合、入院はなく、通院のみで治療期間が30日となるため、通院期間は1ヶ月と考えられます。

当てはまる箇所を見ると、慰謝料は「12万6000円」となります。

⑶弁護士基準

弁護士基準は、過去の裁判例を基に算定表が作成されています。この算定表は、公益財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部が発行している「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準(通称赤い本)」に記載されております。

なお、自賠責基準や旧任意保険基準とは異なり、被害者の方の怪我の程度によって、別表ⅠとⅡという2つの表で使い分けをされています。

むち打ち以外の怪我の場合の傷害部分の慰謝料基準表(損害賠償額算定基準:別表Ⅰ)

万円(単位)入院1ヶ月2ヶ月3ヶ月4ヶ月5ヶ月6ヶ月
通院 53101145184217244
1ヶ月2877122162199228252
2ヶ月5298139177210236260
3ヶ月73115154188218244267
4ヶ月90130165196226251273
5ヶ月105141173204233257278
6ヶ月116149181211239262282
7ヶ月124157188217244266286
8ヶ月132164194222248270290

むちうちなど他覚的所見がない場合に使用(損害賠償額算定基準:別表Ⅱ)

万円(単位)入院1ヶ月2ヶ月3ヶ月4ヶ月5ヶ月6ヶ月
通院 356692116135152
1ヶ月195283106128145160
2ヶ月366997118138153166
3ヶ月5383109128146159172
4ヶ月6795119136152165176
5ヶ月79105127142158169180
6ヶ月89113133148162173182
7ヶ月97119139152166174183
8ヶ月103125143156168175184

先ほどと同じ例(2020年5月1日の交通事故で、入院はなく、通院を10日、治療期間が30日のむちうちの被害者の方の場合)を見ていただくと、まず使用する表は、別表Ⅱとなります。

表の見方は、旧任意保険基準の同様になるため、入院はなく、通院のみで治療期間が30日=通院期間は1ヶ月とします。

当てはまる箇所を見ると、慰謝料は「19万0000円」となります。

3つの基準で計算した入通院慰謝料を並べてみますと以下のようになります。

自賠責基準8万6000円
任意保険基準12万6000円(※推定)
裁判所基準19万0000円

裁判所基準が最も高額であることが、ご覧いただくと一目瞭然かと思います。

3 軽傷の交通事故の注意点

⑴人身事故として届け出をする

交通事故に遭った場合、必ず警察に通報をしなければなりません。これは道路交通法で義務付けられており、通報をしなければ、罰則があります。また、通報をしなければ、警察が事故態様を聴取することで作成される「交通事故証明書」が発行できなくなります。損害賠償金や保険金を保険会社へ請求するためには、証明書は必要書類です。場合によっては請求が一切できなくなる可能性もありますので、ご注意ください。

さて、軽傷を負った場合に「人身事故として届けるべきか?」と多くの被害者の方が悩まれます。

人身事故扱いになった場合、加害者は刑事処分や行政処分の対象となります。そのため、加害者が人身扱いにしないでほしいと被害者の方に行ったり、警察からも軽傷なので物損事故で処理をしましょうと言われたりすることもあります。

しかし、よほどの理由がない限りは、人身事故として届け出は出しましょう。

物損事故では警察の作成する、事故態様が詳しくわかる実況見分調書は作成されませんし、保険会社に対して怪我に関する慰謝料を含む賠償金が請求できない可能性があります。

実況見分調書は当事者間の過失割合が争点となった場合に、正しい過失割合を導き出すための重要な資料となります。

また、保険会社から「物損事故であっても治療費や慰謝料はしっかりと賠償します」と確約を取れない限りは、軽傷であっても怪我をしたのであれば、人身事故として届け出をすることをおすすめします。

⑵必ず診察を受ける

かすり傷や多少の身体の違和感であるといった軽傷の場合、問題ないだろうと病院で診察を受けない被害者の方がいらっしゃいます。

このような場合でも必ず病院で診察を受けるようにしてください。

交通事故の怪我の特徴の1つに、後日に痛みや違和感が出て、症状が悪化することがあります。

もし、交通事故の日からある程度の日数が過ぎてから通院をした場合は、その症状が、交通事故が原因での怪我なのかどうか、交通事故との因果関係を疑われ、保険会社から損害賠償金を支払ってもらえない場合もあります。

交通事故に遭われた方は、必ず当日ないしは遅くとも翌日には病院へ行き医師の診察を受けるようにしましょう。

⑶整骨院や接骨院には医師の許可をもらってから行く

むちうちや捻挫、打撲といった軽傷の場合、整骨院や接骨院での施術を希望される被害者の方は少なくありません。

整骨院に通いたい被害者の方は必ず以下2つのポイントを押さえてください。

  • ①病院や整形外科などの主治医である医師に相談し、許可をもらうこと
  • ②整骨院だけの通院にはならず、必ず病院や整形外科への通院も定期的に続けること 

整骨院や接骨院は、医師が診察するわけではないので、保険会社によっては治療と認めず、治療費や慰謝料の対象外として扱われることもあります。

そういった事態を防ぐためにも、被害者の方は必ず整骨院や接骨院の通院は、医師の許可を得て行い、その上で、病院や整形外科の通院も並行して続けるようにしましょう。

4 交通事故で怪我をされたら、大阪(なんば・梅田)・堺・岸和田・神戸の弁護士法人法律事務所ロイヤーズ・ハイにご相談ください。

交通事故で軽傷を負った被害者の方が受け取ることができる慰謝料についてご説明をさせていただきました。

交通事故で怪我をされた場合は、軽傷であっても、必ず病院へ行き医師の診察を受け、治療をするようにしましょう。

むちうちや捻挫、打撲の場合は被害者の方が思っている以上に慰謝料を請求できる可能性もあります。 

交通事故で怪我をされたら、大阪(なんば・梅田)・堺・岸和田・神戸の弁護士法人法律事務所ロイヤーズ・ハイにまずは一度、ご相談ください。

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