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公正取引のために下請法の準拠とは

通常、親事業者は下請事業者よりも有利な立場にあります。そのため、親事業者の都合によって下請代金の不当な減額や支払いの遅延など、下請事業者が泣き寝入りをするようなケースは少なくありません。

このような不利益から下請事業者を守るための法律が下請法で、親事業者の義務と禁止行為などについて定めています。この記事では、親事業者が知っておくべき下請法の概要についてご説明します。

目次

下請法の対象となる取引

次の4つの取引が下請法の対象となっています。

取引の種類 説明
1.製造委託 物販や製造を行う事業者が、規格やデザインなどを指定した上で、他の事業者に製造や加工を依頼すること
2.修理委託 物品の修理を請け負う事業者が、別の事業者に修理を依頼すること
3.情報成果物作成委託 ソフトウェア、映像、デザインなど、情報成果物の作成と提供を行う授業者が、他の業者に作成を依頼すること
4.役務提供委託 サービスの提供を行う事業者が、請負ったサービスを他の事業者に委託すること

親事業者・下請け事業者の定義

取引の内容や資本金の額に応じて、親事業者と下請業者がそれぞれ次のように定義されています。

1.製造・修理委託、もしくは政令で定める(*)情報成果物・役務提供委託を行う場合

親事業者 下請事業者
資本金3億円超 資本金3億円以下
資本金1千万円〜3億円以下 資本金1千万円以下

*プログラム作成、運送、物品の倉庫における保管及び情報処理

2.上記以外の情報成果物・役務提供委託を行う場合

親事業者 下請事業者
資本金5千万円超 資本金5千万円以下
資本金1千万円〜5千万円以下 資本金1千万円以下

親事業者の義務と禁止行為

親事業者には、4つの義務と11の禁止行為が定められています。これらに違反した場合、勧告措置がなされたり、50万円の罰金が科されたりする恐れがあります。なお、勧告を受けると、公正取引委員会のH Pに事業者の情報が公表されます。

親事業者の義務

親事業者は、下請事業者に対して4つの義務を負います。

1.書面の交付義務

親事業者は、下請け事業者に発注をする際に次の内容をすべて記載した書面を交付する義務があります。

(1) 親事業者及び下請事業者の名称(番号,記号等による記載も可)
(2) 製造委託,修理委託,情報成果物作成委託又は役務提供委託をした日
(3) 下請事業者の給付の内容(委託の内容が分かるよう,明確に記載する。)
(4) 下請事業者の給付を受領する期日(役務提供委託の場合は,役務が提供される期日又は期間)
(5) 下請事業者の給付を受領する場所
(6) 下請事業者の給付の内容について検査をする場合は,検査を完了する期日
(7) 下請代金の額(具体的な金額を記載する必要があるが,算定方法による記載も可)
(8) 下請代金の支払期日
(9) 手形を交付する場合は,手形の金額(支払比率でも可)及び手形の満期
(10) 一括決済方式で支払う場合は,金融機関名,貸付け又は支払可能額,親事業者が下請代金債権相当額又は下請代金債務相当額を金融機関へ支払う期日
(11) 電子記録債権で支払う場合は,電子記録債権の額及び電子記録債権の満期日
(12) 原材料等を有償支給する場合は,品名,数量,対価,引渡しの期日,決済期日,決済方法
引用:親事業者の義務|公正取引委員会

2.書類の作成・保存義務

親事業者が下請法の対象になる委託を行なった場合は、以下の内容について記載した書類を作成し、2年間保存する義務があります。

(1) 下請事業者の名称(番号,記号等による記載も可)
(2) 製造委託,修理委託,情報成果物作成委託又は役務提供委託をした日
(3) 下請事業者の給付の内容(役務提供委託の場合は役務の提供の内容)
(4) 下請事業者の給付を受領する期日(役務提供委託の場合は,下請事業者が役務の提供をする期日・期間)
(5) 下請事業者から受領した給付の内容及び給付を受領した日(役務提供委託の場合は,下請事業者から役務が提供された日・期間)
(6) 下請事業者の給付の内容について検査をした場合は,検査を完了した日,検査の結果及び検査に合格しなかった給付の取扱い
(7) 下請事業者の給付の内容について,変更又はやり直しをさせた場合は,内容及び理由
(8) 下請代金の額(算定方法による記載も可)
(9) 下請代金の支払期日
(10) 下請代金の額に変更があった場合は,増減額及び理由
(11) 支払った下請代金の額,支払った日及び支払手段
(12) 下請代金の支払につき手形を交付した場合は,手形の金額,手形を交付した日及び手形の満期
(13) 一括決済方式で支払うこととした場合は,金融機関から貸付け又は支払を受けることができることとした額及び期間の始期並びに親事業者が下請代金債権相当額又は下請代金債務相当額を金融機関へ支払った日
(14) 電子記録債権で支払うこととした場合は,電子記録債権の額,下請事業者が下請代金の支払を受けることができることとした期間の始期及び電子記録債権の満期日
(15) 原材料等を有償支給した場合は,品名,数量,対価,引渡しの日,決済をした日及び決済方法
(16) 下請代金の一部を支払い又は原材料等の対価を控除した場合は,その後の下請代金の残額
(17) 遅延利息を支払った場合は,遅延利息の額及び遅延利息を支払った日
引用:親事業者の義務|公正取引委員会

3.下請け代金の支払期日を定める義務

親事業者には、下請事業者との合意のもと、支払い期日を決める義務があります。支払い期日は、成果物が納品された日から起算して、60日以内のなるべく早い期間に定める必要があります。

4.遅延利息の支払義務

成果物の納品から60日を超えても下請代金が支払われない場合、60日を超えた日から支払いがなされるまでの日数に応じて年率14.6%の遅延利息を支払う義務があります。

親事業者の禁止行為

親事業者は、下請事業者に対して不当な要求をすることを禁止されています。具体的に禁止されている行為は次のとおりです。

1.受領拒否の禁止

下請事業者に責任がないにもかかわらず、納品物の受け取りを拒否することは禁止されています。

2.下請代金の支払遅延の禁止

下請代金は納品があってから60日以内に支払う必要があります。

3.下請代金の減額

発注時に決定した下請代金を減額する行為は禁じられています。材料費の高騰や増税といった事情があったとしても、下請代金の減額はできません。

4.返品の禁止

正当な理由なく返品をすることは禁止されています。不良品の場合は、受け取ってから60日以内であれば返品可能です。

5.買いたたきの禁止

通常の金額よりも遥かに低い金額で物品を買い叩く行為は禁止されています。

6.購入・利用強制の禁止

下請事業者に対して親事業者の製品やサービスの購入を強いる行為は禁止されています。

7.報復措置の禁止

親事業者の違法行為を外部に伝えたことを理由に、下請業者に対して不当な扱いをするのは禁止されています。

8.有償支給原材料等の対価の早期決済の禁止

親事業者が原材料などを有料で下請事業者に支給する取引の場合、下請代金の支払日よりも早く原材料などの費用を支払わせることはできません。

9.割引困難な手形の交付の禁止

120日(繊維業は90日)を超える長期の手形で下請代金を支払う行為は禁止されています。

10.不当な経済上の利益の提供要請の禁止

下請事業者に対して、取引とは関係のない金銭やサービスの提供を要請することは禁止されています。

11.不当な給付内容の変更・やり直しの禁止

発注後に修正や追加作業を依頼した際に、下請事業者が負担したコストを親会社が負担しないような場合がこれにあたります。

まとめ

この記事では、下請法の対象になる事業者や取引について触れた上で、親事業者の義務と禁止行為についてお伝えしてきました。下請法についての理解を深める上で参考にしていただけたら幸いです。