交通事故 交通事故基礎知識 後遺障害
2023.10.23 2024.07.04

交通事故による味覚障害で後遺障害等級認定のためにすべきこと3つ

交通事故による味覚障害で後遺障害等級認定のためにすべきこと3つ

交通事故に遭ってから,食べ物の味がよく分からない。

家族が交通事故に遭ってから,作る料理の味付けが前よりも濃くなっている。

そんな場合,味覚障害の後遺障害が残っているかもしれません。

当コラムでは,交通事故による味覚障害についてご説明いたします。

1 交通事故による味覚障害とは何か?原因と症状を解説

⑴交通事故による味覚障害の原因は?

味覚を感じる器官のことを,味蕾(みらい)と言い,そのほとんどは舌の表面にあります。

人間が味を感じる仕組みは,

味物質の味蕾への到達→味蕾での知覚→中枢への伝達

という流れによります。

このうち,どこかの器官に障害が起これば味覚障害が起こります。

そのため,交通事故で頭部外傷を負えば,中枢への伝達障害が起こり,その結果味覚障害が起こります。

また,交通事故で舌や顎周辺組織を損傷した場合も味覚障害が起こります。

⑵交通事故による味覚障害の症状は?

交通事故による味覚障害の症状には,味覚の脱失と味覚の減退の2種類があります。

味覚の脱失とは,甘味,塩味,酸味,苦味のすべてが認知できないものです。

味覚の減退とは,甘味,塩味,酸味,苦味のうち1つ以上を認知できないものです。

頭部外傷を負い,高次脳機能障害となって味覚障害となることがありますが,高次脳機能障害については,当事務所の次のコラムでご紹介しているのでご覧ください。

交通事故が原因で高次脳機能障害になったら?

交通事故後の高次脳機能障害について。後遺障害認定等級は何級?

2 味覚障害が後遺障害と認められる条件とは?立証方法と裁判例

⑴味覚障害の後遺障害等級は?

味覚の脱失は後遺障害12級相当が認定されます。

味覚の減退は後遺障害14級相当が認定されます。

※後遺障害等級表に認定されていない障害でも保険金支払いの対象の障害と認定できることがあります。

これは,「相当等級」と呼びます。

後遺障害等級表には,味覚障害は含まれていませんが,上記の味覚障害が残った場合,味覚脱失か味覚減退かにより,12級相当もしくは14級相当が認定されます。

⑵味覚障害が後遺障害と認められる立証方法は?

①ろ紙ディスク法

味覚障害があることは,ろ紙ディスク法を使って立証することが主流です。

ろ紙ディスク法は,甘味,塩味,酸味,苦味のついたろ紙を舌の上に置き,どの味質であるかを答えてもらいます。 

グレード
甘味S 精製白糖15㎎0.3%125㎎2.5%500㎎10%1000㎎20%4000㎎80%
塩味 N 塩化ナトリウム15㎎0.3% 62.5㎎1.25%250㎎5%500㎎10%1000㎎20%
酸味 T 酒石酸1㎎0.02% 10㎎0.2% 100㎎2%200㎎4%400㎎8%
苦味 Q 塩酸キニーネ0.05㎎0.01%1㎎0.02%5㎎0.1% 25㎎0.5%200㎎4%
引用:交通事故110番宮尾一郎(2016).交通事故外傷と後遺障害全322大辞典Ⅱ 耳・鼻・口・醜状障害/上肢の障害.かもがわ出版.

グレード1の味つけのろ紙を舌に載せてもどの味質か分からなければ,グレード2(グレード1よりも濃い味つけになっている)の味をつけたろ紙を舌に載せます。

グレード2のろ紙でどの味質か分からなければ,グレード3,グレード4,グレード5とより濃い味付けのろ紙に変えて舌に置きます。

グレード1~3の段階でどの味質かどうかが分かれば,後遺障害とは認定されません。

グレード5のろ紙でもどの味質か分からず,かつ,味質溶液1mlをピペットで滴下する全口腔法でもどの味質か分からなければ,その味質については味覚脱失だと診断されます。

ろ紙ディスク法による検査の結果,4つの味質全てが認知できなければ,後遺障害12級相当が認定されます。

ろ紙ディスク法による検査の結果,1つ以上の味質を認知できなければ,後遺障害14級相当が認定されます。

なお,後遺障害等級の認定は,原則として,症状固定してから6ヶ月を経過したあとに行います。

②電気味覚検査

電気味覚検査という検査方法があります。

電流を舌に流すと金属味がします。

このことを利用して,舌に微量な電流を流し,どれぐらいの強さの刺激で味を感じるかを測定する方法です。

ろ紙ディスク法のように,味ごとの感じ方を測定することはできません。

⑶味覚障害の後遺障害に関する裁判例は?

①後遺障害を否定した例

自覚症状として,事故後2週間目から味覚障害を訴えた被害者について,電気味覚検査によって味覚低下が認められないとされているとして,味覚障害が否定されました。

②後遺障害を肯定した例

電気味覚計により味覚定量検査(電気味覚検査)が施行されたところ,右が計測不能,左が24㏈であった(左右差は4㏈以内が正常値)ところ,味覚障害(低下)が認められました。

3 交通事故による味覚障害で後遺障害等級を認定してもらうためにすべきこと3つ

⑴すぐに病院を受診する

事故後,味覚障害を疑ったら,すぐに耳鼻咽喉科を受診しましょう。

交通事故から時間が経ってから症状を訴えても,事故とは無関係の症状だと疑われるおそれがあります。

⑵検査を受ける

上記の裁判例から分かるように,味覚障害の後遺障害が認められるかどうかは,検査結果が重視されています。

病院では自覚症状を訴えるだけではなく,ろ紙ディスク法または電気味覚検査を受け,味覚障害が起こっていることを証明しましょう。

これらの検査は耳鼻咽喉科で受けることができます。

⑶適切な後遺障害診断書を作成してもらう

後遺障害を認定してもらうには,後遺障害診断書が重要です。

医師に,後遺障害診断書に自覚症状や他覚症状・検査結果,障害内容の増悪・緩解の見通しなどを十分記載してもらいましょう。

なお,交通事故の後遺障害が認定されない場合について,当事務所の次のコラムでご紹介しているのでご覧ください。

交通事故の後遺障害が認定されない5つの理由|認定されやすくする2つのポイント

4 味覚障害の後遺障害を負ったときの損害賠償額の計算方法

味覚障害の後遺障害が残った場合,以下の8つの項目を請求することができます。

(1)後遺障害慰謝料

後遺障害慰謝料とは,後遺障害が原因で,将来にわたって不便を強いられたり,辛い思いをすることで生じる精神的苦痛に対する金銭的補償を指します。

後遺障害慰謝料の相場は,以下のようになっています。

12級相当自賠責基準では94万円。弁護士基準では290万円。
14級相当自賠責基準では32万円。弁護士基準では110万円。

後遺障害慰謝料の基準には,自賠責基準,弁護士基準,保険会社の基準の3種類があります。

3つの基準の中で,弁護士基準が1番高額で,自賠責基準とは倍近く金額が異なります。

一般人が保険会社と交渉しても,「弁護士基準」の額まで慰謝料を引き上げてもらえることはほとんどありません。

しかし,弁護士が交渉すれば,「弁護士基準」と呼ばれる,過去の裁判例をもとに設けられた基準に基づいて示談交渉を行うことができます。

(2)後遺障害逸失利益

後遺障害が残れば,事故前と同じように働くことができなくなってしまいます。

働くことができなくなった度合に応じて,将来得られたはずの収入分が,逸失利益として補償されます。 

後遺障害逸失利益は,

基礎収入額×労働能力喪失率(100%)×労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数

の計算式で計算します。

基礎収入額は,事故前の収入をベースに計算します。

労働能力喪失率とは,後遺障害によって失われた労働能力の割合のことで,後遺障害12級相当の場合は14%,後遺障害14級相当の場合は5%です。

逸失利益が認められると,本来であれば段階的に得られたお金を一括で受け取ることになります。

そうすると,逸失利益を運用するなどして利益が生じるので,その分を控除しなければなりません。

そのため,労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数を掛け,あらかじめ中間利息分の金額を逸失利益から差し引きます。

労働能力喪失期間とは,交通事故が原因で生じた後遺障害の影響で,労働能力を失った期間を指します。

後遺障害逸失利益の計算は煩雑なので,弁護士に依頼した方が,正確な額を請求することができます。

(3)治療費等

治療費や通院にかかった交通費,入院中に発生した日用雑貨の購入費などの雑費などのことです。

(4)車の修理費等

修理費や,交通事故が原因で,車を使用できない期間に,代わりの自動車を使用するのにかかった費用などのことです。

(5)装具・器具購入費

交通事故が原因で怪我を負い,購入が必要になった器具等の費用のことです。

例えば,松葉づえやメガネの費用などがあります。

(6)将来介護費

交通事故が原因で後遺障害が残り,介護が必要になった場合の介護費用のことです。

(7)休業損害

事故前の収入を基礎として,交通事故による受傷によって休業したことの収入減を指します。

(8)入通院慰謝料

怪我の治療などが原因で精神的苦痛を受けたことに対する金銭的な補償のことです。

入通院慰謝料については,当事務所の次のコラムでご紹介しているのでご覧ください。

弁護士基準での入通院慰謝料と通院日数について知りたい

5 弁護士に依頼するメリットとは?

交通事故に遭い,味覚障害を負った場合,加害者から後遺障害慰謝料や後遺障害逸失利益の支払いを受けるには,後遺障害が生じていることを証明しなければいけません。

必要な書類の収集・作成は骨が折れますし,後遺障害が残っている状態で,資料の作成などの手続きを行うのは身体への負担となります。

また,医師も交通事故の専門家ではないので,後遺障害等級認定に詳しくはありません。

これに対して,弁護士は交通事故の専門家なので,後遺障害等級認定に詳しいです。

弁護士に依頼すれば,医師へ後遺障害診断書の作成を依頼する際のポイントを教えてもらうだけでなく,後遺障害認定申請手続きも代わりに行ってもらえます。

さらに,弁護士が示談交渉に入れば弁護士基準で後遺障害慰謝料の算定をできるので,より高額の損害賠償金を受け取ることができます。

そのうえ,弁護士は交渉に長けているのでスムーズに示談交渉が進む可能性があります。

6 まとめ

交通事故後に味覚障害が残った場合,適切な損害賠償金を受け取るには後遺障害等級認定申請を受ける,示談交渉を行うなど様々な手続きを行わなければいけません。

弁護士に相談すれば,最適な方法をとり,適切な損害賠償金を受け取ることができます。

当事務所の弁護士は,交通事故案件の経験が豊富です。交通事故に遭って味覚障害に悩まれている方は、交通事故を多く取り扱う大阪(なんば・梅田)・堺・岸和田・神戸の弁護士法人法律事務所ロイヤーズ・ハイにご相談ください。

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