交通事故 交通事故基礎知識 後遺障害
2023.10.27 2023.10.27

交通事故で顔の傷や体の手術跡が残ってしまった|醜状障害の後遺障害等級と認定基準を弁護士が解説

交通事故で顔の傷や体の手術跡が残ってしまった|醜状障害の後遺障害等級と認定基準を弁護士が解説

交通事故による顔の傷や,体の手術跡は,見る度に事故を思い出してしまう,周囲の目を気にしてこれまでと同じ生活を送ることができないなど,生活への影響は多大です。

このように,傷跡が残ることを「醜状障害」と呼びます。

当コラムでは,醜状障害についてご説明いたします。

1 交通事故で顔の傷や体に手術跡が残ってしまった場合の後遺障害等級と認定基準は?

交通事故で顔や体の傷が残った場合,醜状障害として後遺障害等級が認定される可能性があります。

醜状障害には,交通事故から直接生じたものだけでなく,交通事故の怪我の手術をしたことによって生じたものも含まれます。

醜状障害の後遺障害等級,認定基準は以下のようになっています。

等級後遺障害認定基準
7級12号外貌に著しい醜状を残すもの・頭部に手のひら大(指の部分は含まない。以下同じ。)以上の瘢痕または頭蓋骨の手のひら大以上の欠損・顔面部に鶏卵大面以上の瘢痕または10円銅貨大以上の組織陥没・頸部に手のひら大以上の瘢痕・耳介軟骨部の2分の1以上を欠損した・鼻軟骨部の全部または大部分を欠損した
9級16号外貌に相当程度の醜状を残すもの顔面部の長さ5㎝以上の線状痕で,人目につく程度以上のもの
12級14号外貌に醜状を残すもの次のいずれかに該当し,人目に付く程度以上のもの・頭部に鶏卵大面以上の瘢痕または頭蓋骨の鶏卵大面以上の欠損・顔面部に10円銅貨大以上の瘢痕または長さ3㎝以上の線状痕・頸部に鶏卵大面以上の瘢痕・顔面神経麻痺の結果として現れる口のゆがみ・耳介軟骨部の一部を欠損した・鼻軟骨部の一部または鼻翼を欠損した
12級相当 上肢または下肢に,手のひらの大きさの3倍程度以上の瘢痕を残す
12級相当 日常露出しない部位(胸部,腹部,背部,臀部)の全面積の2分の1以上の範囲に瘢痕を残す
14級4号上肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの「上肢の露出面」は,上腕から指先までを指す
14級5号下肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの「下肢の露出面」は,大腿から足の背までを指す
14級相当 日常露出しない部位(胸部,腹部,背部,臀部)の全面積の4分の1程度以上の範囲に瘢痕を残す

※眉毛や頭髪等に隠れる瘢痕,線状痕,組織陥没であれば,人目につく程度以上ではないため,後遺障害として扱われません。

なお,交通事故の傷跡に対する治療・対応については,当事務所の次のコラムでご紹介しているのでご覧ください。

交通事故の傷跡に対する治療・対応について知りたい

2 交通事故で顔の傷や体に手術跡が残ってしまった場合の慰謝料請求の相場は?

交通事故で顔の傷や体に手術跡が残ってしまい,醜状障害の後遺障害等級が認められると,被害者は相手方に対して後遺障害慰謝料を請求することができます。

裁判所基準,自賠責基準それぞれの後遺障害慰謝料は以下の通りです。

なお,後遺障害慰謝料の基準には,裁判所基準,自賠責基準,任意保険基準の3つがありますが,詳しくは当事務所の次のコラムでご紹介しているのでご覧ください。

交通事故における慰謝料の3つの基準

等級後遺障害裁判所基準自賠責基準
7級12号外貌に著しい醜状を残すもの1000万円419万円
9級16号外貌に相当程度の醜状を残すもの690万円249万円
12級14号外貌に醜状を残すもの290万円94万円
12級相当 
12級相当 
14級4号上肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの110万円32万円
14級5号下肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの
14級相当 

3 醜状障害の後遺障害申請のポイントは?

⑴受傷から6ヶ月を経過した時点で症状固定とする

傷は時間が経過すれば収縮していくので,受傷から6ヶ月を経過した時点で症状固定としましょう。

顔や体に傷が残れば,気になってすぐに形成外科で治療したいと考えるでしょう。

しかし,顔に線状痕が残った場合,5㎝のものか,3㎝かどうかで後遺障害等級,ひいては後遺障害慰謝料の額は大きく変わります。

なるべく傷跡が大きい時点で後遺障害申請をするため,6ヶ月経過時点で症状固定としましょう。

⑵後遺障害診断書に,画像を添付する

後遺障害診断書の醜状障害の記載欄に,醜状障害を図示して説明することは難しいです。

醜状障害は,醜状痕で立証するので,後遺障害診断書に醜状を撮影した写真を添付しましょう。

⑶面接調査の対策をする

醜状障害の後遺障害等級を認定するにあたって,自賠責調査事務所が面接を行います。

面接では,担当者は,跡が薄い部分を傷跡として測らないことがあります。

このように,担当者の主観で確認がされることがあるので,弁護士から面接での対応方法を聞く,弁護士に同席をお願いするなどして面接に備えましょう。

4 顔の傷や体に手術跡が残ってしまった場合に慰謝料請求が認められた判例は?

⑴後遺障害7級の事例

顔面醜状・疼痛(7級12号相当)の旅行会社添乗員(女・症状固定時27歳)につき,逸失利益を労働能力喪失率10%で10年間認めた上で,傷害分120万円,加害者が酒気帯び,制限速度25㎞超過で追突しそのまま現場から立ち去ったという悪質性,被害者が20歳代の未婚の女性であり高校生の頃から希望していた海外旅行添乗員になることを断念したこと等を斟酌し,後遺障害分1250万円を認めた(事故日平18.6.29 東京地判平20.7.22 交民41・4・935)。

⑵後遺障害12級の事例

①顔面醜状(12級)の中学生(女・事故時14歳・症状固定時18歳)につき,67歳までの労働能力喪失14%の逸失利益を認めたうえ,傷害分100万円,後遺障害分550万円の慰謝料を認めた(事故日昭62.7.1 浦和地判平6.7.15 交民27・4・936)。

②右下肢醜状障害(12級相当),左下肢醜状障害(14級5号),右下肢機能障害(非該当,併合12級)のアルバイト(女・事故時20歳)につき,ダイビングインストラクターを目指し専門学校を卒業して各種資格を有し,近い将来ダイビングインストラクターとして生計を立てうる可能性を相当程度有していた点を考慮して,労働能力喪失15%を15年間,次の10年間を同10%,その後10年間を同5%認めたうえで,傷害分183万円,後遺障害分420万円を認めた(事故日平9.6.24 東京地判平14.9.25 交民35・5・1248)

⑶後遺障害14級の事例

右下肢の醜状痕(14級5号),背中の醜状痕(等級非該当)の女児(9歳)につき,逸失利益を労働能力喪失率5%で就労後5年間認めた上で,醜状について心ない言葉を受けることが多いなど,種々の支障が生じていることから250万円を認めた(事故日平17.8.8 横浜地判平21.4.23 自保ジ1794.19)。

5 弁護士に依頼するメリットとは?

⑴後遺障害診断書の依頼方法を教えてくれる

醜状障害の後遺障害申請では,醜状の大きさなどを的確に伝えるために,後遺障害診断書の書き方が重要になります。

弁護士に依頼すれば,後遺障害等級認定を受けられるよう,医師への後遺障害診断書の依頼方法を教えてもらえます。

⑵面接の事前対策を行ってくれる

上述のとおり,醜状障害の後遺障害等級認定を受けるには,自賠責調査事務所で面接調査が行われます。

弁護士に依頼すれば,面接調査の対策を行ってもらえます。

⑶示談交渉で逸失利益の主張を行ってくれる

醜状障害では,外貌に変化があるだけなので,他の後遺障害と比べて労働能力喪失率が認められにくいです。

弁護士であれば,被害者が事故当時就いていた職業,仕事内容,進路選択・再就職への影響などを考慮して,妥当な後遺障害逸失利益を主張することができます。

また,示談交渉において保険会社は,「外貌に変化があるのみで,労働能力喪失率には影響がない」と主張し,後遺障害逸失利益を否定することが考えられます。

弁護士は,交渉に長けているので,論理的に後遺障害逸失利益が発生していると主張し,後遺障害逸失利益が認められる可能性が高いです。

6 まとめ

醜状障害は,認定基準や,後遺障害申請などにポイントがあり,ご自身で後遺障害申請を行うことは手間がかかるうえに,難しいです。

また,他の後遺障害と比べて後遺障害逸失利益を認定してもらうことが難しいです。

そのため,交通事故で傷跡や手術跡が残った場合は,早い段階で弁護士に相談することをお勧めいたします。

当事務所には,交通事件の経験が豊富な弁護士が所属しています。交通事故で顔や体に傷や手術跡が残ってしまった方は,弁護士法人法律事務所ロイヤーズ・ハイまでご相談ください。

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