交通事故 交通事故基礎知識 損害賠償
2020.06.23 2024.07.04

交通事故による損害賠償の計算方法が知りたい!具体例を用いて弁護士解説

交通事故による損害賠償の計算方法が知りたい!具体例を用いて弁護士解説

交通事故において怪我をした場合、被害者から加害者へ損害賠償を請求します。

この損害賠償にはどういったものがあり、どのように計算をするのか、ここではご説明をしてまいります。

1 損害賠償にはどんな種類がありますか?

⑴交通事故の損害

多くの場合,交通事故被害者に対する損害賠償金は,事故当時に加害者が加入している任意保険会社が、加害者に代わって支払いを行います。

請求先が加害者か保険会社かで請求内容が変わるものではありません。

どういったものが請求できるのかは交通事故では基本的にはおおよそ決まっています。

まずは大枠が「精神的損害」と「財産的損害」に分かれます。

精神的損害は、入院・通院の慰謝料や後遺障害の慰謝料、さらに被害者が亡くなった場合は死亡慰謝料となります。

財産的損害はここからさらに2つに分けられます。

「積極損害」と「消極損害」といいます。

① 積極障害

交通事故により、被害者が実際に費用を支払わなければいけなくなった損害をいいます。

②消極損害

交通事故に遭わなければ得るはずだった利益=失われた収入の損害をいいます。

⑵請求権者

加害者に対して交通事故の損害賠償請求を行うことができる人には、被害者本人以外もいます。

請求権を持つ人は以下の方々になります。

①傷害事故の場合

基本的には被害者本人ですが、被害者が未成年の場合は法定代理人である親権者が請求可能です。

②死亡事故の場合

死亡した被害者の相続人が請求権を持ちます。

相続人は死亡した被害者の配偶者と子になります。

もしも子が死亡している場合は孫です。

ただ孫がいない場合ですが、その場合は配偶者と被害者の父母となります。

父母がいなければ、配偶者と兄弟です。

なお、相続人は,被害者本人に代わりに請求をしますが、死亡事故の場合は遺族としての慰謝料の請求も可能です。

これは配偶者と子と父母が請求可能です。

2 賠償請求の範囲

先ほど財産的損害には積極損害と消極損害があるとご紹介しましたが、代表的なものについて説明をいたします。

⑴積極損害

①治療関係費

交通事故で負った怪我を治療するための費用です。

医師による診察費用の他、検査費用、投薬費用、手術費用などの治療費がまず挙げられます。

他にも入院時の雑費、小さな子供が被害者の場合,ないしは医師が付き添いを必要と判断した場合の付添看護費、通院交通費があります。

怪我により車椅子の購入などが必要な場合も治療関係費用となります。

②葬儀関係費

死亡事故の場合は葬儀関係費も請求の対象です。

墓碑建立費や仏壇費、仏具購入費の他、遺体処置費用等があります。

③弁護士費用

弁護士費用は裁判にて損害賠償請求訴訟を起こし、判決で加害者に支払いが言い渡された時に回収ができます。

費用は裁判にて認められた損害賠償額の10%分とされています。

なお、示談交渉や交通事故紛争処理センター、並びに和解にて解決するときは弁護士費用の請求は困難です。あくまでも【裁判での判決】となります。

⑵消極損害

①休業損害

交通事故により働けなくなった際に減った分の収入の補償です。

通院のために欠勤や遅刻、早退をした場合、給与に影響があった分を相手に請求ができます。

また有給を使用した場合や賞与の減額があった場合も本来得るはずだった利益として損害に計上できます。

②後遺障害の逸失利益、死亡による逸失利益

前者は後遺障害により労働能力が低下したために将来に渡り発生する収入の減少の補償をいい、後者は被害者が死亡しなければその後就労可能な期間において得ることができた収入のことをいいます。

3 過失相殺とは?

⑴考え方

交通事故では,基本的に加害者、被害者の双方に「過失」が発生します。

交通事故においてどちらか片方の責任であるとされることは極めて稀なケースです。

どちらにどれくらいの過失責任があるのか、それを「過失割合」といいます。

そして「過失相殺」とは、「被害者の過失割合の分、加害者に請求できる賠償金額が減らされること】を指します。

考え方としては、被害者側にも過失が認められると判断された場合においては、事故による損害のすべてを加害者が負担するのではなく、被害者の過失の割合に応じて賠償額を減額し、公平に事故の責任を負うというものです。

簡単な例を上げると、損害賠償金額が100万円で、被害者の過失が20%、加害者の過失が80%だった場合、20万円を減額されることとなります。

つまり、交通事故において加害者に損害賠償を請求する際は、被害者の過失割合分が過失相殺されることとなります。

⑵基準

過失相殺が適用される基準ですが、まず、適用されない損害賠償について説明します。

自賠責保険においては被害者に重大な過失がない限り減額はされない、つまり過失相殺が適用されません。

これは自賠責保険が被害者救済を重視しているからです。

ただし重大な過失が被害者側に70%以上ある場合はその割合に応じて減額をされます。

さて、過失の算定ですが、過去の判例に基づき以下の事故態様にておおよその基準が決まっています。

①歩行者対自動車
②自動車対自動車
③バイク(単車)対自動車
④自転車対自動車
⑤高速道路上の事故

ここからさらに事故の状況、現場に応じて過失割合が決まり、過失相殺率が決まっていきます。

なお、過失割合を決めるにあたり修正要素というものがあります。

どちらかに著しい過失(例:携帯電話を使用しながらの運転やわき見運転による前方不注意、酒気帯び運転等)や重過失(例:酒酔い運転や居眠り運転、無免許運転、薬物を使用しての運転等)が判明した場合、事故の内容等にもよりますが著しい過失があれば5%~10%、重過失があれば15~20%が加算されることがあります。なお、事故の当事者がお年寄りや幼児、児童の場合も過失割合に修正要素が入り減算されます。

4 交通事故の損害賠償金に関する3つの基準

交通事故の慰謝料等、損害賠償額はおおよそ目安が決まっています。

ある一定の算定基準が定められていますので、その基準に従って事故の規模や怪我の内容等を加味しながら算定を行います。

しかしこの基準は1つだけではありません。

自賠責基準、任意保険基準、裁判所基準の3つの基準があります。

⑴自賠責基準

自動車責任賠償責任保険、通称自賠責保険は強制保険であり、原則自動車には加入の義務がある保険です。

原動機付自転車(原付)も基本は加入しています。

この自賠責保険に未加入のまま自動車等の運転をすると、免許の加点および1年以下の懲役または50万円以下の罰金という処分が科されます。

自賠責保険の目的は主に被害者救済とされています。

特徴として,補償は怪我=対人賠償に限られており、補償される限度額も定められております。

そのため保険金の基準は最低限度のものとなり、自賠責基準で計算された損害賠償額は3つの基準の中では一番低いものとなり十分な補償額であると言えません。

⑵任意保険基準

強制的な保険である自賠責保険に対して、任意保険というものがあります。

これはその名の通り「任意」で加入するか否かを決められる保険です。

自賠責保険は保険会社を選ぶことはできませんが、任意保険は保険会社を選べて、また補償内容も自分で選択ができます。

自賠責保険だけでは補償内容が足りないとして、ほとんどの運転者、車両所有者は加入をしています。

任意保険基準は各保険会社が定めている独自の基準です。

よって保険会社で多少異なります。

任意保険の補償内容は対人賠償保険、対物賠償保険、人身傷害保険、搭乗者傷害保険、無保険車傷害保険、車両保険が主立ってあげられます。

交通事故の相手への賠償、と考えた時に使用されるのは対人・対物補償保険です。

自賠責保険では足りない不足部分を補います。

任意保険基準での賠償計算方法ですが、実は明らかにはされていません。

保険会社が過去の事例を参考にして損害賠償額を算出しているため、自賠責保険より高くなるとは言われています。

しかし実際に提示されるものは自賠責基準の損害賠償額と同じ、もしくは少し高いだけ、ということがあります。

⑶裁判所基準

裁判所基準(弁護士基準ともいいます)は、交通事故の過去の裁判例から算出した基準です。

裁判所基準は「最も適切な損害賠償額の算定が可能である基準」です。

しかし、すべての交通事故案件の算定基準に用いることができないのが現状です。

何故ならば、法的拘束力がないからです。

そのため被害者が裁判所基準での請求を加害者の保険会社(ないしは加害者自身)に行っても示談成立は難しいです。

では裁判所基準で請求するにはどうすればいいのでしょうか?

裁判をしなければいけないのでしょうか?

答えは「弁護士に委任する」だけです。

この裁判所基準は裁判の賠償額を基本としているので、弁護士はこの裁判所基準を用いて示談交渉をします。裁判所基準と同額を賠償金として示談の段階で得ることができると言い切ることは難しいですが、任意保険基準よりは増額できる場合が多いです。

5 よくある事例を見てみましょう。

上記の3つの基準の差額がどれほどのものかを実際に使用する損害賠償の計算式を用いて算出してみましょう。

なお、任意保険基準は明確な計算式が公表されておりませんので、自賠責基準と裁判所基準で比べてみます。

また算出方法はいくつかありますので、下記はその一部だとお考え下さい。

⑴よくある事例:後遺障害が認定された場合

腰椎捻挫により後遺障害等級14級9号が認定されたAさんの場合、後遺障害の慰謝料はどうなるでしょうか?

Aさんの事故の前年度の収入は400万円です。

労働能力喪失率を5%,労働能力喪失期間を5年と想定します。

①自賠責基準の場合

後遺障害の慰謝料・逸失利益…75万円

②裁判所基準の場合

後遺障害の慰謝料:110万円

逸失利益:事故前年度収入400万円×労働能力喪失率5%×ライプニッツ係数4.5797(令和2年3月31日以前に発生した事故なら4.3295)

=91万5,940円

合計201万5,940円

自賠責基準での逸失利益は後遺障害の慰謝料に含まれます。

一方で裁判所基準は後遺障害の慰謝料と逸失利益は別となります。

このAさんの場合は自賠責基準と裁判所基準で126万5,940円も差があります。

なお、労働能力喪失率は各等級で定められており、等級が高ければ高いほどパーセンテージは上がります。

また、就労可能年数をライプニッツ係数表にあてはめて、ライプニッツ係数を算出します。

収入は本来であれば労働の対価として、少しずつ得るものですが、交通事故の賠償金で先に未来の分を一括で受け取る場合は、毎年発生する利息差し引く必要があり、その計算に用いられる係数が「ライプニッツ係数」です。

労働能力喪失期間は等級や本人の年齢に応じて年数は変わります。

67歳-症状固定時の年齢で喪失期間を出す場合もあります。

※上記の例では14級は喪失期間が2年~5年とされることが多いため、5年で計算をいたしました。

なお,交通事故の逸失利益の計算については当事務所の次のコラムでご紹介しているのでご覧ください。

交通事故の逸失利益はどうやって計算するの?2パターンの具体的な計算方法と弁護士を入れるメリット

⑵過去の事例:主婦の休業損害

むちうちにより主婦Bさんが半年間で病院に60日通院した場合、Bさんの休業損害はどうなるでしょうか?(令和2年3月31日以前の事故については、自賠責基準は日額5,700円でした)

①自賠責基準の場合

1日あたり6,100円×60日=36万6,000円

②裁判所基準の場合

平成30年賃金センサス女性学歴計382万6,300円÷365日×60日=62万8,980円

自賠責基準では主婦の場合、通院1日あたりの休業損害の金額が決まっています。

対する裁判所基準では厚生労働省作成の給与に関する統計データ(賃金センサス)を用いて女性の平均給与を算出し、その数値を基準に計算をします。

基本的に用いるのは事故の前年度の数値となり、その数値を365日で割ることで日額を出し、通院の日数をかけます。

主婦Bさんの場合は26万2,980円もの差が自賠責基準と裁判所基準で出ます。

なお,休業損害と休業補償全般,主婦の休業損害については当事務所の次のコラムでご紹介しているのでご覧ください。

交通事故後の休業損害と休業補償について知りたい

主婦の交通事故による休業損害の受け取り期間について

兼業主婦が交通事故にあった場合の休業損害について知りたい

6 まとめ

交通事故の損害賠償額の計算について説明をさせていただきましたが、いかがでしょうか?

請求できるものについていくつかご案内をいたしましたが、これはあくまで一部のため、被害者本人で示談交渉をした場合、本来であれば請求できたかもしれないものを取りこぼしてしまう可能性があります。

また、裁判所基準を使用できるのは弁護士に依頼した時となりますので、適切な賠償を受けるためにもまずは弁護士に相談することをおすすめします。

「適切な損害賠償を受け取りたい…」

「損害賠償金を増額したい…」そんなお悩みをお持ちの方は、交通事故問題を多く取り扱う、大阪(なんば・梅田)・堺・岸和田・神戸の弁護士法人法律事務所ロイヤーズ・ハイにぜひご相談ください。

このコラムの監修者

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