交通事故の被害に遭うのは、大人だけではありません。
子供が交通事故の被害者となってしまうこともあり、その場合、親御様はご自身が怪我をしたとき以上に辛く、また怪我が今後お子様にどのような影響を与えるのか不安になる方も多いでしょう。
子供が交通事故の被害者となってしまった場合は、弁護士に相談することをおすすめします。
何故なら子供の示談交渉では、保険会社は損害賠償金について低額で提示してくることが多いです。さらに、増額交渉を個人で行うことは非常に困難です。
ここでは、子供が交通事故に遭い、通院が必要となってしまった時に、何が請求できるのか、どのように対応していくのかをご説明いたします。
目次
交通事故で子供が通院した場合
交通事故で慰謝料はどのようにして決まるのか
交通事故の慰謝料とは、1種類だけではなく、以下の3種類あります。
・入通院慰謝料(傷害慰謝料)
交通事故により被害者の方が受傷し、入院、通院を余儀なくされた場合において、被害者の方が受けた精神的苦痛に対する慰謝料です。
入院の期間、実際に通院した日数、全体の治療期間を基に金額が決まっていきます。
・後遺障害慰謝料
交通事故により受傷し、治療を続けるも、残念ながら完治には至らず、後遺障害が身体に残ってしまった場合、後遺障害等級認定の申請を行うことが一般的です。
申請を行い、損害保険料率算出機構の自賠責調査事務所による調査の結果、後遺障害等級1~14級が認定された場合において、等級に応じて、後遺障害が残ったことによる精神的苦痛に対する賠償=後遺障害慰謝料を請求することが可能となります。
・死亡慰謝料
交通事故の被害者の方が、事故が原因で亡くなってしまった場合、死亡慰謝料の請求が可能となります。
これは、死亡させられた被害者の方本人の慰謝料と、残されたご遺族の方(相続人)の慰謝料の2種類が請求可能となります。
仮にもし、交通事故後、何日間か入院した後に被害者の方が死亡してしまった場合は、入通院慰謝料と死亡慰謝料の2種類が請求可能となります。
また、後遺障害等級の認定が下りた場合は、後遺障害慰謝料だけでなく、それまで入院・通院しているはずですので、入通院慰謝料も請求することとなります。
なお、入通院慰謝料や後遺障害慰謝料については、大人と子供で慰謝料に差が発生することは基本的にありません。
入通院慰謝料については、被害者の方が実際に入院した期間、通院した日数、治療期間で計算がされます。また、後遺障害慰謝料は認定された等級に応じての慰謝料となります。
死亡慰謝料については、家族の中での役割に応じて慰謝料が変動します。わかりやすくいうと、一家の経済的支柱である方が死亡した場合は、未成年者や高齢者、独身者などの方が死亡した場合よりも高くなります。
通院した場合の慰謝料の相場
子供が交通事故の被害者となり、怪我をしたことで通院をした場合は、以下の方法で慰謝料が算出可能です。
なお、慰謝料の算定基準には、「自賠責基準」「任意保険基準」「弁護士基準(裁判所基準)」があり、自賠責保険で使用される最も低い基準が自賠責基準、過去の裁判例を基に決められている最も高い基準が弁護士基準です。
注意点は、弁護士基準は、裁判か、もしくは示談交渉段階で弁護士が介入している場合のみ使用可能です。
任意保険基準は、自賠責基準と同等かもしくは少し上回る程度であり、保険会社が独自に定めていることから、厳密な算定基準は非公開です。
自賠責基準、弁護士基準での入通院慰謝料の計算方法をご説明します。
・自賠責基準
自賠責基準では、入通院1日あたりの金額が設定されています。なお、入院と通院で金額の差はありません。
(計算式)
入通院1日あたり4,300円×対象日数
※2020年3月30日以前の事故の場合は1日あたり4,200円
計算式にある対象日数は①実際の入院期間と通院をした実日数を合計し2倍
②治療期間のいずれかの「小さい値」をとり、計算がされます。
たとえば、入院30日、通院実日数90日、治療期間が210日という方の対象日数は以下のように算出されます。
①(30日+90日)×2=240日>②180日
つまりこの場合の対象日数は②の治療期間180日となり、入通院慰謝料は、【4,300円×180日=774,000円】となります。
・弁護士基準
弁護士基準では、「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準(通称赤い本)」を参考に、2つの表を怪我の程度が重傷か軽傷かを使い分けて、算出されます。
むち打ち以外の怪我の場合の傷害部分の慰謝料基準表(損害賠償額算定基準:別表Ⅰ)
万円 (単位) |
入院 |
1ヶ月 |
2ヶ月 |
3ヶ月 |
4ヶ月 |
5ヶ月 |
6ヶ月 |
通院 |
53 |
101 |
145 |
184 |
217 |
244 |
|
1ヶ月 |
28 |
77 |
122 |
162 |
199 |
228 |
252 |
2ヶ月 |
52 |
98 |
139 |
177 |
210 |
236 |
260 |
3ヶ月 |
73 |
115 |
154 |
188 |
218 |
244 |
267 |
4ヶ月 |
90 |
130 |
165 |
196 |
226 |
251 |
273 |
5ヶ月 |
105 |
141 |
173 |
204 |
233 |
257 |
278 |
6ヶ月 |
116 |
149 |
181 |
211 |
239 |
262 |
282 |
7ヶ月 |
124 |
157 |
188 |
217 |
244 |
266 |
286 |
8ヶ月 |
132 |
164 |
194 |
222 |
248 |
270 |
290 |
むちうちなど他覚的所見がない場合に使用(損害賠償額算定基準:別表Ⅱ)
万円 (単位) |
入院 |
1ヶ月 |
2ヶ月 |
3ヶ月 |
4ヶ月 |
5ヶ月 |
6ヶ月 |
通院 |
35 |
66 |
92 |
116 |
135 |
152 |
|
1ヶ月 |
19 |
52 |
83 |
106 |
128 |
145 |
160 |
2ヶ月 |
36 |
69 |
97 |
118 |
138 |
153 |
166 |
3ヶ月 |
53 |
83 |
109 |
128 |
146 |
159 |
172 |
4ヶ月 |
67 |
95 |
119 |
136 |
152 |
165 |
176 |
5ヶ月 |
79 |
105 |
127 |
142 |
158 |
169 |
180 |
6ヶ月 |
89 |
113 |
133 |
148 |
162 |
173 |
182 |
7ヶ月 |
97 |
119 |
139 |
152 |
166 |
174 |
183 |
8ヶ月 |
103 |
125 |
143 |
156 |
168 |
175 |
184 |
この表の見方のポイントは以下となります。
・横軸は入院、縦軸は通院の期間です。
・1ヶ月あたり30日と考えます。暦で計算はしません。
・入院と通院の両方がある場合は、交差している部分が相場金額です。
では、先ほどの自賠責基準で計算した例と同じく、下記の場合での慰謝料を計算してみましょう。
【入院期間30日、通院実日数90日、治療期間が180日の場合】
1ヶ月あたりを30日と考えると、治療期間は6ヶ月です。
そのうち、1ヶ月は入院しているので、通院期間は5ヶ月と算出されます。
入院であれば、軽傷とは言い難いので、別表Ⅰを使用します。
交差する部分は141万円となりますので、弁護士基準での相場は「141万」となり、自賠責基準と比べると非常に高額になります。
後遺症が残った場合
子供に後遺症が残ってしまった場合も、大人と同様後遺障害慰謝料の請求ができる可能性があります。
請求にあたっては、後遺障害等級申請を行い、1~14級のいずれかの等級を獲得しなければなりません。
等級が認定された場合は以下の金額が後遺障害慰謝料として請求が可能となります。
・自賠責基準
別表Ⅰ 後遺障害により介護が日常的に必要な場合の後遺障害に使用
後遺障害等級 |
2020年3月31日以前 |
2020年4月1日以降 |
第1級 |
1,600万円 |
1,650万円 |
第2級 |
1,163万円 |
1,203万円 |
別表Ⅱ その他、日常的な介護が必要ない場合の後遺障害に使用
後遺障害等級 |
2020年3月31日以前 |
2020年4月1日以降 |
第1級 |
1,100万円 |
1,150万円 |
第2級 |
958万円 |
998万円 |
第3級 |
829万円 |
861万円 |
第4級 |
712万円 |
737万円 |
第5級 |
599万円 |
618万円 |
第6級 |
498万円 |
512万円 |
第7級 |
409万円 |
419万円 |
第8級 |
324万円 |
331万円 |
第9級 |
245万円 |
249万円 |
第10級 |
187万円 |
190万円 |
第11級 |
135万円 |
136万円 |
第12級 |
93万円 |
94万円 |
第13級 |
57万円 |
57万円 |
第14級 |
32万円 |
32万円 |
※13級、14級の後遺障害慰謝料に変更はありません。
・弁護士基準
赤い本の弁護士基準では以下の通りで定められています。
後遺障害等級 |
赤本基準 |
1級 |
2,800万円 |
2級 |
2,370万円 |
3級 |
1,990万円 |
4級 |
1,670万円 |
5級 |
1,400万円 |
6級 |
1,180万円 |
7級 |
1,000万円 |
8級 |
830万円 |
9級 |
690万円 |
10級 |
550万円 |
11級 |
420万円 |
12級 |
290万円 |
13級 |
180万円 |
14級 |
110万円 |
上位等級であればあるほど、算定基準による差は非常に大きなものとなります。
後遺障害の可能性がもしもお子様にある場合は、必ず親御様は弁護士に相談をするようにしましょう。
むち打ちの場合
子供がむち打ち症となってしまった場合、慰謝料の相場はどれくらいになるのでしょうか?
むち打ち症の場合、治療期間は3ヶ月~6ヶ月程度と言われています。
特に子供の場合は、大人の方に比べて直りが早いことから、1ヶ月~3か月程度で治療が終了することも珍しくありません。
では、仮に3ヶ月むちうちで通院をしていた場合、子供の入通院慰謝料はいくらになるのでしょうか?
(例)入院なし、通院期間3ヶ月(90日)、実通院日数30日(月10回通院)
自賠責基準の場合は、以下の式となります。
1日あたり4300円×(30日×2)=25万8,000円
弁護士基準の場合は、むち打ちは軽傷扱いとなりますので、先ほど別表Ⅱを使用します。通院期間は縦軸となりますので、縦軸の3ヶ月をみると、相場金額は53万円となります。
なお、通院期間90日に対して、実際の通院した日数が30日を下回る場合は、子供、大人関係なく、慰謝料の減額対象となりますので、ご注意ください。
子供の通院費用
含まれる範囲
子供が病院に入院、通院する場合、年齢によりますが、多くの場合は親が付き添っての通院になることがほとんどです。
この場合、子供の通院費用に加えて、親の付添看護費用の請求が可能となります。
算定基準 |
入院時付添看護費 |
通院時付添看護費用 |
自賠責基準 |
1日あたり4,200円 (※4100円) |
1日あたり2,100円 (※2,050円) |
弁護士基準 |
1日あたり6500円 |
1日あたり3,300円 |
また子供付添を行うことで、親が仕事を休まなければならなくなった等があり、給与に影響があった場合は、親の休業損害と比べ、高い方の金額を請求することが可能となります。
なお、基本的に通院の付添が必要か否かは、被害者の方の年齢が考慮されます。
原則的に12歳以下であれば付添が必要と判断されます。また13歳以上であっても医師が看護の必要を認めた場合(通院に介助者が必要であったり、高次脳機能障害の症状があったりした場合など)も、付き添いが必要であると認められる可能性は高いです。
また、補足とはなりますが、子供が複数いる家庭で、親が怪我をした子供に付き添う関係で、他の子供を保育所に預けるとなった場合、保育料として認めた裁判例もあります。
子供の事故の場合、怪我の程度によっては、家庭の事情で、例外的にかかる費用が発生することがあります。
個人で相手の保険会社に交渉をしても、基本的には払えないという回答が返ってきてしまいますので、まずは弁護士に相談するようにしましょう。
慰謝料に納得できない場合
多くの示談交渉の場合、被害者本人と加害者側の保険会社間で行うとなると、慰謝料を含む損害賠償金はすべて、自賠責基準もしくは任意保険基準で計算がなされ、保険会社は、非常に低額な金額で示談を成立させようと被害者側の説得にかかります。
保険会社は自社の利益を一番に考え、できる限り支払い金額を低く抑えようと考えます。
そのため、被害者の方が納得いかない金額で提示されることがほとんどです。
特に子供の事故の場合、示談交渉を行うのは親権者である法定代理人の親御様です。
大事なお子様が交通事故で怪我をされたとなった場合、自賠責基準や任意保険基準で計算された低額な慰謝料で納得をすることは、親御様はできないかと思います。
また、むち打ち症といった目に見えない怪我の場合、子供の中には、なかなか医師に痛みを上手く訴えることができない場合ことがあります。
その結果、保険会社からは「痛みが無いにもかかわらず通っている」と判断され、慰謝料を減額されることがあります。
慰謝料に納得がいかない場合、また子供の通院について保険会社と争いになっている場合は、迷わず弁護士に相談をしましょう。
慰謝料については、弁護士基準で示談交渉を行いますので、増額の可能性が高くなります。
また、通院期間等についても弁護士が交渉を行いますので、親御様はお子様の治療に専念ができます。
お子様が事故に遭われたら、交通事故を多く取り扱う大阪市・難波(なんば)・堺市の弁護士法人法律事務所ロイヤーズ・ハイにご相談ください。
子供が事故に遭ってしまった時の慰謝料等についてご説明をさせていただきました。
親御様に覚えておいていただきたいことは、相手の保険会社が提示する慰謝料は低額であるということです。
そして、弁護士が介入すれば、慰謝料が増額する可能性があるということです。
また、後遺障害がお子様に残ってしまった場合、適正な申請を行わなければ、後遺障害認定が取れない可能性が上がってしまいます。少しでも可能性を上げるためには、交通事故問題に詳しい弁護士に相談するようにしましょう。
お子様が交通事故の被害者となってしまったら、交通事故を多く取り扱う大阪市・難波(なんば)・堺市の弁護士法人法律事務所ロイヤーズ・ハイにご相談ください。