めまいの原因は,加齢,病気,不眠,ストレスなど様々です。
しかし,交通事故で受傷後,めまいが続く場合は,交通事故が原因である可能性が高いです。
当コラムでは,交通事故でめまいが起こる原因や,その際の対処法などについてご説明いたします。
目次
1 交通事故でめまいが起こる原因とは?
交通事故でめまいが起こる原因には,以下のようなものがあります。
⑴むちうち
一般的には,骨折や脱臼のない頚部脊柱の軟部支持組織(靭帯・椎間板・関節包・頚部筋群の筋,筋膜)の損傷だと説明されています。
受傷後2~4週間経過以後,めまいの症状が現れることがあります。
⑵低髄液圧症候群(脳脊髄液減少症)CSFH
交通事故の外傷が原因で脳脊髄液が慢性的に減ることにより、めまいなどの様々な症状をきたす病気です。
⑶頭部外傷
交通事故で頭部外傷を負うと,脳に衝撃が伝わって脳損傷が起こり,めまいなどの症状が現れることがあります。
⑷外傷性鼓膜穿孔(外リンパ瘻を伴うもの)
あぶみ骨の底部が破損,前庭窓や蝸牛窓が傷つくと,内耳の中の液が外に漏出する,外リンパ瘻を発症することがあります。
これを発症すれば,強いめまい,高度な難聴などの症状が現れます。
なお,むちうちの具体的症状,慰謝料については当事務所の次のコラムでご紹介しているのでご覧ください。
交通事故でむちうちと診断されました。むちうちとは?慰謝料はどうなる
2 めまいは後遺障害として認定される?等級と基準
交通事故後,めまいが止まらなければ,以下の後遺障害等級が認定される可能性があります。
なお,めまいの原因のうち,低髄液圧症候群と診断されるには,
①起立性頭痛または,体位によって症状の変化があり,
②MRIアンギオで,びまん性硬膜肥厚が増強するか,腰椎穿刺で低髄液圧60mmH2O以下であることもしくは髄液漏出を示す画像所見が得られていること,
③外傷後30日以内に発症しており,外傷以外の原因が否定的なもの
の3条件を満たす必要があります。
⑴めまい・失調および平衡機能障害の後遺障害等級と基準
等級 | 後遺障害 | 基準 |
3級3号 | 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの | 生命の維持に必要な身の回り処理の動作は可能であるが,高度の失調または平衡機能障害のために終身労務に就くことができないもの |
5級2号 | 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの | 著しい失調または平衡機能障害のために,労働能力が極めて低下し一般平均人の4分の1程度しか残されていないもの |
7級4号 | 神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの | 中程度の失調または平衡機能障害のために,労働能力が一般平均人の2分の1以下程度に明らかに低下しているもの |
9級10号 | 神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの | 一般的な労働能力は残存しているが,めまいの自覚症状が強く,かつ,他覚的に眼振その他平衡機能検査の結果に明らかな異常所見が認められるもの |
12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの | 労働には通常差し支えがないが,眼振その他平衡機能検査の結果に異常所見が認められるもの |
14級9号 | 局部に神経症状を残すもの | めまいの自覚症状はあるが,他覚的には眼振その他平衡機能検査の結果に異常所見が認められないもので,単なる故意の誇張でないと医学的に推定されるもの |
⑵めまいの立証方法
めまいがあることを立証するために,以下の検査を受けることになります。
眼振検査 | ・注視眼振検査・自発眼振検査・頭位眼振検査・頭位変換眼振検査 |
迷路刺激検査 | ・温度刺激検査・Visual suppression検査・回転刺激検査・直流電気刺激検査・前庭誘発筋電位検査,VEMP |
視刺激検査 | ・視運動性眼振検査・追跡眼球運動検査 |
静的平衡検査 | ・両脚直立検査・Mann検査・単脚直立検査・重心動揺検査 |
動的平衡検査 | ・指示検査・書字検査・足踏検査・歩行検査 |
①難聴,耳鳴り,悪心・嘔吐などの随伴症状の有無
②めまいなどの時間的経過や持続時間
③めまいの反復の有無
④起立時,頭頚部の位置を変えた際のめまいの有無と位置
の自覚症状を医師に伝えると,医師が上記の検査から該当するものを選択します。
3 交通事故でめまいが続いたら慰謝料請求できる?
慰謝料とは,交通事故が原因で生じた精神的・肉体的苦痛に対する金銭的補償です。
交通事故でめまいが続いたら,被害者は加害者が加入している保険会社(加害者が任意保険に加入している場合)に対して慰謝料を請求することができます。
被害者が請求できる慰謝料には,入通院慰謝料と後遺障害慰謝料の2種類があります。
⑴入通院慰謝料
入通院慰謝料は,交通事故で怪我をしたことで,入通院せざるを得なかったことにより被害者に生じた肉体的・精神的苦痛への補償です。
自賠責基準での入通院慰謝料は,1日4300円となっています。
裁判所基準での入通院慰謝料は,入院日数と通院日数を考慮して算定されます。
自賠責基準と裁判所基準(弁護士基準)の違い,裁判所基準での入通院慰謝料について,詳しくは当事務所の次のコラムでご紹介しているのでご覧ください。
⑵後遺障害慰謝料
等級 | 後遺障害 | 自賠責基準 | 裁判所基準 |
3級3号 | 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの | 861万円 | 1990万円 |
5級2号 | 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの | 618万円 | 1400万円 |
7級4号 | 神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの | 419万円 | 1000万円 |
9級10号 | 神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの | 249万円 | 690万円 |
12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの | 94万円 | 290万円 |
14級9号 | 局部に神経症状を残すもの | 32万円 | 110万円 |
4 交通事故でめまいが続く場合の対処法
交通事故でめまいが続き,後遺障害等級の認定がなされると,後遺障害慰謝料や後遺障害逸失利益などの後遺障害に関する損害賠償請求することができます。
そのため,めまいが続けば後遺障害申請をしたうえで,示談交渉を行うべきです。
めまいが続く場合は,以下のような対処法をとるべきです。
⑴病院を受診する
交通事故が原因のめまいは完治することが理想です。
交通事故の受傷部位に応じて,科を選び,病院を受診して治療を受けましょう。
⑵弁護士に相談する
弁護士に相談すれば,今後の対応のアドバイスを受けたり,後遺障害申請や示談交渉などの手続きを代わりに行ってもらうことができます。
早い段階で弁護士に依頼しましょう。
⑶症状固定と診断される
めまいが完治しなければ,症状固定だと診断されます。
症状固定の診断を受けたら,後遺障害申請の準備に入ります。
⑷後遺障害申請する
弁護士に依頼していれば,ご自身に代わって弁護士が被害者申請の手続を行います。
⑸示談交渉を行う
後遺障害等級認定を受けてから,示談交渉に入ります。
示談が成立すれば,被害者は加害者(加害者が任意保険に加入している場合は加害者側の保険会社)から示談金を受け取ります。
5 弁護士に依頼するメリット
⑴心配事を相談できる
事故後,入通院中に症状が悪化すれば医師に知らせるなどすべきなのか,保険会社から治療打ち切りを知らされたりすればどう受け答えするべきなのか,とっさに判断することは難しいです。
弁護士に依頼すれば,このような心配事が出てくれば,アドバイスを受けることができます。
⑵保険会社とのやり取りを任せることができる
保険会社とのやり取りでは,配慮しなければいけないことが多いです。
例えば,保険会社から治療打ち切りの提案をされたら,治療延長するには言い回しなども大事になります。
弁護士に依頼すれば保険会社とのやり取りを代わりに行ってもらうことができるので,保険会社への対応に気を揉む必要がなくなります。
⑶後遺障害等級認定を獲得しやすい
弁護士に依頼すれば,後遺障害申請の被害者請求を行ってもらえます。
弁護士は後遺障害申請の経験が豊富なので,被害者ご自身が申請手続きを行うよりも後遺障害等級を獲得できる可能性が高まります。
⑷示談金アップの可能性がある
弁護士に依頼すれば,保険会社との示談交渉の相手方は弁護士となります。
弁護士が相手であれば,保険会社も無下にできないので,主張を認めるかもしれません。
また,裁判所基準(弁護士基準)と呼ばれる高額の基準で慰謝料の算定をすることができます。
そのため,弁護士が介入すれば示談金が増額する可能性があります。
6 まとめ
交通事故に遭ってからめまいが続けば,後遺障害等級が認定される可能性があります。
しかし,めまいの原因は多様であるため,交通事故の後遺障害に該当するのかご自身で判断することは難しいです。
また,後遺障害が認定されるには,後遺障害診断書の書き方などに工夫が必要です。
弁護士に相談すれば,後遺障害に該当する可能性があるか,後遺障害申請する際に押さえておくポイントなどを教えてもらうことができます。交通事故後,めまいが続いて悩まれている方は,交通事故を多く取り扱う大阪(なんば・梅田)・堺・岸和田・神戸の弁護士法人法律事務所ロイヤーズ・ハイにご相談ください。